ロームのパワー半導体がシェフラーで採用 シェフラーとはどんな企業なのか?採用の理由は何か?

この記事で分かること

  • シェフラーとは:ドイツの自動車部品と産業用機械部品の世界的なサプライヤーです。ベアリングやエンジン部品、トランスミッション部品などを製造しており、近年は電気自動車向けの電動化ソリューションにも注力しています。
  • ロームのパワー半導体が採用された理由:電力変換効率が高く、エネルギー損失を大幅に削減できるためです。これにより、EVの航続距離を延ばせるだけでなく、インバーターの小型・軽量化も可能になり、シェフラーの電動化戦略に不可欠な技術でした。
  • EVのインバーターの役割:バッテリーの直流電力をモーターを動かすための交流電力に変換する重要な役割を担っています。これにより、アクセル操作に応じてモーターの回転数やトルクを精密に制御し

ロームのパワー半導体がシェフラーで採用

 ロームのパワー半導体は、ドイツの自動車部品メーカーであるシェフラーが量産を開始したEV向けインバーターブリックに採用されています。

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 この協業は、ロームが目指すSiCパワー半導体市場での世界シェア拡大と、シェフラーが推進する電動化ソリューションの強化という、両社の戦略が合致した結果と言えます。ロームは、SiCのウエハ製造からの一貫生産体制を強みとし、車載用途での採用を拡大しています。

シェフラーはどんな企業か

 シェフラー(Schaeffler)は、ドイツに本社を置く世界的な自動車部品および産業用機械部品のサプライヤーです。創業1946年の同族経営企業であり、転がり軸受(ベアリング)やリニアガイドシステム、エンジン部品、トランスミッション部品など、幅広い高精度製品を開発・製造しています。

シェフラーの主な特徴

  • グローバルな事業展開:世界50カ国以上に約250以上の拠点を持ち、従業員数は12万人を超える巨大企業です。グローバルな生産・研究開発ネットワークを構築しており、顧客のニーズに迅速に対応しています。
  • 主要ブランドと事業セグメント:シェフラー・グループは、主に3つのブランドで構成されています。
    • INA: 精密な転がり軸受、すべり軸受、リニアガイドシステム、エンジン部品を扱います。
    • FAG: 転がり軸受や大型ベアリング、センサー付きハブユニットなどを手掛けています。
    • LuK: クラッチやトランスミッション部品、トルクコンバーターといったドライブトレイン製品の専門ブランドです。
  • 自動車産業における強み:自動車部品サプライヤーとして、エンジン、トランスミッション、シャシーなど、車両の様々な部位に革新的な製品を提供しています。特に、内燃機関(ICE)向けの部品で長年の実績と高い技術力を持ち、世界中の自動車メーカーに製品を供給してきました。
  • 電動化へのシフト:近年は、内燃機関から電気自動車(EV)へのシフトに対応するため、Eモビリティ事業を強化しています。モーター、インバーター、ギアボックスなどを統合した電動アクスル(電気駆動アクスル)の開発に注力しており、今回のロームのSiCパワー半導体採用もこの戦略の一環です。
  • 産業機械事業:自動車部品だけでなく、風力発電機、工作機械、航空機、鉄道など、様々な産業分野向けにベアリングやソリューションを提供しています。これにより、自動車業界の変動リスクを分散しています。

 シェフラーは、長年にわたる精密機械技術のノウハウを強みとして、自動車の電動化という大きな変革期においても、革新的なソリューションを提供し続けている企業と言えます。

シェフラーはドイツの自動車部品と産業用機械部品の世界的なサプライヤーです。ベアリングやエンジン部品、トランスミッション部品などを製造しており、近年は電気自動車向けの電動化ソリューションにも注力しています。世界中に拠点を持ち、グローバルに事業を展開しています。

ロームのパワー半導体が採用された理由は何か

 ロームのSiC(炭化ケイ素)パワー半導体がシェフラーのEV部品に採用された主な理由は、その優れた電力変換効率小型化への貢献です。これにより、EVの性能向上に不可欠な要素が実現されます。

採用理由の詳細


1. 高い電力変換効率

 ロームのSiCパワー半導体は、従来のシリコン(Si)半導体に比べて電力変換時のエネルギー損失が極めて少ないです。

 EVでは、バッテリーからの直流電力をモーターを駆動するための交流電力に変換するインバーターが重要な役割を担っています。SiC半導体の高い効率は、この変換プロセスでの電力損失を抑え、結果としてEVの航続距離を延ばすことに貢献します。

2. 小型・軽量化の実現

 SiC半導体は、高速でのスイッチングが可能で、かつ発熱量が少ないという特徴を持っています。これにより、インバーター内部の冷却システムや受動部品を小型化・簡素化することができます。これは、車両全体の軽量化と省スペース化につながり、設計の自由度を高めます。

3. 技術的信頼性と戦略的パートナーシップ

 ロームはSiCの開発において長年の実績と高い技術力を持ち、ウエハ製造からの一貫生産体制を構築しています。これにより、高品質で安定したSiCパワー半導体の供給が可能です。

 シェフラーは、EVへの事業シフトを加速させる中で、ロームと2020年から戦略的パートナーシップを締結し、エネルギー効率の高いSiCパワー半導体の安定供給を確保してきました。今回の採用は、この長期間にわたる信頼関係と協業の成果と言えます。

 これらの理由から、シェフラーはEVインバーターの高性能化と量産化を推進するために、ロームのSiCパワー半導体を採用しました。

ロームのSiCパワー半導体は、電力変換効率が高く、エネルギー損失を大幅に削減できるためです。これにより、EVの航続距離を延ばせるだけでなく、インバーターの小型・軽量化も可能になり、シェフラーの電動化戦略に不可欠な技術でした。

EVのモーター制御のインバーターの役割は何か

 EVのモーター制御におけるインバーターの役割は、バッテリーの直流電力をモーターを動かすための交流電力に変換し、その周波数や電圧を精密に制御することです。これにより、EVの加速や減速、速度調整をスムーズに行うことができます。


インバーターの主な役割と重要性

 電力効率の向上:インバーターの変換効率が高ければ、バッテリーの電力を無駄なくモーターに供給できます。これにより、電力消費が抑えられ、航続距離の延伸に直結します。 SiCパワー半導体は、このインバーターの変換効率を飛躍的に向上させる技術として注目されています。

 直流から交流への変換(DC-AC変換)

 EVの動力源であるバッテリーは直流(DC)で電気を蓄えています。しかし、EVに搭載されているモーターの多くは交流(AC)で動きます。インバーターは、バッテリーからの直流を効率的に交流に変換する役割を担っています。

モーターの回転数・トルク制御

 インバーターは、モーターに供給する交流電力の電圧と周波数を細かく調整することで、モーターの回転数やトルク(回転力)を制御します。アクセルペダルの踏み込み量に応じて、この制御をリアルタイムで行うことで、ドライバーの意図通りの滑らかな加速や減速を実現します。

回生ブレーキの制御

 EVは、減速時や下り坂でモーターを発電機として使い、運動エネルギーを電気エネルギーに変換してバッテリーに戻す回生ブレーキの機能を持っています。この際、モーターが生成する交流電力を、バッテリーに蓄電できる直流電力に変換するのもインバーターの重要な役割です。

EVのインバーターは、バッテリーの直流電力をモーターを動かすための交流電力に変換する重要な役割を担っています。これにより、アクセル操作に応じてモーターの回転数やトルクを精密に制御し、スムーズな加速や減速を実現します。

ローム以外のパワー半導体の有力メーカーは

 ローム以外にも、パワー半導体の分野で世界的に有力なメーカーは以下のように多数存在します。特に、近年市場が急速に拡大しているSiC(炭化ケイ素)パワー半導体では、競争が激化しています。

1. インフィニオン・テクノロジーズ(Infineon Technologies)

  • 国籍: ドイツ
  • 特徴: パワー半導体市場全体で圧倒的な世界シェアを誇るトップメーカーです。自動車分野に特に強く、幅広い製品ラインナップを持っています。SiCやGaN(窒化ガリウム)といった次世代半導体の開発・生産にも積極的に投資しています。

2. ウルフスピード(Wolfspeed)

  • 国籍: アメリカ
  • 特徴: SiCパワー半導体とSiCウェハ(材料)の分野で世界をリードする企業です。SiCウェハの生産能力が高く、他社への材料供給も行っています。SiCに特化した事業戦略で、EV市場でのプレゼンスを急速に高めています。

3. STマイクロエレクトロニクス(STMicroelectronics)

  • 国籍: スイス(多国籍)
  • 特徴: 自動車や産業機器向けの半導体で高い競争力を持つ大手メーカーです。SiCパワー半導体分野でもインフィニオン、ウルフスピードと並ぶ有力企業であり、テスラをはじめとする大手EVメーカーへの採用実績も豊富です。

4. オン・セミコンダクター(onsemi)

  • 国籍: アメリカ
  • 特徴: 自動車向け、特にEV向けパワー半導体に注力しています。SiCのサプライチェーンを強化しており、車載用SiCパワー半導体市場でのシェアを拡大しています。

5. 三菱電機

  • 国籍: 日本
  • 特徴: 産業機器向けを中心に、長年にわたってパワー半導体で高い技術力と実績を誇ります。特に、新幹線などの鉄道や電力機器向けのパワーモジュールで強みを持っています。SiCにも積極的に投資し、車載用途での採用拡大を目指しています。

6. 富士電機

  • 国籍: 日本
  • 特徴: 産業分野向けのパワー半導体で高いシェアを持ち、特にIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)モジュールに強みがあります。SiCパワー半導体の開発にも力を入れています。

これらの企業は、SiCパワー半導体の供給能力拡大のために巨額の設備投資を行っており、今後もEVや再生可能エネルギー分野の成長を背景に、競争はさらに激化すると予想されます。

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