二次電子と反射電子 それぞれの特徴はなにか?使い分け方は?

この記事で分かること

  • 二次電子とは:照射された電子(一次電子)が試料内の原子と衝突し、そのエネルギーによって表面から弾き出された電子のことです。試料の微細な凹凸を立体的に観察するのに適しています。
  • 反射電子:試料内の原子核との衝突で跳ね返り、外部へ放出されたものです。原子番号が大きい(重い)物質ほど多く放出されるため、画像上の明暗から、物質の種類や組成の違いを判別できるのが大きな特徴です。
  • それぞれの使い分け:表面のデコボコを立体的に見たいなら「二次電子」、材料の混ざり具合や成分の違い(重い・軽い)を判別したいなら「反射電子」を使います。解像度は二次電子が勝りますが、反射電子は物質特定に威力を発揮します。

SEMの二次電子と反射電子

 機器分析とは、化学反応を用いる古典的な化学分析に対し、物質が持つ物理的・化学的性質を精密な機器で測定し、その物質の成分や構造を分析する方法の総称です。

 高感度で迅速な分析が可能であり、微量な成分や複雑な混合物も精度高く分析できるため、現代の科学技術分野で広く利用されています。

 今回はSEMで検出される信号である二次電子、反射電子に関する記事となります。

二次電子とは何か

 「二次電子」とは、電子銃から照射された電子(一次電子)が試料にぶつかった際、試料内の原子から弾き飛ばされて外に飛び出してきた電子のことです。

二次電子の主な特徴

  1. 試料から生み出される: 入射した電子そのものではなく、エネルギーをもらった試料側の原子が放出する「おまけ」のような電子です。
  2. 非常にエネルギーが低い: 二次電子は 50eV 以下の微弱なエネルギーしか持っていません。
  3. 最表面の情報を持つ: エネルギーが低いため、試料の深い場所で発生したものは外に出られず消えてしまいます。そのため、表面からわずか数ナノメートル(5nm 〜 10nm)という極めて浅い表面の情報だけを伝えてくれます。

なぜ「立体的」に見えるのか

 二次電子の数は、電子線が当たる面の傾きによって変わります。

  • 斜面やエッジ: 二次電子が外に飛び出しやすいため、検出される量が増えて「明るく」映ります。
  • 平坦な面: 飛び出す量が標準的なため、適度な明るさになります。

 この明るさのコントラストが、私たちの目には「光が当たっている場所と影」のように見えるため、デコボコした表面が立体的に観察できるのです。


 表面の極めて浅い部分からしか放出されないため、微細な凹凸を反映しやすく、試料の立体的な形状を知るのに最も適しています。

照射された電子(一次電子)が試料内の原子と衝突し、そのエネルギーによって表面から弾き出された電子のことです。エネルギーが低く、表面の極めて浅い情報のみを反映するため、試料の微細な凹凸を立体的に観察するのに適しています。

斜面やエッジで二次電子が飛び出しやすい理由は何か

 斜面やエッジで二次電子が多く検出される理由は、主に「電子が脱出できる面積(チャンス)が増えるから」です。これをSEMの用語でエッジ効果と呼びます。


1. 斜面:脱出地点までの距離が短くなる

 二次電子はエネルギーが非常に弱いため、試料の深い場所で発生しても表面にたどり着く前に吸収されて消えてしまいます。

  • 平坦な面: 電子ビームが垂直に入るため、発生した二次電子が外に出るには「真上」に向かうしかありません。
  • 斜面: ビームが斜めに入ると、電子が通る軌道のすぐ横に「表面」が近づきます。そのため、より深い場所で発生した電子も最短距離で外へ飛び出せるようになり、結果として検出量が増えます。

2. エッジ(角):逃げ道が複数ある

 試料の角(エッジ)の部分では、平坦な場所に比べて表面積が圧倒的に広くなります。

  • 平坦な面: 電子は「上方向」からしか脱出できません。
  • エッジ部: 前面だけでなく、側面や上面など複数の方向から電子が外へ飛び出すことができるようになります。いわば「出口がたくさんある状態」になるため、非常に多くの二次電子が放出され、画像では白く輝いて見えます。

 この「エッジ効果」があるおかげで、SEM写真は人間が肉眼でデコボコを見ているような、非常に直感的な立体像になるのです。他には、影ができる仕組みや、色の違い(コントラスト)について気になりますか?

斜面やエッジでは、電子ビームの軌道から試料表面までの距離が短くなり、電子が外へ飛び出しやすくなるためです。特にエッジ部は脱出経路が多いため放出量が急増し、画像上で白く光る「エッジ効果」が生まれます。

反射電子とは何か

 「反射電子」とは、照射された電子(一次電子)が試料内の原子核によって跳ね返され、再び表面から飛び出してきた電子のことです。

 「二次電子」が試料から弾き出された「おまけ」なのに対し、反射電子は照射した電子そのものが「Uターン」して戻ってきたイメージです。


反射電子の主な特徴

  1. エネルギーが非常に高い照射された時の勢いをほぼ保ったまま戻ってくるため、二次電子よりもはるかに強いエネルギーを持っています。
  2. 重い物質ほどよく反射する(組成コントラスト)これが最大の特徴です。原子番号が大きい(=原子核が大きく重い)物質ほど、電子を強く跳ね返します。
    • 金や鉄などの重い金属: 白く明るく映る。
    • プラスチックや炭素などの軽い物質: 黒く暗く映る。この性質を利用して、「どこにどんな種類の材料があるか」を一目で判別できます。
  3. 少し深い場所の情報を持つ勢いがあるため、表面から 100nm}程度の深さまで潜り込んでから戻ってくることができます。そのため、薄い汚れに邪魔されず、内部の組成や結晶の状態を観察するのに向いています。

照射された電子が、試料内の原子核との衝突で跳ね返り、外部へ放出されたものです。原子番号が大きい(重い)物質ほど多く放出されるため、画像上の明暗から、物質の種類や組成の違いを判別できるのが大きな特徴です。

重い物質ほどよく反射する理由は何か

 重い物質(原子番号が大きい物質)ほど反射電子が多くなる理由は、「原子核のプラスの力が強く、電子を跳ね返すパワーが大きいから」です。


1. 原子核による「急カーブ」

 電子はマイナスの電気を帯びています。一方で、原子の中心にある原子核はプラスの電気を帯びています。

 磁石のプラスとマイナスが引き合うように、照射された電子が原子核のそばを通ると、その引力によってグイッと進路を曲げられます。

2. 重い物質は「引力」が強い

  • 軽い物質(炭素など): 原子核のプラスの力が弱いため、電子は少し進路が曲がる程度で、そのまま奥へ突き抜けてしまいます。
  • 重い物質(金や鉄など): 原子核に大量のプラス(陽子)が詰まっているため、引力が非常に強力です。近づいた電子は猛烈な勢いで引き寄せられ、180度近く「急ターン」して表面へ戻ってきます。これが「反射」の正体です。

3. 反射率(信号量)の差

 この「Uターン」に成功して外に飛び出してきた電子が反射電子です。

 原子番号が大きいほどこの現象が頻繁に起こるため、検出器に届く電子の数が増え、画像では白く(明るく)映ります。これを「組成コントラスト」と呼びます。


重い物質は原子核のプラス電荷が強く、マイナスの電子を引き寄せて進路を大きく曲げる力が強力だからです。軽い物質より電子を「Uターン」させる確率が格段に高いため、放出される反射電子の量が増え、画像で明るく映ります。

二次電子と反射電子の使い分け方は

 二次電子と反射電子は、「表面の形を見たいのか」それとも「成分の違いを見たいのか」という目的によって使い分けます。

 現代のSEMでは、この2つを同時に撮影して並べて比較することが一般的です。


使い分けの基準

項目二次電子(SE)反射電子(BSE)
主な目的表面の凹凸・形状の観察物質の組成(種類)の判別
得意なことナノレベルの微細な構造を見るどこに何があるか(分布)を見る
見え方影がついた立体写真のよう重い物質は「白」、軽い物質は「黒」
解像度高い(最表面の情報のみ)低い(少し深い場所まで広がる)
チャージアップ影響を受けやすい影響を受けにくい

具体的な使い分けシーン

1. 二次電子(SE)を使うとき

  • 「壊れた金属の破断面」「プランクトンのトゲ」など、表面の細かな形状をくっきり立体的に見たい場合。
  • 最も一般的なモードで、いわゆる「電子顕微鏡写真」の多くはこの二次電子像です。

2. 反射電子(BSE)を使うとき

  • 「アルミの中に混じった鉄の粒子」を探したいとき。形が似ていても、鉄の方が原子番号が大きいため、反射電子像では鉄だけが明るく光って見えます。
  • 「コーティングの剥がれ」の確認。下地と膜の材質が違えば、色の濃淡ではっきりと区別がつきます。

表面のデコボコを立体的に見たいなら「二次電子」、材料の混ざり具合や成分の違い(重い・軽い)を判別したいなら「反射電子」を使います。解像度は二次電子が勝りますが、反射電子は物質特定に威力を発揮します。

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