積水化学工業の過去最高益 中間膜とは何か?どんな用途で利用されているのか?

この記事で分かること

  • 中間膜とは:ガラスとガラスの間に挟み込んで使う樹脂フィルムで、主に自動車のガラスの安全性、防犯性向上や騒音対策として利用されています。
  • ポリビニルブチラールが使用される理由:ガラスとの接着性が良く、透明で、衝撃吸収性があり、耐久性もある」という特徴から使用されています。

積水化学工業の過去最高益

 ​積水化学工業は、2024年度通期の営業利益が前年度比6.5%増の1,020億円に達する見通しを発表しました。​これは、同社の過去最高益を更新する水準です。

 https://www.nikkei.com/nkd/company/article/?DisplayType=1&ng=DGKKZO88365560Y5A420C2DTB000&scode=4204

 最高益の背景には、メディカル事業の堅調な成長などの同社の事業ポートフォリオの多様性と、グローバル市場での堅実な成長戦略の成果といえます。​

 同社は製品の一つである中間膜の製造でも知られており、EV普及に伴う需要拡大も見込んでいます。

中間膜とは何か

 「中間膜(ちゅうかんまく)」とは、主に自動車のガラス(合わせガラス)に使われる樹脂製の膜のことを指します。


■ 中間膜とは

  • ガラスとガラスの間に挟み込んで使う樹脂フィルムです。
  • 衝撃が加わったとき、ガラスの飛散を防ぎたり、貫通を防止したりします。
  • 代表的な素材はポリビニルブチラール(PVB)樹脂ですが、最近ではEVA樹脂イオノマー樹脂なども使われています。

■ 車用中間膜の役割

  1. 安全性向上
    → 衝突事故時に、ガラスが粉々に飛び散るのを防ぎ、乗員を守ります。
  2. 防犯性向上
    → ガラス破り(盗難)に対して強くなります。
  3. 騒音対策
    → 音を吸収する中間膜を使えば、車内が静かになります(いわゆる静粛性向上)。
  4. UVカット
    → 紫外線をカットする機能付き中間膜もあります。
  5. 熱対策
    → 赤外線を遮る中間膜で、車内温度上昇を抑える製品もあります。

■ どこに使われる?

  • フロントガラスが典型例です。
  • 最近はサイドガラスリアガラスにも採用が広がっています(特に高級車やEV車)。

中間膜とは、ガラスとガラスの間に挟み込んで使う樹脂フィルムで主に自動車のガラス安全性、防犯性向上や騒音対策として利用されています。

なぜポリビニルブチラール(PVB)が使用されるのか

 PVBが車用中間膜に広く使われる理由は、以下の示すようないくつかの特別な特性によります。


■ PVBが使われる主な理由

  1. 高い接着性
    • ガラスにしっかり密着できる。
    • そのため、ガラスとガラスを強固に一体化でき、割れてもガラス片が飛び散らない。
  2. 柔軟性と粘弾性
    • 衝撃を受けたとき、エネルギーを吸収して、破片飛散や貫通を防ぐ。
    • 柔らかすぎず、硬すぎない「ちょうどよい弾力性」が安全性能に直結している。
  3. 透明性が高い
    • 視界を邪魔しない(透明でクリアな視界を保てる)。
    • 黄色く劣化しにくく、長期間使える。
  4. 耐久性・耐候性
    • 熱や湿気、紫外線に対して比較的強い。
    • 自動車ガラスは何年も屋外にさらされるため、重要な性能。
  5. 加工しやすさ
    • ラミネート(ガラスと貼り合わせる作業)が比較的容易。
    • 量産にも適しているため、コストパフォーマンスが高い。

ガラスとの接着性が良く、透明で、衝撃吸収性があり、耐久性もある」という特徴からポリビニルブチラールが使用されます。

積水化学が中間膜で強い理由は

 積水化学が車用中間膜で強い理由は、単に「製造できる」からではありません。以下のようにいくつかの戦略的な強みがあります。


■ 積水化学が中間膜で強い理由

  1. 高機能品に特化している
    • 単なる安全性だけでなく、遮音性遮熱性UVカット性など、
      より付加価値の高い中間膜(=ハイエンド品)を得意としています。
    • たとえば「S-LEC™ Sound Acoustic Film」などは、EV時代に必須の「静粛性」を支える重要部材。
  2. グローバル展開
    • 世界各地(日本、アジア、アメリカ、ヨーロッパ)に生産・販売拠点を持っており、 自動車メーカー(OEM)のグローバル生産に対応できる。
    • 特にドイツ(欧州自動車市場)や米国にも強い拠点を持っているのが大きい。
  3. 技術開発力が高い
    • PVBの「薄膜化」「多層構造」「ナノレベルでの制御」など、
      高度な加工技術を有している。
    • 自動車のデザイン性(例:パノラマガラスルーフなど)にも対応できる柔軟な技術力を持つ。
  4. 環境対応・サステナビリティ志向
    • リサイクル材を使った中間膜の開発、カーボンニュートラルへの取り組みなども進めており、 ESG意識の高い自動車メーカーからの評価が高い。
  5. 長年の信頼と実績
    • 何十年も車用合わせガラス向けに納入しており、事故時の安全性データなども豊富。
    • 大手OEM・ガラスメーカーとの強固な関係を築いている。

高付加価値技術 × グローバル供給体制 × 信頼実績
この三つを兼ね備えているのが、積水化学の強さの本質です。

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