この記事で分かること
・銅価格はなぜ、高騰しているのか:需要の増加、供給不安、関税政策の変更などで1トンあたり10,000ドルを超える高騰を見せています。
・なぜ、需要が増加しているのか:EVや再生可能エネルギーの拡大により、電気システム全体の銅の需要が高まり、特にモーター、配線、電池、インバーター、発電機など、銅が使われる部分が増加しているため。
・関税は銅の価格にどう影響するのか:関税の動き次第で、供給が減少したり、一部の国が市場を独占するリスクがあるため、銅価格の重要な変動要因となるため。
銅価格の高騰
銅価格が1トンあたり$10,000の大台に到達したとのニュースが報じられています。この急騰は、需要の増加に加え、関税に関する憶測と供給懸念が主な要因とされています。
銅の価格はどのように推移してきたのか
銅価格は、国際商品市場において需給バランスや経済情勢、政策変更などの影響を受けて変動します。以下に、近年の銅価格の推移とその主な要因をまとめます。
銅価格の推移
- 2020年以前:銅価格は比較的安定しており、1トンあたり約6,000ドルから7,000ドルの範囲で推移していました。
- 2020年後半から2021年:新型コロナウイルスの影響で一時的に価格が下落したものの、主要国の経済活動再開やインフラ投資の拡大により、需要が急増。これにより、2021年5月には銅価格が約10,000ドルに達し、過去最高水準を記録しました。
- 2022年から2023年:一部の経済減速や供給の回復により、価格は若干下落し、1トンあたり8,000ドルから9,000ドルの範囲で推移しました。
- 2024年から2025年:再生可能エネルギーや電気自動車(EV)市場の拡大に伴い、銅の需要が再び増加。さらに、主要生産国での供給懸念や関税政策の変更により、2025年3月には再び1トンあたり10,000ドルの大台に到達しました。
価格変動の主な要因
- 需要の増減:世界的な経済成長やインフラ投資、特に中国の都市化や工業化が銅需要を押し上げています。
- 供給の制約:主要生産国での政治的不安定や労働争議、環境規制の強化などが供給を制限し、価格上昇の要因となっています。
- 関税や貿易政策:主要国間の貿易摩擦や関税の導入・変更が、銅の輸出入に影響を与え、価格変動を引き起こしています。
- 投機的要因:金融市場での投資家の動きや為替レートの変動も、銅価格に影響を及ぼします。

コロナ後1トン当たり、10,000ドルに到達しました。その後一時的に値下がりしましたが、2024から2025年にかけて需要の増加、供給不安、関税政策の変更などで再び10,000ドルを超える高騰を見せています。
銅にはどのような用途があるのか
銅はその優れた導電性・耐食性・加工性などの特性から、以下のような幅広い用途で使用されています。
1. 電気・電子機器
- 電線・ケーブル:優れた導電性を活かし、電力・通信インフラに不可欠。
- モーター・トランス:電磁コイルや変圧器の巻線に使用。
- プリント基板(PCB):電子機器の基盤材料。
2. 建築・インフラ
- 給水・ガス配管:耐食性が高く衛生的。
- 屋根材・雨どい:耐久性・美観性を兼ね備える。
- 冷暖房設備(エアコン、冷蔵庫):熱伝導性が高く効率的。
3. 輸送(自動車・航空・鉄道)
- EV(電気自動車):モーター、バッテリー接続部、充電インフラで使用量が増加。
- 鉄道の架線・電車のモーター:耐久性と導電性が求められる。
- 航空機の配線・エンジン部品:軽量化と耐熱性を活かす。
4. 産業機械・エネルギー
- 再生可能エネルギー(風力・太陽光発電):発電機・インバーター・送電に利用。
- 電池・蓄電技術:リチウムイオン電池や次世代蓄電池の材料。
- 工業用熱交換器:冷却・加熱プロセスに活用。
5. 日用品・医療分野
・装飾品・美術工芸品
・硬貨(1円以外の日本の硬貨に含有)
・抗菌素材(ドアノブ、手すり、病院設備)

銅は導電性・耐食性・加工性などの優れた特性から様々な分野で使用されています。最近ではEV化・再生可能エネルギーの拡大により、銅の需要はさらに増加傾向にあります。
なぜEV化・再生可能エネルギーの拡大により、銅の需要が増加するのか
EV化(電気自動車化)と再生可能エネルギーの拡大が銅の需要を増加させる主な理由は、銅の特性とこれらの技術の構造的な要求に関連しています。具体的には以下の点が挙げられます:
1. 電気自動車(EV)の需要
- 電気モーターとバッテリー
EVは従来のガソリン車よりも多くの銅を使用します。特に、電気モーターのコイル、バッテリーの配線、電気システム全体に銅が必要です。例えば、1台のEVは従来の内燃機関車の約3倍の銅を使用すると言われています。 - 充電インフラ
EVの普及に伴い、充電ステーションの増設も進んでいます。これらの充電施設には多くの銅線が必要で、特に高出力の充電器では多くの銅が使用されます。
2. 再生可能エネルギー
- 太陽光発電
太陽光パネルには銅が不可欠です。特に、太陽光パネルの配線やインバーターには大量の銅が使われています。太陽光発電の普及により、銅の需要が大きく増加しています。 - 風力発電
風力発電機にも銅が使用されます。特に、発電機や送電システムにおける配線や電気機器に銅が多く使われます。 - 電力の貯蔵と伝送
再生可能エネルギーの発電とその活用には高効率の電力伝送が求められます。これにより、電力網の強化が進み、銅の需要が増加します。
3. エネルギー効率と電力網の近代化
- スマートグリッドとエネルギー効率の向上
再生可能エネルギーの導入と電力網の効率化には、高品質な配線と電力システムが不可欠です。これらのシステムに銅が多く使われるため、銅需要はさらに増加します。

EVや再生可能エネルギーの拡大により、電気システム全体の銅の需要が高まり、特にモーター、配線、電池、インバーター、発電機など、銅が使われる部分が増えています。
関税はどのように銅価格に影響するのか
銅の価格には特に、主要生産国や消費国の関税政策の変更が市場に影響を及ぼします。
関税が銅市場に影響する主な仕組み
1. 主要生産国が輸出関税を導入・引き上げ
- 銅鉱石・精鉱の輸出を制限
- 例えば、インドネシアはニッケルに続き銅精鉱の輸出規制を強化し、国内製錬を促進。
- 鉱石の輸出が減ると、海外の製錬所の稼働に影響し、供給不安が生じる。
- 銅製品の輸出税引き上げ
- チリやペルーが資源ナショナリズムの一環で輸出税を強化すると、鉱山の採算が悪化し、新規開発が遅れる可能性。
2. 主要消費国が輸入関税を導入・強化
- 米中貿易摩擦の影響
- 例えば、アメリカが中国の銅製品に対して関税をかけると、中国の銅加工品輸出が減少。
- 結果的に、中国の精錬銅の供給が減少し、世界市場に影響を及ぼす。
- 中国が銅スクラップに高関税を設定
- 中国は銅スクラップの輸入制限を強化し、国内のリサイクル産業を推進。
- これにより、一次銅(精錬銅)への需要が増え、市場価格が上昇する。
3. 関税変更による市場の不確実性
- 関税の引き上げや撤廃の憶測が市場に影響
- 政府の発表や報道によって、トレーダーが先物市場で買い・売りを加速し、価格が変動。
- 例えば、「米国が中国の銅製品関税を撤廃する」との報道が出ると、中国の輸出が増え、供給が安定し価格が下落する可能性がある。
最近の関税関連の動き
- 2024年 インドネシアが銅精鉱の輸出制限を発表(製錬所建設を促すため)。
- 米中貿易摩擦で銅関連製品に追加関税の可能性が報道。
- EUが「環境関税(CBAM)」を導入予定(二酸化炭素排出の多い製錬所からの輸入に影響)。

関税の動き次第で、供給が減少したり、一部の国が市場を独占するリスクがあるため、銅価格の重要な変動要因となります。
銅の供給懸念が出る要因にはどんなものがあるのか
銅の供給懸念が出る要因は、主に以下のようなものがあります。
1. 主要生産国での政治・社会不安
- チリ・ペルーの抗議活動や政策変更
- 環境規制の強化、税制変更、労働争議により鉱山の操業が影響を受ける。
- 近年、ペルーでは鉱山労働者のストライキや先住民の抗議活動が頻発。
- アフリカ(コンゴ民主共和国・ザンビア)の政情不安
- 政府の鉱業政策変更、資源ナショナリズムの高まりで生産や輸出に影響。
2. 採掘コストの上昇
- 鉱石品位の低下
- 既存の鉱山で銅の含有率が低下し、より多くの原料を処理する必要がある。
- エネルギー価格の高騰
- 鉱山・製錬所の運営コストが増加し、採算の取れない鉱山が閉鎖のリスク。
3. 環境・規制の影響
- 環境規制の強化
- 排水処理、CO₂排出削減、森林保護などで新規プロジェクトの開発が難しくなる。
- 水不足の深刻化(特にチリ・ペルー)
- 銅の採掘・製錬には大量の水が必要で、干ばつが生産に影響。
4. 物流・輸送の問題
- 港湾・運輸ストライキ
- 南米や北米の港湾労働者のストライキが銅の輸出に影響を与える。
- 地政学リスク(紅海問題など)
- 中東の紛争や海運ルートの混乱により、銅の輸送コストが上昇。
5. 中国の動向(最大の消費国)
・中国の輸入制限・在庫調整
中国政府が銅の輸入政策を変更すると、市場全体に影響を与える。
・電力不足による精錬所の稼働停止
以前、中国ではエネルギー不足で銅精錬所の稼働が一時停止する事態も発生。

生産国の状況や最大の消費国である中国の動向、採掘コストなど複合的な要因で供給不足が起こりえます。
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