ソニーセミコンのCMOSイメージセンサー CMOSイメージセンサーとは何か?どのように光を電気に変換するのか?

この記事で分かること

  • CMOSイメージセンサーとは:光を電気信号に変えデジタル画像化する半導体素子です。低消費電力・高速読み出しが特長で、スマホ、デジカメ、車載カメラ等、現代の多くの画像デバイスに搭載されています。
  • 光の電気への変換方法:、各画素のフォトダイオードで光(光子)を吸収し、そのエネルギーを使って半導体内の電子と正孔を生成します。生成された電荷(主に電子)は、内部電界によって分離・蓄積され、その蓄積量に応じて電圧信号に変換・増幅されることで、光の情報を電気信号として取り出しています

ソニーセミコンのCMOSイメージセンサー

 ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング(以下、ソニーセミコン)は、CMOSイメージセンサーの世界トップシェアを誇り、特に長崎テクノロジーセンター(長崎TEC)は、モバイル向けCMOSイメージセンサーの最大生産拠点として、先端プロセスの開発・量産を担っています。

 https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00752371?gnr_footer=0082212

CMOSイメージセンサーとは何か

 CMOSイメージセンサー(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor Image Sensor)は、デジタルカメラ、スマートフォン、監視カメラ、車載カメラなど、現代の多くの画像入力デバイスに搭載されている半導体素子です。光を電気信号に変換し、デジタル画像として出力する役割を担っています。

仕組みの概要

 CMOSイメージセンサーは、基本的に以下の要素で構成されています。

  1. マイクロレンズ: 光を集め、効率よくフォトダイオードに導きます。
  2. カラーフィルター: 入射光を赤(R)、緑(G)、青(B)などの色に分離します。フォトダイオードは色の違いを検出できないため、カラーフィルターを通して各画素が特定の色情報を持つようにします。
  3. フォトダイオード: 光(光子)を吸収し、その光の強さに応じた電荷(電気信号)を発生させます。これが「光電変換」と呼ばれるプロセスです。
  4. 転送回路・増幅器: 各画素に個別、あるいは複数画素で共有されたCMOSトランジスタ(増幅器)が配置されており、フォトダイオードで生成された電荷を電圧信号に変換し、増幅します。

CCDイメージセンサーとの違い

 かつてはCCDイメージセンサーが主流でしたが、CMOSイメージセンサーには以下のような特徴があり、現在では多くの分野でCMOSイメージセンサーが主流となっています。

特徴CMOSイメージセンサーCCDイメージセンサー
信号読み出し各画素に増幅器があり、XYアドレス方式で個別に信号を読み出す。バケツリレー式に電荷を転送し、最終段でまとめて増幅・読み出す。
消費電力低い(低電圧駆動が可能)高い(高電圧が必要)
読み出し速度高速(個別に読み出せるため)比較的遅い(バケツリレーのため)
製造コスト既存のCMOS半導体プロセスを流用できるため、安価に製造可能。専用の製造ラインが必要なため、比較的高価。
ノイズ画素ごとに増幅器があるため、増幅器のばらつきによるノイズが発生しやすいが、技術の進歩により補正が可能。全画素に対して増幅器が一つなので、固定パターンノイズは少ない。
機能集積画像処理回路などを同一チップ上に集積しやすい(オンチップ化)。難しい。

CMOSイメージセンサーの進化(特に積層型CMOSイメージセンサー)

 CMOSイメージセンサーは、画質や感度などの課題を克服し、大幅な進化を遂げてきました。特にソニーが開発した「積層型CMOSイメージセンサー」は、その進化の象徴です。

  • 積層構造: 光を取り込む「画素部」と、電気信号をデジタル情報に変換し処理する「論理回路部」を上下に積み重ねた構造です。
  • メリット:
    • 高画質化・高機能化: 画素部と論理回路部を分離することで、それぞれの設計自由度が上がり、画質の向上や高機能な画像処理回路の搭載が可能になりました(例:高速読み出し、顔認証、AI処理など)。
    • 小型化: 複数の機能を1つのチップに集積できるため、デバイスの小型化に貢献します。
    • 低コスト化: 製造効率も向上し、コスト削減にもつながります。

主な用途

 CMOSイメージセンサーは、その高性能化と低コスト化により、非常に幅広い分野で活用されています。

  • 民生分野:
    • スマートフォン(高解像度、多眼カメラ)
    • デジタル一眼レフカメラ、ミラーレスカメラ
    • ビデオカメラ
    • VR/AR(メタバース)関連機器
    • ゲーム機器
    • ウェブカメラ、パソコン用カメラ
    • 光学マウス
  • 産業分野:
    • FA(ファクトリーオートメーション)カメラ、マシンビジョン(検査、検出、監視)
    • 監視カメラ
    • 車載カメラ(自動運転、ドライブレコーダー)
    • 医療用カメラ
    • ドローン

 CMOSイメージセンサーは、今後も自動運転、AIとの連携、IoTデバイスなど、さまざまな分野でさらなる進化と応用が期待されています。

CMOSイメージセンサーは、光を電気信号に変えデジタル画像化する半導体素子です。低消費電力・高速読み出しが特長で、スマホ、デジカメ、車載カメラ等、現代の多くの画像デバイスに搭載されています。積層型など進化を続け、高画質・多機能化を実現し、幅広い分野で活用されています。

どうやって光を電気に変換しているのか

 CMOSイメージセンサーが光を電気に変換するプロセスは、主にフォトダイオードという部分で行われます。この現象は「光電変換」と呼ばれます。

光の入射と吸収

  • CMOSイメージセンサーの各画素には、光を受け止めるためのフォトダイオードが配置されています。
  • このフォトダイオードは、シリコン(Si)などの半導体材料でできています。
  • 光(光子)がフォトダイオードに入射すると、そのエネルギーを半導体材料が吸収します。

電子-正孔対の生成(内部光電効果)

  • 半導体材料に光エネルギーが吸収されると、「内部光電効果」という現象が起こります。
  • 半導体内の電子が光エネルギーを受け取り、原子の束縛から解放されて自由に動き回れるようになります(電子)。
  • 電子が抜けた後には、まるでプラスの電荷を持った粒子のように振る舞う「正孔」(ホール)が残ります。
  • このようにして、光のエネルギーによって電子と正孔がペアで生成されます。

電荷の分離と蓄積

  • フォトダイオードは、P型半導体とN型半導体を接合したPN接合の構造を持っています。この接合部には「空乏層」と呼ばれる、電子や正孔がほとんど存在しない領域が形成されます。
  • この空乏層内には、P型側からN型側に向かう「内部電界」が発生しています。
  • 光によって生成された電子は、この内部電界に引き寄せられてN型半導体側へ、正孔はP型半導体側へとそれぞれ移動します。
  • これにより、光の強さに応じた電荷(主に電子)がフォトダイオード内に蓄積されます。光が強ければ強いほど、多くの電子が生成・蓄積されます。

電荷から電圧への変換と増幅

  • CMOSイメージセンサーの各画素には、この蓄積された電荷を読み出すための小さなトランジスタ回路(増幅器)が搭載されています。
  • 蓄積された電荷量に応じて、このトランジスタが電圧信号に変換し、増幅します。
  • 最終的に、この電圧信号がデジタルデータとして処理され、画像が生成されます

CMOSイメージセンサーは、各画素のフォトダイオードで光(光子)を吸収し、そのエネルギーを使って半導体内の電子と正孔を生成します。生成された電荷(主に電子)は、内部電界によって分離・蓄積され、その蓄積量に応じて電圧信号に変換・増幅されることで、光の情報を電気信号として取り出しています

CMOSイメージセンサーの有力メーカーは

 CMOSイメージセンサーの市場は、特定の有力メーカーが大きなシェアを占めています。特に以下の企業が主要なプレイヤーとして挙げられます。

  1. ソニーグループ(ソニーセミコンダクタソリューションズ)
    • 圧倒的な市場シェア: CMOSイメージセンサーの世界市場で圧倒的なシェアを誇り、特にモバイル向け(スマートフォン)では半数近くを占めると言われています。
    • 技術リーダー: 積層型CMOSイメージセンサーを世界で初めて量産するなど、常に最先端技術を開発し、市場を牽引しています。高画質化、高速化、AI処理機能搭載など、多岐にわたる技術革新を進めています。
    • 幅広い用途: モバイル向けだけでなく、産業用、セキュリティカメラ用、車載用、民生カメラ用など、非常に幅広い用途に対応する製品を提供しています。
    • 2023年のCMOSイメージセンサー市場において、ソニーグループは45%から53%超のシェアを獲得し、首位を維持しています。
  2. Samsung Electronics(サムスン電子)
    • ソニーに次ぐシェア: ソニーに次いで大きな市場シェアを持つのがサムスン電子です。
    • 高画素化に強み: 高画素数の製品開発に注力しており、自社のスマートフォンに搭載することで、その技術力をアピールしています。
    • 半導体製造技術: 自社で最先端の半導体製造工場を持つため、微細化技術などのノウハウをイメージセンサー開発に活かせる強みがあります。
  3. OmniVision Technologies(オムニビジョン)
    • アメリカのメーカーで、特に民生用途や車載向けなどで存在感を示しています。
  4. STMicroelectronics NV(STマイクロエレクトロニクス)
    • ヨーロッパの大手半導体メーカーで、産業用や車載用など、幅広い分野でCMOSイメージセンサーを提供しています。
  5. ON Semiconductor Corporation(オン・セミコンダクター)
    • アメリカの半導体メーカーで、特に産業用や車載用、医療用などの分野に強みを持っています。
  6. Canon Inc.(キヤノン)
    • 自社のデジタルカメラや監視カメラ向けに高性能なCMOSセンサーを開発・製造しています。
  7. GalaxyCore(ギャラクシーコア / 格科微電子)
    • 中国の半導体メーカーで、特に低価格帯のスマートフォンやタブレット向けでシェアを拡大しています。

 これらのメーカーが、CMOSイメージセンサー市場の技術革新と市場拡大をけん引しています。特にソニーとサムスン電子は、モバイル向けを中心に激しい競争を繰り広げています。

CMOSイメージセンサー市場において、ソニーグループは45%から53%超のシェアを獲得し、首位を維持しています。

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