クラレの表処理ビジネスの強化 どんな表面処理事業を行うのか?防汚・撥水のコーティングとは何か?

この記事で分かること

  • 長年の技術を活かし、フィルムやシートにコーティング・ラミネート加工を施し、防汚性、撥水性、ガスバリア性、光学特性などを付与する表面処理ビジネスを展開しています。
  • 防汚・撥水のコーティングとは:素材表面に特殊な加工を施し、汚れや水を弾く機能を持たせる技術です。水を玉状にして弾く「撥水」と、水を膜状に広げ汚れを洗い流す「親水」の2種類があります。
  • 親水性を付与する方法:主に親水性を持つシリカや酸化チタンなどを水性物質のコーティングするか、プラズマ処理などで表面に親水性の官能基を導入し、水がなじみやすい性質に変える2つの方法があります。

クラレの表処理ビジネスの強化

 クラレが、新たな成長のために表面処理ビジネスの強化方針を示しています。

 https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00760603

 表面処理ビジネスを強化し、より高い付加価値を創造することを目的としています。

どのようなな表面処理ビジネスを行うのか

 クラレは、長年培ってきた高分子・有機合成技術精密加工技術を活かし、様々な素材に新たな機能を付加する表面処理ビジネスを展開しています。 

 具体的には、フィルムやシートなどの表面にコーティングやラミネート加工を施すことで、防汚性防炎性防眩性ガスバリア性といった特定の性能を付与します。


主要な表面処理技術と応用分野

  • コーティング・ラミネート技術:
    • 防汚・撥水: 酸化チタンを含む光触媒コートやフッ素系樹脂コートにより、汚れが付着しにくい素材を開発しています。
    • 防炎: 不燃性の素材や加工技術を用いて、建築資材や産業用資材の安全性を高めています。
    • 防眩: ディスプレイやヘッドアップディスプレイ(HUD)用のフィルムに微細なパターンを施すことで、光の反射や透過をコントロールし、画面の見やすさを改善します。
    • ガスバリア: 酸素や水蒸気などを通しにくい層を形成することで、食品包装材や電子部品の性能を維持します。
  • 微細加工技術:
    • 光学フィルム: ディスプレイの輝度を高めるプリズムシートや、光を制御する拡散フィルムなど、光学特性を向上させるフィルムの加工を行います。
    • 細胞培養プレート: 微細な凹凸を施したプレートにより、細胞を一つずつ分離して培養できる技術も提供しています。

 これらの技術は、自動車半導体ディスプレイ建築資材医療など多岐にわたる分野で活用されています。 クラレは、事業統合によりこれらの技術をさらに連携させ、顧客の多様なニーズに応える高機能材料の開発を加速させています。

クラレは、長年の技術を活かし、フィルムやシートにコーティング・ラミネート加工を施し、防汚性ガスバリア性光学特性などを付与する表面処理ビジネスを展開しています。ディスプレイ、自動車、医療分野など、幅広い領域で高機能材料を提供します。

防汚・撥水のコーティングとは何か

 防汚・撥水コーティングは、素材表面に特殊な加工を施し、汚れや水を弾く機能を持たせる技術です。水を玉状にして転がり落とすことで汚れも一緒に流す「撥水」と、水が表面に広がり薄い膜となって汚れを洗い流す「親水」の2つのタイプがあります。

 クラレはこの分野で、独自の高分子技術や、環境規制物質を使用しない技術開発・企業買収を進めています。


撥水・親水コーティングの仕組み

撥水コーティング(ロータス効果)

  • 仕組み: 表面に微細な凹凸構造を形成し、水の接触面積を極力減らすことで、水滴が球体になって転がりやすくなります。これはハスの葉が水を弾く「ロータス効果」を模したものです。
  • メリット: 水を弾くため、見た目が綺麗で水切れがよい。
  • デメリット: 水玉の跡(ウォータースポット)が残りやすく、汚れが固着する場合があります。

親水コーティング(セルフクリーニング効果)

  • 仕組み: 表面を水になじみやすい性質(親水性)にし、水滴が膜のように広がるようにします。雨水などが降ると、汚れの下に水が入り込み、汚れを浮き上がらせて洗い流します。
  • メリット: 汚れが付きにくく、長期間にわたって美観を保つことができます。水シミも発生しにくいです。
  • デメリット: 水を弾かないため、一見するとコーティングの効果がわかりにくい場合があります。

クラレの取り組み

 クラレは、PFAS(ペルフルオロアルキル化合物)などの環境規制物質を使用しない撥水加工技術に注力しており、関連する米国ベンチャー企業を買収するなど、次世代技術の開発を加速させています。これにより、衣料品や自動車、建築資材など、多岐にわたる分野で、より環境に配慮した高機能材料の提供を目指しています。

防汚・撥水コーティングは、素材表面に特殊な加工を施し、汚れや水を弾く機能を持たせる技術です。水を玉状にして弾く「撥水」と、水を膜状に広げ汚れを洗い流す「親水」の2種類があり、クラレは環境に配慮した技術を開発しています。

どのように親水性にするのか

 親水性にする方法は主に2つあります。一つは親水性の物質で表面をコーティングする方法、もう一つは化学処理で表面の性質を直接変える方法です。


1. 親水性コーティング

 この方法は、表面にシリカ(二酸化ケイ素)や酸化チタンといった親水性の無機物を主成分とする薄い膜を形成します。これらの物質は、水の分子と強く結合する親水基(水酸基など)を多く持つため、表面に水を広げやすくする効果があります。特に酸化チタンは、紫外線を浴びることでさらに親水性を高める「光触媒効果」を持ち、汚れを分解するセルフクリーニング機能も発揮します。

 コーティングには、ディップコートスプレーコートといった方法があり、薄く均一な膜を形成することで、素材本来の透明性や質感を損なうことなく、親水性を付与します。

2. 表面改質(化学処理)

 この方法は、コーティング剤を塗布するのではなく、プラズマ処理や化学薬品を使って素材自体の表面を変化させるものです。

 例えば、プラズマ処理では、高エネルギーのイオン化ガスを表面に照射することで、親水性の高い官能基(水酸基、カルボキシル基など)を強制的に生成させ、表面の性質を親水性に変えます。この方法は、特にプラスチックなどの有機材料に効果的です。

 どちらの方法も、表面の水滴が球状にならず、薄い膜のように広がることで、水が汚れの下に入り込み、汚れを浮き上がらせて流れやすくする効果があります。これにより、雨や洗車だけで汚れが落ちやすくなり、水垢やシミの発生を防ぎます。

親水性にするには、主に親水性物質のコーティング表面改質の2つの方法があります。親水性を持つシリカや酸化チタンなどを塗布するか、プラズマ処理などで表面に親水性の官能基を導入し、水がなじみやすい性質に変えます。これにより、水が薄い膜のように広がり、セルフクリーニング効果を発揮します。

シリカや酸化チタンはなぜ水と結合しやすいのか

 シリカ(SiO₂)や酸化チタン(TiO₂)が水と結合しやすいのは、その表面に水酸基(-OH)が多数存在するためです。この水酸基は、水の分子(H₂O)と水素結合を形成し、強い引力を発生させます。


シリカの場合

 シリカの主成分は二酸化ケイ素(SiO₂)です。シリカ粒子の表面には、空気中の水分と反応してシラノール基(Si-OH)と呼ばれる水酸基が形成されます。このSi-OH基の酸素原子は、水分子の水素原子と水素結合で強く引きつけ合うため、シリカ表面は水を吸着しやすく、親水性が高まります。

酸化チタンの場合

 酸化チタンは、紫外線を浴びることで「光触媒効果」を発揮し、親水性が増すというユニークな特性を持ちます。

  • 紫外線照射: 酸化チタンに紫外線が当たると、内部の電子が励起され、電子(e⁻)正孔(h⁺)が生成されます。
  • 表面反応: 生成された正孔が、酸化チタン表面の**酸素原子(O)や空気中の水分子と反応します。この反応によって、表面に水酸基(-OH)が大量に形成されます。
  • 水素結合: 表面に新しくできたこの水酸基が、水分子と強力な水素結合を形成し、水を膜状に広げる超親水性を発現します。 この効果により、酸化チタンはセルフクリーニング機能を持つコーティング剤として利用されています。

シリカや酸化チタンの表面には、水酸基(-OH)が多数存在します。この水酸基が、水分子と水素結合という強い引力を形成するため、水を強く引きつけて表面に膜状に広げ、親水性を高めます。

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