カテキンとビタミンEを組み合わせた強い抗酸化物質合成 なぜ抗酸化が重要なのか? カテキンやビタミンEはなざ抗酸化作用を持つのか?

この記事で分かること

・フリーラジカルとは何か:フリーラジカル(活性酸素種)は他の分子と反応しやすい性質を持ち、過剰に生成されると細胞やDNAを損傷し、さまざまな病気の原因となります。

・カテキンはなぜ抗酸化作用を持つのか:カテキンはフリーラジカルを無害化することで、抗酸化作用を発揮しています。

・トロロックスとは何か、なぜ抗酸化作用を持つのか:トロロックスはビタミンE類似体で、フリーラジカルに電子を供与することで、ラジカルを除去し、酸化ストレスを軽減します。

カテキンとビタミンEを組み合わせた強い抗酸化物質合成

 昭和大学の研究グループは、緑茶に含まれるカテキンとビタミンE類似体であるトロロックスを結合させた新たな抗酸化物質を開発し、その高い抗酸化作用を明らかにしました。

【大学プレスリリース】カテキンとビタミンEのハイブリッド化合物を開発~酸化ストレス性疾患に対する新たな予防・治療薬として期待~ | 昭和大学
昭和大学(東京都品川区/学長:久光正)の福原潔教授(薬学研究科 医薬化学分野)の研究グループは、量子科学技術研究開発機構と共同で、緑茶由来のカテキンとビタミンE類似体トロロックスを

 トロロックスは強力な抗酸化作用を持つビタミンE類似体です。これらを結合させた新規化合物は、フリーラジカルを効率的に除去し、細胞の酸化ダメージを抑制することで、疾患の予防や治療への応用が期待されています。

フリーラジカルとは何か、どんな悪影響があるのか

 フリーラジカル(活性酸素種)は、不対電子を持つ不安定な分子で、他の分子と反応しやすい性質を持ちます。体内ではエネルギー代謝や免疫反応の副産物として自然に発生しますが、過剰に生成されると細胞やDNAを損傷し、さまざまな病気の原因となります。

フリーラジカルによる細胞損傷の仕組み

  1. 脂質の酸化(過酸化脂質の生成)
    • 細胞膜のリン脂質がフリーラジカルによって酸化されると、膜の柔軟性が失われ、細胞の機能が低下します。
    • 過酸化脂質はさらにフリーラジカルを生み出し、酸化ストレスを増大させます。
  2. DNA損傷
    • フリーラジカルがDNAの塩基や糖鎖に攻撃を加えると、突然変異や染色体異常が発生する可能性があります。
    • これが蓄積すると、がんなどの疾患を引き起こす要因になります。
  3. タンパク質の変性
    • 酵素や構造タンパク質が酸化されると、本来の機能を失い、細胞の正常な働きが阻害されます。
    • 例えば、アルツハイマー病では、酸化ストレスによるタンパク質変性が関与していると考えられています。

フリーラジカルによる疾患のリスク

  • がん: DNA損傷による突然変異の蓄積
  • 動脈硬化: LDLコレステロールの酸化による血管の炎症
  • 神経変性疾患: アルツハイマー病やパーキンソン病
  • 老化: 細胞機能の低下や皮膚のしわ・しみ

抗酸化物質による防御

 フリーラジカルの害を防ぐために、体内では抗酸化酵素(SOD、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ)や、食事から摂取する抗酸化物質(ビタミンC・E、ポリフェノール、カロテノイドなど)が働いています。

 最近の研究では、カテキンとビタミンEの組み合わせによる抗酸化効果が注目されており、より効果的なフリーラジカル除去の可能性が示されています。

フリーラジカル(活性酸素種)は他の分子と反応しやすい性質を持ち、過剰に生成されると細胞やDNAを損傷し、さまざまな病気の原因となります。

カテキンとは何か、なぜ健康に良いのか

 カテキン(Catechin)は、主に緑茶に含まれるポリフェノールの一種で、強力な抗酸化作用を持つフラボノイド系化合物です。お茶の渋みや苦味の成分としても知られています。


カテキンの種類

 カテキンにはいくつかの種類があり、それぞれ異なる生理作用を持っています。

  1. エピカテキン(EC)
  2. エピガロカテキン(EGC)
  3. エピカテキンガレート(ECG)
  4. エピガロカテキンガレート(EGCG)最も抗酸化力が強い

EGCGは特に緑茶に多く含まれ、健康効果の中心的な役割を果たします。


カテキンの健康効果

1. 強力な抗酸化作用

 カテキンは、フリーラジカルを中和し、細胞の酸化ストレスを軽減します。これにより、老化やがんのリスクを低減すると考えられています。

2. 抗がん作用

 研究では、カテキンががん細胞の増殖を抑制し、アポトーシス(細胞の自然死)を促す可能性が示唆されています。特にEGCGは、前立腺がんや乳がんなどに対して効果が期待されています。

3. 心血管疾患の予防

 カテキンはLDLコレステロールの酸化を防ぎ、動脈硬化のリスクを低減します。また、血圧を下げる作用もあるとされています。

4. 免疫力向上

抗菌・抗ウイルス作用を持ち、風邪やインフルエンザの予防に効果的とされています。

5. 血糖値の調整

カテキンは血糖値の急上昇を抑え、糖尿病のリスクを低減する可能性があります。

6. ダイエット効果

 脂肪の燃焼を促進し、代謝を活性化することで、体重管理に役立ちます。特に運動と組み合わせることで効果が高まります。


カテキンを多く含む食品

  • 緑茶(特に煎茶、玉露、抹茶)
  • カカオ(ダークチョコレート)
  • リンゴ
  • ブドウ(赤ワイン含む)

効果的な摂取方法

  • 緑茶を飲む:1日2~3杯の緑茶を飲むと十分なカテキンを摂取できます。
  • 食事と一緒に摂る:カテキンは食後に摂取すると血糖値の上昇を抑える効果が高まります。
  • ビタミンCと一緒に:カテキンの吸収率が向上します(レモンを加えた緑茶など)。

注意点

カフェインを含む:特に抹茶や煎茶にはカフェインが含まれるため、過剰摂取には注意が必要。

鉄の吸収を阻害する:貧血気味の人は食事中や直後に大量のカテキンを摂るのは避けた方がよい。

カテキンは健康維持に役立つ成分ですが、バランスの良い食生活と組み合わせることで、より効果的に活用でき

カテキンはどうやってフリーラジカルを中和するのか

 カテキンはポリフェノールの一種で、強力な抗酸化作用を持っています。その主な働きは 「フリーラジカルの無害化」 で、以下のようなメカニズムで細胞を酸化ストレスから守ります。

1. フリーラジカルと電子の受け渡し(ラジカルスカベンジャー作用)

フリーラジカル(活性酸素種:ROS)は、不対電子を持つ不安定な分子です。この電子が周囲の分子と反応し、細胞膜やDNAを損傷させます。

 カテキンの構造には、ヒドロキシ基(−OH)が多く含まれています。このヒドロキシ基が 電子を供給することでフリーラジカルを安定化し、無害化 します。

例:ヒドロキシ基による電子供与の反応

フリーラジカル (R•) + カテキン-OH→ 安定化した分子 (RH) + カテキン-O•

 カテキン自身が一時的にラジカル化しますが、この状態は安定しており、さらに他の分子と反応しにくくなります。


2. 鉄や銅イオンのキレート作用(Fenton反応の抑制)

体内の 鉄(Fe²⁺)や銅(Cu⁺) は、フリーラジカルを増やす「Fenton反応」を引き起こします。

・Fe2++H2​O2​→Fe3++OH+⋅OH(ヒドロキシルラジカル)

ヒドロキシルラジカル(•OH)は非常に攻撃的で、細胞を強く酸化させます。

カテキンは鉄や銅と結合し(キレート作用)、Fenton反応を抑制することでフリーラジカルの発生を防ぎます。


3. 酵素の活性化(抗酸化酵素の誘導)

カテキンは 体内の抗酸化酵素(SOD, カタラーゼ, グルタチオンペルオキシダーゼ)を活性化 し、長期的な抗酸化防御を強化します。

  • SOD(スーパーオキシドディスムターゼ):スーパーオキシド(O₂•⁻)を過酸化水素(H₂O₂)に変換
  • カタラーゼ:H₂O₂を水(H₂O)と酸素(O₂)に分解
  • グルタチオンペルオキシダーゼ(GPx):H₂O₂を分解し、細胞を保護

カテキンはこれらの酵素を増やし、細胞の抗酸化能力を根本的に強化 します。


4. 過酸化脂質の抑制(脂質酸化の防止)

 細胞膜のリン脂質はフリーラジカルによって酸化され、過酸化脂質を生成します。これが進行すると、細胞膜が壊れ、細胞死や炎症の原因になります。

 カテキンは 脂質ラジカル(L•)を中和し、過酸化脂質の連鎖反応を防ぐ ことで、細胞膜を保護します。

 

ポリフェノールの一種であるカテキンは、フリーラジカルの無害化によって抗酸化作用をもっています。

トロロックスとは何か

 トロロックスは ビタミンE(α-トコフェロール)の水溶性誘導体 で、強力な抗酸化作用を持つ化合物です。ビタミンEは脂溶性で細胞膜に作用するのに対し、トロロックスは 水溶性 であり、体内のさまざまな環境で抗酸化作用を発揮しやすい特徴があります。


トロロックスの化学構造

  • 分子式:C₁₄H₁₈O₄
  • 構造:ビタミンE(α-トコフェロール)と似た構造を持つが、側鎖が親水性になっており水に溶けやすい。
  • 特徴
    • 水溶性 → 生体内での応用が広がる
    • ビタミンEと同様にフリーラジカルを除去

トロロックスの抗酸化メカニズム

 トロロックスは フェノール性ヒドロキシ基(−OH)を持ち、フリーラジカルに電子を供与 することで酸化ストレスを軽減します。

  1. 電子供与によるフリーラジカルの除去
    • フリーラジカル(R•)が他の分子を酸化する前に、トロロックスが電子を与えて安定化させる。
    • 例:R•+トロロックス-OH→安定化した分子+トロロックス-O•\text{R•} + \text{トロロックス-OH} \rightarrow \text{安定化した分子} + \text{トロロックス-O•}R•+トロロックス-OH→安定化した分子+トロロックス-O•
  2. 脂質過酸化の抑制
    • 細胞膜の脂質が酸化されると、連鎖的に過酸化脂質が増えてしまう(脂質ラジカル L• の発生)。
    • トロロックスは脂質ラジカル(L•)と反応し、過酸化脂質の生成を防ぐ。
  3. 酸化ストレス関連酵素の抑制
    • トロロックスは酸化ストレスを促進する酵素(NADPHオキシダーゼなど)の活性を抑えることが報告されている。

トロロックスの主な用途

医療・製薬分野

神経変性疾患(アルツハイマー病・パーキンソン病)の予防・治療研究

がんや心血管疾患のリスク軽減

炎症性疾患の抑制

食品・化粧品

食品添加物(酸化防止剤として)

化粧品(肌の老化を防ぐ抗酸化成分)

研究用途

トロロックス等価抗酸化能(Trolox Equivalent Antioxidant Capacity, TEAC)
→ 他の抗酸化物質の効果を測定する基準として使用

トロロックスは細胞膜や水溶性環境で酸化ストレスを抑えることで、より広範囲な抗酸化効果が期待できます。

トロロックスとカテキンを組み合わせると、なぜ、抗酸化作用が強くなるのか

 トロロックス(ビタミンE誘導体)とカテキン(ポリフェノール)の組み合わせが 相乗効果を生み、単独での作用よりも強力な抗酸化作用を発揮すると考えられています。


1. 水溶性・脂溶性の補完作用

  • トロロックス水溶性 であり、細胞質や血液などの水溶性環境でフリーラジカルを除去。
  • カテキン脂溶性成分も含み、細胞膜や脂質部分でフリーラジカルを除去

つまり、この組み合わせにより、細胞全体の酸化ストレスを幅広く防ぐ ことができます。

単独ではカバーできない範囲を補完する

  • トロロックス:水溶性環境(細胞質、血液、細胞内液)で働く
  • カテキン:脂質環境(細胞膜、リポタンパク質)にも作用

2. フリーラジカルの連鎖反応を効率的に抑制

フリーラジカル(活性酸素種:ROS)は連鎖的に酸化を引き起こし、細胞をダメージから守るには 連続的な中和が必要 です。

カテキンとトロロックスを組み合わせると、

  • カテキンが 一次抗酸化剤 として最初にフリーラジカルを捕捉
  • その後、トロロックスが 二次抗酸化剤 としてさらに酸化を抑制

これにより、より持続的で強力な抗酸化効果 を発揮します。


3. トロロックスの「リサイクル効果」

 トロロックス(ビタミンE誘導体)はフリーラジカルを中和した後、一時的に酸化型(ラジカル化)します。この状態では再利用できませんが、カテキンがトロロックスの酸化型を還元して元の状態に戻す ことができます。

・トロロックス-O•+カテキン-OH→トロロックス+カテキン-O•

カテキンがトロロックスを 還元(リサイクル) することで、抗酸化作用が持続します。


4. 金属イオンのキレート作用による酸化ストレスの抑制

 体内では 鉄(Fe²⁺)や銅(Cu⁺) などの金属イオンが酸化ストレスを増大させる Fenton反応 を引き起こします。Fe2++H2O2→Fe3++OH−+⋅OH\text{Fe}^{2+} + \text{H}_2\text{O}_2 → \text{Fe}^{3+} + \text{OH}^- + \cdot \text{OH}Fe2++H2​O2​→Fe3++OH−+⋅OH

(ヒドロキシルラジカルの発生 → 強力な酸化ダメージ)

 ・ カテキンとトロロックスの相乗効果

  • カテキン は金属イオンと結合し(キレート作用)、Fenton反応を抑制
  • トロロックス はフリーラジカルを直接中和

この二重の防御機構 により、酸化ストレスの発生を強力に抑えます。


5. 生体内の抗酸化酵素の活性化

 カテキンは SOD(スーパーオキシドディスムターゼ)カタラーゼ などの抗酸化酵素を活性化する作用が報告されています。

トロロックスとの組み合わせにより、

  1. 直接フリーラジカルを除去(短期的効果)
  2. 抗酸化酵素を活性化し、長期的に抗酸化力を維持(長期的効果)

 この短期+長期の抗酸化防御 によって、酸化ストレスをより効果的に抑えることができます。

フリーラジカルの中和」「酸化ストレスの連鎖反応の防止」「抗酸化剤のリサイクル」 の3つのの相乗効果を生んでいます。

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