この記事で分かること
- 研究開発開発の内容:AI活用による材料開発の高速化・高度化や、労働人口減少に対応した研究開発基盤の構築を共創します。また、高機能ゴム技術とAI技術を組み合わせ、新たな事業や知財ビジネスの創出も目指します。
- NEC事業でのゴムの使用例:住友ゴムの高機能ゴム技術を社会インフラ(耐震・防音)、ITサービス(サーバー冷却、機器の緩衝材)、ヘルスケア(医療機器部品)などに応用し、耐久性向上や軽量化、信頼性強化を目指します。
住友ゴム工業とNECの戦略的パートナーシップ締結
住友ゴム工業とNECは、戦略的パートナーシップを締結し、世界で競争力のある研究開発基盤の構築と、両社の技術・知見を掛け合わせた新たな事業機会の探索・創出を目指しています。
https://www.srigroup.co.jp/newsrelease/2025/sri/2025_050.html
両社はこれまでも連携を深めており、2022年にはタイヤ開発における熟練設計者のノウハウをAI化する取り組みに成功しています。これは「匠設計AI」と呼ばれ、熟練者の知見を形式知化し、技能伝承と技術開発体制の強化に貢献しています。
戦略パートナーシップの内容は何か
今回の戦略的パートナーシップでは、既存の連携をさらに拡大し、以下の2つの軸で具体的な取り組みを進めていく予定です。
1. 世界で競争力のある研究開発基盤の構築
NECが持つ先端技術と世界トップレベルの研究者による専門的な知見を活用し、住友ゴムの研究開発ノウハウも取り入れながら、研究開発の抜本的な変革を目指します。
- 材料探索・解析技術の高速化・高度化: AIやマテリアルズ・インフォマティクスなどの先端ICTを活用し、効率的かつ高度な材料開発を推進します。
- 労働人口減少に対応した研究開発体制: 研究開発人材の働き方そのものを変革し、イノベーションを創出する仕組みを確立することで、持続的な競争優位性を確保します。
2. 両社技術・知見を掛け合わせた新たな事業機会の探索と創出
両社の先端技術と知的財産を融合させ、多様な産業・領域で新たなビジネスの創出を目指します。
- 住友ゴムの高機能ゴム技術のNEC事業分野への応用: 住友ゴムが培ってきた高機能ゴムに関する技術を、NECが展開する幅広い事業分野に活用することを検討します。
- NECのAI技術の住友ゴム新事業への活用: NECの先進的なAI技術を、住友ゴムの新たな事業展開に応用することを模索します。
- 新たな知財ビジネスモデルの確立: 両社の技術・知見を組み合わせることで、新しい知的財産を生み出し、それを活用したビジネスモデルの確立を目指します。
両社は、今年(2025年)の秋までに具体的なテーマを選定し実行計画を策定し、2026年には先行テーマの実証と成果の創出を目指すとしています。この協業は、グローバル競争の激化や労働人口減少といった社会課題に対応し、製造業における研究開発のあり方を抜本的に変革することを目指すものです。
どんな研究開発を共創するのか
住友ゴム工業とNECが共創する研究開発は、大きく以下の2つの軸で進められます。
1. 世界で競争力のある研究開発基盤の構築
NECの持つ先端技術と住友ゴムの研究開発ノウハウを融合させ、以下のような研究開発基盤構築を検討しています。
- 材料探索・解析技術の高速化・高度化:
- AIやマテリアルズ・インフォマティクス(MI)などの先端ICTを活用し、効率的かつ高度な材料開発を推進します。これにより、新素材の開発期間短縮や性能向上が期待されます。
- これまでのタイヤ開発における熟練設計者のノウハウをAI化する「匠設計AI」の成功をさらに発展させ、材料開発領域にもAIを適用することで、より精密な材料設計や特性予測が可能になります。
- 労働人口減少に対応した研究開発体制の構築:
- AIやデジタル技術を活用することで、研究開発における人手による作業を減らし、効率性を向上させます。
- 研究開発人材の働き方そのものを変革し、イノベーションを創出する仕組みを確立することで、持続的な競争優位性を確保します。これは、熟練者のノウハウをAIで形式知化し、若手技術者への技能伝承を加速させる取り組みも含まれます。
2. 両社技術・知見を掛け合わせた新たな事業機会の探索と創出
両社の先端技術と知的財産を融合させ、以下のような多様な産業・領域で新たなビジネスの創出を目指します。
- 住友ゴムの高機能ゴム技術のNEC事業分野への応用:
- 住友ゴムが培ってきた高機能ゴムに関する技術(例えば、高耐久性、高弾性、軽量性など)を、NECが展開する幅広い事業分野(例:社会インフラ、宇宙・防衛、ヘルスケアなど)に応用することを検討します。
- NECのAI技術の住友ゴム新事業への活用:
- NECの先進的なAI技術(生成AI「cotomi」のようなAIエージェント技術も含む)を、住友ゴムのタイヤ以外の新たな事業展開に応用することを模索します。例えば、タイヤの状態を一元管理できるアプリの開発や、モビリティサービスへのAI活用などが考えられます。
- 新たな知財ビジネスモデルの確立:
- 両社の技術・知見を組み合わせることで、新しい知的財産を生み出し、それを活用したビジネスモデルの確立を目指します。デジタル変革(DX)を推進し、知財の迅速な創出を目標とします。
両社は、これらの研究開発テーマについて、今年(2025年)の秋までに具体的なテーマを選定し実行計画を策定し、2026年には先行テーマの実証と成果の創出を目指すとしています。

住友ゴムとNECは、AI活用による材料開発の高速化・高度化や、労働人口減少に対応した研究開発基盤の構築を共創します。また、高機能ゴム技術とAI技術を組み合わせ、新たな事業や知財ビジネスの創出も目指します。
NEC事業分野での高機能ゴムの活用例は
住友ゴム工業の高機能ゴム技術は、その高い耐久性、軽量性、振動吸収性、低溶出性といった特性から、NECの多岐にわたる事業分野で幅広い活用例が考えられます。
NECの主要な事業分野は、ITサービス、社会インフラ、そして成長分野としてヘルスケア・ライフサイエンス、グリーン・カーボンニュートラル事業などがあります。これらの分野における高機能ゴムの具体的な活用例をいくつか挙げます。
1. 社会インフラ分野
NECは、交通、防災、公共システムなど、社会インフラの構築に強みを持っています。
- 耐震・制振部材: 住友ゴムが持つ高減衰ゴムなどの制振ダンパー用ゴム技術は、建物の免震・制振システムに活用されており、これをNECが手掛けるデータセンターや通信設備の耐震強化に利用できます。地震時の機器の損傷を防ぎ、サービスの安定稼働に貢献します。
- 高耐久ケーブル被覆材: 通信ケーブルや送電ケーブルなど、NECが構築する各種インフラで使用されるケーブルの被覆材に、住友ゴムの高耐久性ゴムを適用することで、外部環境からの保護性能を向上させ、長期的な安定稼働を実現します。
- 防音・防振材: 鉄道の騒音対策や工場設備からの振動抑制など、NECが関わるインフラプロジェクトにおいて、高機能ゴムの防音・防振特性を活かした材料が利用できます。
2. ITサービス分野(特にデータセンターやエッジコンピューティング)
- サーバー冷却システム: データセンターの高性能化に伴い、サーバーの発熱対策は重要です。住友ゴムの耐熱性・放熱性に優れたゴム材料が、液体冷却システムやヒートシンクの密閉材、振動吸収材などに活用される可能性があります。
- 高信頼性部品の密閉材・緩衝材: 各種IT機器の内部で、衝撃吸収や防水・防塵のための密閉材、あるいは精密部品の緩衝材として高機能ゴムが利用できます。これにより、機器の信頼性や寿命が向上します。
3. モビリティ・交通分野
NECはモビリティサービスや交通管制システムも手掛けています。
- 次世代モビリティ部材: 将来の自動運転車や電動モビリティにおいて、軽量で高耐久なゴム材料は、バッテリーケースの緩衝材、軽量化に貢献する構造部材、あるいは騒音・振動対策部品として応用される可能性があります。
- センサー内蔵型ゴム: 住友ゴムが開発している「センシングコア」のような、タイヤ自体がセンサーとなる技術は、NECのモビリティサービスと連携し、路面状況のリアルタイム監視や車両の状態管理に役立てられるかもしれません。
4. ヘルスケア・ライフサイエンス分野
- 医療機器用ゴム: 住友ゴムの低溶出性や生体適合性に優れた医療用ゴムは、NECが開発・提供する医療機器(診断装置や検査装置など)の部品として採用される可能性があります。例えば、流体制御用のバルブ、チューブ、シーリング材などです。
5. 製造業ソリューション分野
NECは製造業向けのDXソリューションを提供しています。
- 製造ラインの防振・防音材: ロボットや自動化ラインにおける振動や騒音の低減に、住友ゴムの高機能ゴムが貢献できます。これにより、作業環境の改善や機器の精度向上につながります。
- 耐摩耗性・耐薬品性部材: 製造プロセスで使用される部品で、高機能ゴムの耐摩耗性や耐薬品性が求められるものに適用される可能性があります。
これらの活用例は、住友ゴムの高機能ゴムが持つ多様な特性と、NECの幅広い事業展開が組み合わさることで生まれる、新たな価値創造の可能性を示しています。両社の戦略的パートナーシップにより、今後具体的な製品やソリューションとして実現されていくことが期待されます。

NEC事業分野では、住友ゴムの高機能ゴム技術を社会インフラ(耐震・防音)、ITサービス(サーバー冷却、機器の緩衝材)、ヘルスケア(医療機器部品)などに応用し、耐久性向上や軽量化、信頼性強化を目指します。
NECのAI技術の特徴は
NECのAI技術は、半世紀以上にわたる研究開発の実績と、社会インフラを支える企業としての信頼性を背景に、以下の特徴を持っています。
1. 「見る・聴く・話す・考える」の総合的なAI技術力
NECは、画像・映像認識、音声認識、言語・意味理解、機械学習、予測予兆検知、最適計画・制御など、AIの主要な領域において高い技術力を持っています。特に、以下のような点で強みがあります。
- 世界トップクラスの生体認証技術: 顔認証、指紋認証、虹彩認証などにおいて、米国国立標準技術研究所(NIST)のベンチマークテストで複数回No.1の評価を獲得するなど、極めて高い精度を誇ります。これは、悪条件(暗い場所、変装など)でも確実に識別できるロバスト性も強みです。
- 自動認識AI: 人を超える緻密な現状認識と瞬時・多数の同時判断により、ヒューマンエラーの解消や安全性の飛躍的な向上に貢献しています。物体指紋認証技術なども含まれます。
- 映像解析AI: 映像から複数の人物の多種多様な作業内容を高精度に認識する技術や、設備点検における画像認識などで高い実績があります。
2. 生成AI「cotomi」とLLM(大規模言語モデル)
NECは、独自の生成AI「cotomi」を開発し、以下の特徴を持っています。
- 高い日本語処理能力: 世界トップクラスの日本語性能を持つ軽量なLLMであり、日本語の複雑な言語処理に対して高い精度で応えることができます。
- 高速・軽量: 標準的なGPUサーバーで動作し、高速なレスポンスを実現します。これにより、クラウド利用が難しい秘匿性の高いデータや大容量データをオンプレミスで扱う場合にも適しています。
- 柔軟な提供形態: 専用ハードウェア、データセンター、APIサービスなど、顧客の要件に合わせた柔軟な提供が可能です。
- 業務特化型モデルの構築: 顧客の業務に特化したファインチューニングが容易であり、業種・業務に特化したモデルの構築を得意としています。これにより、企業経営や業務運営に関わる高度な専門業務の大幅な効率化が期待されます。
3. 社会課題解決への貢献と実社会実装力
NECのAI技術は、単なる要素技術の研究に留まらず、社会インフラや公共分野での長年の実績を通じて培われた「社会実装力」が大きな特徴です。
- 予測予兆検知・最適化: ビッグデータやIoTとの融合により、故障予兆、需要予測、最適な計画・制御など、現実世界での具体的な課題解決にAIを活用しています。
- 人とAIの協調: 単なる自動化・効率化だけでなく、経営判断、対人ケア、新製品開発など、ゴールが定まらない領域でAIが人に示唆を与えるなど、「知」の高次化を目指しています。
- 安全・安心への取り組み: 「デジタルトラスト推進部門」を設置し、生成AIにおけるハルシネーション対策やリスク管理にも注力しており、信頼性の高いAIシステムを提供することを目指しています。
これらの特徴により、NECのAI技術は、様々な産業や社会課題に対して、実用的かつ信頼性の高いソリューションを提供できる強みを持っています。

NECのAI技術は、「見る・聴く・話す・考える」の総合力と世界トップクラスの生体認証が特徴です。特に生成AI「cotomi」は、高い日本語処理能力と軽量・高速性で業務特化型モデル構築に強みがあり、社会課題解決への実用化を重視しています。
コメント