常温水で安定したαゲルを形成可能な界面活性剤 αゲルとは何か?なぜ、常温で形成可能になったのか?

この記事で分かること

αゲルとは:界面活性剤と水から作られる「液晶状態」の一種で、ラメラ液晶とも呼ばれる非常に薄い膜(数ナノメートル程度)が何層にも重なった構造を持っています。

加温が必要な理由:界面活性剤が水ときちんと混ざりあうために、加熱によって分子の動きを活発化させる必要があるからです。

常温でも作成できるようになった理由:界面活性剤の親水基の構造を最適化し、水との相互作用を強化し、自己組織化しやすくしたことで、常温でラメラ構造を作ることができるようになりました

常温水で安定したαゲルを形成可能な界面活性剤

 三洋化成工業は、常温水で安定したαゲルを形成できる新しい界面活性剤「アルファピュールBC12」を開発したことを明らかにしました。

常温水と混合でαゲルを形成する粉末状カチオン界面活性剤 加熱/冷却工程不要(MONOist) - Yahoo!ニュース
 三洋化成工業は2025年4月14日、東京都内とオンラインで記者会見を開き、常温の水と混合するだけで優れたコンディショニング効果を発揮する「αゲル」を形成する粉末状カチオン界面活性剤「アルファピュー

 環境への配慮と多様化するニーズに対応するため、エネルギー使用量を抑えた製造プロセスの効率化や処方の自由度向上が重要となっている中で常温で形成可能なαゲルを開発しています。

αゲルとは何か

 アルファゲル(αゲル)とは、界面活性剤と水から作られる「液晶状態」の一種で、特に水の層と界面活性剤の層が交互に並んだ規則的な構造を持つゲル状のものを指します。

  • αゲルは「ラメラ液晶」とも呼ばれる状態で、非常に薄い膜(数ナノメートル程度)が何層にも重なった構造を持っています。
  • この構造によって、水分を大量に抱え込みながらも、しっかり安定したゲルになります。
  • 肌の角質層(天然のバリア)と似た構造を持っているため、皮膚へのなじみが良いバリア機能を補強できるというメリットがあります。

アルファゲル(αゲル)とは、界面活性剤と水から作られる「液晶状態」の一種で、高い保湿とバリア機能のサポートを行うなどの特長を持っています。

なぜ従来は加温が必要だったのか

従来、αゲルを作るのに加温が必要だった理由は

→ αゲルを作る際に加温が必要であった理由は界面活性剤が水ときちんと混ざり合って「ラメラ液晶構造(αゲル)」を作るには、分子の動きを活発にする(エネルギーを与える)必要があったからです。

  • 界面活性剤の分子は、もともと「親水基(水になじむ部分)」と「疎水基(水をはじく部分)」を持っています。
  • この分子たちが、水の中でちゃんときれいに並んで、層を作っていくには、ある程度動きやすい(柔らかい)状態にならないといけない。
  • しかし、常温では分子の動きが遅く、絡まったり、うまく配列できなかったんです。
  • そこで、加温して分子にエネルギーを与えてあげると、分子が動きやすくなり、きれいに整列してαゲルを作ることが可能になります。

今回の開発品が常温でも作成できる理由

三洋化成の新しい界面活性剤は、

  • 分子設計を工夫して、
  • 常温でも分子同士が自然ときれいに並びやすい構造になっている。

だから、わざわざ温めなくても、水に溶かすだけでαゲルができるというわけです。製造コストや手間も減り、製品の安定性も上がるので、化粧品業界ではかなり注目されています。

αゲルを作る際に加温が必要であった理由は界面活性剤が水ときちんと混ざりあうために、加熱によって分子の動きを活発化させる必要があるからです。

開発されあた界面活性剤は分析設計を工夫し、加温なしでも分子が並びやすくなっています。

常温でも分子が並びやすくなった理由は何か?

 界面活性剤の親水基(=水になじむ部分)構造を最適化することで、水との相互作用を強化し、常温でも自発的に液晶(αゲル)構造を形成できるようにしたことで、常温でも分子が並びやすくなっています。

分子が並びやすくなる要因(常温での液晶形成を促す設計):

  1. 親水基の親水性を高めた
    • 従来よりも水と強く結びつきやすい親水基構造に改良。
    • これにより、水との相互作用だけで十分にラメラ構造(層構造)を作れるようになった。
  2. 分子間の配列を助ける柔軟な骨格設計
    • 分子の全体構造(特に疎水基と親水基のバランス)を見直して、
    • 常温でも自然とラメラ構造をとるような「自己組織化しやすい」設計にしている。
    • いわば「勝手に整列しちゃう分子たち」を作ったわけです。
  3. 水との混合時に適度な粘性と拡散性が出るように制御
    • 常温でも水中で適切に拡がり、分子が移動しやすくなるような物性を持たせている。
    • だから、分子たちが「出会って整列」する効率が上がった。

界面活性剤の親水基(=水になじむ部分)構造を最適化し、水との相互作用を強化したことで、自己組織化しやすく、常温でもラメラ構造を作ることができるようになりました。

なぜアルファゲルが化粧品に使われるのか

 ここもかなり重要なポイントなので、わかりやすく整理して説明します。


1. 肌にやさしい(生体親和性が高い)

  • アルファゲルの構造(ラメラ液晶構造)は、人の皮膚角質層の脂質層(細胞間脂質)ととてもよく似ています。
  • つまり、肌になじみやすく、刺激が少ない
  • 乾燥や外部刺激から肌を守る「バリア機能」をサポートできるので、敏感肌向け製品にもぴったり。

2. 高い保湿効果

  • ラメラ構造が水分をたっぷり保持してくれるため、塗布後も長時間しっとり感が続きます。
  • 水分蒸散を防ぐ効果(=TEWL低減効果)もあり、肌のうるおいを逃がさない。

3. 使用感がなめらか

  • αゲルベースの化粧品は、のびがよく、べたつきにくい独特のテクスチャーを持っています。
  • 軽いのにしっかり密着する感じが出せるので、乳液・クリーム・美容液など幅広いジャンルで使われます。

4. 高機能な製剤設計が可能

  • 乳液やクリームの安定性を高める。
  • 有効成分(ビタミン、セラミド、ナイアシンアミドなど)の効果的な浸透や安定化を助ける。
  • 日焼け止め(サンスクリーン)では、紫外線吸収剤の浸透を防ぎながらSPFを高める効果も報告されています。

5. 防腐剤フリー・界面活性剤低減処方にも貢献

  • αゲル構造が微生物の繁殖を抑えやすい性質を持つため、防腐剤を減らした処方も可能。
  • また、界面活性剤量を少なくできるので、肌への負担をさらに減らせます。

まとめると

αゲルには「肌にやさしく、高い保湿効果があり、機能性が高く、快適な使い心地が可能になるなどの特長があるため、化粧品に利用されます。

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