この記事で分かること
- シートが保温性に優れる理由:熱を反射するアルミ箔と複数の断熱材を組み合わせた多層構造の特殊な膜材です。これにより太陽光の熱を遮断することができます。
- アルミ箔が熱を反射する理由:表面が光沢を持つため、熱の伝わり方の一つである輻射熱(赤外線)を効率よく反射することができます。
- 使用されている断熱材:ポリエステル綿とポリエステルタフタなどの表面素材と組み合わされ、超音波加工によるキルティング構造にすることで、保温性を高めています。
太陽工業の雪を長期保存できるシート
太陽工業が開発した雪を長期保存できるシートは、雪を夏まで溶けにくくする特殊な多層構造のシートです。このシートで雪山を覆うことで、雪を夏の冷熱源として活用できるようになります。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC168ZR0W5A910C2000000/
この技術は、特に豪雪地帯での雪の有効活用という観点から注目されており、実用化が進められています。例えば、新潟県南魚沼市では、除雪で集められた雪をこのシートで覆って保存し、夏の冷房に利用する実証実験が行われています。
どのようなシートなのか
太陽工業が開発した雪を長期保存できるシートは、複数の膜材を組み合わせた多層構造になっています。特に重要なのは、アルミ箔シートが使用されていることです。
シートの仕組み
検索結果によると、このシートは同社の断熱膜材に関する長年の知見や膜加工技術を活かして開発されたもので、アルミ箔シートをはじめとする複数の膜材を組み合わせ、独自の加工方法で製造されています。
- アルミ箔シート: 太陽光の熱を反射する役割を担い、雪への熱伝導を防ぎます。
- 多層構造: 熱の遮断効果を高め、雪が溶けるのを大幅に抑制します。
このシートを雪山に被せることで、夏場の熱による融解を抑え、冷房などに利用するための冷熱資源として雪を効率的に保存することができます。

太陽工業の雪保存シートは、熱を反射するアルミ箔と複数の断熱材を組み合わせた多層構造の特殊な膜材です。これにより太陽光の熱を遮断し、雪山が夏まで溶けにくくすることで、冷熱源として有効活用できます。
アルミ泊が熱を反射出来る理由は
アルミ箔が熱を反射できる主な理由は、その表面の光沢と自由電子の存在にあります。熱は「輻射(熱放射)」と呼ばれる形で電磁波として伝わりますが、アルミは光沢のある表面でこの電磁波を効率よく反射する性質を持っています。
詳細な理由
アルミニウムの高い熱反射率は、以下の2つの特性によってもたらされます。
- 低い放射率: アルミ箔は、熱放射率(熱を放出する能力)が非常に低いという性質を持っています。これは、アルミが持つ自由電子が、熱を帯びて放出される電磁波(赤外線など)を吸収するのではなく、表面で反射させるためです。
- 高い純度と表面加工: 高純度のアルミ箔ほど、熱の反射率が高くなります。また、表面を滑らかに加工することで、反射面が平滑になり、より多くの熱を効率的に跳ね返すことができます。
この性質は、冬の保温や夏の遮熱に利用され、魔法瓶や住宅の断熱材など、様々な製品に応用されています。

アルミ箔は表面が光沢を持つため、熱の伝わり方の一つである輻射熱(赤外線)を効率よく反射します。これは、アルミニウムの自由電子が熱を放出する電磁波を吸収するのではなく、跳ね返す性質を持つためです。
シートの断熱材にはどんな物資が使われるのか
太陽工業の雪保存シートは、主にポリエステル綿を断熱材として使用しています。これは、軽さと柔らかさを持ちながら、内部に多くの空気の層を作り出すことで高い断熱効果を発揮するためです。
このポリエステル綿は、ポリエステルタフタなどの表面素材と組み合わされ、超音波加工によるキルティング構造にすることで、保温性をさらに高めています。
ポリエステルタフタとは何か
ポリエステルタフタとは、ポリエステル繊維で織られた、平織りの生地の一種です。特に、横方向に細かい畝(うね)があり、パリッとしたハリ感と、光沢のあるシャリシャリした手触りが特徴です。
主な特徴と用途
ポリエステルタフタは、その独特な風合いと機能性から様々な製品に使われます。
- 耐久性と軽量性: 繊維が高密度に織られているため丈夫で、シワになりにくく、非常に軽いのが特徴です。
- 撥水性: 糸が水を吸いにくく、高密度に織られていることから、撥水効果を持つものも多くあります。
- 多様な用途: これらの特徴を活かし、傘やエコバッグ、ウィンドブレーカーの表地、ダウンジャケットの裏地など、幅広い製品に使用されています。
雪保存シートの表面材として使われるのも、この軽くて丈夫な特性と、雨水を弾く撥水性が重要であるためです。

ポリエステルタフタは、ポリエステルを平織りした、パリッとしたハリ感と光沢が特徴の生地です。軽くて丈夫で、シワになりにくいため、傘やエコバッグ、衣類の裏地などに広く使われています。
キルティング構造が保温性が高い理由は
キルティング構造が高い保温性を持つ最大の理由は、空気の層を閉じ込めることができるからです。
熱は、主に「伝導」「対流」「輻射」という3つの方法で移動します。キルティング構造は、このうちの「対流」と「伝導」による熱の移動を効果的に防ぎます。
仕組み
中綿を複数の区画に縫い付けることで、以下のような保温効果を生み出します。
- 中綿の偏りを防ぐ: 縫い目があることで、中綿が片寄って薄くなる部分がなくなり、全体が均一な厚みを保ちます。これにより、保温性が低い場所ができず、体温が外に逃げるのを防ぎます。
- 「動かない空気」の層を作る: 縫い目によって仕切られた中綿の内部に、熱を伝えにくい「デッドエア(動かない空気)」の層を大量に作り出します。空気を閉じ込めることで、熱が対流によって移動するのを防ぎ、高い断熱性を発揮します。
この原理は、ダウンジャケットや布団など、様々な保温製品に応用されています。

キルティング構造が高い保温性を持つのは、縫い目によって中綿が均一に保たれ、熱を伝えにくい「動かない空気(デッドエア)」の層をたくさん閉じ込めることができるからです。これにより、熱が外に逃げるのを防ぎます。
超音波加工でキルティング構造にできる理由は何か
超音波加工でキルティング構造にできるのは、超音波の振動で素材を溶かし、熱で接着することができるからです。
仕組み
この技術は、高周波の超音波振動を発生させ、材料に摩擦熱を起こすことで、糸や針を使わずに生地を接合します。
- 熱可塑性素材の利用: 超音波加工は、熱を加えると柔らかくなるポリエステルなどの熱可塑性(ねつかそせい)繊維に特に適しています。
- 摩擦熱による溶着: 1秒間に数万回という微細な振動を素材に伝えることで、局所的に摩擦熱が発生し、繊維を溶かして溶着(溶かして接着)させます。
- 中綿の固定: この加工によって、生地と中綿が点でしっかりと接合されるため、中綿が片寄ったり吹き出したりするのを防ぎ、均一な厚みを保つことができます。
この方法で作られたキルティングは、糸のほつれがなく、耐久性にも優れています。

超音波加工は、高周波の振動でポリエステルなどの熱可塑性繊維に摩擦熱を発生させ、溶かして接着します。これにより、針や糸を使わずに、中綿を固定するキルティング構造を形成できます。
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