大陽日酸のグリーン液化窒素販売開始 グリーン液化窒素とは何か?液化窒素の用途と需要動向は?

この記事で分かること

  • グリーン液化窒素とは:製造・輸送時に発生するCO₂排出量を、再生可能エネルギー由来の電力で相殺し、実質ゼロにした液化窒素のことです。
  • 液体窒素の用途:超低温と不活性という特性から、医療分野(凍結療法、生体試料の保存)、食品分野(急速冷凍)、工業分野(金属加工、半導体製造)など、幅広い用途で冷却剤や不活性雰囲気として利用されています。
  • 液体窒素の需要動向:医療(バイオ・製薬)、食品(冷凍)、半導体(電子部品製造)などの分野で拡大しており、今後も安定的な成長が予測されます。

大陽日酸のグリーン液化窒素販売開始

 大陽日酸は、国内初の第三者認証付きCO₂フリーガス「グリーン液化窒素」を国内で販売開始しました。

 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000010.000118246.html

 この製品は、液化窒素を製造・輸送する際に発生するCO₂排出量を、再生可能エネルギー由来の電力でオフセット(相殺)することで、実質ゼロにしたものです。

グリーン液化窒素とはなにか

 「グリーン液化窒素」とは、大陽日酸株式会社が国内で初めて販売を開始した、CO₂排出量を実質ゼロにした液化窒素のことです。

 これは、液化窒素そのものの性質を変えたものではなく、製造・輸送プロセスで発生するCO₂を、別の方法で相殺(オフセット)することで、環境価値を高めた製品です。

CO₂排出量削減の仕組み

 具体的には、以下の仕組みでCO₂排出量を実質ゼロにしています。

  1. 製造プロセス: 液化窒素は、空気から酸素やアルゴンと共に分離して製造されます。このプロセスや、製品の輸送時に、CO₂が排出されます。
  2. 再生可能エネルギーの活用: 大陽日酸は、新設された風力発電所から再生可能エネルギー由来の電力を長期的に調達します。
  3. CO₂のオフセット: この再エネ電力の利用により、ガス製造・輸送時に発生するCO₂排出量を相殺(オフセット)します。

特徴

  • 第三者認証付き: この製品は、CO₂削減効果の算定方法や運用手順が、国際基準を参照した第三者認証機関によって認められています。これにより、客観的な環境価値が証明されています。
  • 総称: 「グリーン液化窒素」という名称は、液化酸素、液化窒素、液化アルゴンが同時に製造される製品群全体を指す総称として使われています。これは、空気中に最も多く含まれ、需要も多い窒素に焦点を当てたためです。

 このように、グリーン液化窒素は、製品そのものがCO₂を排出しないのではなく、サプライチェーン全体のカーボンニュートラル化を目指す取り組みの一環として生まれた製品と言えます。

グリーン液化窒素とは、製造・輸送時に発生するCO₂排出量を、再生可能エネルギー由来の電力で相殺し、実質ゼロにした液化窒素のことです。第三者認証を取得しており、客観的に環境価値が証明された製品です。

液化窒素の製造方法は

 液化窒素は、空気中に存在する窒素を利用し、「深冷空気分離法(深冷分離法)」という物理的なプロセスで製造されます。この方法は、空気の成分(窒素、酸素、アルゴンなど)がそれぞれ異なる沸点を持つことを利用して、分離・液化するものです。


製造プロセスの流れ

 液化窒素の製造は、主に以下のステップで構成されます。

空気の圧縮と精製

 まず、大気をコンプレッサーで圧縮します。次に、この圧縮された空気から、水分、二酸化炭素、炭化水素などの不純物を取り除きます。これは、これらの不純物が低温で凍結し、製造装置を詰まらせるのを防ぐために非常に重要な工程です。

冷却と液化

 精製された空気を、熱交換器を使って段階的に冷却していきます。冷却が進むと、空気は液体になります。この液化した空気は「液体空気」と呼ばれ、窒素(沸点:-196℃)、アルゴン(沸点:-186℃)、酸素(沸点:-183℃)の混合物です。

分別蒸留による分離

 液体空気を「深冷分離装置(精留塔)」と呼ばれる特殊な塔に導入します。この塔の内部は、上部ほど低温、下部ほど高温になるように温度勾配がつけられています。

  • 沸点が最も低い窒素は、塔の上部で先に気化し、高純度のガスとして集められます。
  • 沸点が次に低いアルゴンは、中間部分に集められます。
  • 沸点が最も高い酸素は、塔の下部に液体として残ります。
液化と貯蔵

 塔の上部で集められた高純度の窒素ガスを、さらに冷却して-196℃まで冷やし、液化させます。この液化された窒素が、最終的な製品である液化窒素となります。液化窒素は、蒸発を防ぐために二重構造の特殊な貯蔵タンク(コールド・エバポレーター)に保管・輸送されます。

液化窒素は、空気中に存在する窒素を原料に、深冷空気分離法という物理的な方法で製造されます。まず空気を圧縮・冷却して液体にし、その液体空気を沸点の違いを利用して分離することで、高純度の窒素を液化させます。

液化窒素の用途は何か

 液化窒素は、その極めて低い沸点(約-196℃)と、不活性(化学反応を起こしにくい)という性質から、非常に幅広い分野で利用されています。主な用途は以下の通りです。

1. 医療分野

  • 凍結手術(凍結療法): イボ、ホクロ、皮膚がんなどの不要な組織を、液化窒素で急速に凍らせて壊死・除去する治療法に用いられます。
  • 生体試料の保存: 血液、精子、卵子、DNA、細胞、組織などの生体サンプルを、劣化を防ぐために極低温で長期保存(凍結保存)する際に使用されます。
  • 医療機器の冷却: MRIなどの超伝導磁石を冷却する冷却剤として使用されます。

2. 食品分野

  • 急速冷凍: 肉、魚介類、野菜、冷凍食品などを液化窒素で急速に冷凍すると、食品内の氷の結晶が小さくなるため、解凍後も品質、食感、風味が損なわれにくいという利点があります。
  • 食品加工: 熱に弱い香辛料などを、液化窒素で凍らせて粉砕しやすくする「凍結粉砕」にも利用されます。
  • 食品の酸化防止: 液化窒素を気化させた窒素ガスを食品の包装内に充填することで、酸素を追い出し、酸化による風味や品質の劣化を防ぎます(ガス置換包装)。

3. 工業・産業分野

  • 金属加工:
    • 冷やしばめ(焼きばめ): 部品を液化窒素で冷却して収縮させ、別の部品にはめ込んだ後、常温に戻して膨張させることで、強固な結合を得る技術に利用されます。
    • 熱処理: 鋼材などの金属の強度を高める熱処理の際の雰囲気ガスとして使用されます。
  • 半導体・電子工業:
    • 不活性ガス: 半導体製造プロセスにおいて、酸化防止やパージ(洗浄)用の不活性雰囲気を作るために使用されます。
    • 冷却: コンピュータのCPUなどの冷却にも利用されることがあります。
  • 化学工業:
    • プラスチックのバリ取り: 液化窒素でプラスチック製品を冷却して脆くすることで、余分な部分(バリ)を簡単に除去できます。
    • 凍結粉砕: ゴムやプラスチックを低温で脆くし、粉砕しやすくします。

4. その他

  • 特殊効果: 映画や舞台、テーマパークなどで、白い煙(水蒸気)を発生させるための演出としても使われます。
  • 研究: 科学研究の分野で、各種機器の冷却や超低温環境の維持に不可欠な存在です。

液化窒素は、その極低温(-196℃)と不活性な性質を活かし、医療分野(凍結療法、生体試料の保存)、食品分野(急速冷凍)、工業分野(金属加工、半導体製造)など、幅広い用途で冷却剤や不活性雰囲気として利用されています。

液体窒素の需要動向は

 液体窒素の需要は、今後も継続的に成長していくと予測されています。複数の市場調査レポートによると、世界の液体窒素市場は、2024年から2030年代にかけて、年平均成長率(CAGR)4.5%~6.7%程度の堅調な成長が見込まれています。この需要を牽引する主な要因は以下の通りです。

1. 医療・ヘルスケア分野の拡大

  • バイオテクノロジーと医療技術の進歩: 生体組織、血液、細胞、遺伝子などの長期保存(凍結保存)技術の需要が高まっています。
  • 凍結療法の普及: イボや皮膚がんなどの治療法としての凍結療法の利用が増加しています。
  • 医療機器の冷却: MRIなどの超電導磁石を冷却するための液体窒素の需要が安定しています。

2. 食品・飲料分野の成長

  • 冷凍食品市場の拡大: 消費者のライフスタイルの変化に伴い、冷凍食品の需要が増加しています。液体窒素を用いた急速冷凍は、品質を高く保つことができ、食品加工業界で広く採用されています。
  • 食品の品質保持: 液体窒素を気化させた不活性ガス(窒素ガス)によるガス置換包装は、食品の鮮度を長く保つために不可欠な技術です。

3. 工業・産業分野での需要

  • 半導体・電子工業: 半導体の製造工程において、不活性雰囲気の維持や機器の冷却に液体窒素は不可欠です。IoTやAIの発展に伴い、半導体製造の需要は今後も高まると予測されます。
  • 金属加工: 「冷やしばめ」などの精密な金属加工技術や、熱処理における不活性雰囲気の提供に利用されます。
  • エネルギー産業: 石油・ガス掘削の分野での利用や、液化天然ガス(LNG)の貯蔵・輸送にも関連しています。

4. 研究開発と技術革新

  • 研究機関での利用: 超低温環境を必要とする様々な科学研究において、液体窒素は基本的な冷却剤として広く使われています。
  • 効率的な生産技術の開発: 液化技術の効率化により、エネルギー消費や環境負荷を低減する動きも市場の持続的な成長を後押ししています。

 このように、液体窒素は多くの産業分野で不可欠な存在となっており、特にアジア太平洋地域を中心に、今後も需要は拡大していくと見られています。

液体窒素の需要は、医療(バイオ・製薬)、食品(冷凍)、半導体(電子部品製造)などの分野で拡大しており、今後も安定的な成長が予測されます。特に、バイオテクノロジーや冷凍食品市場の拡大、アジア太平洋地域の工業化が需要を牽引しています。

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