この記事で分かること
- TDKの提供する技術:EV(電気自動車)とゲーミング関連のコア技術を提供します。フォーミュラEのレーシングカー「ポルシェ99Xエレクトリック」や、eスポーツのシミュレーターの性能、信頼性、効率向上に貢献します。
- TDKの目的:TDKの目的は、フォーミュラEをEV技術の実証の場とし、コア技術の性能・信頼性向上を図ることです。また、ポルシェとの協業を通じて、サステナブルな社会変革とブランド強化を目指します。
- EVに不可欠な磁性材料とは:主にモーターや電力変換装置に使用される軟磁性材料や硬磁性材料があります。
TDKのポルシェモータースポーツとの技術提携
TDKはポルシェモータースポーツと技術提携を締結しました。TDKはポルシェフォーミュラEチームやポルシェコアンダeスポーツレーシングチームの公式テクノロジーパートナーとなります。
https://www.tdk.com/ja/news_center/press/20251008_02.html
両社は「イノベーションによるパフォーマンス向上」という共通の信念に基づく技術連携を行うとしています。
TDKはどんな技術を提供するのか
TDKがポルシェモータースポーツに提供する技術は、主にEV(電気自動車)とゲーミング関連のコア技術です。
具体的には、以下の分野で技術協力を行います。
1. フォーミュラE車両への技術貢献
- 対象: ポルシェのフォーミュラE車両「ポルシェ99Xエレクトリック」およびその次世代モデル。
- 目的: 車両のパフォーマンス、信頼性、効率の向上を目指します。
- 提供技術の例:
- 電動化技術: EVに必要な磁性材料、エネルギー蓄積ソリューション(バッテリー関連技術)、センサー技術などの専門知識を提供し、次世代電動パワートレインシステムの開発を支援します。
- レースを持続可能なモビリティや次世代電動化技術の実証実験の場として活用します。
2. eスポーツへの技術貢献
- 対象: ポルシェコアンダeスポーツレーシングチーム。
- 目的: 急成長するシミュレーションおよびeスポーツの世界でパフォーマンス向上に貢献します。
- 提供技術の例:
- 高性能なゲーミング関連のコア技術を活用します。
- eスポーツチームが使用するシミュレーターの進化に貢献します。

TDKはポルシェに対し、EV(電気自動車)とゲーミング関連のコア技術を提供します。フォーミュラEのレーシングカー「ポルシェ99Xエレクトリック」や、eスポーツのシミュレーターの性能、信頼性、効率向上に貢献します。これらの技術は、未来のモビリティやデジタルイノベーションの開発にも活かされます。
TDKの技術連携の目的は何か
TDKがポルシェと提携する目的は、以下の通りです。
1. 技術の実証と開発加速
- フォーミュラEという極限の環境を「EV技術の理想的な実証の場」と捉えています。
- モータースポーツを通じてTDKのEVやゲーミング関連のコア技術(磁性材料、エネルギー蓄積ソリューション、センサーなど)を適用し、その性能・信頼性・効率の向上を目指します。
- この提携を、持続可能なモビリティやデジタルイノベーションの開発・実現を加速させるための手段として位置付けています。
2. TDKの長期ビジョン「TDK Transformation」の体現
- この提携は、TDKが掲げる長期ビジョン「TDK Transformation」に沿ったものです。
- このビジョンは、「独自の材料・プロセス・ソフトウェアを組み合わせた電子デバイスで、テクノロジーの進化と社会の変革を加速し、サステナブルな未来の実現に貢献する」というものです。
- ポルシェとの提携を通じて、TDKの技術が舞台裏で製品をより速く、より効率的に、よりスマートにすることで、社会の変革に貢献するという企業姿勢を示しています。
3. ブランドイメージの向上
eスポーツチームとの連携も行い、急成長するゲーミングの世界でも存在感を示し、パフォーマンス向上に貢献するとしています。
「イノベーションによるパフォーマンス向上」というポルシェとの共通の信念を共有することで、TDKのブランドイメージを強化します。
EVに必要な磁性材料とは何か
EV(電気自動車)において、磁性材料は主に駆動用モーターや電力変換装置(充電器、コンバーターなど)の高効率化・小型軽量化を実現するために不可欠な材料です。
磁性材料は、その特性から大きく「硬磁性材料」と「軟磁性材料」の2種類に分けられ、それぞれEVの異なる場所で重要な役割を果たしています。
1. 硬磁性材料(永久磁石)
外部から磁場を与えなくても、磁力を長時間保持し続ける材料です。
種類 | 主な用途 | 役割と求められる特性 |
ネオジム磁石(NdFeB系磁石) | 駆動用モーターのローター(回転子) | 永久磁石の中で世界最高クラスの磁力を持ち、モーターを高出力かつ小型軽量化するために最も重要な材料です。 |
フェライト磁石、サマリウムコバルト磁石など | 各種センサー(回転数、角度など)、小型モーター | モーターの補助的な部分や、その他の電装品に用いられます。 |
2. 軟磁性材料
外部からの磁場が存在する間だけ磁化し、磁場がなくなると磁化が消失する材料です。磁気の通り道(磁気回路)を作ったり、電気エネルギーと磁気エネルギーの変換効率を高めたりする役割があります。
種類 | 主な用途 | 役割と求められる特性 |
電磁鋼板(ケイ素鋼) | 駆動用モーターのステーター(固定子)の鉄心 | 磁場の変化によるエネルギーロス(鉄損)を低く抑え、モーターの高効率化に貢献します。高磁場での高磁束密度も求められます。 |
金属軟磁性粉末コア、ナノ結晶軟磁性合金、アモルファス合金など | 車載のAC/DC充電器、DC/DCコンバーター、インダクター、トランスなど | 電力変換装置は高周波で動作するため、高周波域で特に低損失であること、および高い飽和磁束密度が求められます。 |
TDKがポルシェとの提携で提供するのは、まさにこれらのEVのコア技術(磁性材料、エネルギー蓄積ソリューション、センサー技術)であり、フォーミュラEという過酷な環境で性能を極限まで高めることに貢献しています。

EVに不可欠な磁性材料は、主にモーターや電力変換装置に使用されます。
軟磁性材料(電磁鋼板など):モーターや充電器の高効率化・低損失化に貢献します。
硬磁性材料(ネオジム磁石など):モーターを高出力・小型化するために使われます。
エネルギー蓄積ソリューションとは何か
エネルギー蓄積ソリューションとは、電気エネルギーを効率的に「蓄え、制御し、利用する」ための一連の技術、製品、およびシステム全体を指します。
単に電池(蓄電媒体)を提供するだけでなく、その電池を最大限に活用するための周辺技術や管理システムを含めた総合的な解決策です。
主な構成要素とEVでの役割
エネルギー蓄積ソリューションは、主に以下の要素で構成され、EVやモータースポーツの分野では極めて重要です。
1. 蓄電媒体(バッテリーセル・材料)
エネルギーそのものを蓄える中心となる部品です。
- TDKの技術例:
- 高性能バッテリー材料: TDKは、高エネルギー密度を持つ全固体電池などの次世代バッテリー材料の開発を行っています。
- リチウムイオン電池などの蓄電媒体自体、またはその性能を高めるための素材。
2. 電力変換・制御技術(電源・充電器)
蓄えられたエネルギーを効率よく出し入れしたり、電力の質を変換・調整したりする技術です。
- TDKの技術例:
- 定電流電源・充電器: 蓄電池を安全に、かつ効率的に充電するための充電制御回路や電源モジュールを提供します。
- 逆流防止モジュール: 充電時や充放電の切り替え時に、電力が逆流するのを防ぎ、発熱を抑えるための部品です。
- 各種電子部品: コンバーターやインバーターに使用される高性能なコイル、コンデンサー、トランスなど(これらは磁性材料とも関連します)。
3. エネルギーマネジメントシステム (EMS)
蓄電池の状態を監視・管理し、エネルギーの流れを最適化するシステムです。
- EVでの応用:
- バッテリー管理システム (BMS): 車載バッテリーの充電状態(SOC)、劣化状態(SOH)、温度などをリアルタイムで監視し、安全性と寿命を最大化します。
- 充電の最適化: 電力需要が低い時間帯に充電したり(ピークシフト)、太陽光などの再生可能エネルギーと連携して充電したりすることで、運用コストを削減します。
ポルシェのフォーミュラEにおけるTDKの「エネルギー蓄積ソリューション」は、これらの技術を組み合わせることで、レースカーの高効率な電力利用と信頼性を支えています。

エネルギー蓄積ソリューションとは、電気を蓄え、制御し、効率的に活用するためのシステム全体です。EVでは、高性能バッテリー材料や、安全に充放電を管理する電力変換・制御技術が含まれます。
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