帝人の新繊維「WM TEch」 どんな特徴を持つ繊維のなのか?なぜ熱線を遮りつつ可視光を透過・拡散することができるのか?

この記事で分かること

  • WM TEchとは:ジグザグ状の特殊な扁平断面を持つポリエステル繊維です。従来の遮熱素材のように酸化チタンに頼らず、形状による光の制御で「高い遮熱性」と「明るい採光性」を両立。昼夜の目隠し効果やUVカット機能も備えます。
  • なぜ熱線を遮りつつ可視光を透過・拡散することができるのか:入射角の大きい直射日光(熱線)をジグザグの傾斜面で効率よく反射する一方、入射角の小さい光や拡散光は透過させます。透過した光は断面構造で乱反射・拡散されるため、室内を暗くせず奥まで明るさを届けられます。

帝人の新繊維「WM TEch」

 帝人が特殊なポリマー配合と断面形状により、熱線を遮りつつ可視光を透過・拡散させる新繊維をもったポリエステル繊維を開発しています。

 https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00776512

 室内を明るく保ったまま遮熱性を高め、冷房負荷低減と快適性を両立します。レースカーテン等への展開で省エネに貢献します。

ポリエステル繊維とは何か

 ポリエステル繊維は、石油由来の原料から作られる合成繊維の一種で、現在世界で最も生産量が多く、衣料品から工業用品まで幅広く使われている「合成繊維の王様」です。

 化学的にはポリエチレンテレフタレート(PET)という樹脂を細く引き伸ばしたもので、ペットボトルと同じ素材からできています。


主な3つの特徴

  • 強靭で型崩れしにくい: 繊維自体に弾力があり、シワになりにくく、洗濯を繰り返しても伸び縮みがほとんどありません。
  • 吸湿性が低く、乾きやすい: 水を吸い込みにくい性質(疎水性)を持つため、サラッとした肌触りが続き、部屋干しでもすぐに乾きます。
  • 熱や薬品に強い: 熱に強いためプリーツ加工などの形状記憶に適しており、虫食いやカビの影響も受けません。

なぜカーテンに最適なのか

 ポリエステルは耐光性(日光による劣化への強さ)が非常に高いため、長時間直射日光にさらされるカーテン素材として最も信頼されています。

 今回の帝人フロンティアの新技術も、このポリエステルの安定性を活かしつつ、分子レベルや形状に工夫を加えたものです。


石油原料のポリエチレンテレフタレートから成る合成繊維。強度が高くシワになりにくい上、速乾性や耐光性に優れるため、衣類やカーテンに最適です。ペットボトルと同素材で、リサイクル性も高い現代の主力繊維です。

どのような特徴を持つ繊維なのか

 帝人フロンティアが2026年3月に発表した新繊維「WM Tech(ウム テック)」は、これまでの遮熱繊維の常識を覆す画期的な構造を持っています。

 最大の特徴は、酸化チタン(フルダル粉)に頼らず、光の入射角をコントロールする」という物理的なアプローチにあります。

1. 独自の「ジグザグ扁平断面」構造

 従来の遮熱繊維(フルダル糸)は、繊維内部に酸化チタンなどの微粒子を大量に練り込み、光を物理的にブロックしていました。

 しかし、これは「熱」だけでなく「光」も遮ってしまうため、室内が暗くなる原因でした。

「WM Tech」は、独自の紡糸技術により繊維をジグザグ状の扁平断面に成形しています。

  • 熱線(近赤外線)をカット: 太陽光の入射角が大きくなる(斜めから入る)熱線を効率よく反射します。
  • 可視光(明るさ)を取り込む: 入射角が小さい光は透過させ、さらに繊維の形状によって室内へ拡散させるため、奥まで明るさが届きます。

2. 進化した「遮像性」と「UVカット」

 この特殊な形状は、プライバシー保護にも寄与しています。

  • 昼夜を問わない遮像性: 透過した光が複雑に拡散されるため、外から室内のシルエットが見えにくくなっています。
  • ポリマー自体の機能: 特殊な紫外線遮蔽剤をポリマーに組み込んでおり、高いUVカット性能も併せ持っています。

3. スペックと今後の展開

  • 性能: 従来の厚手の遮熱カーテンと同等の室内温度上昇抑制効果を維持しつつ、レースカーテンのような採光性を実現。
  • スケジュール: 2026年4月から原糸販売を開始し、今後、一般住宅向けカーテンやオフィス用へと順次採用が広がる見込みです。

ジグザグ状の特殊断面により、光の入射角を制御して「熱線反射」と「採光拡散」を両立した新繊維。酸化チタンに頼らず明るい室内と高い遮熱性を維持し、昼夜の目隠し効果やUVカット機能も備えた次世代素材です。

なぜ熱線を遮りつつ可視光を透過・拡散することができるのか

 光の波長による特性の違いと、繊維の物理的な「形状」を極限まで制御した技術が鍵となっており主に以下の3つのメカニズムによって透過、拡散を行っています。

1. 「波長」による選択的制御

 太陽光は、大きく分けて「可視光(明るさ)」「近赤外線(熱)」に分類されます。

  • 従来の技術: 酸化チタンなどの粒子を繊維に練り込み、光を力任せに反射・吸収させていました。しかし、この粒子は可視光まで散乱させてしまうため、生地が白濁し、室内が暗くなっていました。
  • 新技術: ポリマーの屈折率を精密に設計し、熱の元となる「近赤外線」のみを特異的に反射・吸収する素材を組み込んでいます。これにより、明るさを担う「可視光」はそのまま通し、熱だけを入り口でシャットアウトします。

2. 「入射角」を利用した反射構造

 「WM Tech」の最大の特徴であるジグザグ扁平断面は、光学的な「ブラインド」のような役割を果たします。

  • 熱線の反射: 太陽が高くなる日中、窓に対して大きな角度(斜め上)から差し込む強い熱線を、ジグザグの傾斜面が効率よく外側へ跳ね返します。
  • 可視光の透過: 一方で、空全体からの拡散光や、入射角の小さい光は、扁平な面を通り抜けて室内へと導かれます。

3. 「多重反射」による光の拡散

 光が繊維のジグザグな境界線を通過する際、プリズムのように光が細かく屈折・反射を繰り返します。

  • 拡散効果: 直進しようとする光を室内でバランスよく散らします。これにより、窓際だけが眩しくなるのを防ぎ、光を部屋の奥まで届けます。
  • 遮像(プライバシー)効果: 光が複雑に乱反射するため、外から見たときには室内の像がぼやけ、高い目隠し効果を発揮します。

波長の長い熱線を選択的に反射・吸収するポリマーと、入射角に応じて光を制御するジグザグ断面を融合。斜めからの熱線を遮りつつ、正面からの光は透過・拡散させることで、明るい室内と高い断熱性を両立しています。

ジグザグの傾斜面はなぜ反射性に優れるのか

 ジグザグ(鋸歯状)の傾斜面が反射において優れている理由は、主に「入射角の制御」「光路の折り返し」という2つの物理的なメカニズムによるものです。繊維の微細な構造において、以下の現象が起きています。

1. 入射角を「反射しやすい角度」へ強制変換

 光の反射率は、物体に対して光が差し込む角度(入射角)に大きく依存します。

  • 平らな繊維: 太陽が真上にある時間帯、光は繊維に対して垂直に近い角度で当たります。この場合、光は反射されにくく、多くがそのまま透過して室内に入ってしまいます。
  • ジグザグ傾斜面: 表面に意図的な「坂道(傾斜)」を作ることで、上から来る光に対して反射が起きやすい浅い角度(大入射角)を強制的に作り出します。これにより、平らな面では透過してしまう光も、効率よく外側へ跳ね返すことが可能になります。

2. 「再反射」によるトラップ効果

 ジグザグ構造は、一度の反射で逃げなかった光を「捕まえる」役割も果たします。

  • 多重反射: 谷の部分に入り込んだ光が、一方の斜面で反射した後、向かい側の斜面に当たります。この「反射の繰り返し」の過程で、熱線(赤外線)はポリマーに吸収されたり、最終的に外側へ追い出されたりする確率が格段に高まります。
  • 後方散乱の強化: 平面よりも光を「来た方向へ戻す」能力(再帰反射に近い特性)が高まるため、室外への排熱効率が向上します。

3. 光学的「ブラインド」機能

 この傾斜面は、ミクロな視点で見ると「固定されたブラインド」のように機能しています。

  • 選択的反射: 特定の角度(厳しい直射日光)だけを狙い撃ちして反射するように斜面の角度が設計されています。これにより、熱の原因となる強い光はカットしつつ、それ以外の角度から来る穏やかな拡散光(採光)は隙間から通すという、高度な選別が行われています。

斜面を作ることで、直射日光に対し反射が起きやすい角度を強制的に作り出しています。谷の部分での多重反射により熱線を効率的に屋外へ跳ね返し、ミクロなブラインドとして機能することで遮熱性能を極大化しています。

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