トーカロ株式会社が北九州工場に約32億円を投じて新棟を建設 トーカロはどんな会社なのか?溶射とは何か?

この記事で分かること

・トーカロはどんな会社:日本の金属表面処理加工を手掛ける企業で、特に溶射技術での高い技術をもっています。

・溶射とはなにか:材料を高温で溶融し、基材表面にコーティングを施す技術で、半導体装置向け装置部品の表面処理、航空宇宙、エネルギー、医療など多くの分野で活用されています。

・溶射はどのような半導体装置向け装置部品に利用されているのか:半導体製造装置の部品表面に耐摩耗性・耐熱性・耐腐食性を持たせるために使用されています。

トーカロ株式会社が北九州工場に約32億円を投じて新棟を建設

 金属表面処理加工を手掛けるトーカロ株式会社(本社:神戸市中央区)は、2025年3月25日に、福岡県苅田町の北九州工場に約32億円を投じて新棟を建設する計画を発表しました。

https://www.kobe-np.co.jp/news/economy/202503/0018793864.shtml?utm_source=chatgpt.com

 の新棟は、半導体製造装置メーカー向けの溶射加工能力を強化することを目的としており、2025年7月に着工し、2027年5月の操業開始を目指しています。

トーカロとはどんな会社か

 トーカロ株式会社は、日本の金属表面処理加工を手掛ける企業で、特に溶射技術に強みを持っています。

 溶射とは、金属やセラミックなどの材料を高温で溶かし、基材の表面に吹き付けて皮膜を形成する技術で、耐摩耗性や耐熱性、防錆性の向上を目的としています。

トーカロの技術は、半導体・液晶・自動車・航空機・エネルギー関連など幅広い業界で活用されています。特に、半導体製造装置向けの表面処理では重要な役割を果たしており、世界的な半導体メーカーや装置メーカーとも取引があります。

最近の動向

  • 設備投資:生産能力増強のため、北九州工場に新棟を建設(約32億円の投資)
  • 成長市場:半導体需要の増加に伴い、関連設備向けの溶射技術がさらに求められる状況

高い技術力を持ち、日本国内外で競争力のある企業の一つです。

トーカロ株式会社は、日本の金属表面処理加工を手掛ける企業で、特に溶射技術での高い技術をもっています。

容射とは何か

 溶射(ようしゃ、Thermal Spraying)とは、金属やセラミックなどの材料を高温で溶かし、基材(母材)表面に吹き付けて皮膜を形成する表面処理技術です。これにより、基材の耐摩耗性・耐熱性・耐腐食性・電気特性などを向上させることができます。


溶射の基本プロセス

  1. 溶射材料の供給(粉末・ワイヤー状の材料)
  2. 熱源で加熱・溶融(炎、プラズマ、電気アークなど)
  3. 加速・噴射(溶融粒子を基材に高速で吹き付け)
  4. 冷却・固着(基材表面に皮膜を形成)

溶射の種類

1. フレーム溶射(燃焼溶射)

  • 方式:燃料ガス(アセチレン、プロパン)+酸素で材料を溶かして吹き付け
  • 特徴:比較的低コストだが、密着性や強度は中程度

2. HVOF溶射(高速フレーム溶射)

  • 方式:燃料を燃焼させ、超音速で溶射粒子を吹き付ける
  • 特徴:密度が高く、耐摩耗性・耐衝撃性に優れる(WC-Co溶射など)
  • 用途:航空機部品、半導体製造装置部品など

3. プラズマ溶射

  • 方式:電気アークでプラズマ(10,000℃以上)を発生させ、材料を溶融・吹き付け
  • 特徴:高温材料(セラミック系)を溶射可能
  • 用途:半導体装置部品、耐熱部品(タービンブレード)、生体材料(人工関節)

4. アーク溶射

  • 方式:2本の金属ワイヤーを電気アークで溶融し、圧縮空気で吹き付ける
  • 特徴:導電性のある材料を効率的に溶射可能
  • 用途:防錆コーティング(鉄橋、船舶)

5. コールドスプレー

  • 方式:金属粉末を高速ガスで衝突させて物理的に結着(加熱なし or 低温)
  • 特徴:酸化や熱変性がほぼなく、導電性や機械的強度が高い
  • 用途:電子部品、航空宇宙部品、補修用途

溶射の用途とメリット

用途メリット
耐摩耗摩耗しやすい部品の寿命延長ポンプ部品、ロール、バルブ
耐熱高温環境での性能維持航空機エンジン、タービンブレード
耐腐食化学薬品・海水などの影響を低減配管、橋梁、船舶
電気特性絶縁・導電・シールド用途半導体製造装置、電子部品
バイオ材料生体適合性を向上人工関節、歯科インプラント

溶射は、材料を高温で溶融し、基材表面にコーティングを施す技術で、半導体装置向け装置部品の表面処理、航空宇宙、エネルギー、医療など多くの分野で活用されています。

溶射は半導体装置の部品にどのように利用されているのか

 溶射は、半導体製造装置の部品表面に耐摩耗性・耐熱性・耐腐食性を持たせるために使用されています。特に、プラズマ溶射やHVOF溶射(高速フレーム溶射)が重要な役割を果たしています。

1. 半導体製造プロセスと溶射の役割

(1) エッチング装置

  • 用途:半導体基板(ウェハー)上の微細パターンをガスやプラズマで削る工程
  • 課題:プラズマやフッ素系ガスによる部品の腐食や摩耗
  • 溶射の役割
    • アルミナ(Al₂O₃)やイットリア(Y₂O₃)のセラミック溶射で耐プラズマ性を向上
    • 長寿命化とメンテナンスコスト削減

(2) CVD/PVD装置(成膜装置)

  • 用途:ウェハー上に薄膜を成膜(化学気相成長、物理気相成長)
  • 課題:高温環境(500℃以上)や金属蒸気による部品の劣化
  • 溶射の役割
    • 耐熱性コーティング(タングステンやモリブデン溶射)で部品の耐久性を向上

(3) スパッタリング装置

  • 用途:金属膜や絶縁膜を形成するプロセス
  • 課題:ターゲット材の摩耗や粒子飛散による装置内汚染
  • 溶射の役割
    • 耐摩耗性コーティング(クロム酸化物やタングステンカーバイド)でターゲット材の耐久性を向上

(4) CMP装置(化学機械研磨)

  • 用途:ウェハー表面の平坦化
  • 課題:スラリー(研磨剤)の影響で部品が摩耗
  • 溶射の役割
    • セラミック溶射(Al₂O₃)で耐摩耗性を強化し、装置の安定稼働を実現

溶射は、半導体製造装置の部品表面に耐摩耗性・耐熱性・耐腐食性を持たせるために使用されています。装置の耐久性向上によるメンテナンスの時間削減、半導体製造環境(高温・腐食・摩耗)でも安定動作が行えるようになるなどの特長があります。

スパッタリングとの違いは何か

1. スパッタリングとは?

 スパッタリングは、真空環境下でイオンを使ってターゲット材を叩き、基板に薄膜を形成するPVD(物理気相成長)技術の一種です。

特長
  • 高精度な薄膜形成(ナノメートルレベル)
  • 均一な膜厚が可能
  • 電子部品・半導体の導電膜や絶縁膜に利用

2. 溶射とスパッタリングの違い

項目溶射スパッタリング
膜厚数十μm~mm単位数nm~数μm
密着性強固(機械的付着)高い(原子レベルで結合)
プロセス高温・大気中で処理真空環境で処理
材料金属・セラミック・合金金属・酸化物・窒化物
用途耐摩耗・耐熱・耐腐食半導体・光学・電子部品

 溶射はスパッタリングの代用にならないが、補完的に使える


3. 溶射がスパッタリングの代わりに使えるケース

・厚膜が必要な場合(μm~mm単位)→ スパッタリングでは成膜が困難

 例:半導体装置の耐プラズマコーティング(Y₂O₃溶射)

・耐摩耗・耐熱が求められる場合→ スパッタ膜は薄く、機械的負荷に弱い

 例:航空機エンジンの耐熱コーティング

・大面積・低コスト処理が必要な場合→ スパッタリングは装置が高価で処理時間が長い

 例:工業用ロールの防錆コーティング(HVOF溶射)

両技術とも機材に薄膜を形成するものですが、スパッタリングはより薄膜で高精度な制御が可能、容斜は厚膜・耐摩耗・大面積処理に適しているという違いがあります。

なぜ、九州に半導体製造企業が集まるのか

 九州に半導体製造企業が集まる理由は、以下の5つの要因が挙げられます。

1. 産業の集積と供給網の充実

九州は「シリコンアイランド」と呼ばれるほど、半導体関連の企業が集積しており、設計・製造・装置・材料・部品供給までの一貫したサプライチェーンが形成されています。
主な半導体関連企業

  • TSMC(熊本)
  • ソニーセミコンダクタ(熊本・長崎)
  • ルネサスエレクトロニクス(大分)
  • ローム(福岡・宮崎)
  • 三菱電機(熊本・福岡)
  • UMC(台湾)(熊本)

近隣に材料・装置メーカーが集まり、サプライチェーンの効率化が可能


2. TSMC進出による波及効果

台湾のTSMC(世界最大の半導体受託製造メーカー)が熊本に工場を建設(2024年稼働)したことで、さらに多くの半導体関連企業が集まりつつあります。
影響

  • サプライチェーン強化(材料・装置メーカーの進出)
  • 技術者の育成・雇用増加
  • 半導体製造のノウハウ蓄積

TSMC効果で「九州半導体クラスター」が形成されつつある


3. 電力・水資源の確保が容易

半導体製造には大量の電力と超純水が必要です。
✅ 九州には以下のメリット:

  • 豊富な水資源(阿蘇山系・筑後川流域など)
  • 安定した電力供給(九州電力の原発・再生可能エネルギー)
  • 比較的安価な電気料金(関東・関西より低コスト)

半導体製造のコスト削減が可能


4. 地震リスクの低さ

九州(特に熊本・大分・福岡)は、関東や東海に比べて地震リスクが低いとされています。
半導体工場は振動に弱いため、耐震性が重要

  • 台湾は地震が多いため、日本進出の際に九州が選ばれた

安定稼働が期待できる立地


5. 人材育成と行政支援

九州には半導体関連の教育・研究機関が充実しており、企業が技術者を確保しやすい環境があります。
主な教育機関

  • 九州大学(半導体材料・デバイス研究)
  • 熊本大学(TSMCと連携した人材育成)
  • 宮崎大学(半導体設計・製造技術者育成)

行政支援

  • 政府の補助金(最大1兆円) → TSMC誘致・国内半導体産業強化
  • 熊本県・福岡県の企業誘致策 → 工場建設の補助

人材確保&企業誘致がしやすい環境

産業集積によるサプライチェーンの充実、TSMC進出による波及効果、電力や水資源の豊富さ、

地震リスクの小ささ、人材の豊富さなどで九州に半導体起業が集積しています。

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