東京エレクトロンの半導体技術とFPDの融合対応装置 どのような融合技術で、どのような装置を開発しているのか?

この記事で分かること

  • 半導体とFPD技術の融合とは:半導体の後工程でFPD製造に用いる大型のガラス基板と微細配線技術を応用し、高性能・高密度な半導体パッケージングを効率的に実現する技術です。
  • 対応する装置:半導体の製造工程で、回路の設計図をシリコンウェハーに転写するための装置であるパターニング装置となる見込みです。
  • ガラスが使用される理由:従来のシリコン基板より大面積で生産でき、コストと生産性を改善できるからです。また、高い平坦性や優れた電気的特性を持ち、シリコンに近い熱膨張係数で、製造時の歪みを抑えられる利点もあります。

東京エレクトロンの半導体技術とFPDの融合対応装置

 東京エレクトロンは、先進的な後工程向けの新装置の開発に取り組んでいます。

 https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00758930

 この新装置は、半導体技術とFPD(フラットパネルディスプレイ)技術を融合させたもので、特に大型化が進んでいる再配線層(RDL)インターポーザー(中間基板)向けのパターニング装置となる見込みです。

 同社は、これまでも半導体製造装置とFPD製造装置の両分野でトップクラスのシェアを誇ってきました。今回の新装置は、これまでの知見や技術を組み合わせることで、今後ますます重要となる先進パッケージング分野での競争力をさらに高める狙いがあります。

半導体とFPD技術の融合とは何か

 半導体とFPD(フラットパネルディスプレイ)技術の融合とは、主に半導体の製造工程における「後工程」で、FPD製造で培われた技術を応用し、より高性能・高密度な半導体パッケージングを実現することです。

融合の背景

 従来の半導体製造は、直径300mm程度のウェハーと呼ばれる円盤状の基板上で行われていました。しかし、より多くのチップを効率よく製造するために、FPD製造で使用される大型のガラスパネル(マザーガラス)を半導体パッケージングの基板として利用する技術が注目されています。

なぜFPD技術が使われるのか?

FPD製造では、大型のガラス基板上に微細な配線を形成する技術が確立されています。この技術は、半導体の後工程、特にファンアウト・パネルレベル・パッケージング(FOPLP)において、以下の利点をもたらします。

  • 製造効率の向上: ウェハーよりも面積が広いパネルを使用することで、一度に製造できるチップの数を大幅に増やせます。
  • コスト削減: 大量生産によるコストダウンが期待できます。
  • 大型化への対応: AIチップなど、高性能化に伴い大型化する半導体チップのパッケージングに適しています。

 この技術は、半導体チップを外部の衝撃から保護するだけでなく、チップを高密度に配置し、より複雑な配線を形成することで、高性能・小型・多機能な半導体製品の製造に貢献します。

半導体とFPD(フラットパネルディスプレイ)技術の融合とは、半導体の後工程でFPD製造に用いる大型のガラス基板と微細配線技術を応用し、高性能・高密度な半導体パッケージングを効率的に実現する技術です。これにより、製造コストの削減と生産性向上が期待されます。

パターニング装置とは何か

 パターニング装置とは、半導体の製造工程で、電子回路の設計図をシリコンウェハーなどの基板に正確に転写するための装置です。

 これは、半導体製造における最も重要な工程の一つで、ナノメートル単位の極めて微細な回路を形成するために欠かせません。パターニング装置は、主に以下のステップで構成されるフォトリソグラフィという技術の中心的な役割を担っています。

パターニング装置の仕組み

  1. レジスト塗布: まず、基板の上にフォトレジストと呼ばれる感光性の液体を均一に塗布します。これは、回路のパターンを焼き付けるための感光膜です。
  2. 露光: 次に、露光装置という機械を使って、フォトマスク(回路の原画)を通してフォトレジストに光を当てます。光が当たった部分のフォトレジストが化学変化を起こします。この露光装置は、超精密なレンズや光源を用いるため、「人類史上最も精密な機械」とも呼ばれます。
  3. 現像: 光が当たった部分、または当たらなかった部分(フォトレジストの種類による)を現像液で取り除きます。これにより、基板上に回路のパターンが形成されます。
  4. エッチング: 最後に、現像によって露出した部分を薬剤やプラズマで削り取り、回路を基板に直接刻み込みます。

 これらの工程を通じて、設計された回路が基板上に正確に形成されます。東京エレクトロンが開発している新装置は、特にこのパターニング技術を応用し、より大きなガラス基板にも対応できるようにすることで、生産効率を飛躍的に向上させることを目指しています。

パターニング装置とは、半導体の製造工程で、回路の設計図をシリコンウェハーに転写するための装置です。フォトリソグラフィ技術を用いて、ナノメートル単位の微細な回路パターンを正確に形成し、半導体チップの性能を決定づける重要な役割を担っています。

ガラスが使用される理由は何か

 ガラスが半導体基板として使用される主な理由は、従来のシリコンウェハーに比べて大面積での生産効率が高いことに加えて、以下の優れた特性を持つためです。

  • 電気的特性: 優れた絶縁性を持つため、高速な信号の伝送時に電気的損失を抑えることができます。
  • 大面積: FPD製造技術を応用することで、従来の円形ウェハーよりも大きな四角いパネルでチップを製造でき、生産性の向上とコスト削減が可能です。
  • 平坦性: 非常に高い平坦性と剛性を持ち、極めて微細な配線や構造を安定して加工できます。
  • 熱特性: シリコンに近い熱膨張係数を持つため、温度変化による基板の反りや歪みが少なく、微細な回路を正確に形成できます。

ガラスが半導体基板に利用されるのは、従来のシリコン基板より大面積で生産でき、コストと生産性を改善できるからです。また、高い平坦性や優れた電気的特性を持ち、シリコンに近い熱膨張係数で、製造時の歪みを抑えられる利点もあります。

ガラスの課題は何か

 ガラスを半導体の基板として活用する技術は多くのメリットがありますが、実用化と普及にはいくつかの課題も存在します。

1. 微細加工の難易度

 ガラスは硬く脆い性質を持つため、微細な加工が困難です。特に、半導体チップの接続に不可欠な貫通ビア(TGV:Through-Glass Via)を形成する際に、ガラスにひび割れ(マイクロクラック)や欠けが発生しやすく、製造の歩留まり(良品率)を低下させる原因となります。 この加工技術の確立が、コスト削減と量産化の鍵となります。

2. 配線の微細化技術の遅れ

 現在のガラス基板を用いた配線技術は、まだシリコン基板に比べて微細化が進んでいません。シリコンインターポーザーが1μm未満の配線幅を実現しているのに対し、ガラス基板では数μm程度が限界とされており、より高密度な回路を形成するにはさらなる技術開発が必要です。

3. 製造コスト

 新しい技術であるため、製造装置やプロセスがまだ確立されておらず、コストが高いことが課題です。特に、大規模なガラスパネルに対応した製造装置への設備投資や、複雑なTGV形成プロセスの高コストが、普及の障壁となっています。

 これらの課題を克服するため、各社はレーザー加工や化学エッチングといった技術を改良し、歩留まり向上とコストダウンを目指しています。東京エレクトロンが開発中の新装置も、こうした課題を解決する役割を担っています。

ガラスを半導体基板として使う課題は、硬く脆いため微細加工が難しく、ひび割れや欠けが生じやすい点です。また、配線の微細化技術が未熟で、製造コストが高いことも普及の障壁となっています。

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