ダルトンへのアスカテクノロジーの半導体製造装置事業譲渡 どのような装置を製造しているのか?譲渡の理由は何か?

この記事で分かること

  • ダルトンの製造している装置:半導体製造の前工程に用いられるウェットプロセス装置を製造しています。具体的には、ウェハーの洗浄、エッチング(不要な部分の除去)、レジスト剥離、乾燥、メッキなどの装置を手掛けています。
  • アスカテクノロジーの製造している装置:半導体製造の前工程に不可欠なウェット洗浄装置を専門に手掛けるメーカーです。ウェハー洗浄、有機剥離、HF洗浄など、多岐にわたる洗浄プロセスに対応しています。
  • 譲渡の理由:ダルトンがアスカテクノロジーの事業を取得した理由は、半導体市場の拡大に対応するためです。アスカテクノロジーの持つ高い洗浄技術を取り込むことで、自社の半導体製造装置事業の供給能力と技術力を強化し、成長を加速させることを目的としています。

ダルトンへのアスカテクノロジーの半導体製造装置事業譲渡

 オフィス家具大手のイトーキの子会社であるダルトンが、アスカテクノロジーの半導体製造装置事業を譲り受けることを発表しました。この事業取得は、ダルトンが新たに設立した100%子会社であるADテクノロジーズ株式会社を通じて行われます。

 https://www.itoki.jp/company/news/2025/2509_dalton/

 この事業譲受は、半導体市場の拡大に伴うダルトンの事業強化を目的としています。アスカテクノロジーが持つ半導体洗浄装置などの技術力と、ダルトンが持つ経営資源を融合させることで、半導体製造装置分野での技術力と供給能力の向上を図る狙いです。

ダルトンはどのような半導体製造装置を製造しているのか

 ダルトンが主に製造しているのは、半導体製造の前工程で使用されるウェットプロセス(液体を使った処理)装置です。特に、ウェハーの洗浄やエッチング(不要な部分を薬液で除去する工程)を行う装置に強みを持っています。

主な製品の種類

  • レジスト剥離・洗浄装置:半導体の回路形成に使うレジスト(感光性樹脂)を剥がし、ウェハーを洗浄する装置。
  • エッチング(洗浄)装置:半導体回路の形成に必要な、酸やアルカリ、有機溶剤などを用いて不要な膜を溶かす装置。バッチ式(一度に複数枚処理)と枚葉式(1枚ずつ処理)の両方に対応しています。
  • FOUP洗浄装置:半導体ウェハーを運搬・保管するための容器(FOUP)を洗浄する装置。
  • リフトオフ装置:エッチングとは別の手法で、形成された不要な膜を剥がす装置。
  • 各種乾燥装置:洗浄後のウェハーを乾燥させる装置。
  • 薬液供給・回収装置:半導体製造工程で使う様々な薬液を供給・回収する装置。
  • メッキ装置:ウェハー上に金属膜などを形成するメッキ処理を行う装置。

 ダルトンは、研究開発向けの少量生産用から、量産ライン向けの装置まで、顧客の多様なニーズに合わせたカスタマイズ設計も行っています。

ダルトンは主に半導体製造の前工程に用いられるウェットプロセス装置を製造しています。具体的には、ウェハーの洗浄、エッチング(不要な部分の除去)、レジスト剥離、乾燥、メッキなどの装置を手掛けています。

アスカテクノロジーはどのような半導体製造装置事業を持っているのか

 アスカテクノロジーは、半導体製造用のウェット洗浄装置を専門とするメーカーです。ダルトンと同様に、半導体製造の前工程で使用される装置を手掛けており、特に洗浄分野で高い技術力を持っています。

具体的な製品としては、以下のようなものがあります。

  • 全自動洗浄装置:ウェハーを自動で洗浄する装置。有機剥離やHF洗浄、RCA洗浄など、多様な洗浄プロセスに対応します。
  • 各種手動ドラフト:手動でエッチングや洗浄を行うための装置。
  • 薬液供給ユニット:洗浄工程で使う薬液を供給するユニット。

 アスカテクノロジーは、研究開発向けから量産用まで、顧客のニーズに合わせた装置を設計・製造しており、少数精鋭で顧客の細かな要望に応えることに強みを持っていることがわかります。

 今回の事業譲渡は、ダルトンが持つ既存の半導体製造装置事業に、アスカテクノロジーの洗浄技術を組み込むことで、製品ラインナップと供給能力を強化する狙いがあると言えます。

アスカテクノロジーは、半導体製造の前工程に不可欠なウェット洗浄装置を専門に手掛けるメーカーです。ウェハー洗浄、有機剥離、HF洗浄など、多岐にわたる洗浄プロセスに対応し、顧客のニーズに合わせた装置を設計・製造しています。

事業譲受の理由は

 ダルトンがアスカテクノロジーの半導体製造装置事業を譲り受けた主な理由は、以下の2点に集約されます。

技術力の融合と強化

  アスカテクノロジーが持つ半導体洗浄装置の技術力と、ダルトンが持つ経営資源を融合させることで、ダルトングループ全体の技術力・供給能力を強化し、事業のさらなる成長を図ります。

 また、親会社であるイトーキの設備機器事業部門との連携により、保守・メンテナンスや製造領域での対応力を高め、長期的な事業成長を目指す方針です。

半導体事業の供給能力強化

 近年の半導体需要の拡大に伴い、ダルトン自身の半導体製造装置事業も売上や商談件数が増加していました。しかし、この需要に対応するための供給能力の強化が急務となっていたため、アスカテクノロジーの事業を取得することでその課題を解決する狙いがあります。

全自動洗浄装置とは何か

 全自動洗浄装置とは、半導体製造プロセスにおいて、人の手を介さずにウェハー(半導体の基板)を自動的に洗浄する装置のことです。

 半導体の製造工程では、回路を形成するたびに、微細なホコリやパーティクル、化学物質の残渣など、様々な不純物がウェハー表面に付着します。これらの不純物は、半導体の性能や歩留まり(製造された製品のうち良品の割合)に悪影響を及ぼすため、こまめな洗浄が不可欠です。

全自動洗浄装置は、以下のような特徴を持ちます。

  • 自動搬送: カセットに入ったウェハーを自動で装置内に取り込み、洗浄後に排出します。
  • 多段階プロセス: 複数の薬液槽や純水槽、乾燥槽などを備え、複雑な洗浄プロセスをプログラム通りに自動で実行します。
  • 高度な制御: 薬液の濃度、温度、流量、洗浄時間などを精密に制御し、常に安定した洗浄品質を維持します。
  • 多様な洗浄方式: 洗浄方式には、ウェハーをカセット単位で一括処理する「バッチ式」や、ウェハーを1枚ずつ処理する「枚葉式」などがあり、用途に応じて使い分けられます。
  • 歩留まり向上: 人手による作業をなくすことで、人為的な汚染を防ぎ、高品質な半導体チップの製造に貢献します。

 アスカテクノロジーは、この全自動洗浄装置を専門としており、ダルトンがその事業を取得することで、半導体関連事業をさらに強化する狙いがあると言えます。

全自動洗浄装置とは、半導体ウェハーを人の手を介さず自動で洗浄する装置です。微細なホコリや不純物を取り除くために、複数の薬液や純水を使い、プログラムされたプロセスを精密に実行します。これにより、半導体製造の歩留まりと品質を向上させます。

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