この記事で分かること
- マクセルの半導体部材事業の内容:精密電気鋳造(EF2)技術を核とし、半導体チップ実装用のバンプマスクや、超薄型パッケージを実現する転写リード等を製造しています。ミクロン単位の微細加工により、電子機器の小型・高密度化を支える事業です。
- バンプマスクとは:バンプマスクは、半導体チップと基板を接続する電極(バンプ)を正確に配置するための精密な穴が開いた金属製治具です。微細なはんだ材料を電極位置へ一括転写する「型紙」として、高密度な実装工程を支えています。
- 譲渡の理由:中期経営計画に基づき、全固体電池や医療用電池といった最優先の成長領域へ経営資源を集中させるためです。事業ポートフォリオを再編し、収益構造の最適化と注力事業への投資加速を図る狙いがあります。
マクセルの半導体部材事業譲渡
マクセルは精密電気鋳造(EF2)事業を会社分割し、新設会社ノアの全株式をソノコムに約9.3億円で譲渡します。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC278XD0X20C26A3000000/
ソノコムは、半導体や電子部品製造に不可欠な微細加工技術と顧客基盤を統合することで、主力であるスクリーンマスク事業とのシナジー創出と、精密加工領域の競争力強化を狙います。譲渡実行は2026年7月を予定しています。
マクセルの半導体製造向けの部材事業の内容は何か
売却対象となる事業は、マクセルが「EF2(Electro Fine Forming:精密電気鋳造)」と呼称する精密微細加工技術を用いた事業です。
主な事業内容は、半導体パッケージの製造工程で不可欠な治具(バンプマスク)や微細電子部品の製造・販売です。
事業の核心:EF2(精密電気鋳造)技術
フォトリソグラフィー技術と電解めっき技術を組み合わせ、ミクロン単位の極めて高精度な金属製品を製造する独自の工法です。金型による成形では困難な複雑・微細な形状を可能にします。
主な製品と役割
- バンプマスク(メタルマスク)半導体チップと基板を接続するための微粒子はんだ(はんだボール)を、正確な位置に搭載するためのガイドとなる治具です。PCやスマートフォン向けICのパッケージ形成に多用されます。
- 半導体パッケージ用部材超小型・薄型化が進む半導体パッケージ内部で、高密度な配線や接続を実現するための「転写リード」などのリードフレーム部材が含まれます。
- その他精密部品インクジェットプリンター用の高精度ノズルやフィルター、マイクロマシン用の微細ギアなど、半導体以外の電子・産業分野向けの機能部材も展開しています。
今回の売却により、マクセルは経営資源を全固体電池などの成長分野へ集中させ、譲受側のソノコムは自社のスクリーンマスク事業とEF2技術を融合させることで、微細加工領域での競争力を高める狙いがあります。

マクセルが売却するEF2(精密電気鋳造)事業は、フォトエッチングと電解めっきを組み合わせた微細加工技術が核です。半導体チップの実装工程に不可欠なバンプマスクや、高密度配線用の転写リード等を製造しています。
バンプマスクとは何か
バンプマスクとは、半導体チップを基板や他のチップと電気的に接続するための「バンプ(突起状の電極)」を、正確な位置に形成・配置するために使用される精密な導入口付きの治具(メタルマスク)のことです。
半導体パッケージング工程、特に「フリップチップ実装」と呼ばれる高度な組み立て技術において極めて重要な役割を果たしています。
1. 主な役割と仕組み
現代の高性能なICチップは、裏面に数千個もの微細な「はんだボール」を備えています。バンプマスクは、このはんだの粒子やペーストをチップ上の電極(パッド)に合わせて一括で転写するための「型紙」として機能します。
マスクには電極の位置に合わせた微細な貫通孔が開けられており、そこにはんだ材料を流し込むことで、寸分の狂いもなく接合部を形成します。
2. 技術的な重要性:なぜ「EF2」が必要か
半導体の微細化・多ピン化が進む中、隣り合うバンプ同士の距離(ピッチ)は狭まり続けています。従来のダイス加工や単純なエッチングでは、孔の壁面が粗くなったり、形状が歪んだりして、はんだが抜け落ちない等の不良が生じやすくなります。
ここで、マクセルが展開していた「EF2(精密電気鋳造)」技術が活かされます。光リソグラフィーと電解めっきを組み合わせることで、厚みがある金属板に対しても、滑らかな垂直壁面を持つ超微細な孔を形成できます。これにより、はんだの充填と脱落(抜け性)の精度が劇的に向上し、歩留まりの改善に直結します。
3. 製造現場での位置付け
バンプマスクは、スマートフォン向けのアプリケーションプロセッサや、AIサーバー用の高性能GPUなど、高密度な配線が要求される最先端デバイスの製造に欠かせません。単なる消耗品ではなく、半導体の性能を左右する「ナノレベルの金型」とも呼べる精密部材です。

バンプマスクは、半導体チップと基板を接続する電極(バンプ)を正確に配置するための精密な穴が開いた金属製治具です。微細なはんだ材料を電極位置へ一括転写する「型紙」として、高密度な実装工程を支えています。
半導体パッケージ用部材にはどんなものがあるのか
マクセルが今回売却を決めた半導体パッケージ用部材の主力は、独自の精密微細加工技術「EF2」を駆使した以下の製品群です。
1. 転写リード(電鋳製リードフレーム)
従来の抜き加工やエッチングによるリードフレームの代替となる部材です。
- 構造: 剛性の高いステンレス(SUS)基板の上に、めっき技術で回路パターンを形成したものです。
- 利点: 従来のフレームにある「吊りリード(パターンを保持するための繋ぎ)」が不要なため、設計の自由度が極めて高く、ICパッケージの劇的な小型化・薄型化(厚み0.3mm以下)を可能にします。
- 用途: ダイオード、電源保護IC、電圧レギュレーター、DC/DCコンバーターなどの製造に採用されています。
2. パッケージファウンドリ・再配線層(RDL)関連
チップを樹脂封止した後に微細な配線を施す、高度なパッケージング技術に関連する部材やプロセス支援も含まれます。
- 内容: はんだバンプを介さず、チップ上に直接リソグラフィ技術で多層配線を形成する技術などがあり、ウェアラブル機器や高周波デバイス向けの超薄型パッケージ(100μm厚など)の実現を支えています。
これらの部材は、いずれも「薄さ」や「小ささ」が求められる現代の電子デバイスにおいて、従来の加工限界を超えるためのキーパーツとなっています。

マクセルが展開する半導体パッケージ用部材は、精密電気鋳造(EF2)技術を用いた転写リードやバンプマスクが主力です。薄型化に貢献するリードフレームや、微細なはんだ接合を支える治具など、高密度実装に欠かせない高精度な製品群を揃えています。
なぜ譲渡するのか
マクセルが当該事業を譲渡する主な理由は、経営資源を全固体電池などの成長分野へ集中させるためです。
マクセルは現在、中期経営計画に基づき、持続的な成長に向けて事業ポートフォリオの再編を進めています。
EF2(精密電気鋳造)事業は高い技術力を持ち、2025年3月期で約21.7億円の売上を上げていますが、グループ全体の中長期的な戦略に基づき、より高い成長が見込まれる注力領域に投資をシフトする判断を下しました。
両社の狙い
| 企業名 | 主な狙い |
| マクセル | 全固体電池や医療用一次電池など、最優先の成長領域へ人財や資金を集中させる。 |
| ソノコム | 主力のスクリーンマスク事業とEF2技術を融合し、微細加工領域の競争力を強化する。 |
譲渡価格は約9.3億円とされており、ソノコムにとっては、マクセルが培ってきた高度な顧客基盤と技術力を取り込むことで、半導体・電子部品市場でのプレゼンスをさらに高める絶好の機会となります。

マクセルは中期経営計画に基づき、全固体電池や医療用電池などの成長分野へ経営資源を集中させるため、事業ポートフォリオの再編を進めています。EF2事業をソノコムへ譲渡することで、注力領域への投資加速と収益構造の最適化を図る狙いです。

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