TDKのマイクロアクチュエーター事業譲渡 アクチュエーターとは何か?譲渡の理由は?

この記事で分かること

  • アクチュエーターとは:電気信号を物理的な動きに変換する装置や部品のことです。
  • 譲渡の理由:TDKはカメラのマイクロアクチュエーターなどで、独自の設計・製造技術を活かてきましたが、競争の激化もあり、さらなる成長分野にシフトするために譲渡を決めています。
  • どのように電気を動きに変えるのか:モーターのような電磁式、ピエゾ材料を利用する圧電式。電極間の静電引力を利用する静電式、 磁界の制御をロ要する磁気式などの方法で電気を動きに変換しています。

TDKのマイクロアクチュエーター事業譲渡

TDKが、スマートフォンなどに搭載されるカメラモジュールアクチュエーターを中心としたマイクロアクチュエーター事業を、投資持株会社のQ Technology Investmentに譲渡することを発表しました。 この譲渡は2026年3月に完了予定です 。

https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00749225?gnr_footer=0081771

 同社はマイクロアクチュエーター事業において、独自の設計・製造技術を活かし、スマートフォンをはじめとする多様な製品に採用されてきました。

 しかし、近年の市場競争の激化に伴いAI、電動車、エネルギー貯蔵などの成長分野に注力し、事業ポートフォリオの最適化を進めています。

アクチュエーターとは何か

 アクチュエーター(Actuator)とは、電気信号などの入力を受けて「動作(運動)」を生み出す装置や部品のことです。

アクチュエーターの基本的な役割

 センサーが取得した情報やコンピューターからの指令を受け取り、モーターや機構を動かして「物理的な動き」に変える。

ススマートフォンでは、以下のような部分に使われています。

用途内容
カメラのピント調整レンズを前後に動かし、オートフォーカスを実現
手ブレ補正(OIS)レンズやセンサーを微調整して、撮影時の手ブレを補正
バイブレーション本体を振動させて通知などを伝える(これもアクチュエーターの一種)

アクチュエーターの種類

  • 電磁式(モーターなど)
  • 圧電式(ピエゾ素子)
  • 静電式磁気式(TDKが得意とする分野

 スマホのアクチュエーターは非常に小型ながら高精度な動作が求められるため、先端技術のかたまりです。TDKはこの分野で高い技術力を持っていましたが、さらなる収益性と成長分野への集中のため事業売却を決断しました。

アクチュエーターは電気信号を物理的な動きに変換する装置や部品のことです。

どのような仕組みで電気信号を動きに変えるのか

 アクチュエーターが電気信号を物理的な動きに変える仕組みは、使われる技術(原理)によって異なります。 以下は代表的な方式とその仕組みです

1. 電磁式アクチュエーター(モーターなど)

  • 仕組み:コイルに電流を流す → 磁場が発生する。この磁場が永久磁石と相互作用して、回転または直線運動が起きる。
  • 応用例:DCモーター、スマホのバイブレーター、カメラのレンズ移動 など。

2. 圧電式アクチュエーター(ピエゾアクチュエーター)

  • 仕組み:圧電素子(ピエゾ材料)に電圧をかける → わずかに変形する。これを利用して微細な変位(動き)を生み出す。
  • 特徴:ナノメートル単位の精密動作が可能。応答が非常に速い。応用例:カメラの手ブレ補正、マイクロポンプ、精密位置制御機構。

3. 静電式アクチュエーター

  • 仕組み:電極に電圧をかける → 電極間に静電引力が発生。それによって可動部分が引き寄せられる。
  • 特徴:非常に小型化可能(MEMS技術と相性良し)消費電力が小さい。
  • 応用例:小型スピーカー、光学ミラー、マイクロシャッター。

4. 磁気式アクチュエーター(TDKが得意な方式)

  • 仕組み:磁石とコイル、または磁気材料を組み合わせた構造で、磁界を制御してレンズなどを精密に移動させる。
  • 特徴:高精度かつ強力な動きが可能。カメラのオートフォーカスやOIS(手ブレ補正)に最適。

補足:MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)スマホではMEMS技術(微小電気機械システム)を使って、数ミリ以下の微小なアクチュエーターを製造しています。これにより、カメラやセンサー機構がスマホに組み込めるようになっています。—必要に応じて、特定の方式のアニメーションや図解も作成できます。ご希望があればどうぞ!

アクチュエーターが電気信号を物理的な動きに変える仕組みには、モーターのような電磁式、ピエゾ材料を利用する圧電式。電極間の静電引力を利用する静電式、 磁界の制御をロ要する磁気式などがあります。

ピエゾ材料とはどんな物質なのか

 ピエゾ材料(圧電材料)とは、電圧を加えると変形(伸び縮み)し、逆に力を加えると電圧を発生する特性をもつ材料のことです。この性質を「圧電効果(piezoelectric effect)」と呼びます。

ピエゾ材料の主な特徴

  • 双方向性:電気 → 変形(アクチュエーター)力 → 電気(センサー・発電)
  • 変位が非常に小さい(ナノ~ミクロン)が、高精度。
  • 応答速度が速く、振動や音波の発生にも使える。

主なピエゾ材料の種類

分類材料例特徴
セラミック系PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)代表的な人工ピエゾ材料。高性能。
BaTiO₃(チタン酸バリウム)PZTより性能は劣るが環境に優しい。
単結晶系Quartz(水晶)安定性が高く、時計やセンサーに使われる。
高分子系PVDF(ポリフッ化ビニリデン)柔軟でフィルム化可能。ウェアラブルなどに。

なぜ「PZT」が主流なのか?

  • 高い圧電定数 → 小さい電圧で大きく動く大量生産が可能成形しやすく、安定した性能※ただし「鉛(Pb)」を含むため、環境規制(RoHSなど)で鉛フリー材料の開発も進んでいます。
  • 利用例スマホのカメラ:レンズの微細な移動(AF、OIS)インクジェットプリンタ:インクの噴射超音波センサー:医療・距離計測発電素子:振動や歩行から電力回収(エナジーハーベスト)

ピエゾ材料とは、電圧を加えると変形したり、力を加えると電圧が発生する材料のことです。変形によって、電気を動きに変換しています。

なぜ電圧で形が変わるのか

 ピエゾ材料が「なぜ電圧で形が変わるのか」というのは、結晶構造と電気双極子(+と−の偏り)の性質に由来します。

■ 原理:電界が「電気双極子」を動かすから

 ピエゾ材料の中では、イオン(+と−)が少しずれた構造になっており、この偏りによって「電気双極子」が生まれます。

1. 常に偏った構造(=自発分極)

 ピエゾ材料の結晶(例:PZTなど)では、+のイオンと−のイオンが中心から少しズレています。この偏りが「自発分極」を生みます。=分子全体が電気的に「片寄って」いる。

2. 電圧をかける → 電気双極子が回転 or 変形

 外から電界(電圧)をかけると、電気双極子が向きを変えたり、位置を少し移動させたりします。すると結晶構造全体もわずかに変形(伸びたり縮んだり)します。

■ 具体的にはこんな現象

現象結果
電界がかかる原子の位置が微妙にずれて、体積が増減する(変形)
電圧を外す原子は元の位置に戻る(弾性体のように元に戻る)

なぜ特殊なのか

 ほとんどの材料では、電圧をかけても原子レベルの位置は変わらりません。ピエゾ材料では、もともと非対称な構造(非中心対称)になっているため、わずかな電界でも構造が動きます。

ピエゾ材料の中では、イオン(+と−)が少しずれた構造になっており、電圧がかかると移動が起き、それによって全体もわずかに変形ます。

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