この記事で分かること
- TSMC熊本第二工場での製造予定品:すでに建設・稼働が予定されている第1工場(主に12nm、16nm、22nm、28nmノードのチップを製造予定)よりも高性能な半導体となる6nmの半導体の製造を予定しています。
- 6nmの半導体の用途:高速処理と低消費電力を両立し、先端技術の進化に不可欠可能であり、主に自動運転や人工知能(AI)向けの高性能コンピューティング(HPC)、5G通信インフラ、ハイエンドスマートフォンなどに使われます。
- 6nmの半導体製造に必要な技術:回路を極限まで微細化するEUV(極端紫外線)リソグラフィ技術が不可欠です。これに加えて、原子レベルの制御が可能な成膜・エッチング技術も重要となります。
TSMCの熊本第2工場
TSMCの熊本第2工場では、6ナノメートル(nm)の回路線幅の先端半導体を製造する計画です。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOJC1465D0U5A011C2000000/
これは、すでに建設・稼働が予定されている第1工場(主に12nm、16nm、22nm、28nmノードのチップを製造予定)よりも高性能な半導体となります。6nmの半導体は、主に自動運転や人工知能(AI)、通信機器など幅広い分野での活用が期待されています。
6ナノ半導体は何に使われるのか
6ナノメートル(nm)の半導体は、その高い性能と電力効率から、主に以下のような高性能で電力消費を抑える必要のある分野で使われます。
TSMCの熊本第2工場での計画にもあるように、主要な用途は以下の通りです。
- 人工知能(AI)
- AI処理を担うチップ(AIアクセラレータなど)
- サーバーやデータセンターでの高性能コンピューティング(HPC)向け
- 自動運転・車載
- 高度な演算処理を行う車載インフォテインメントシステムや運転支援システム(ADAS)
- 車両のセンサーやカメラからの大量のデータをリアルタイムで処理する中央演算ユニット
- モバイル・コンシューマー製品(ハイエンドからミドルレンジ)
- スマートフォンやタブレット向けの高性能なアプリケーションプロセッサ(APU/CPU)
- ネットワーキング・インフラ
- 5G/6Gなどの次世代通信インフラ機器
- ルーターやスイッチなどのネットワーク機器
- グラフィックス処理
- 高性能なグラフィックスプロセッサ(GPU)
技術的な特徴と用途の関連性
6nmのような微細化されたプロセス技術のメリットは、主に以下の2点です。
- 高性能化(処理速度の向上): 回路が細かくなることで、より多くのトランジスタを搭載でき、複雑な演算を高速に処理できます。
- 低消費電力化: 回路が小さくなることで、トランジスタの動作に必要な電力が減り、発熱も抑えられます。
これらの特徴により、特にAIや自動運転のように、大量のデータを高速で処理しつつ、電力効率も求められる分野で、6nmなどの先端プロセスが不可欠となっています。

6ナノ半導体は、主に自動運転や人工知能(AI)向けの高性能コンピューティング(HPC)、5G通信インフラ、ハイエンドスマートフォンなどに使われます。高速処理と低消費電力を両立し、先端技術の進化に不可欠です。
6ナノ半導体製造に必要な技術は何か
6ナノメートル(nm)のような先端半導体の製造には、回路を極限まで微細化するためのリソグラフィ(露光)技術と、微細な構造を正確に形成するための成膜・エッチング技術が不可欠です。特に重要な技術は以下の通りです。
1. EUV(極端紫外線)リソグラフィ技術
- 最も重要な技術:回路パターンをシリコンウェハーに焼き付ける(露光する)際に、従来の光(深紫外線:DUV)よりも波長の短い極端紫外線(Extreme Ultraviolet: EUV)を使用します。
- 役割:EUVの波長は13.5nmと極めて短いため、DUVでは何回も露光を重ねる必要があった複雑な微細パターンを、より少ない工程で、より高い精度で形成できます。
- 6nm製造での位置づけ:TSMCなどの先端メーカーは、6nmプロセスにおいて、既存の7nmプロセスの設計資産を活かしつつ、EUVリソグラフィの知見を適用することで、トランジスタ密度と性能を向上させています。
2. 微細な成膜・エッチング技術
微細な回路を形成するには、原子レベルで制御された精密な技術が必要です。
- 原子層堆積(ALD):ウェハー上に、原子を一層ずつ精密に積み重ねて薄膜を形成する技術です。トランジスタのゲート絶縁膜などの薄い層を均一に形成するために不可欠です。
- 高精度エッチング:リソグラフィで露光されたパターン以外の部分を、プラズマなどを用いて極めて正確に削り取る(エッチングする)技術です。数ナノメートルの深さ・幅の微細な溝や壁を崩さずに加工する能力が求められます。
3. 高性能な設計エコシステム
- デザインルールの互換性:TSMCの6nmプロセス(N6)は、先行する7nmプロセス(N7)と互換性があるように設計されており、設計資産の再利用を可能にし、開発コストや期間の削減に貢献します。
- EDAツール:電子設計自動化(EDA)ツールが、6nmの微細な設計ルールに対応し、製造歩留まりを最大化するためのシミュレーションや検証を行う必要があります。

6ナノ半導体製造には、回路を極限まで微細化するEUV(極端紫外線)リソグラフィ技術が不可欠です。これに加えて、原子レベルの制御が可能な成膜・エッチング技術も重要となります。
6ナノ半導体製造出来るメーカは世界でどれくらいあるのか
6ナノメートル(nm)クラスの先端半導体を、高い歩留まりで量産できるメーカーは、世界的に見ても非常に限られています。
現在、6nmプロセス技術を量産し、市場に供給している主要なファウンドリ(半導体受託製造企業)は、実質的に以下の2社に絞られます。
1. TSMC (Taiwan Semiconductor Manufacturing Company)
- 国: 台湾
- 特徴: 世界最大のファウンドリであり、6nmプロセス(N6)は、既存の7nmプロセス(N7)の設計資産を活かしつつ、EUV(極端紫外線)リソグラフィを部分的に適用して性能と密度を高めた技術です。高性能なモバイルプロセッサなどに広く採用されています。TSMCの熊本第2工場で導入が予定されているのもこのクラスの技術です。
2. Samsung Electronics (サムスン電子)
- 国: 韓国
- 特徴: TSMCと並ぶ先端プロセス技術の主要プレイヤーです。いち早くEUVリソグラフィを導入し、6nmプロセス(6LPP)の量産を達成しています。Qualcommなどの大手顧客にチップを供給してきました。
その他のメーカーについて
かつてはIntelも主要な半導体メーカーでしたが、現在、同社は独自のプロセス技術を用いていますが、ファウンドリ事業としてはまだTSMCやSamsungほどの規模で先端プロセスを提供していません。
また、中国のSMICも微細化技術の開発を進めていますが、6nmレベルの量産技術で世界の市場シェアを大きく占めるには至っていません。
ハイエンドな半導体を6nmプロセスで安定して大量に供給できるメーカーは、TSMCとSamsungの2社が世界の市場をほぼ独占している状況です。

6ナノメートル級の先端半導体を量産できるメーカーは、世界的に極めて少なく、主に台湾のTSMCと韓国のSamsung Electronicsの2社が市場を寡占しています。

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