2025年12月の米製造業生産指数、前月比で0.2%上昇 市場予想を上回った理由は何か?

この記事で分かること

  • 市場予想を上回った理由:主に一次金属や電気機器、航空宇宙部門の急伸が、自動車生産の落ち込みを補ったためです。また、受注減に反して在庫積み増しや受注残の消化が進んだことも下支えとなりました。
  • 市場予想がマイナスであった理由:トランプ政権の輸入関税による部品・原材料コストの急騰と、EV(電気自動車)向け税優遇措置の廃止に伴う需要の急減です。
  • 今後の見通し:短期的には関税の法廷闘争やコスト増が続き、生産は一進一退となる見込みです。しかし、年後半には利下げの浸透や大型減税の効果、AI関連投資の拡大により、緩やかな回復に向かうと予測されています。

2025年12月の米製造業生産指数、前月比で0.2%上昇

 米連邦準備理事会(FRB)が2026年1月16日に発表した2025年12月の米製造業生産指数は、前月比で0.2%上昇しました。

 https://jp.reuters.com/markets/japan/MAAHAKD4JNOUVJT6E3T7EJDKQY-2026-01-16/

この数字は、市場予想(0.2%低下)に反してプラス成長となり、米国の製造業が一部のセクターで粘り強さを見せた形です。

市場予想を上回った理由は何か

 2025年12月の米製造業生産(前月比0.2%上昇)が市場予想(0.2%低下)を上回り、プラス成長を維持した主な理由は、「一部の重工業セクターの急伸」と「受注減に反した生産継続」という2つの側面があります。具体的には、以下の3つのポイントが挙げられます。

1. 一次金属と特定ハイテク部門の急伸

 自動車生産の落ち込みを補って余りあるほど、特定のセクターが力強く伸びました。

  • 一次金属(+2.4%): 外国製金属への関税措置などの影響で、国内生産が支えられた側面があります。
  • 電気機器・家電(+1.7%): 航空宇宙・輸送機器(+1.5%)など、耐久財の生産が堅調でした。これらはAI投資ブームや国防・航空需要の継続に支えられています。

2. 「受注減」に反した生産の維持(在庫積み増し)

 専門家の分析(S&P Globalなど)によると、12月は新規受注が減少していたにもかかわらず、工場側は生産ペースを落としませんでした。

  • 駆け込み生産の可能性: 今後の関税引き上げやコスト増を懸念し、今のうちに生産を済ませておこうとする動き(在庫の積み増し)が、統計上の数字を押し上げた可能性があります。
  • バックログ(受注残)の消化: 以前から抱えていた未処理の注文をこなすことで、全体の稼働を維持しました。

3. 公益事業(エネルギー需要)の波及効果

 製造業指数とは別の項目ですが、鉱工業生産全体(+0.4%)を押し上げたのは公益事業(+2.6%)の急増です。

  • 12月の厳しい寒波により、暖房用の天然ガスや電力の生産が激増しました。これが経済全体の「産業活動」として活発にカウントされ、製造業を含むセクター全体のセンチメントを底上げしました。

 市場は「関税によるコスト増」や「需要の減退」を重く見てマイナス成長を予想していましたが、実際には国内生産へのシフト(一次金属)や将来の混乱に備えた生産継続が、一時的に数字を下支えしたと言えます。

2025年12月の米製造業生産が予想を上回った理由は、主に一次金属や電気機器、航空宇宙部門の急伸が、自動車生産の落ち込みを補ったためです。また、受注減に反して在庫積み増しや受注残の消化が進んだことも下支えとなりました。

市場予想がマイナスとなっていた理由は何か

 市場(エコノミスト)が「0.2%のマイナス」を予想していた主な理由は、製造業を取り巻く環境に深刻な逆風が吹いていたためです。具体的には、以下の3つの懸念が背景にありました。

1. 「関税」によるコスト増と混乱

 トランプ政権下の輸入関税措置により、原材料コストの急騰とサプライチェーンの混乱が続いていました。これにより、多くの企業が生産活動を抑制せざるを得ないとの見方が強まっていました。

2. 「景気先行指標」の悪化

 PMI(購買担当者景気指数)などの先行指標が、12月は2025年で最低水準(47.9%)を記録していました。「50」を下回ると景気後退を示すため、実際の生産活動もこれに引きずられて減少すると予測されていました。

3. 需要の減退と在庫調整

  • 受注の減少: 国内外での新規注文が落ち込んでおり、需要が冷え込んでいると判断されました。
  • 自動車生産の失速: 製造業の主要部門である自動車関連が、販売不振や在庫調整のために数ヶ月連続でマイナス成長となっていたことも、全体の予測を押し下げました。

「関税によるコスト増」と「受注の落ち込み」という2つの大きな不安要素があったため、市場は製造業が縮小傾向にあると見てマイナス予想を出していました。

市場がマイナス予想だった主な理由は、トランプ政権の輸入関税による原材料コスト増と供給網の混乱に加え、製造業景況指数(PMI)が活動縮小を示す50を割り込んでいたためです。新規受注の鈍化や自動車部門の不振も、生産減の根拠とされていました。

自動車生産の落ち込みが大きかった理由は何か

 2025年12月の米自動車生産が1.1%低下(4カ月連続のマイナス)と大きく落ち込んだ理由は、主に以下の3点に集約されます。

1. 関税によるコスト増と供給網の混乱

 トランプ政権が導入した輸入関税(特に鉄鋼・アルミニウムや自動車部品への追加関税)が、メーカーの生産コストを直接的に押し上げました。

  • 原材料高: 車両価格が上昇し、メーカーは利益を確保するために生産計画を抑制しました。
  • 部品不足: 海外からの部品供給が滞り、工場の稼働効率が低下しました。

2. EV(電気自動車)需要の急減

 2025年末にEV購入向けの連邦税額控除が廃止されたことが決定打となりました。

  • 駆け込み後の反動: 補助金終了前の9月頃に需要が集中した反面、第4四半期(10-12月)は「EV販売の崖」と呼ばれるほど需要が冷え込み、各社はEVの減産やシフトカット(交代制勤務の削減)を余儀なくされました。

3. 金利上昇と購買力の低下

 ローン金利が高止まりしたことで、消費者の購買意欲が減退しました。

  • 平均価格の上昇: 12月の新車平均価格は5万ドル(約750万円)を超え、高価格帯のトラックやSUVに生産を絞るメーカーが増えたことで、全体の生産台数(ボリューム)が伸び悩みました。

自動車生産が1.1%低下と落ち込んだ主な理由は、トランプ政権の輸入関税による部品・原材料コストの急騰と、EV(電気自動車)向け税優遇措置の廃止に伴う需要の急減です。さらに高金利による購入控えも響き、4カ月連続のマイナスとなりました。

今後の見通しはどうか

 2026年の米国製造業の先行きは、「前半は不透明だが、後半に向けて回復が期待される」という二面性のある見通しとなっています。

1. 短期的には「関税」と「判決」が焦点

 2026年に入り、トランプ政権の輸入関税によるコスト増やサプライチェーンの混乱は依然として重石となっています。

  • 最高裁の判決待ち: 大統領が発動した関税の合法性を巡る連邦最高裁の判決が間近に迫っています。これにより関税が維持されるか撤回されるかが、企業の投資判断を左右する最大の焦点です。
  • 駆け込み需要の反動: 12月のプラス要因だった「在庫積み増し」は一時的であり、1-3月期はその反動で生産が停滞する可能性があります。

2. 年後半に向けた回復シナリオ

 多くの経済機関(ゴールドマン・サックス等)は、年後半には以下の理由から製造業が上向くと予測しています。

  • 利下げの効果: FRBによる利下げが浸透し、設備投資や住宅・自動車の需要が徐々に持ち直すと見られています。
  • 大型減税の影響: 2025年末に成立した減税や投資優遇策(償却の特例など)が実際の生産現場に効き始め、国内投資を後押しします。
  • AI・防衛需要: 従来型の製造業(自動車など)が苦戦する一方で、AIインフラや防衛関連の生産は引き続き底堅く推移する見込みです。

3. リスク要因

  • 二極化: ハイテク・エネルギー部門が好調な一方、関税負担の大きい自動車や鉄鋼依存の業種は、回復が遅れる「二極化」が続くと懸念されています。

短期的には関税の法廷闘争やコスト増が続き、生産は一進一退となる見込みです。しかし、年後半には利下げの浸透や大型減税の効果、AI関連投資の拡大により、緩やかな回復に向かうと予測されています。

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