この記事で分かること
- コンポジットとは:異なる性質をもつ2種類以上の材料を組み合わせて作られる複合材料のことです。
- エンプラとは:エンジニアリングプラスチックの略で、過酷な条件下でも優れた性能を示すプラスチックのことです。
- エンプラのコンポジット化の利点:フィラーや繊維などの強化剤を配合することで、強度・剛性・耐熱性などを向上させることができます。
UBEのエンプラコンポジット研究開発
UBE株式会社は、大阪府堺市の堺工場内にある大阪研究開発センター内の、新たな研究開発棟「スペシャリティマテリアルアプリケーション棟の運用を始めたと発表しています。
https://www.ube.com/ube/news/2025/0523.html
この新棟は、エンジニアリングプラスチック(エンプラ)を主軸としたコンポジット(複合材料)事業の研究開発機能を強化することを目的としています。
コンポジットとは何か
「コンポジット(composite)」とは、異なる性質をもつ2種類以上の材料を組み合わせて作られる複合材料のことです。単一の材料では得られない、高い強度・軽量性・耐熱性・耐腐食性などの特性を実現できます。
コンポジットの例:
材料構成 | 用途例 |
---|---|
炭素繊維+樹脂(CFRP) | 航空機、自動車、スポーツ用品 |
ガラス繊維+プラスチック(GFRP) | 建築資材、ボート、風力発電ブレード |
セラミックマトリックス複合材(CMC) | 高温部品(ジェットエンジンなど) |
特徴
- 軽くて強い(特に金属に比べて軽量なのに強度が高い)
- 設計の自由度が高い
- 目的に応じた性能を設計できる(耐熱、絶縁、柔軟性など)

コンポジットは、異なる性質をもつ2種類以上の材料を組み合わせて作られる複合材料のことで、UBEが取り組む「コンポジット」は、特にエンジニアリングプラスチックをベースにした高機能材料を指しており、自動車や電子機器などの分野での応用が期待されています。
エンジニアプラスチックとは何か
エンジニアリングプラスチック(略して「エンプラ」)とは、構造部品などの機械的強度や耐熱性、耐薬品性が要求される用途に使用される高性能なプラスチックのことです。一般的な汎用プラスチック(例:ポリエチレン、ポリプロピレン)と比べて、過酷な条件下でも優れた性能を発揮します。
主な特徴:
- 高い強度・剛性(金属の代替材料として使用されることも)
- 耐熱性に優れる(100〜150℃以上で使用可能なものも)
- 耐薬品性・耐摩耗性に優れる
- 寸法安定性が高く、精密部品に使える
主な種類と用途:
材料名 | 特徴 | 主な用途 |
---|---|---|
ポリアミド(PA、ナイロン) | 耐摩耗性、強度 | 歯車、ベアリング、自動車部品 |
ポリカーボネート(PC) | 衝撃に強い、透明性 | 電子部品、レンズ、ヘルメット |
ポリアセタール(POM) | 摺動性、機械強度 | 機械部品、蛇口部品 |
ポリフェニレンサルファイド(PPS) | 高耐熱・耐薬品性 | 電子部品、車載部品 |
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK) | 超高耐熱・耐薬品性 | 医療機器、航空宇宙部品 |
なぜ重要?
金属より軽量で加工が容易でありながら、機械的性質にも優れているため、自動車の軽量化や電化製品の小型化など、現代の製品設計に不可欠な材料となっています。

エンジニアプラスチックは汎用プラスチックと比べて、過酷な条件下でも優れた性能を示すプラスチックのことです。
UBEはエンジニアプラスチックをベースに、複合材料(コンポジット)化することで、より高度な性能を持つ材料開発を進めています。
エンプラにはどんなコンポジット材料があるのか
エンジニアリングプラスチック(エンプラ)に使われるコンポジット材料は、エンプラを母材(マトリックス)として、さまざまな強化材(フィラーや繊維)を加えることで、強度・剛性・耐熱性などを向上させた材料です。以下に代表的な例を紹介します。
■ エンプラ系コンポジットの代表例
母材(マトリックス) | 強化材 | 名称・略称 | 特徴・用途例 |
---|---|---|---|
ポリアミド(PA) | ガラス繊維(GF) | ガラス繊維強化ナイロン(PA-GF) | 高強度、自動車部品(エンジン周辺など) |
ポリアセタール(POM) | PTFE、ガラス繊維 | 摺動性強化POM | ギア、ベアリング |
ポリカーボネート(PC) | カーボン繊維 | PC-CF複合材 | 高剛性・軽量、電装部品 |
ポリフェニレンサルファイド(PPS) | ガラス繊維または炭素繊維 | PPS-GF / PPS-CF | 高耐熱・耐薬品性、電子・自動車部品 |
PEEK | 炭素繊維 | PEEK-CF複合材 | 航空・医療用途、高温環境対応 |
■ 強化材の種類と役割
強化材 | 主な役割 | 備考 |
---|---|---|
ガラス繊維(GF) | 引張・曲げ強度向上 | 最も一般的、コストと性能のバランスが良い |
炭素繊維(CF) | 高強度・軽量・高剛性 | 高価、電気伝導性あり |
無機フィラー(タルク、シリカなど) | 寸法安定性・剛性改善 | 成形性改善にも効果 |
PTFE(テフロン) | 摺動性向上 | 摺動部品・摩耗部品向け |
■ UBEが扱う可能性のある製品例
UBEはナイロン系材料(ポリアミド、特にPA6やPA66)を中心に展開しており、以下のような機能性コンポジット材料が開発・研究対象です:
- 高耐熱PA+GF/CF材料(EVモーター周辺部品用)
- 低吸水・寸法安定性PAコンポジット
- リサイクル材混合・環境配慮型エンプラ複合材

エンジニアプラスチックのコンポジットでは、フィラーや繊維などの強化剤を配合し、強度・剛性・耐熱性などを向上させています。
どのように製造されるのか
エンジニアリングプラスチック(エンプラ)のコンポジット材料の製造工程は、以下のような大きく3つのステップで構成されます。
【1】原料準備(配合設計・計量)
- 母材樹脂(ペレット状)と、強化材(ガラス繊維、炭素繊維、無機フィラーなど)を準備
- 特性向上のため、潤滑剤、カップリング剤(界面改質剤)、熱安定剤などの添加剤も加える
- 配合は製品特性に応じて緻密に設計される(例:PA66 + 30%ガラス繊維 + 潤滑剤)
【2】混練・コンパウンド(押出機による溶融混合)
- 二軸押出機(twin-screw extruder)に原料を投入し、加熱しながら溶かして混ぜる
- 高速で回転するスクリューにより、均一に分散・分布させる
- 強化材が劣化・破断しないよう、温度や剪断力の調整が重要
- 成形後は押出された材料を冷却(通常は水冷)→ ペレット状にカット(ペレタイズ)
【3】成形加工(試験片・製品化)
- 出来上がったペレットを用いて、射出成形や押出成形で製品を加工
- 代表的な加工法:
- 射出成形(Injection Molding):精密部品に最適、自動車・電装部品向け
- 押出成形(Extrusion):パイプ、フィルム、ロッドなど連続形状に
- 成形後は必要に応じてアニール処理や後加工(切削・接着)
工程全体のイメージ
原料準備
↓
溶融混練・押出(コンパウンド)
↓
冷却・カット(ペレット化)
↓
成形加工(射出、押出など)
↓
製品・試験片完成
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