この記事で分かること
- ポリウレア樹脂とは:イソシアネートとアミンの化学反応で生成される樹脂です。「硬いのにゴムのように伸びる」強靭さが最大の特徴で、防水・耐衝撃・耐薬品性に優れます。
- ポリウレア樹脂の用途:防水・耐食・耐衝撃性を活かし、コンクリートの剥落防止や防水層形成に威力を発揮します。寿命が極めて長く、環境負荷も低い素材です。反応速度が非常に速いため、専用の装置が必要で手塗りでの処理は困難でした。
- 手塗り可能にした方法:独自の分子設計で化学反応のスピードを緻密にコントロールしたからです。本来数秒で固まる成分を、数十分間は液状を保つよう調整。さらに無溶剤で低粘度化することで、特別な機械なしでハケ塗りが可能になりました。
ユニチカの手塗り可能なポリウレア樹脂
ユニチカは、従来は専用の大型吹付装置が必要だったポリウレア樹脂を、現場で簡単に「手塗り」できるようにした新製品を開発しました。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF226QQ0S6A120C2000000/
この樹脂は、その強靭さと透明性を活かしてコンクリートの剥落防止・防水、建材の保護などでの活用が期待されています。
ポリウレア樹脂とは何か
ポリウレア樹脂とはプラスチックの硬さと、ゴムの弾力性をあわせ持つ、最強クラスの保護膜です。
その驚異的な耐久性から、海外では「100年コーティング」や「爆破されても壊れない壁」を作る素材として知られています。
1. 化学的な仕組み
ポリウレアは、「イソシアネート」と「アミノ基を持つ樹脂(ポリアミン)」という2つの液体を混ぜることで化学反応を起こして生成されます。
-NCO + -NH2 → ポリウレア
この反応が極めて速いのが特徴で、通常は吹き付けた瞬間に固まり始め、数分で歩行可能、数時間で完全硬化します。
2. ポリウレアのスペック
他のコーティング剤(ウレタンやエポキシ)と比較して、以下の点が突出しています。
- 驚異的な伸びと強さ: 引っ張ると数倍に伸び、かつ元に戻る弾力があります。建物のコンクリートが地震でひび割れても、表面のポリウレア層は破れずに伸びて、防水性を維持します。
- 防水・耐薬品性: 水を通さず、酸やアルカリ、油にも強いため、過酷な環境(化学工場、下水施設など)で活躍します。
- 瞬間硬化: 施工後すぐに使えるため、工事期間を大幅に短縮できます。
- 無溶剤・無臭: 環境に有害な物質を含まないタイプが多く、屋内やタンク内でも安全に施工できます。
3.使用例
「最強の守護神」として、目に見えないところで私たちの生活を支えています。
- ピックアップトラックの荷台: アメリカのトラックの荷台(ベッドライナー)によく塗られています。重い荷物を投げ込んでも傷がつかず、錆びません。
- トンネルや橋梁: コンクリートが剥がれ落ちてくるのを防ぐために裏側に塗布されます。
- 水族館の水槽: 巨大な水圧に耐え、水漏れを完璧に防ぐために使われます。
- 国防: 爆発の衝撃を吸収・分散する性質があるため、軍事施設の壁の補強材としても有名です。

ポリウレアは、イソシアネートとアミンの化学反応で生成される樹脂です。「硬いのにゴムのように伸びる」強靭さが最大の特徴で、防水・耐衝撃・耐薬品性に優れ、建物の長寿命化を支える最強の保護材として注目されています。
ポリウレアが硬さと弾力性を併せ持つ理由は
ポリウレアが「カチカチの硬さ」と「ゴムのような弾力」を両立できる理由は、その分子構造の中に「ガッチリ固まる部分」と「柔軟に動く部分」が共存しているからです。
1. 「ハードセグメント」と「ソフトセグメント」
ポリウレアの分子鎖は、性格の違う2つのパーツが交互に連なってできています。
- ハードセグメント(硬い部位):ウレア結合(尿素結合)が集まった部分です。分子同士が「水素結合」という非常に強い力で引き付け合い、結晶のようにカチッと固まります。これが「硬さ」と「強靭さ」を生みます。
- ソフトセグメント(柔らかい部位):パーツ間をつなぐ長い鎖の部分です。ここはバネのように自由に動いたり伸びたりできるため、大きな衝撃を吸収する「弾力性」を生み出します。
2. 強力な「水素結合」のネットワーク
ポリウレアの最大の特徴は、この「ハードセグメント」同士が網目状に強く結びついている点です。
- ウレタンとの違い: ウレタン樹脂も似た構造を持ちますが、ポリウレアのウレア結合はウレタン結合よりも水素結合の数が多く、結合力が格段に強力です。
- 網目構造: 強い力で引っ張られても、この網目がバラバラにならずに耐え、力を緩めるとソフトセグメントの弾性によって元の形に戻ります。
硬い結合の点を、しなやかなゴムの紐でつなぎ合わせたような構造をしているため、衝撃を受けても割れず、かつ形が崩れないという理想的な特性を発揮できるのです。

分子内に「硬い部分(結晶性)」と「しなやかな部分(弾性)」が交互に並ぶ特殊構造を持つためです。強い水素結合でカチッと固まりつつ、鎖状の分子がバネのように伸び縮みすることで、割れずに衝撃を吸収します。
なぜ手塗りが難しいのか
ポリウレアの「手塗り」が難しい理由は、主に反応速度が異常に速いからです。一般的なペンキやウレタン塗料との違いをまとめると、以下の3点に集約されます。
1. 「数秒」で固まってしまう
従来のポリウレアは、2液(主剤と硬化剤)が混ざった瞬間に反応が始まり、わずか数秒〜数十秒でゲル状(餅のような状態)になります。
ハケやローラーで広げている最中に固まってしまうため、物理的に人の手では塗り広げることが不可能でした。
2. 特殊な機械が必要(衝突混合)
あまりに反応が速いため、バケツに入れて混ぜる余裕すらありません。そのため、以下の図のような専用の大型機械が必須でした。
- 高圧スプレーガン: ノズルの先端で2液を衝突させて混ぜ、その瞬間に吹き付ける。
- 加熱装置: 粘度を下げるために原料を60℃〜80℃に温めて循環させる。
3. 下地との密着がシビア
反応が速すぎることは、下地(コンクリートなど)に馴染む時間が短いことも意味します。手塗りでゆっくり塗ると、下地の細かな凹凸に入り込む前に固まってしまい、剥がれやすくなるという技術的なハードルがありました。

最大の理由は、反応速度が極めて速いからです。従来の製品は混ぜた瞬間に数秒〜数十秒で硬化するため、ハケで塗り広げる余裕がありません。そのため、専用の機械で瞬時に混合・噴射するスプレー施工が不可欠でした。
ユニチカが手塗りを可能にした方法は
ユニチカがポリウレアの手塗りを可能にした最大の秘策は、反応速度をあえて遅くする独自の分子設計」にあります。
通常は混ぜた瞬間に固まってしまいますが、ユニチカは以下の2つのアプローチでこの課題を解決しました。
1. 「遅延型」の原料開発
ポリウレアの主原料である「イソシアネート」と「アミン」の組み合わせを最適化しました。化学反応が始まるまでの「待ち時間(可使時間)」を、数秒から数十分レベルまで引き延ばすことに成功したのです。
これにより、現場でバケツに入れて混ぜ、ハケやローラーで塗り広げる余裕が生まれました。
2. 触媒と配合のコントロール
単に反応を遅くするだけでなく、「塗っている間は固まらないが、塗り終わったら速やかに硬化する」という絶妙なバランスを、独自の触媒技術で実現しています。これにより、手塗りでも吹付施工に近い高耐久な膜が形成されます。
3. 無溶剤での低粘度化
手塗りのためには、液がサラサラして塗りやすい(低粘度)必要があります。ユニチカは、薄め液(溶剤)を使わずに、樹脂自体の構造を工夫することで**「塗りやすいのに肉厚に仕上がる」**特性を持たせました。

独自の分子設計で化学反応のスピードを緻密にコントロールしたからです。本来数秒で固まる成分を、数十分間は液状を保つよう調整。さらに無溶剤で低粘度化することで、特別な機械なしでハケ塗りが可能になりました。

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