この記事で分かること
- フォトダイオードとは:光が当たると、その光の強さに応じた電気信号(電流)を発生させる半導体素子です。PN接合に光が当たると電子と正孔が生成され、電流が流れる原理を利用します。
- 光を電気に変換する仕組み:フォトダイオードに光が当たると、光のエネルギーによって電子と正孔のペアが生成されます。これらの電荷が半導体内部の電界によって分離・移動することで、外部回路に電流として取り出され、光信号が電気信号に変換されます。
- 使用される材料:シリコン(Si)は可視光から近赤外線に広く対応し最も汎用性が高く、ゲルマニウム(Ge)やインジウム・ガリウム・ヒ素(InGaAs)はより長波長の赤外線検出に用いられます。
フォトダイオード
日本の電子部品メーカーは、半導体製造分野では後れを取っているものの、コンデンサやセンサーなどの部品分野では、長年にわたり世界市場で強い競争力を保ち続けており、台湾企業による買収も報じられています。
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今回はフォトダイオードに関する記事となります。
フォトダイオードとは何か
フォトダイオード(Photodiode)とは、光のエネルギーを電気信号(電流または電圧)に変換する半導体素子であり、光を検出するためのセンサーとして広く用いられます。
一般的なダイオードが電流を一方向に流す性質を持つ一方で、フォトダイオードは、そのPN接合部に光が当たると、その光の強さに応じて電流を発生させるという特徴があります。
発光の仕組み
- PN接合の空乏層:フォトダイオードも、P型半導体とN型半導体を接合したPN接合で構成されています。PN接合部には「空乏層」と呼ばれる、キャリア(電子や正孔)がほとんど存在しない領域があります。この空乏層には、N型側がプラス、P型側がマイナスになるような「内部電界」が存在します。
- 光(光子)の吸収:この空乏層に光(光子)が当たると、光子のエネルギーが半導体材料の原子に吸収されます。
- 電子と正孔の生成:光のエネルギーを受け取った原子から、電子と正孔のペアが生成されます。
- 電荷の分離と電流発生:生成された電子は内部電界によってN型側へ、正孔はP型側へ引き寄せられて移動します。これにより、外部回路に接続された電極間に電流が流れます。この光によって発生する電流を「光電流」と呼びます。
- 光の強さと電流の比例関係:光が強いほど多くの電子と正孔が生成されるため、光電流も大きくなります。この「光の強さに応じて流れる電流の量が変化する」という特性を利用して、光の強度を測定したり、光信号を電気信号に変換したりします。
フォトダイオードの主な種類
フォトダイオードにはいくつかの種類があり、それぞれ特性が異なります。
- PNフォトダイオード: 最も基本的な構造で、シンプルな光量測定などに使われます。
- PINフォトダイオード: PN接合の間に意図的に「I型半導体(真性半導体)」を挟んだ構造で、応答速度が速く、光通信の受光素子などで広く使われます。
- アバランシェフォトダイオード(APD): 微弱な光を検出するために、内部でアバランシェ増倍(電子雪崩)を利用して光電流を増幅する機能を持つものです。
主な用途
- 光通信: 光ファイバーで送られてきた光信号を電気信号に変換する受信部。
- 光センサー: 環境光センサー(スマートフォンの画面の明るさ自動調整)、自動ドアのセンサー、煙感知器、CD/DVD/Blu-rayプレーヤーの光ピックアップ。
- 医療機器: 血液中の酸素濃度測定、医療画像診断装置など。
- 計測器: 光の強度を正確に測定する分光光度計など。
- 太陽電池: 広い意味では、太陽電池も光エネルギーを電気エネルギーに変換するフォトダイオードの一種とみなせます。
フォトダイオードは、光を電気に変えることで、光を感知・計測したり、光信号をデータとして利用したりするための、現代社会に不可欠なデバイスです。

フォトダイオードは、光が当たると、その光の強さに応じた電気信号(電流)を発生させる半導体素子です。PN接合に光が当たると電子と正孔が生成され、電流が流れる原理を利用します。光センサーや光通信の受光素子など、光を電気に変換する多様な用途で不可欠です。
フォトダイオードに使用される半導体材料は何か
フォトダイオードに使用される半導体材料は、検出したい光の波長域や必要な性能(感度、応答速度、ノイズ特性など)によって使い分けられます。主な材料は以下の通りです。
シリコン (Si)
- 最も一般的なフォトダイオード材料です。
- 紫外線、可視光、近赤外線(約190nm~1100nm)の広い波長域に感度を持ちます。
- 低ノイズ、高感度、比較的低コストで製造できるため、多くの汎用的な光センサーや、太陽電池などにも広く利用されています。
ゲルマニウム (Ge)
- シリコンよりも長波長の赤外線(約400nm~1700nm)に感度があります。
- シリコンに比べてノイズレベルが高い傾向がありますが、より長い波長の赤外線を検出したい場合に用いられます。
インジウム・ガリウム・ヒ素 (InGaAs)
- 近赤外線から中赤外線(約800nm~2600nm)の波長域に非常に高い感度を持ちます。
- 高速応答が可能で、光ファイバー通信システム(特に長距離・高速通信)の受光素子として広く利用されています。
その他
- 硫化鉛 (PbS): さらに長い波長の赤外線検出に用いられることがあります。
- 水銀カドミウムテルル (HgCdTe): 中赤外線から遠赤外線領域の検出に用いられることがありますが、冷却が必要な場合が多いです。
- 酸化物半導体: 紫外線領域に特化したフォトダイオードの研究・開発に用いられることがあります。
これらの材料は、それぞれ異なるバンドギャップエネルギーを持つため、吸収できる光のエネルギー(=波長)が異なり、結果として感度を持つ波長域が決定されます。これにより、特定の光を効率的に検出するフォトダイオードが製造されています。

フォトダイオードには、検出したい光の波長に応じて様々な半導体材料が使われます。シリコン(Si)は可視光から近赤外線に広く対応し最も汎用性が高く、ゲルマニウム(Ge)やインジウム・ガリウム・ヒ素(InGaAs)はより長波長の赤外線検出に用いられます。
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