この記事で分かること
- バイオメタンとは:バイオマスを嫌気性発酵で得られるバイオガスを精製し、主成分であるメタンの濃度を高めたガスのことです。
- どのように合成されるのか:バイオマスをメタン発酵させ、バイオガス(主成分:メタンと二酸化炭素)を生成します。バイオガスから二酸化炭素などを除去することや二酸化炭素と水素を反応させることで、合成されています。
- 嫌気性発酵とは:酸素が存在しない(または極めて少ない)環境下で、微生物が有機物を分解するプロセスで、バイオメタンを生産するための重要な技術です。
双日のバイオメタン生産への投資
双日株式会社が、インドでバイオメタン製造に関連する企業に投資を行うと発表しています。

本出資を通じて、双日はインドでのバイオメタンの生産および販売事業に参入すると発表しています。
バイオメタンとは何か
バイオメタンとは、バイオマス(生物由来の有機性資源)を嫌気性発酵(酸素のない状態での微生物による分解)させて得られるバイオガスを精製し、主成分であるメタンの濃度を高めたガスのことです。
天然ガスとほぼ同等の成分と性質を持つため、既存の都市ガスインフラやガス機器をそのまま利用できる再生可能エネルギーとして注目されています。
バイオメタンの製造方法
主に以下の2つの方法で製造されます。
- バイオガスの精製:
- 生ごみ、下水汚泥、家畜糞尿、食品残渣などのバイオマスをメタン発酵させ、バイオガス(主成分:メタンと二酸化炭素)を生成します。
- このバイオガスから二酸化炭素や硫化水素などの不純物を取り除き、メタン濃度を90%以上にまで高めます。この精製されたガスがバイオメタンです。
- メタネーション:
- 水素と二酸化炭素を触媒反応させる(サバティエ反応)ことでメタンを合成します。
- バイオガス中の二酸化炭素や、再生可能エネルギー由来の電力で生成した水素などを利用する研究開発が進められています。

バイオメタンとは、バイオマスを嫌気性発酵で得られるバイオガスを精製し、主成分であるメタンの濃度を高めたガスのことです。
どんなバイオマスが利用できるのか
バイオメタンの原料となるバイオマスは、多岐にわたります。主に以下のものが利用可能です。
廃棄物系バイオマス
- 生ごみ
- 下水汚泥
- 家畜糞尿
- 食品残渣
- 紙ごみ
- 木質系廃棄物
- 農業残渣
未利用バイオマス
- 林地残材
- 農産未利用資源
エネルギー作物
- 糖質資源(サトウキビ、てんさいなど)
- でんぷん資源(トウモロコシ、ジャガイモなど)
- 油脂資源(ナタネ、大豆、アブラヤシなど)
バイオマスの特性と処理方法
これらのバイオマスは、それぞれ組成や性状が異なるため、バイオメタンを製造する際の前処理や嫌気性発酵の条件が調整されます。
例えば、含水率の高い生ごみや下水汚泥は、そのまま嫌気性発酵に適している場合がありますが、木質系バイオマスは細かく破砕するなどの前処理が必要になることがあります。
また、バイオマスの種類によって、バイオメタンの生成量や品質も変動します。そのため、効率的かつ安定的にバイオメタンを製造するためには、地域で入手しやすいバイオマスの特性を把握し、最適な製造プロセスを選択することが重要です。

生ごみなどの廃棄物系バイオマスや林地残材、作物などが利用されています。それぞれ組成や性状が異なるためバイオマスの特性を把握し、最適な製造プロセスを選択することが重要です。
嫌気性発酵とは何か
嫌気性発酵とは、酸素が存在しない(または極めて少ない)環境下で、微生物が有機物を分解し、エネルギーを獲得する代謝プロセスのことです。
好気性発酵(酸素が存在する環境下での発酵)とは対照的に、嫌気性発酵では酸素を必要としない微生物が働きます。この過程で、有機物はより単純な化合物に分解され、副産物として様々な物質が生成されます。バイオメタンの製造においては、この嫌気性発酵によってバイオガス(主成分:メタンと二酸化炭素)が生成されます。
嫌気性発酵の主な特徴
- 無酸素環境: 酸素がない、または極めて少ない状態で行われます。
- 多様な微生物: 細菌、古細菌など、様々な嫌気性微生物が関与します。
- 複雑な分解経路: 有機物は複数の段階を経て、様々な中間生成物を経由しながら分解されます。
- 生成物: メタン、二酸化炭素、水素、硫化水素、アンモニア、有機酸など、多様なガスや液体が生成されます。バイオメタン製造においては、メタンが主要な目的生成物となります。
バイオメタン製造における嫌気性発酵のプロセス
バイオマスは、嫌気性消化槽と呼ばれる密閉されたタンクに投入されます。タンク内は無酸素状態に保たれ、適切な温度(中温:30-40℃、高温:50-60℃)に維持されます。
この環境下で、以下のような段階を経て有機物が分解され、バイオガスが生成されます。
- 加水分解: 複雑な有機物(炭水化物、タンパク質、脂肪など)が、微生物の酵素によってより小さな可溶性有機物に分解されます。
- 酸生成: 加水分解で生成された有機物が、酸生成菌によって酢酸、プロピオン酸、酪酸などの有機酸、アルコール、水素、二酸化炭素などに変換されます。
- 酢酸生成: 酸生成段階で生成された有機酸やアルコールなどが、酢酸生成菌によって主に酢酸、水素、二酸化炭素に分解されます。
- メタン生成: 酢酸や水素、二酸化炭素などが、メタン生成菌と呼ばれる特殊な古細菌によってメタンと二酸化炭素に変換されます。
嫌気性発酵に関わる主な微生物
- 加水分解菌: セルロース分解菌、タンパク質分解菌、脂肪分解菌など。
- 酸生成菌: クロストリジウム属、バクテロイデス属など。
- 酢酸生成菌: シンバクター属など。
- メタン生成菌: メタノバクテリウム属、メタノサルシナ属、メタノコッカス属など(古細菌)。
これらの微生物は、それぞれの段階で特有の酵素を分泌し、有機物の分解とエネルギー獲得を行っています。
嫌気性発酵は、バイオマスを有効活用し、再生可能なエネルギーであるバイオメタンを生産するための重要な技術です。また、下水処理や廃棄物処理の分野でも、有機物の安定化やバイオガスの回収に利用されています。

嫌気性発酵とは、酸素が存在しない(または極めて少ない)環境下で、微生物が有機物を分解するプロセスで、バイオマスを有効活用し、再生可能なエネルギーであるバイオメタンを生産するための重要な技術です。
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