AI新世 人工知能と人類の行方 小林亮太 篠本滋 要約

本の内容

AIの技術革新はとどまること知らないが、実際にAIがどのように応用されているのか、なにができてなにができないのかを分からない人も多い。

 すべての人がAIに対する理解を持つ必要があるなかで、豊富な事例でどのような分野で、AIがどのように利用されているのかを知ることのできる本になっています。

この本がおすすめの人

・AIで結局何ができるか、今何をしているのか知りたい人

・漠然とAIに仕事を取られるのではと心配している人

・AIが当たり前になる社会での心構えを知りたい人

人工知能の中でも注目度の高いGPTについての本「チャットGPT vs. 人類」の要約はこちら

AI人世とはなにか?

  AIの技術革新は止まることを知らず,碁の世界チャンピオンへの勝利,犯罪捜査専門家と同等の顔認識技術、医師に迫りつつある医療における画像診断能力など、これまででは考えられないほどの発展を見せている。

その勢いは凄まじく,AIが人間社会を左右するほどの影響を持つ時代=AI新世となる可能性すらある。

AIの発展の一方で,人々の仕事を奪ってしまうことを脅威に思う声も大きい。どの程度の影響があるか正しく理解するためにはAIにどのようなことができるかを広く見渡す必要がある。

AIにできること,AIは社会をどう変えるか,AIの歴史と未来についてを知ることのできる本になっている。

AIが人間社会を左右するほどの影響力を持つAI人世となる可能性がある。AIについての正しい理解を持つことが重要。

AIによる画像認識はどのような分野で利用されているのか

 AIが画像を認識,解析する能力はここ数年で大きく向上している。その応用範囲は広く,

・顔認証

・レントゲン写真など医療画像の解析

・製造ラインでの不良の発見

・道路やタイヤの検査

・草木や野菜などの認識や飼育状態のチェック

・商品パッケージのデザイン:どのようなデザインが売れているかを解析する

など様々で専門家の能力に匹敵するものもある。

AIのパターン認識力が大きく向上したため、画像認識の精度が増している。精度の向上によって様々な分野での応用がみられる。

画像認識の精度はなぜ大幅な向上したのか

画像認識とは画像の中に目的とする物体が写っているかを検出することを意味する。

画像認識力を上げるためには,目的とする物体が写っているさまざまな画像と写っていない画像を用意し,学習させることで行う。

画像の中から無数のパラメータを作り出し,無数のパラメータを関連付けながら,少しづつ調整することで用意されたデータについて徐々に正解に近づけるようにしていくのが深層学習。

 パラメータの調整を人間が行うのではなく、例題と答えを用意し、パラメータをAIに調整させることでパラメータを無数にすることができ、精度を上げることができる。

無数のパラメータを関連づけ調整する深層学習によって画像認識技術は大きく向上した。

画像認識以外の分野でのAIの応用はどのようなものがあるのか

画像ではなく,音声や文章の分野でもAIは大きく発展している。

・スマートスピーカなどの音声認識

・合成音声の作成とボーカロイドの流行

・文章の認識による迷惑メールの抽出やフェイクニュースかの判断

・翻訳

・文章の添削、チェック、要約など

ただし、音楽や文章の意味そのものを感じることができるようになった訳ではなく、膨大なデータから正解と思われるものを出力することができるようになっている。

ビッグデータの収集と解析を行う計算機の性能が上がったことで、深層学習を行うことのできる分野は音声、音楽、文章の解析、作成でも見られる。

ただし、意味を理解しているわけではなく、データから正解と思われるものを出力する精度が高くなっている。

今後実用性が期待される分野はなにか

今は実用化されていなくても、今後開発されることを期待されている分野も多い。これまでは無理であるとみなされる分野も多かったが、AI発展のスピードの速さで可能性が見えてきたものも多い。

・人事採用

・書類の作成

・人の将来性を見抜く

これらはデータを分析するだけではなく意味を理解する必要性が実現されている技術と比較しても、大きいため、今は実現困難。また人事採用では豊富なデータがあれば平均的に優秀な人を見抜くことはできるが、データの少ない突出した変人を見抜くことができないという問題点もある。

人事採用や将来性を見抜くなど人の評価への応用が期待される。

ただし、データをもとに判断するため平均的に優秀かどうかは判断できても、データにないタイプの人を見抜くことは難しい。

第一次産業ではAIはどのように利用できるか

 農業、漁業などの第一次産業はこれまで機械化が進まず、労働の負担も大きいため後継者不足や高齢化が進行している。

機械化の進みにくい理由は自然界に直接働きかける要素が多く、画一的な工程が通用しなかったため。

 ロボット+AIであれば、仕事の効率化が大きくする。農業であれば、

・トラクターの自動運転化

・除草ロボット

・作物が収穫時期か判断し、収穫するロボット

・作物の選別

などが挙げられる。これらの技術は精度が70〜80%とそれほど高くなくても、人間の作業負担を減らし作業効率が大きく向上する。精度が低くても問題なければ低コストで導入できることも魅力となる。

さらにAIやロボットが浸透すれば、より多くのデータが集まるようになり、更なる効率化や負担軽減が期待できる。

自然を相手にする一次産業では機械化が進みにくかったが、AI+ロボットであれば仕事の効率化が可能。

精度が低くても十分に人間の作業負担を減少できるため、低コストでの導入が可能であることも普及を後押しする要因。

第二次産業ではAIはどのように利用できるか

製造工場などの第二次産業はすでに機械化が進んでいるが、AIやIoTをもちいたスマート工場では更なる機械化や効率化、省力化がすすむ。

・画像認識による検査工程の自動化

・センサデータの活用による工程の改善や人間の作業の数値化

・機械の稼働や人員配置などの生産計画の策定

 工場へのAI導入のメリットには

・安全性の向上

・労働者の負担軽減

・判断基準の統一化

・熟練者のノウハウの数値化や継承

・生産性の向上

などが挙げられる。

一方で、デメリットもあり

・高い能力を持つ技術者が育ちにくくなる

・AIのお守りが多くなれば、現場の働きがいが低下する

・導入コストが高い

などが挙げられている。

 AIは進化しているが、100%の精度で画像認識を行うことは難しい。ミスを人間がフォローする体制はまだまだ必要。 

それでもAIの導入は止まらないため、全ての作業員に最低限のAIリテラシーが求められるようになっていく。

工場の機械化はますます進む。ただし、進化したAIでも100%の精度にるわけではなく、人間がフォローする仕組みが必要。

AIの導入は進むため、すべての作業員がAIリテラシーを身に着ける必要がある。

第三次産業ではAIはどのように利用できるか

 小売業や運送業などの第三次産業でも、AIによる自動化が進行している。

・人の目で行っている作業や確認を画像認式で自動化する

・AIチャットボッドや音声応答など問い合わせの自動化

・需要予想による発注在庫管理の自動化

 コストの削減だけでなく、確認、発注作業などから人員を解放し、別の仕事をしたり、負担を軽減する目的でAIを導入する企業も増加している。

小売業や運送業でもAIによる自動化は検討されている。ただ人をAIに置き換えて、コストを削減することだけを目的とするのではなく人間に別の仕事をさせるためにAIを導入する企業も増加している。

AI人世にもとめられる心構えは

AIに求める機能には2種類がある。

・人間を凌駕するもの

・普通のプロ、平均的なレベルを求めるもの

 多くの分野では普通のプロレベルのAIが浸透するため、以下のような能力が求められるようになる。

・AIにどのようなタスクをやらせるか決める

・どのようなデータを取集するか決め、取得したデータを入力する

・人とAIをどうやって協働させるかを考える

便利な製品や技術はこれまでは旧来の仕事が減っても、新たな産業を生み出し、雇用を生み出してきた。しかし仕事そのものを肩がわりするAIの普及は人間の仕事を減らすだけの可能性もある。

生きるために必要な所得を補償するベーシックインカムなどの対策も考えられているが、途方にくれる人も出てくるかもしれない。

単純な計算や繰り返しではAIに勝つことをできない。AIに何をさせるか、どうやってAI使うかなどが今後は求められる。

これまでの新しい技術と異なり、新たな産業や雇用を生み出さない可能性もあり、生きるために働くという感覚が通じなくなる可能性もある。

AIはどのように進化してきたか

AIの研究自体は以前から続けられてきましたが、深層学習によってその応用範囲は多く広がった。

パターン認識は人間にとって難しい問題ではないが、AIにとっては難しかった。深層学習以前のAIでは人間が数値化し読み込ませていたが、うまく行かなかった。

深層学習では、画像データなどと答えを入出力関係として膨大な量のデータを用意し、高い精度での認識を可能にしている。

深層学習は大量のデータを再現可能なようにニューラルネットワークの結合を微調整し、学習を成立させているため、何を手がかりに判別したかの説明が得られるわけではない。

以前の人間がデータを数値化してパターンを認識させる方法では精度が悪かった。

AIに膨大なデータと答えを読み込ませ、機械にパラメータを調整させる深層学習でAIの精度が大きく向上した。

AIに対してどのような心構えをすべきか

AIが人間を超えるのかという話も多いが、最適な解を求める能力は人間を上回っており、AIが自分自身で改良を重ねる試みも始まっている。

しかし、新しい問題を見つけ出したり、チャレンジする心は持っておらず、人間のお膳立てがまだまだ必要。

AIは今後も変化していき、その変化に困惑させられることもあるが、現状をしっかりと見つめ、自分達の生き方を考えることが必要になっている。

最適な解を求める能力ではすでに人間を上回っているが、まだ人間によるフォローが必要。

AIの現状をしっかりと見つめ、自分たちの生き方を考えることが必要。

感想

 AIによる技術革新を耳にする機会が多くなった人も多いと思います。ニュースなどで目にするだけでなく、会社でAIの導入を検討したりすることも当たり前になっています。

 仕事を奪われるのでは?という恐怖を持つ人も多いと思います。またすべての仕事がなくなり人が働く必要がなくなるのでは?と思う人もいるかと思います。

 現実はやはりその間で、すべての仕事にAIが導入されるが人間のフォローが必要であることが本書を読むとよくわかります。

 ただし、あらゆる業界でAIが利用されるため、AIに関する知識を全員が持つ必要があります。私自身も仕事で試験的にAIを使用していますが、

・どのような課題を設定するか

・どのようにデータを入力するか

が非常に重要と感じています。

 私自身は最適化する目的で使用していますが、作業量の減少にもAIが多く利用されていることが印象に残りました。特に農業を助けるAIの部分では超高精度でなくても十分に人の手助けになる部分はあまり考えたことがありませんでした。 

 完璧なデータを入力し、完璧な答えのみを求めるのではなく、ざっくりとした仕事をAI+ロボットで行い、人間が仕上げるという流れも加速しそうでした。

 AIは変化の激しい分野で今後もこの本のような本をチェックしていきたいなと感じました。

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