この本や記事で分かること
・触媒とは何か
・触媒はどうやって反応速度を上げているのか
・触媒に求められる性能とは何か
活性化エネルギーが大きな反応の速度を上げるにはどうすれば良いのか
化学反応は反応物同士を混ぜ、分子同士を衝突させるだけではなく、熱などのエネルギーを加えることで、活性化状態にする必要があります。
活性化状態にするために必要なエネルギーは活性化エネルギーと呼ばれ、反応によってその活性化エネルギーの値は異なります。
活性化エネルギーが大きな反応を進行させるためには、大量の熱などのエネルギーが必要となります。このような反応が進行しにくい反応では、触媒が利用されることがあります。

触媒とは何か
触媒は化学反応の速度を上昇させ、自身は反応の前後で変化しないもののことです。
化学反応が進行するには、反応物が活性化状態になる必要があります。
触媒は反応物と反応中間体を形成しています。反応中間体が元の反応を活性化状態にするよりも活性化エネルギーが小さい場合は、その反応は触媒によって反応が進行しやすくなります。
反応に必要な活性化エネルギーを小さくすることができるため、触媒の存在で反応速度を上昇させることが可能です。

触媒による反応はどのように進むのか
触媒が活性化エネルギーを小さくする機能は触媒活性と呼ばれます。高い触媒活性を持つ触媒であるほど、触媒の量や反応に必要なエネルギーを少なくすることが可能になります。
触媒による反応は以下の順序で進みます。触媒の吸着部位への反応物の吸着→中間体形成→反応進行→生成物の脱離→触媒の吸着部位への反応物の吸着・・・
触媒は触媒表面にある吸着部位に反応物が吸着することで、中間体を生成します。そのため、吸着部位には反応物が吸着しやすいことが高い触媒活性には欠かせません。
ただし、生成物の吸着が、強すぎると生成物の脱離が遅くなり、反応物の次の吸着が遅くなってしまうため、吸着と脱離のバランスが重要になります。

触媒にはどのような種類があるのか
触媒は大きく、均一系触媒と不均一系触媒に分けられます。
均一系触媒は、溶液に溶けて触媒として働くものです。有機物の合成で広く利用されており、反応物とともに溶けて働くため、ただ、反応終了後に触媒を分離が難しいという欠点があります。
不均一系触媒は触媒を固体のまま、利用する触媒であり、反応後の分離が容易であり、再利用もしやすいという利点があるため、大量の工業製品を生み出すような反応や自動車の排気ガスの浄化などに利用されています。
また、生体内の反応に対し、触媒活性を示すタンパク質は酵素と呼ばれます。酵素は特定の物質に対してし働かない基質特異性が特徴ではありますが、活性化エネルギーを小さくするという特徴は触媒と変わりません。

触媒の活性を高くするにはどうすれば良いのか
触媒は吸着部位が多いほど、反応点が多くなるため、不均一系触媒では穴の開いた構造など表面積の多い構造を持つことでも高い触媒活性を実現することができます。
触媒そのものの表面積を増やすことができない場合は、多孔質な物質の表面に触媒を吸着させておくことで表面積を増やすこともあります。
多孔質な物質は担体と呼ばれ、担体の上に吸着した触媒は担持触媒と呼ばれます。担体として利用される多孔質物質にはゼオライト、活性炭、シリカゲルなどがあります。
担体自体が反応物の吸着に優れていると反応速度をさらに上げることも可能になります。

触媒活性以外に触媒に求められる性能は何か
高い触媒活性以外にも触媒には、高選択性と耐久性が求められます。
複数の反応が進行するような場合は、できるだけ進行させたい反応のみを進行させるような高い選択性をもつことも重要です。
また、触媒自信は反応前後で変化しませんが、物理的、化学的な悪影響を受けてしまうと活性が失われてしまします。
これらの悪影響を受けにくい高い耐久性も触媒に欠かせない能力となります。
特に目的の反応物以外の別の物質のほうが吸着が強い場合、吸着部位が別の物質で埋まってしまうと反応物が吸着することができなくなってしまいます。
この触媒活性の低下を引き起こす物質は触媒毒と呼ばれます。

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