この本や記事で分かること
・アルキンの水素化の反応機構
・アルキンからアルケンの合成でのシス体、トランス体
・酸化剤によるアルキンの開裂反応
アルキンの水素化はどのように起きるのか
アルキンを金属触媒で処理することで、容易に還元されアルケン中間体を経て、アルカンを生成します。
触媒に炭素上のパラジウムを用いた際には、アルカンまで還元されますが、Lindlar触媒を利用すると還元をアルケンで止めることが可能です。
Lindlar触媒は金属パラジウムを炭酸カルシウム担体上に沈殿させ、不活性化したものです。
反応はアルケンの場合と同じく、シンの立体化学で起こるため、生成するアルケンはシス配置となります。

アルキンからトランス体のアルケンを優先的に合成する方法はあるか
Lindlar触媒はシス配置のアルケンを生成しますが、金属リチウムを含むアンモニア溶液で処理することで、トランス体を多く含むアルケンの生成が可能です。
反応はまず金属リチウムがアルキンに電子を付与し、アニオンラジカルが生じます。アニオンラジカルは溶媒のアンモニアからプロトンを引き抜き、ビニル型のラジカルを与えます。
ビニル型のラジカルの反応性は高いため、別のリチウムからもう一個電子を受け取り、ビニル型のアニオンを生成します。
ビニル型のアニオンが別のアンモニアからさらにプロトンを引く抜くことで、最終的なアルケンを生成します。
ビニル型のアニオンは立体障害の少ないトランス型を形成します。シス-トランスの平衡にあるものの、この平衡反応はあまり早くありません。
そのため、最終的な生成物であるアルケンも多くがトランス配置となります。

アルキンを酸化剤で開裂するとどのような反応を起こすか
アルキンもアルケンと同様に酸化剤による開裂が可能です。ただし、三重結合は二重結合よりも反応性に乏しいため、開裂による生成物の収率が悪いことも少なくありません。
三重結合が分子の末端にある場合は開裂によって、カルボン酸と二酸化炭素を生成します。末端ではなく内部に三重結合がある場合は二種類のカルボン酸を生成します。
酸化剤としては、アルケンと同じようにオゾンや過マンガン酸カリウムが用いられます。

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