すごい行動経済学 橋本之克 要約

本の概要

行動経済学とは心理学と経済学を合わせた学問で、実際の人々の行動、非合理的な行動をとることを前提としています。

なぜ、非合理的な行動をとってしまうのか、またどのようにすれば人々の行動を適切なものへと変えることができるのか、人を動かす際に気を付けるべきことなどを知ることのできる学問となっています。

きちんとした理論、理屈があるにも関わらず、うまくいかないことも多く、そのような際に行動経済学がその原因を明らかにしてくれることもあります。

行動経済学を活用することで社会、ビジネス、生活などに大きく貢献することができます。

この本がおすすめの人

・行動経済学が何か知りたい人

・人々がなぜ不合理な行動をとるのか知りたい人

・組織やチームを変えようとして、理屈はあるのにうまくいかない人

行動経済学に興味のある方はこちらも「行動経済学の処方箋の要約」

本の要約

行動経済学とは何なのか

 行動経済学は心理学と経済学を合わせた学問です。

 それまでの経済学は人々の行動は常に自身の利益を最大化するように意思決定されると思われていました。しかし、実際には人々は合理的でない行動をとるため、従来の経済学では説明できない現象が多くみられています。

 行動経済学はそのような疑問、矛盾に答えることで発展してきました。行動経済学を活用することで正しい判断をすることができ、人間関係をスムーズにし社会や企業の改善が可能となります。

従来の経済学は人々が常に合理的な行動をとるはずとしてきましたが、実際には合理的な行動をとらないことも、多く説明できないような現象が多くありました。

行動経済学は常に合理的な行動をとるわけでない、人々を想定し発展してきた分野で従来の経済学では説明できないことも説明することができるようになります。

ナッジとはなにか

 ナッジとは人々に強制ではなく、暗に良い行動を示すことで人々の行動を変える方法です。

 男性用トイレに的を設置すると、トイレの汚れが減ることが報告されています。的があると、つい狙いたくなるため、特に合理性がなくても人々の行動を変えることができます。

ナッジとは強制ではなく、暗に良い行動を示すことで人々の行動を変える方法

なぜ人は不合理な行動をしていまうのか

 不合理な行動をしてしまうのは自分の感じる価値と実際の価値に差異が生じために起きてしまいます。

人間の行う合理的でない選択には以下のようなものがあり、これらの効果で実際の価値と感じる価値に差異を生じさせ非合理的な選択、行動をしてしまいます。

1.保有効果
 何かを保有すると、それに実際以上の高い価値があると感じる。
2.損失回避
 同じ価値であっても、何かを手に入れる喜びより、失う悲しみのほうが大きい。
3.ザイアンス効果
 ある対象への接触の繰り返しでその対象への好感度が高まる。
4.サンクスコスト
 回収が不可能になった時間、費用が無駄になるのが嫌で後に引けない。
5.機会費用の軽視
 ある選択をした際にしなかった選択肢を軽視し、自分の選択を正当化する。
6.現状維持バイアス
 未知なものを受け入れず、現状のままでいたいとする心理。
7.ハウスマネー効果
 不労所得や幸運で儲けたお金は労働で得たお金よりも粗末に扱う
8.決定麻痺
 選択肢が多すぎると、選択を先延ばしにし選択することをやめてしまう。
9.利用可能ヒューリスティック
 印象の強い事象や事柄を実際よりも頻度や確率を高く考えてしまう。
10.代表性ヒューリスティック
 論理的ではなく、ステレオタイプにどれだけ近いかを基に判断してしまう。

 企業はこれらの効果を利用し、消費者に製品やサービスを売り込んできます。特にソーシャルゲームやSNSなどをやめたいのにやめられないときはこのような性質があることを理解し、対処することで過剰な依存を防ぐことができます。

人の実際の価値と感じる価値には差異があることが多く、この差異が合理的でない行動を生んでしまいます。

行動経済学をどのように利用できるのか

 行動経済学を適切に利用すれば、以下のような方法で深層心理に働きかけ、根性論による無駄な努力ではない行動の改善が可能となることもあります。

1.締め切り効果
 明確な締め切りがあると集中力が向上します。
2.上昇選考
 時間の経過で満足が拡大することを好みます。時間の経過で増加する(積み重ねるもの)ものを目標とすると満足度が得られやすく、努力しやすくなります。

適切に行動経済学を使用することで、深層心理に働きかけ行動改善が可能になります。

持続的な行動改善のカギとなることは何か

 モチベーションには外発的なものと内発的なものがあります。

 外発的モチベーションとは外部からくる、金銭、社会的承認などのインセンティブです。

 内発的モチベーションは内なる目標や姿勢から生まれる、誇り、挑戦心、義務感などです。

 一部の外発的モチベーションは内発的モチベーションを阻害してしまうことがあるため、長期的には内発的なモチベーションを高めることが不可欠です。罰金による行動の改善に限界があることもその一つです

 解釈レベル理論を考慮することも重要です。解釈レベル理論とは時間の変化につれ判断や評価が変わる心理的なバイアスのことで、
時間的に遠いものは抽象的、本質的、特徴的な点に注目しがちで、
時間的に近いものは具体的、表面的、些末的な点に注目しがちです。

 結婚が近づくとマリッジブルーになるのも解釈レベル理論によるものです。バイアスがあることを理解し、客観的に判断するよう心がけることで偏った見方を減らすことができます。

持続性を持たせるには内発的なモチベーションが欠かせません。また、自分を含め誰でもバイアスがあることを理解しておくことも偏った見方を減らす力となります。

人になにかを紹介するときには気を付けるべきことは何か

 人を動かす偉大な人物や企業はゴールデンサークルとよばれるパターンで行動しています。

 ゴールデンサークルの中央にWhyがあり、その外にHow、一番外にWhatがあります。。

 なぜそれをするのか→どうやってそれをするのか→何をするのかという順序が重要です。Appleなどは実際このような発表を行っています。

 なにか製品を売る時に商品を機能を紹介するとうまくいかないことも多いですが、人はWhyに共感することで、心を動かされるのでなぜを説明すると成功しやすくなります

人はなぜに共感を持ちやすいので、製品やサービスで何ができるかよりも、なぜするのかを説明すると共感されやすくなります。

人は未知のモノに実際以上にリスクを感じやすい

 リスクも行動経済学の重要なテーマです。人は実際以上にリスクを大きく見積もってしまうことが多く、特に未知なものには過剰なリスクを感じやすいです。

 サッカー選手とユーチューバ―はどちらも同じくらい成功するのは難しいですが、サッカー選手を目指すことのほうが高齢者にとってリスクが少なく感じるのは、ユーチューバーのほうが未知性が大きいためです。

人は同じようなリスクでも想像できないこと、未知なことにより大きなリスクを感じます。

企業はバイアスをどのように利用しているのか

 様々な心理バイアスによって、我々は不合理な選択をすることがあります。現状そのようなバイアスを利用するのは企業のほうが巧く、人々の購買行動に影響を及ぼしています。

 まずは、様々なバイアスがあり企業がそれを利用していることを知ることが、リスクを回避する第一ステップをなります。

 ヒトの脳は素早い判断とじっくり判断する二つのシステムを組み合わせて物事を判断します。二つの連係ミスを突かれると、不合理な判断をするように誘導されてしまいます。

企業がバイアスを利用し、購買行動に影響を及ぼし利益を得ていることも少なくありません。

行動経済学を利用することで社会をどう変えることができるのか

 ナッジを利用することで社会に対し、強制ではなく適正な行動をとらせることができます。解釈レベル理論を用いることで将来を意識させることで、本質的な判断をさせ、一度貯蓄を始めると現状維持バイアスで続けることができるのはナッジに利用の一例となります。

 頭ではわかっているのに適切な行動をとることができない人のために使用されるべきで、人々の行動を制御するために使われるべきではありません。

 企業はこのような仕組みで利益を得ることもできるが、それが明らかになった時、人々は不利益をこうむっても企業の不公正を罰することもあります。企業が公正さをもつことが長期的には企業の存続につながっていきます。

 人間が合理的であれば、厳しい罰を与えることが最善の行動抑制になります。しかし人間は非合理な判断をすることも多く、多少不合理でも公正でいたいという気持ちも持っています。
 
 特にシェアリングエコノミーでは人々の公正でいたいという気持ちを利用することも、システムを成り立たせる重要な要因となります。

 このように行動経済学は社会、ビジネス、生活に幅広く貢献することが可能な学問になっています。

行動経済学によって強制ではなく、適切な行動をとらすことが可能にありますが人々行動を制御するために利用されるべきではありません。

人々の公正でいたいという気持ちを利用することで様々な領域で貢献できる学問になっています。

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