科学者たちが語る食欲 デイヴィッド・ローベンハイマー 要約

本の概要

肥満の人は世界的に増加しており、その健康被害は年々増加しています。

一方で、自然界の生物は多様な食環境の中で、自然とバランスの良い食事をとることができています。

生物がどのように何を基準に食事をしているのかを研究したところ、重要なのはタンパク質の量であることが明らかになってきました。

我々の食生活は加工食品などの流通で大きくゆがんでしまっています。なぜこのようなゆがみが発生してしまったのか、どのような食生活を送るべきかなのか知ることができる本になっています。

この本がおすすめの人

・食欲について知りたい人

・健康的な食事について知りたい人

本の要約

要約1

自然界の動物は多様な食生活を送れる場面では、自然とバランスのとれた食事を行うことができます。一方で、人類は肥満に悩むなどバランスの取れた食生活を送れているとはいいがたい状態です。

生物の食べ方を学ぶことで人間に食の問題を解決できる可能性があり多くの研究がなされています。

要約2

研究の結果から多くの生物でタンパク質を満たすように食事を行っていることが明らかになっています。

低タンパク質な食事を与えられると、タンパク質を満たすために食事量を増やすことも確認されました。

人間も同じようにタンパク質を優先する傾向がみられています。

要約3

加工食品はタンパク質が少なく炭水化物や脂質が高いため、タンパク質欲求を満たすために過剰に摂取してしまい、肥満につながっていきます。

タンパク質が十分にあると繁殖を行いやすくなるため、生物はタンパク質を優先して摂取しようとします。

ただし、繁殖を積極的に行えるようなタンパク質があると繫殖にエネルギーを使ってしまうため、長寿には適していません。

要約4

加工食品メーカは人の食の好みを把握し、自分たちの商品を多く食べてもらえるように低たんぱく質にしていることも少なくありません。

食物繊維は消化に時間がかかるため、タンパク質を欲求を鎮める働きがありますが、現代の食事では食物繊維の量が少ないことも肥満の原因となっています。

長寿の多い地域でよく見られる、高たんぱく質なものを少量と食物繊維が豊富な食生活を行うことが健康で理想的な食事と考えられています。

理想的な食事とは何か

 自然界の多くの動物は、取れるエサがその時々で異なるにも関わらず食事のバランスが非常に均一です。この特徴はヒヒのような哺乳類だけでなく、粘菌のような単細胞生物でも見られます。
 生物がどのように食べるべきものを知るのかを知ることで、肥満に代表される人類の食の問題を解決できる可能性があります。

 動物はタンパク質の摂取量を理想的にするように食事を行っています。タンパク質は理想的に摂取すると繁殖しやすくなるが長生きしにくくなり、タンパク質が理想より少ないと長生きしやすくなります。

 しかし現代の食事は低タンパク質で高炭水化物、高脂質加工食品が増えているため、長生きに必要なタンパク質を摂取するためでも食事の摂取量が増え、肥満などの健康被害が増加してしまいます。

 食物繊維はタンパク質欲をブレーキする働きがあるが、食物繊維も加工食品にはほとんど含まれていいません。

 加工食品の製造会社は巨大で大きな影響力をもつため、消費者自身がどのようなものを摂取するか考えることが重要になります。

自然界の動物は人間と違い、食事のバランスが非常に均一です。そのため生物がどのような食事をしているか知ることで人類の食問題を解決できる可能性があります。

タンパク質が程よく、食物繊維の多い食事が長生きには必要ですが、加工食品の多い現代では、難しくなっています。

昆虫はどのように食べる量を決めているのか

 昆虫での研究では、昆虫がタンパク質を強く欲することがわかっています。草食の虫で周りに草があったとしても、彼らは共食いをすることでタンパク質を摂取することを何よりも優先します。

 様々な比率のエサを与えたとき、バッタはタンパク質を基準に食べる量をコントロールしていました。

 タンパク質比率が低く、炭水化物比率の高いエサを与えられると規定のタンパク質を摂取するために過剰に炭水化物を摂取することになりました。

 これらのバッタは脱皮するまで時間がかかる肥満になるなどのデメリットが確認されました。

 逆にタンパク質比率が高く、炭水化物比率の低いエサでは、既定のタンパク質をオーバーすることなく、エサを食べ、やせ過ぎで、成虫になるまで生きる可能性が低くなります。

 一方で、複数の比率のエサを与えると、理想的なバランスとなるように食事を行っています。

昆虫はタンパク質を規定量とるように食事量をコントロールしています。タンパク質を規定量とるためには炭水化物を過剰に摂取することもあります。

野生動物はどのように栄養バランスの取れた食事行うのか

 食べものは栄養素のほぼ無限ともいえる組み合わせからできています。主要栄養素であるタンパク質、炭水化物、脂質と微量栄養元素、食物繊維などが栄養の主要なプレイヤーです。

 人間には難しいことですが、野生動物は栄養バランスの取れた食事を直感的に行ってます。

 動物は様々な方法で食材に含まれる栄養素を判別しています。人間であれば味覚を使い栄養素を判別しますが、体の器官を使い、糖やアミノ酸の味を感じる動物もいます。

 人間の感じる食欲はただ満腹化どうかだけではなく、それぞれの栄養素ごとに存在します。

 人間はタンパク質、炭水化物、脂肪、ナトリウム、カルシウムの5つの食欲を人間は持っています。

 これらの栄養素が食物から取り出されて、血流に吸収されると満腹信号が送られます。しかし信号の発動までには時間がかかり、その間は栄養が足りていても満腹を感じることができません。食物繊維は食欲にブレーキをかけ、バランスの良い食事をしやすくする働きがあります。

野生動物は直感的にバランスの取れた食事を行っています。

人間にはタンパク質、炭水化物、脂肪、ナトリウム、カルシウムの5つの食欲があり、それぞれが満たされる必要があります。

動物はどの栄養を優先的に摂取するのか

  栄養のバランシングはバッタ以外でも観察され、なんでも食べるゴキブリもバランスの取れた食事を行っています。食動物でもペットの犬や猫でも比率は違えど、バランスを重視しています。

 さらに常に一定のバランスで食事をするわけではなく、身体に必要な栄養を優先し、摂取します。多くの動物で、もしバランスを崩さなくてはならないときにはタンパク質を理想通り摂取することを優先しています。

 人間でもこの傾向は同じで低タンパク質を与えられた被験者は摂取カロリーを12%も増やすこととなり、世界的な肥満のまん延を説明できる数値でした。

人間も含め多く動物は、タンパク質を規定量食べることを優先します。

低タンパク質の食事では、食事量が増やしてタンパク質を確保するため、食べ過ぎによる肥満につながります。

タンパク質の摂取量がなぜ重要なのか

 食事のタンパク質比率を高めることでその他の栄養素の接種が減り、肥満や糖尿病のリスクが減少します。ではなぜタンパク質の上限があるのか。

 シュウジョウハエの実験では総接種カロリーと寿命の間に相関はなく、タンパク質と炭水化物の摂取比率に強い相関があります。

 高たんぱく/低炭水化物のハエは寿命が短かった。最も寿命の長い比率よりも高いタンパク質を摂取したハエは最も産卵数が多かったがそれ以上になると産卵数も減少しました。
 つまり少量のタンパク質は長生きするが子孫を多く残せない、それより多少増やすと子孫は残せるが長生きできない、さらに摂取を増やすと寿命も伸びず、子孫も増えません。

 繁殖と寿命は栄養上の要件が異なるが、生物は長寿よりも繁殖を選ぶようにできています。

 ヒト等の生物には長寿回路と成長、繁殖回路があり、十分なタンパク質があると成長、繁殖回路
が働き長寿回路が停止します。断食や低タンパク質食では長寿回路が働くため、老化しにくくなります。

生物には長寿回路と成長、繁殖回路の二つがあります。

十分なタンパク質があると生物の身体は長寿回路を抑え、繁殖にエネルギーを使うため老化しやすくなります。

低タンパク状態では繁殖回路を抑え、長寿回路が優先的に働きます。

長寿に有効な栄養バランスはどのようなものか

 低タンパク質、高炭水化物の食事は長寿な反面、摂取量が増えるため、肥満になりやすいです。一方で高脂肪での肥満は寿命を縮めます。

 食物繊維は消化に時間がかかり、胃の負担を増すため、タンパク質欲求を弱める効果があります。長寿の地域はタンパク質と脂肪が少なく、食物繊維豊富な炭水化物を多く食べています。

タンパク質と脂肪が少なく、食物繊維豊富な炭水化物を食べることが長寿に有効です。

人類は新しい食生活に適応することはあるのか 

 野生動物も実験室と同じようにタンパク質を軸に食べる量を決めています。またエサが均一でない野生ではエサが豊富な際に脂肪とタンパク質を貯蓄し、エサのない時期に備えるように環境に適応することもできます。

 哺乳類の乳にはラクトースと呼ばれる乳糖が存在し、人類は生後しばらくするとラクトースを分解できず、下痢になってしまいます。しかし牛乳などは栄養豊富なため。ラクトースを分解できることは、生存有利となり後世に受け継がれました。

 長期にわたって新たな食環境に適応するのは人類でも可能ですが、短期的に大きな食変化が起きると人間はうまく対応することができなません。

 伝統的な食事をしていた地域に加工食品が侵入すると、肥満などの健康被害が増大する例が世界中で確認されている。

ラクトースの分解など長期的には有利の変化が受け継がれることはありますが、短期的な食変化に人類が対応することはできません。

加工食品の導入で食生活が変化し、肥満などの健康被害が増大する例は世界中で見られます。

現代の加工食品は何が問題か

 人類の歴史で食品の加工は多く行われてきましや。その目的は長期保存、したごしらえ、缶詰等です。

 これらの加工は農業が始まる前から行われているものもあり、現代の栄養的災難の原因とは考えにくいものです。

 現代の超加工食品は工業製品と同じような扱いになっています。様々な添加剤を加えることで栄養摂取を操作し、その食品を大量に食べるように仕向けられています。

 超加工食品はタンパク質比率が低く、安価な炭水化物や脂質比率が高いため、その食品を食べてもタンパク質欲求が満たされず、過剰に摂取してしまいます。

 また、食物繊維、微量元素も取り除かているため、より不健康な食物となっています。

 超加工食品を販売する企業は超大企業であり広告戦略を行い、政府への影響も強いため、具体的な製品を減らすように公にならないことも多いため消費者が自覚を持つことが最も重要です。

現代の加工食品はタンパク質が少なく炭水化物や脂質が高いため、タンパク質欲求を満たすために過剰に摂取してしまいます。また食物繊維や微量元素が少ないことも不健康な要因です。

加工食品のメーカの影響が強いため、消費者が自覚を持つことが重要になります。

食事ではどのようなことに気を付けるべきか

 タンパク質が必要になると、他のバランスを犠牲にしても、タンパク質を摂取しようとしてしまいます。特に子供は理性を司る部分の働きが弱く、超加工食品を好みやすくなってしまいます。

 年齢によって必要なタンパク質量は異なるため、自分に必要なタンパク質ターゲットを把握し、超加工食品を避け、高たんぱく質食品や食物繊維を食べることが基本となります。

高タンパク質食品を食べることで食べすぎを防ぐこと、食物繊維を食べることが基本となります。

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