BIG THINGS ベント・フリウビヤ、ダン・ガードナー 要約

本の要点、概要

 大きなプロジェクトが予算を超過したり、期限が間に合わなかったり、利益や便益が予想よりも少ないなどのトラブルに見舞われる例は多くあります。

 東京オリンピックでも、経費が予定を大幅にオーバーし、その経済効果も予想よりも少なかったとするニュースが話題になっています。

 多くの失敗したプロジェクトは実行段階でトラブルに見舞われることで、失敗しているように見えます。しかし、失敗の原因は実行段階でのリスクを考慮できなかった計画段階にあります。

 つまり、プロジェクトは徐々にうまくいかなくなるのではなく、計画段階で失敗が決まっています。プロジェクトを成功させるために必要なことはゆっくり計画し、素早く実行することです。

  実行期間が長くなればなるほど、不測の事態によるトラブルが起こる可能性は増してしまうので、計画段階であらゆるリスクを想定し、素早く実行することが求められます。

 しかし、人間の持つ様々なバイアスがゆっくり計画することを邪魔してしまいます。

 大きなプロジェクトの失敗例や成功したプロジェクト例を通じて、プロジェクトを成功させるために必要なことは何か、必要なことを実現するためにはどんなことに気を付けるべきかを知ることができる本になっています。 

この本や記事で分かること

・なぜ、大きなプロジェクトはうまくいかないのか

・うまくいくプロジェクトと失敗するプロジェクトの違いは何か

・プロジェクトを成功させるためには何が必要か

大きなプロジェクトにはどんな傾向があるのか

 大きなプロジェクトを計画しても、実行してみると、計画通りに進まないことはよく見られます。

 予定よりも予算が超過し、期限がかかり、利益が想定よりも少ないなどの結果に終わるプロジェクトはとても多くなっています。

 プロジェクトがうまくいかない傾向は、プロジェクトの種類や国、地域にも関係なく見られます。

 予算内、工期内に完了するプロジェクトは全体の8.5%に過ぎず、予算、工期、便益がすべて計画通りに終了するプロジェクトははわずか0.5%に過ぎません。

大きなプロジェクトには予定超過、予算超過、利益過小など上手く行かないことが多く見られます。

なぜ、プロジェクトの予算超過が起こるのか

 予算超過が起こることを想定し、予備費を計上し、不測の事態に対応できるようにしています。しかし、それでも、予算超過がこれほど多くなるのは、リスクを過小評価しているためです。

 大きなプロジェクトの予算超過は正規分布ではなく、ファットテールと呼ばれる確率分布をもっているためです。

 ファットテールとは極端な外れ値が多く、裾(=テール)が厚い確率分布のことで、極端な値をとる可能性や外れ値の大きさも大きくなります。

要素が多く、複雑な大型プロジェクトほど極端な値となる確率も大きくなってしまいます。

大きなプロジェクトの予算超過は極端な外れ値の多い、ファットテールとなる分布を持っているため、想定以上の予算超過が起きやすくなっています。

ファットテールにある出来事を避けるにはどうすれば良いのか

 大きなプロジェクトでは、滅多に起こらないが、リスクがとても大きい出来事が起こることで、外れ値が発生します。

 プロジェクトの期間が長いほど、滅多に起こらない出来事が起こりやすくなります。

 プロジェクトの実行期間を短くすることで、滅多に起こらない出来事を避けることが可能です。

プロジェクトの実行期間を短くすることで、滅多に起こらないが、リスクがとても大きい出来事を回避することが可能です。

プロジェクトの期限を短くするにはどうすれば良いのか

 プロジェクトの実行期間を短くするために、厳しい期限を設け、関係者を猛烈に働かせるのは質の低下や無駄を生み逆効果です。

 有効なのは、計画段階にたっぷりと時間をかけ、詳細で緻密な確実な計画を作り、実行や作業を円滑に進めることです。

 計画段階で試行錯誤を行う分には、実行段階と比較して、コストが少なくて済みます。計画段階であらゆるリスクを想定しておくことでプロジェクトの実行期間を短くし、滅多に起こらないがリスクの高い出来事を避けることが可能です。

 プロジェクトを成功させるには、ゆっくり考え、素早く動くことが何よりも有効です。

計画段階にたっぷりと時間をかけ、詳細で緻密な確実な計画を作り、実行や作業を円滑に進めることで、プロジェクトの期限を短くすることが可能です。

なぜ、プロジェクトの期限を短くするのは難しいのか

 ゆっくり考え、素早く動くことがプロジェクトの成功には有効ですが、人はなかなか、ゆっくり考えてから、動くことが苦手です。

 人は慎重に考えるのではなく、早く一つに決めたい性質を持っており、一つの選択肢を思いつくと、それが唯一の選択だと思い、他の選択肢を考えることをやめてしまいます。

 また、契約を勝ち取るため計画段階ではコストや時間を低く見積ってしまうことや前に進んでいる感じが欲しいから早く行動を始めてしまうことなどもゆっくり考えることを難しくしています。

人はなかなか、ゆっくり考えてから、動くことが苦手なため、計画段階で詳細な計画を建てることは難しくなっています。

どのように考えれば、ゆっくり考えられるのか

 ゆっくりすること自体が有効なわけではなく、模索、想像、分析、検証といった時間のかかるプロセスを経ていくことが重要です。

 良い計画を生むためには、幅広く深い「問い」と創造的で厳密な「答え」が欠かせません。なぜ、そのプロジェクトを行うのかという根本的な問いを最後まで見失うことが必要です。 

 目的を明確化することで、手段と目的を混同してしまうことを防ぐことも重要なことです。

幅広く深い「問い」を持ち、目的を明確化することがゆっくり考えために有効です。

ゆっくり計画してうまくいった例はどんなものがあるのか

 大型建築のプロジェクトでは、何度も模型を作り、精度の高い計画を練ったことで、プロジェクトが成功しています。

 また、ピクサーでは脚本を制作した段階で、ラフバージョンの映画を作り、みんなで確認し、意見をもらい修正することで、実際のアニメーションを作成する段階を短くしています。

 計画立案を抽象的で形式的な行動ではなく、試行→学習→反復を行う能動的なプロセスとみなすことが必要です。

 また、反復によって得られた暗黙知や実践知も経験として、大きな意味を持っています。

 経験と実験の両方を最大限に活用した計画こそが優れた計画といえます。

計画立案を抽象的で形式的な行動ではなく、試行→学習→反復を行う能動的なプロセスとみなし、時間をかけて、精度の高い計画を練ったプロジェクトがうまくいっています。

優れた計画をするのは、どうすれば良いのか

 人は楽観的な予想をしがちなため、計画段階で十分にリスクを考慮しておくことが苦手です。またプロジェクトでは予測しきれない不測も必ず起こるものです。

 似たようなプロジェクトの平均値を参考にすることで、大まかな計画を建てることは有用です。

 平均ではカバーできない滅多に起こらないが大きなリスクを持つものを避けるには、やはり、期限を短くする必要があります。

 計画段階で、プロジェクトを遅らせたり、中断させうる要因を考え、対策を講じておくことが重要です。

あらゆるリスクを考慮し、プロジェクトを遅らせる要因を考え、対策を講じることで優れた計画を建てることができます。

プロジェクトの実行段階で注意すべきことは何か

 大きなプロジェクトでは、関わる人も多くなるため、高いパフォーマンスを発揮できるチーム作りも欠かすことができません。

 チームを優れた形で機能させるためには、必要なものをすぐに支給するなどコストをかけたり、何を言っても良いと思える心理的安全性の確保することが重要です。

 チームを機能させるためにかけるコストはプロジェクト延期のコストと比較すれば、わずかなものでしかありません。

実行段階では、高いパフォーマンスを発揮できるチーム作りが重要になります。

どのようなプロジェクトがうまくいきやすいのか

 うまくいきやすいプロジェクトはファットテールな出来事が起こりにくく、リスクの小さいプロジェクトです。

 実際に、リスクの小さいプロジェクトとしてしられているのは、太陽光発電、風力発電、化石燃料発電、送電、道路などです。

 これらのプロジェクトはは小さい単位を作り、それを組み上げることで大きなものを作るモジュール性をもっているプロジェクトです。

 1つの巨大なものを作るのではなく、モジュール性を持っている小さいものを無数に集めることで組み上げることでリスクが減少しているため、プロジェクトでは小さいものを無数に集めることで大きな物を作れないかという視点を持つことがリスク回避になります。

小さいものを無数に集めて、大きなものを作るプロジェクトはうまくいきやすい傾向が見らえれます。

プロジェクトの失敗から学べることはなにか

 プロジェクトの失敗の要因は、多くの場合、人間の心理やバイアスにあります。

 例えば、計画が杜撰でも困難を乗り越えれうまくいったプロジェクトのほうが印象に残ってしまいますが、これは生存者バイアスに過ぎません。

 実際には、ゆっくり計画したプロジェクトのほうがうまくいく確率は高くなっています。

 人間のもつバイアスを避けることがなによりも、プロジェクトの達成に必要なこととなります。

プロジェクト失敗の要因である人間の心理やバイアスを避けることがプロジェクトの達成に必要なことです。

本の要約

要約1

大きなプロジェクトを計画しても、実行してみると、計画通りに進まないということはよく見られることです。

計画の段階段階と比べ、予定よりも予算を超過し、期限は想定以上にはかかり、得られた便益、利益が少なかったという結果に終わるプロジェクトは実はとても多くなっています。

鉄道や道路などの輸送関係、医療サイトなどのITプロジェクト、オリンピックなどのメガイベントから美術館や高層ビルの建設などあらゆる種類のプロジェクトで、予算超過、期間延長、予定以下の便益という現象は見られています。

また、この傾向は国や地域に関係なく見られ、予算内、工期内に完了するプロジェクトは全体の8.5%に過ぎず、予算、工期、便益がすべて計画通りに終了するプロジェクトははわずか0.5%に過ぎません。

プロジェクトを成功させるには、ゆっくり考え、素早く動くことが何よりも有効です。

要約2

プロジェクトにおいて、予算が超過しやすいことは多くの人が認識しています。そのため、多くの計画で予備費を計上し、不測の事態に対応できるようにしています。

それでも、予算超過がこれほど多いのはリスクを過小評価しているためです。予備費が足りなくなってしまうことも多く見られます。

これは大きなプロジェクトの予算超過が正規分布ではなく、ファットテールと呼ばれる確率分布をもっているためです。

正規分布は数字の大半が中央に存在し、分布の両端(=テール)には、ほとんど数値が存在していない分布です。一方、ファットテールは正規分布と比較して、極端な外れ値が多く、裾(=テール)が厚い分布になっています。

プロジェクトの結果は正規分布ではなく、ファットテールに該当します。特に要素が多く、複雑であるほど極端な値をとる可能性や外れ値の大きさも大きくなります。

滅多に起こらないが、リスクがとても大きい出来事が起こることで、外れ値が発生します。そのためプロジェクトの実行期間が長いほど、リスクは増加することになります。

そのため、プロジェクトの実行期間を短くすることで、滅多に起こらない出来事を避けることが可能です。

しかし、プロジェクトの実行期間を短くするために、厳しい期限を設け、関係者を猛烈に働かせるのは質の低下や無駄を生み逆効果です。

有効なのは、計画段階にたっぷりと時間をかけ、詳細で緻密な確実な計画を作り、実行や作業を円滑に進めることです。計画段階での試行錯誤はコストが小さくて済むため、計画段階であらゆるリスクを想定しておくことです。

人は慎重に考えるよりも、早く一つに決めたい性質を持っており、一つの選択肢を思いつくと、それが唯一の選択肢である考えてしまいます。

また、契約を勝ち取るために、計画段階ではコストや時間を低く見積り、重大な問題を隠した表面的な計画を建ててしまうことやプロジェクトを実行することで前に進んでいる感じが欲しいから早く行動を始めてしまう、損をしてしまうことに途中で気づいても、それまでに費やした資金や労力(サンクコスト)をもったいになく思いやめられないことなども実行段階で行き詰まる要因です。

要約3

ゆっくり計画することは重要ですが、ただ、ゆっくりすることが良いわけでなく、模索、想像、分析、検証といった時間のかかるプロセスを経た結果、ゆっくりになることを理解しておくべきです。

良い計画を生むためには、幅広く深い「問い」と創造的で厳密な「答え」が欠かせません。なぜ、そのプロジェクトを行うのかという根本的な問いを行い、最後まで見失うことが必要です。

目的を明確化し、なぜプロジェクトとを行うのか考えることで、手段と目的を混同してしまうことを防ぐことが可能になります。

大型ビルなどの建造プロジェクトでは大まかな計画でいきなり建築作業に入るのではなく、何度も模型を作ることで、精度の高い計画を練ったプロジェクトが成功しています。

ピクサーでは脚本を制作した段階で、ラフバージョンの映画を作り、みんなで確認し、意見をもらい修正することで、実際のアニメーションを作成する段階を短くしています。

計画立案を抽象的で形式的な行動ではなく、試行→学習→反復を行う能動的なプロセスとみなすことが必要です。

また、反復によって得られた経験は新しいプロジェクトでも有用なため、暗黙知や実践知といったもの経験も重要視すべきです。

優れた計画とは、経験と実験の両方を最大限に活用したものです。

要約4

プロジェクトがうまくいかない要因は多くの場合、計画段階、実行の前の予測の段階にあります。

人は数値を予想する際に、様々なバイアスに惑わされ、楽観的な予想をしがちですし、プロジェクトでは、予測しきれない必ず不測の事態が起きるものです。

似たようなプロジェクトの平均値を利用し、今回のプロジェクトに類似したプロジェクトの平均値よりも低い/高い明らかな理由があるときだけ調整することが有効です。

それでも、平均はあくまで平均であり、滅多に起こらないが大きなリスクを持つものへの対処はできません。

ごくわずかではあるが、大きなリスクを持つもの=ブラックスワンは予測しきるのは不可能なため、期間を短くすることで発生する確率を下げることが可能です。

計画段階で、プロジェクトを遅らせたり、中断させうる要因を考え、対策を講じておくことで、実行の期間を短くし、ブラックスワンを避けることが可能です。

また、とりあえず動くことが創造性を生むとの考えもありますが、実行段階で追い込まれてしまえば、創造性は発揮しにくくなります。自由に思いを巡らせることのできる計画段階でこそ、創造性を発揮することが可能です。

また、高いパフォーマンスを発揮するチームもプロジェクトを期限内に終えるためには欠かすことができません。

大きなプロジェクトでは、関わる人も多くなるため、チームを優れた形で機能するためには、必要なものをすぐに支給するなどコストをかける、何を言っても良いと思える心理的安全性の確保することが重要です。コストが余計にかかるように感じますが、プロジェクトが延期する際のコストと比較すれば、わずかなものでしかありません。

プロジェクトは「モジュール性」をもっているとうまくいきやすいくなります。モジュール性とは小さい単位を作り、それを組み上げることで大きなものを作ることです。

実際に、モジュール性の高い、太陽光発電、風力発電、化石燃料発電、送電、道路などのプロジェクトはファットテールな出来事が起こりにくいものです。

1つの巨大なものを作るのではなく、小さいものを無数に集めることができないか?という視点を持つことがプロジェクトでは重要になってきます。

プロジェクトの失敗の要因は不測の事態ではなく、多くの場合、人間の心理やバイアスにあります。ゆっくり計画して、行動時のトラブルが少なく、うまくいったプロジェクトではなく、計画が杜撰でも困難を乗り越えれうまくいったプロジェクトのほうが印象に残ってしまいます。

しかし、これは生存者バイアスやデータよりも物語に引き付けられるバイアスでしかなく、実際にはゆっくり計画したプロジェクトのほうがうまくいっています。

早く行動したい、これまでに無いことをしたい、行動時の困難を乗り越えた印象的なプロジェクトばかりを覚えているなど様々なバイアスを避けることが何よりもプロジェクトの達成に必要なことです。

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