この本や記事で分かること
・生物多様性とは何か
・豊かな生物多様性に必要なものは何か
森林はなぜ、生物多様性が豊かなのか
地球の生態系の中でも、森林の生態系は最も複雑で成熟した自然といえます。
森林の豊かな生物の多様性は生産者である緑色植物が幅広く存在していることで実現されています。食物連鎖のピラミッドの底辺である緑色植物が量が多いことが、多様な生物が生活していく土壌を形成しています。
森林は長い時間をかけて、全体に閉ざされた空間の中で、安定した環境を作り出しています。そのため林道などの道を一本通すだけで、外気が侵入し乾燥化が進行してしまいます。
林道の近辺は様相が周囲と異なるため、林道で分けられた部分では、動物の行き来がなくなり、最終的には森林が分断されてしまいます。
森林が精妙で脆弱な構造の上で安定していることを理解することが重要です。

農業に適した土地はどのような場所か
熱帯雨林の森林は高温化であり、菌類や細菌などの分解者の活動が活発な反面、雨が多いため、分解者が創り出した栄養が流されやすくなります。
また、寒冷地では分解者の活動はが低調なため、土壌の栄養は少なくなりがちです。
温帯林は栄養分のバランスとリサイクルのバランスが最も良好で、農耕にも適しています。温帯域の中でも日本は世界でも屈指の良い土壌を持つ国です。
しかし、過剰な都市化や農業の担い手減少への対策のなさから生産量や自給率は大きく低下しています。
日本の良い土壌は焼畑農業で必死に生きている地域の何倍もの効率で食料を生産できる可能性を秘めています。

埋め立て地はなぜ、生物多様性を減少させるのか
海を埋め立てる例も少なくありませんが、海が沖合に広大に広がっているから問題ないと考えられてきました。
しかし、海の中でも豊かな生物相を持つのは浅海域であることが明らかになっています。
生物相の豊かさは生産者に依存しており、海の生産者は植物プランクトンや海藻です。沖合には植物プランクトンしか生産者が存在してしませんが、浅い海域では何層にもなった海藻も生産者として機能しているため、生産性はとても高くなっています。
大陸棚やサンゴ礁、マングローブ林、干潟などの陸と水域の境界部に豊かな生物相が広がっていることを改めて認識する必要があります。

サンゴ礁や干潟はなぜ、生物多様性が豊かなのか
サンゴ礁はダイビングを楽しむ人が多いことからも分かるように、水の透明度が高くなっています。
水の透明度が高いことは植物プランクトンがあまり生えてないことを意味しています。また海藻もあまり生えていません。
サンゴ礁の豊かな生態系はサンゴがその体内で褐虫藻という藻類を高い濃度で共生させています。サンゴが生産性である藻類を抱え込むことで、生物の多様性を実現させています。
干潟も海藻などがなく、一見栄養が豊富な領域には見えません。
干潟には遺骸や排泄物など生物に由来する分解途中となるデトリタスが豊富に含まれています。
アサリなどの二枚貝は植物プランクトンだけでなく、このデトリタスを食べることができます。このデトリタスの存在もあり、干潟では生産者の少なさにもかかわらず、豊かな生物相をもつことができます。

デトリタスとは何か、生態系でどのような役割を持つのか
デトリタスは陸上にも存在しています。
小生物が遺骸になると、肉食の昆虫などが食べ、食い散らかした破片に菌類や細菌類が付着し、デトリタスになっています。
デトリタスはそのまま無機物となるのではなく、様々な無脊椎動物によって無機物にリサイクルされています。
食物連鎖は多くの無脊椎動物によって支えられています。
食物連鎖と聞くと、植物、草食動物、肉食動物の関係で語られることが多いですが、無脊椎動物なしで世界を語ることはできません。

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