BODY SHEARING 身体の制約なき未来 玉城絵美 要約

本の要約

 Bodysharingはコンピュータと人を繋ぐインターフェース技術のことで、体験や感覚をコンピュータに入力し,人に出力することで体験の共有が可能にします。

 経験はその人と人生を作り出すため、1人の経験が人類全ての経験となれば、経験を伝えることができれば大きな進化につながる可能性もあります。

 体験をする際の時間、空間、身体の縛りがなくなり、他の人の体験の共有は共感や多様性への理解、寛容性の増加などの期待もあります。

 物体に作用するための身体感覚である固有感覚が伝わると自分の体ではなくても,体験を能動的に感じ,共有することができるようになります。

 視覚などの語感を伝えるだけでは,体験を共有するには足りません。固有感覚と呼ばれる物の重さや位置覚を伝えることで、体験の共有が可能になります。

この本がおすすめの人

・Bodyshearingとはなにか知りたい人

・体験の共有とはなにか、どうして可能になるか知りたい人

・体験の共有でなにができるか知りたい人

Bodysharingでなにが可能になるのか

 これまで,人類は時間,空間,身体に縛られて生きてきたましたが,Bodysharingはその縛りを解き放ちここの体験を共有することを可能にする技術となります。

 体験を積み重ねることで,記憶を形成し,思考プロセスすら変容するため,体験を積み重ねることが人生の目標や過程となります。

 体験を共有することで人は社会性を持ち,適応と進化を繰り返してきましたが、身体の持つ感覚情報は20以上存在し,これまでの技術では,真の意味での体験共有は難しいことでした。

 Bodysharingによって体験の共有化が進めば人類の更なる進化が期待できます。

Bodysharingで体験の共有が可能にあれば、時間、空間、身体の縛りがなくなり、人類のさらなる進化が期待できます。

Bodysharingで体験を共有するにはなにが必要か

 自分の体以外で体験したことを能動的な体験として得るために、最も重要な感覚が固有感覚となります。

 固有感覚は物体に作用するための身体感覚で物の重さ、抵抗感、自分の体の部位がどこになるかを把握する位置覚などがあり、身体の深部に配置された受容器を使い情報を得ています。

 固有感覚を他者に伝えることができれば、体験の共有度は大きく増加しますが。そのためには固有感覚をデジタル化し、コンピュータを介し伝達することが重要となります。

固有感覚をコンピュータに入力し、人に出力するためのインターフェースがBodysharing技術となります。

体に作用するための身体感覚で物の重さ、抵抗感、自分の体の部位がどこになるかを把握する位置覚などの固有感覚を共有できれば、体験の共有度が大きく増加します。

固有感覚をデジタル化できるかがBodysharing技術にとって重要になります。

Bodysharingはどんな社会を作り出せるのか

Society5.0は狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会につぐ5段階目の社会であらゆるもの、ヒト、情報が繋がり、誰もが自分の能力や想いを活かして、関わり必要なものを受け取ることができる社会として定義されています。

その実現にはサイバー空間とフィジカル空間の融合が必須となり、Bodysharing技術が両者の架け橋となります。

 知覚の変化は社会を変えると言われています。近くの変化から世界、社会、人が今どのような場所に位置しどこへ進んでいるのか、私たちに何ができるのかについて考えることができます。

Bodysharingはサイバー空間とフィジカル空間の融合をもたらします。誰もが自分の能力や想いを活かして、関わり必要なものを受け取ることができる社会を実現することができます。

Bodysharingはどうして特別なのか

コンピュータと人を繋ぐインターフェースはこれまでも進化してきました。スマホではタッチシステムとGPSなどでのインターフェースによってユーザーの行動、位置、身体情報のデータを収集できるようになり、ビックデータとなることで大きな進化を遂げています。

集めたデータをAIで処理するようになったことで人間側が受け取る情報量がさらに増えたことで、これらを出力するために、VR、AR、MRなどが開発されているが、Bodysharingではこれらの技術でも伝えることのできない身体感覚を伝達することができます。

人は体験を伝達することで進化してきました。絵画、写真、映画は視覚を用いた体験の伝達法の進化であり、聴覚では口承から蓄音機、ラジオ、電話、と進化してきました。

現代では、言語、視覚、聴覚だけでは物足りなくなり、嗅覚、触覚などの開発も行われていますが、固有感覚を伝達できれば、受動的な体験だけでなく、能動的な体験をも伝達することができるようになります。

BodysharingはVR、AR、MRなどの技術でも伝えきれない身体感覚を伝達することができます。

体験伝達の進化は人類の進化に欠かせず、Bodysharingでさらなる進化が可能になります。

体験の共有化は何をもたらすのか

人の感覚は大きく、特殊感覚、体性感覚、内臓感覚の3つに分けられます。特殊感覚は触覚を除いた5感と平衡覚、内臓感覚は尿意や臓器の痛みなどの感覚です。

体性感覚はさらに表層感覚と深部間隔に分けられ、表層感覚は触覚、温冷覚、痛覚、圧覚など皮膚の表面で感じるもの、深部感覚が固有感覚で重量覚、抵抗覚、位置覚、深部痛覚などが該当します。

筆者は闘病による入院時の経験や周囲の人との体験は人間と人生を作り出すことを知りました。そのため、ある人だけが特定の体験をするのではなく、1人の体験を地球上の全員で体験できる世界を目指すようになります。

Bodyshatingとは感覚のデータをコンピュータに入力し、別の身体に出力する技術であり、感覚器を通したインプットと身体の動作でアウトプットした際のデータを残すことで体験を共有することができます。

体験の共有は1人の体験を地球上の全員で体験できる世界を作り出すことができます。

人々は体験の共有を求めているのか

Bodysharingは身体に付随する感覚情報を相互共有することで体験を共有する技術です。

 他者やロボットを利用し何かを体験したり、データ化された誰かの体験を共有することなどの手法が挙げられます。

 現代は物質的に恵まれているものの、人々の求める価値が非物質的な無形資産に移っており、これらを共有できれば大きな意味があります。

 入力される情報を従来のマウスやタッチパネルから電気刺激や筋変位とすることでより内部的な情報入力を可能にし、出力部位も直接筋肉などにすれば体験の共有に非常に効果的となります。

 人体は個人差も大きく、他の人の身体を動かすには調整が必要ですが、取得するデータを増やすことでこれらへ対応することもできるようになります。

物質的に恵まれた現代では、人々の求める価値が無形資産に移っているため、無形資産として体験の価値が上がっていることで体験の共有にも大きな興味を持つと考えられます。

Bodysharingはどのような社会を導いていけるのか

 Bodysharingを用いれば人の動きをインプットし、ロボットにアウトプットすればこれまでのようにプログラミングする手間を省き、作業の代替による自動化が容易になる。

自動化が進み、生産性が上がりきった世界では人類は体験をより求めるようになる。筆者はBodysharingの技術は生産性向上よりも、体験共有に大きな可能性を感じている。

Society5.0はサイバー空間とフィジカル空間の融合を進めることで社会的な課題の解決を図りながら、個と社会の両方に配慮した人間中心の社会を作ることを目標としている。個々人が能力を発揮しつつ、個々人に必要なサービスが行き届くようにすることで個の解放とよぶ状態を目指している。

Bodysharingでも人々をさまざまな制約から解放することで、全ての人の思いを叶えながら生きられる自由を実現しようとしているため。

Bodysharingの技術は生産性向上にも有効だが、本質は体験の共有。

体験の共有で人を制約から解放し、全ての人の思いを叶えながら生きられる自由を実現できる。

Bodysharinngに対し、国はどのように取り組んでいるのか

日本政府はムーンショット研究開発制度と呼ばれる破壊的なイノベーションの創出を目指す研究開発を推進する制度も設けています。

アメリカのアポロ計画のように最初に無謀とも言える目標を掲げ、その実現に向けてイノベーションを加速させていくのがムーンショット計画の意義になります。

ムーンショット目標の1は2050年までに身体、空間、時間、脳の制約から人々を解放し、誰もが多様な社会活動に参加ができる未来を築こうとしています。

生産性に重きを置く部分はあるが、Bodysharingが貢献できる目標になっています。

政府の目標の一つに2050年までに身体、空間、時間、脳の制約から人々を解放し、誰もが多様な社会活動に参加ができる未来を築こうとしている。

この目標にBodysharingは大きく貢献できます。

体験の共有がなぜ進化につながるのか

二足歩行は手を自由にしたことで、手の感覚が強化され、脳も鍛えられ、やがて道具の利用などを可能にしてさらに知性を高めています。

本来の機能である歩くことに使用していた前足を、役割から解放することで進化に繋がってきました。自動化などで手を使わなくなることが退化を招くという意見もあるが、Bodysharingによって身体感覚を保存、伝達できるようになれば逆に進化に繋がったり、知性を高める可能性も秘めています。

また共有体験で動物や異性の感覚を知ることは動物福祉や多様性への理解を深めるなどの効果も期待されています。

二足歩行が道具に使用などを可能にし、知性が高まったように身体感覚の伝達が進化をもたらす可能性もあります。

Bodysharingで多様性、寛容性を高めることは可能か

人の思考や言動はそのひとの持つインターフェースに強く規定されています。そのためBodysharingによって他の人のインタフェースを通じて物事を体験することで誰もが同じような感想を持つと筆者は予想しています。

 Bodysharingによって経験量を増やすことで、みんな同じ経験をして個を無くすのではなく、1人の中に個をたくさん持つことを提案することが本来の目的です。

 SNSや検索サービスがユーザーの履歴などから好むを把握、レコレンドする機能は見たいもの、自分の意見に合うものだけを見せる傾向を強めています。その結果、趣味嗜好や政治的な意見が極端化するフィルターバブル現象や自分と似た意見にしか触れないため、よりその意見を強めるエコーチェンバーが問題になっています。

 これらの問題は自分の見たくないもの、意見の異なるものに触れる機会がなくなることで起きます。Bodysharingで主観的な体験をヴァーチャルでも得ることができるようになれば、異なる考えを持つ人々の非言語情報を含めた体験ができ、他者への理解を深めることができる可能性も秘めています。

Bodysharingで多様な経験や異なる考えを持つ人と非言語情報を含めた体験ができれば、他者への理解を深めることができる可能性も秘めています。

Bodysharingでの経験の共有はどのように行われるのか

 Bodysharingによって様々な体験のうちの本質的な部分(移動や準備などを除いた活動)のみを体験できれば、並列的に効率良く活動の体験が可能となります。

しかし並列的な処理は過渡期の技術で、最終的には複数の身体を用いて体験を行い、その体験を同期、統合するような並列処理が最終的な目標となります。

複数の身体での体験を同期し、統合する並行処理が最終的な目標となります。

今の社会で望まれていることは何か

50〜100年前の未来予想の多くは実現しており、特に情報科学の分野では82%と非常に高い割合での実現しています。

人々がどのようなことを望み、それを社会がどのように受け入れるかイメージできていればある程度実現できるようになっています。

また新しい技術が普及する速度も早まっている。ラジオは普及率が80%を越えるのに50年かかったがスマートフォンはわずか5年しかかからなかっていません。

SFでは新しい技術が人々の欲望をどう叶え、どう普及するかその際の問題点を提示している場合も多きなっています。多くの人がこのように想像力を膨らますことが現在の社会では特に求められています。

受動的な体験ではない、能動的な体験が想像力につながってるため、Bodyshearingによる体験の共有には大きな効果が期待されます。

多くの人が望み、社会が受け入れれば多くのことが実現できるようになっています。そのため想像力を持つことの重要度は増しています。

想像力には能動的な体験が欠かせず、能動的な体験の共有を可能にするBodyshearingには大きな可能性があるといえます。

感想

 VRなどの視覚などを利用する没入感のある新しい技術が多く開発されています。しかし、本書ではBodysharingとよばれる技術によって体験を共有する技術が書かれています。

 能動的な体験を共有することで人類がさらなる進化が可能になるとの可能性も示されています。空間、時間、身体の制限がなくなる社会にも大きな期待が持てる内容でした。

 また、VRを用いたメタバースなどでは人々はさらに自分の思考と近い人々とばかりかかわることで思考が偏るなどの欠点も指摘されています。 

 しかし、経験の共有が可能になれば、多様な経験を通じて、寛容性や多様性を身に着けることも可能になります。

 新しい技術がもたらす欠点を克服するために別の技術で対応することで段々、社会の不具合を治していくことが可能であることが理解できる本になっています。

 

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