大人のための生物学の教科書 要約12 脳

要約11 神経系

この本や記事で分かること

・脳の機能

・脳にはどんな部分があり、それぞれの部分はどんな機能を持っているのか

脳はどんな臓器なのか

 脳の重量は体重の2~3%を占めるに過ぎないものですが、血液の15%が脳での循環にあてられ、取り込まれた糖や酸素の20~25%が脳で消費されています。

 これほど燃費の悪い臓器はなく、それだけ脳はヒトにとって重要であることがわかります。

 その重要性は明かでも、まだ脳の詳細な機能については現代の科学を駆使しても不明なことのほうが圧倒的に多く、人類は脳という臓器を理解しきれていません。

脳にはどんな部分があるのか

 脳は機能や役割に沿って以下のように分類されます。

・大脳:感覚神経からの入力を統合、分析し、意識した行動の内容を決定する中枢

・小脳:平衡感覚や運動機能を司る器官 神経細胞の密集度が高い

・脳幹:無意識下での様々な調整をしている 心臓の拍動を制御する延髄、感覚を大脳に伝える視床等

 大脳や小脳の機能が損なわれても、脳幹が機能していれば最低限の生命維持は行われます。この状態が植物状態と呼ばれるものです。

大脳はどんな部位があり、どのような働きをしているのか

 大脳は表層に近いほど色味が強く、内側は白っぽく見えるため、内側は白質、外側は灰白質とよばれます。白質は非常の細かい神経線維とそれを取り巻く骨髄の密度が高くなります、骨髄の細胞膜は脂質でできているため、集まると光を反射しやすいため、白く見えます。

 大脳を垂直方向で見ると、白質と灰白質に分けられますが、水平方向にみるといくつかの溝によって前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉に分けられます。

 大脳を一部失った患者の症状や大脳の電気刺激などを通じて、大脳では部位ごとに特定の機能が局在化していることがわかっています。

 様々な機能に複合的にかかわる領域もあり、そのような領域は連合野と呼ばれます。連合野は複数の情報を統合して、高度な情報処理を行い、認知、理解、判断、計画性や意欲などに大きな影響を及ぼしています。

 高等な動物ほど脳に占める連合野の割合は大きくなっています。連合野のなかでも、前頭連合野はヒトの大脳の3割近くを占め、人を人たらしめる思考や創造性などの中枢にもなっています。 

脳にまつわる噂は本当なのか

 男性は空間認識能力が高く、女性は脳梁が太いからマルチタスクが得意などといわれることもありますが実際には男女の脳で明確な構造的な違いはありません。

 空間把握能力の試験では確かに男性のほうが平均点は高くなっていますが、同性内の個人差のほうがずっと大きくなっています。

 脳梁についても初期の観察では、女性のほうが太いことが報告されていましたが、現在では女性のほうが太いという結論は得られていません。

 人類は脳の10%しか使っていないという話も神話に過ぎません。90%の脳領域が使われていないのであれば、その部分に障害があっても影響がでないはずですが、脳はどの領域が損傷しても重大な影響が出ます。

 ただし、現状が脳を100%使い切っており、成長できないという意味でもありません。神経細胞は効率的な回路を形成することで、より良いパフォーマンスを発揮することが可能な細胞であり、成長のチャンスは十分に残されています。

記憶はどのように作られるのか

 同じ刺激が繰り返し入ってくることで、刺激に応答する神経細胞同士のつながりが強固になり、効率的に情報が伝達できるようになります。

 これが記憶の正体です。

 記憶は最初、側頭葉にある海馬で形成され、その後前頭葉や側頭葉の皮質で長期的な記憶として蓄えられることが知られています。

 海馬はほかの脳領域と比較して、繊細でストレスに弱いと言われています。睡眠不足やアルコールの摂取、喫煙などは脳全体に悪影響を与えますが、海馬はこれらのストレスで特に大きな悪影響があります。

 実際に、PTSDやうつ病の患者では海馬が委縮していることが多く見られます。

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