ウクライナのサイバー戦争 松原実穂子 要約

本の概要

ロシアによるウクライナ侵攻は想像以上にウクライナ側の奮闘もあり、長期化しています。

ウクライナが抵抗できている理由の一つに、ロシアによるサイバー攻撃による被害を予想以上に抑えている点にあります。

サイバー攻撃は相手の情報を盗み出したり、インフラや通信能力を破壊することで相手国やその支援国に大きなダメージを与えるものです。

ウクライナは過去の経験から、ロシアのサイバー攻撃の恐ろしさを知っており、対策したことで、被害を小さく抑えることに成功しています。

台湾有事などが想定される中で、日本にもサイバー攻撃に対抗することは必要不可欠で、そのためには多くの人の理解が必要です。

サイバー攻撃とはなにか、どのようにしてウクライナは対抗してきたか、日本はどのような対策をとるべきかなどを知ることのできる本になっています。 

この本や記事で分かること

・サイバー攻撃とは何か、どのような被害があるのか

・ウクライナがロシアのサイバー攻撃に耐えている理由

・日本がサイバー攻撃に対する対策が必要な理由とその方法

本の要約

要約1

ロシアによるウクライナ侵攻では、実際の武力による攻撃だけでなく、激しいサイバー攻撃も行われていますが、当初の予想と異なり、ウクライナはサイバー攻撃に驚異的な粘りを見せています。

サイバー攻撃には、相手の情報を盗み出すサイバースパイ活動と敵国やその支援国、企業の業務を妨害し、インフラや通信能力を破壊する妨害・破壊型の二つが存在します。

インフラの破壊は敵の混乱や経済活動への悪影響、通信能力の破壊は軍活動の妨害や市民への通信手段の遮断や偽情報を拡散を招くことが可能となるため、戦時中でも大きな効果があります。

ウクライナがどのようにして、サイバー攻撃に抵抗しているかからは日本も多くのことを学ぶことができます。

要約2

2014年のロシアによるクリミナ併合では、クリミナ半島とウクライナをつなぐ電話回線やインタネット回線が切断され、クリミナは世界から孤立してしまいました。

また、2015年にもロシアのサイバー攻撃によって、電力会社のコンピュータと制御システムに侵入され、ウクライナ西部で停電が発生しています。

ロシアが官民を挙げて、サイバー攻撃能力を有していることとその威力を身をもって経験したウクライナは通信インフラに分散化などを進め、サイバー攻撃への防御を高める工夫をしてきました。

具体的にはアメリカからの専門チームを派遣してもらい、サイバー防御の強化支援の対策うけたり、アメリカの民間企業によって提供されたクラウド環境への政府データの移行などの対策をおこなってきました。

要約3

ウクライナ侵攻後もサイバー兵器による攻撃が繰り返されており、通信障害や検問所のシステムダウンなどが発生しています。

また、物理的な攻撃によって基地局やケーブルの破壊も起きていますが、通信企業による復旧活動などもあり、ウクライナが孤立することは避けられています。

被害規模が予想以上の抑えられているのは下記に要因によるものと考えられています。

・ロシア側の見通しの甘さ

・軍事侵攻前のサイバー攻撃によってウクライナが対策を打てた

・アメリカ政府が国内外への金融機関への情報共有を増やし、対策の結果

・IT企業のロシア撤退によるサイバー攻撃の質量の低下

・支援を受けるだけでなく、積極的に情報を共有し、支援国が協力しやすくした

ロシアからの脅威をあらかじめ予測し、危機への感度が高かったことや支援国の有効な援助が官民問わず行われたことで被害抑えることに成功しています。

要約4

ウクライナ侵攻後、中国がウクライナへのサイバー攻撃で情報収集を行っているとの情報もあります。中国はロシアを助けるためにサイバー攻撃を行っているわけではなく、ロシアへもサイバー攻撃を行っており、戦争当事者の内部事情を集めています。

このことは、中国がウクライナ侵攻から学んだ教訓を台湾有事で悪用する可能性を示すものです。

台湾は海底ケーブルによる通信が全体の95%を占めるため、海底ケーブルを切断されると大規模な通信障害につながりかねません。

台湾との関係の深い日本もサイバー防御能力の強化、サイバー演習、同盟国との情報共有は欠かすことはできません。

サイバー攻撃に対する理解を深め、各自が協力し共に戦っていくことが求められています。

ウクライナでのロシアによるサイバー攻撃被害はどれくらいなのか

 ロシアによるウクライナ侵攻では、実際の武力による攻撃だけでなく、激しいサイバー攻撃も行われています。

 侵攻開始後から多くの専門家はウクライナがサイバー攻撃で大きな被害を受け、通信、エネルギー、電力などの重要インフラのサービスが停止するものと考えていました。

 しかし、ロシアの攻撃にもかかわらず、侵攻から1年以上たってもウクライナは驚異的な粘りをみせ、サイバー攻撃に耐え続けています。

 ウクライナがどのようにして、サイバー攻撃に対抗しているのか、そこから日本が学ぶべきことはなにかなどを知ることのできる本になっています。

ウクライナ侵攻では、激しいサイバー攻撃も行われていますが、侵攻から1年以上たってもウクライナは驚異的な粘りをみせ、サイバー攻撃に耐え続けています。

ウクライナ侵攻以前、どのようなサイバー攻撃被害を受けていたのか

 2014年のロシアによるウクライナの領土であるクリミナをロシアの領土するクリミナ併合が行われました。

 クリミナ併合の間、ロシアは通信事業者などの重要インフラへのサイバー攻撃と物理的な攻撃による通信妨害を徹底して行いました。

 その結果、クリミナ半島とウクライナをつなぐ電話回線やインタネット回線が切断され、クリミナは世界から孤立し、何が起きているのか外部に通報できなくなってしまいました。

 さらには、偽情報を流し戦意を喪失させたり、基地の電力を遮断するなどもありわずか数週間、ほぼ無血でクリミナ併合が成し遂げられました。

 この経験からウクライナは情報戦に負けない通信インフラに分散化などを進めていきました。

クリミナ併合の間、ロシアは通信事業者などの重要インフラへの攻撃を徹底しており、クリミナ半島とウクライナをつなぐ電話回線やインタネット回線が切断され、孤立していしまいました。

この経験からウクライナは情報戦に負けない通信インフラに分散化などを進めていきました。

サイバー攻撃の被害はどのようなものがあるのか

 サイバー攻撃による被害は通信だけでなく、電力にも及びます。

 2015年にもロシアのサイバー攻撃によって、ウクライナ西部では停電が発生しています。

 第3者が電力会社のコンピュータと制御システムに侵入し、電力を不通にしています。この電力会社ではサイバーセキュリティ対策が取られていなかったため大きな被害を出してしまいました。

 また、停電後も電力会社のカスタマーセンターに数千件もの電話をかけることで、電力会社が停電の範囲を把握しにくくすることで、復旧を遅らせるような行為も行っています。

 ロシアは官民を挙げて、サイバー攻撃能力を構築しており、ウクライナにとっては大きな教訓となりました。

サイバー攻撃による被害は通信だけでなく、電力にも及び、実際に電力会社へのサイバー攻撃で停電が発生しています。

ロシアのサイバー攻撃能力の構築が明らかになったこと一方で、ウクライナにとっては大きな教訓となりました。

サイバー攻撃にはどんな種類があるのか

 サイバー攻撃にはサイバースパイ活動と妨害・破壊型の2種類があります。

 国防や外交、知的財産関連情報を盗むサイバースパイ活動は平時から行われていますが、戦時中には平時以上に敵国の情報の重要性が増すため、積極的なスパイ活動が行われます。

 敵国やその支援国、企業の業務を妨害し、インフラを破壊するサイバー攻撃も重要となってきます。電力、通信、エネルギー、交通、輸送などのインフラを妨害、破壊できれば、敵を混乱させ、反撃能力を失わせることが可能です。

 妨害・破壊型のサイバー攻撃には

・多数の端末から過剰なアクセスを行いサイトやサービスをダウンさせるDDos攻撃 

・システムに入り込み遠隔操作を行う

・相手のシステム内のデータを削除し、業務継続をできなくするワイパー

 また、サイバー攻撃を仕掛けた相手に身代金を要求するランサムウェアでは、金銭が目的になりますが、身代金を払っても復号化できない業務の妨害を目的とする場合も見られます。

 通信の遮断は軍内での作戦を円滑に行えないようにするだけでなく、情報の遮断や偽情報を拡散することで、国民を不安にすることができます。また電力などのインフラを停止させることは、経済活動へも大きな影響を与えてしまいます。

サイバー攻撃には以下のようにサイバースパイ活動と妨害・破壊型の2種類があります。

サイバースパイ活動は相手の情報を盗み出すもの

妨害・破壊型は敵国やその支援国、企業の業務を妨害し、インフラや通信能力を破壊するものです。

インフラの破壊は敵の混乱や経済活動への悪影響、通信能力の破壊は軍活動の妨害や偽情報を拡散を招くことが可能となります。

ウクライナはサイバー攻撃にどんな対応をしてきたのか

 ウクライナは侵攻前にロシアのサイバー攻撃に対抗するために様々な対策を行い、アメリカなどもこれを支援してきました。

 アメリカからの専門チームを派遣し、サイバー防御の強化支援を行っています。ウクライナのシステムに不備がないかを知らべ、対策を実施しています。

 また、アマゾンやマイクロソフト、グーグルなどの民間企業もウクライナ政府のデータを保存するクラウド環境を提供することで支援を行っています。

アメリカからの専門チームを派遣してもらい、サイバー防御の強化支援を行い、システムの不備を見つけ、対策してもらっています。

また、民間企業もウクライナ政府のデータを保存するクラウド環境を提供したこともウクライナにはプラスに働いています。

ウクライナ侵攻後の被害はどれほどなのか

 開戦後もロシアはミサイルや爆弾などの物理的な攻撃と同時に、サイバー兵器による攻撃も繰り返していると考えられています。

 実際に衛星通信サービス企業への攻撃による通信障害や検問所のシステムダウンによる避難民の移動の遅れなどの被害が確認されています。

 物理的な攻撃もあり、多くの基地局や光ケーブルが破壊されていますが、一部は通信企業の社員の命がけの行動によって復旧がなされています。

 これらの行動で、ウクライナが孤立することは避けられています。

開戦後も、サイバー攻撃を繰り返し、被害は出ています。物理的な攻撃もあり、多くの基地局や光ケーブルが破壊されていますが、一部は通信企業の社員の命がけの行動によって復旧がなされており、ウクライナの孤立が防がれています。

開戦後の被害はどれほどなのか

 ウクライナ侵攻前からロシアはウクライナに対するサイバー攻撃をたびたび成功させてきており、すぐに大きな被害につながると思われていましたが、被害規模はかなりおさえられています。

 ロシア側の見通しの甘さ、軍事侵攻前のサイバー攻撃によってウクライナが対策を打てたことなどが要因になっています。

 ウクライナ支援国はウクライナ企業だけでなく、支援国へのサイバー攻撃、具体的にはエネルギー危機で苦しむエネルギー企業への妨害型のサイバー攻撃と経済制裁への報復として、金融機関へのサイバー攻撃を警戒していました。

 しかし、今のところ、大きな被害は見られていません。これにはアメリカ政府が国内外への金融機関への情報共有を増やし、対策してきたことが功を奏している可能性もあります。

 今後も注意が必要ですが、今のところはウクライナ国内、支援国ともに一定の被害レベルにとどまっているといえます。

ロシアからのサイバー攻撃が続く中、被害規模は下記に要因によって予想以上に抑えられています。

・ロシア側の見通しの甘さ

・軍事侵攻前のサイバー攻撃によってウクライナが対策を打てた

・アメリカ政府が国内外への金融機関への情報共有を増やし、対策してきた

ウクライナが被害を抑えることができたポイントは何か

 ウクライナ政府の関係者と重要インフラ企業のサイバーセキュリティ関係者はロシアからの脅威を予測し、危機への感度が高かったことは確実です。

 また、支援国からの援助も効果的でした。各国の政府だけでなく、大手IT企業も技術支援や金銭的な支援を行っています。またIT企業はロシアでの製品、サービスの新規販売停止などロシアからの撤退も決断しています。

 IT企業の撤退でロシアのサイバー攻撃の質、量を低下させつつ、技術支援でサイバー攻撃への耐性を高めたことが被害を抑えていることに成功しています。

 ロシア支社からネットワークアクセスを止めた欧米企業もあることもロシア側が有効な手段を打てない理由の一つです。

 ウクライナ政府は支援を受けるだけでなく、積極的な情報共有を行っています、情報共有によって、各国は連携しやすくなり、ロシアの攻撃に対する防御を支援国も構築しやすくなるというメリットがあります。

 ハッカー集団の中にもウクライナ支援に乗り出している集団も見られます。国際的なルールから逸脱する危険性やロシアを支援する集団もあるなどハッカー集団の参入には課題もあるものの、ウクライナ支援に結びついている部分があることも報告されています。

ロシアからの脅威を予測し、危機への感度が高かったことや支援国の有効な援助が官民問わず行われたこともポイントでした。

またIT企業はロシアでの製品、サービスの新規販売停止などロシアからの撤退し、ロシアのサイバー攻撃の質、量を低下させたことも要因になっています。

ウクライナの積極的な情報共有を行う姿勢もプラスに働きました。情報共有によって、各国は連携しやすくなり、ロシアの攻撃に対する防御を支援国も構築しやすくなってきました。

ウクライナの事例から日本は何を学ぶべきか

 ウクライナ侵攻後、中国がウクライナへのサイバー攻撃で情報収集を行っているとの情報もあります。

 中国はロシアを助けるためにサイバー攻撃を行っているわけではなく、ロシアへもサイバー攻撃を行っており、戦争当事者の内部事情を集めています。

 中国はウクライナ侵攻から学んだ教訓を台湾有事で悪用するのではと考えている可能性があります。

 特に、台湾は海底ケーブルによる通信が全体の95%を占めるため、海底ケーブルを切断されると大規模な通信障害につながりかねません。

 衛星通信能力の獲得やサイバー攻撃への対応能力の強化などが必要と考えられます。

 日本もサイバーセキュリティの強化は不可欠です。サイバー防御能力の強化、サイバー演習、同盟国との情報共有は欠かすことはできません。

 実際に中国によるサイバー攻撃はアメリカで被害が確認されています。サイバー攻撃に対する理解を深め、各自が協力し共に戦っていくことが求められています。

中国はウクライナ侵攻から学んだ教訓を台湾有事で悪用するのではと考えている可能性があり、日本にも大きくかかわっています。

台湾との関係の深い日本もサイバーセキュリティの強化は不可欠です。サイバー攻撃に対する理解を深め、各自が協力し共に戦っていくことが求められています。

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