化学.32 シクロアルカン 

この本や記事で分かること

・シクロアルカンとはどんな化合物なのか

・シクロアルカンの特徴と構造

・シクロヘキサンの構造

シクロアルカンとは何か

 メタンやブタン、ペンタンなどのアルカンは直線状に炭素が並んでおり、直鎖アルカン、2-メチルプロパンのように直鎖アルカンの中で枝分かれ構造を持っている場合は、分岐アルカンと呼ばれます。

 直鎖アルカンや分岐アルカンは鎖状のアルカンであるため、鎖状アルカンと呼ばれています。

 アルカンには鎖状のものだけでなく、環状構造を持つアルカンが存在することが古くから知られています。炭素原子からなる環状構造を持つ化合物をシクロアルカン、脂環式化合物と呼ばれます。

シクロアルカンと鎖状アルカンの違いは何か

 最も小さなシクロアルカンはシクロプロパン(C3H6)であり、シクロアルカンの構造式はCnH2nで表されます。

 シクロアルカンと鎖状アルカンの化学的性質はよく似ていますが、異なる点もあります。

 鎖状アルカンと比較するとシクロアルカンの結合は自由度が低いという点が挙げられます。鎖状アルカンの炭素‐炭素σ結合は自由に回転することが可能になっています。

 一方で、シクロアルカンは炭素‐炭素のσ結合ですが、結合を切断し、環を開かない限りは炭素-炭素結合を回転させることができません。

C-C結合が回転できないことは何をもたらすのか

 シクロアルカンはC-C結合の回転が妨げられているため、σ結合平面に対して、上下に置換基が結合している場合、アルケンの二重結合と同じように、シストランス異性体が存在します。

 1,2-ジメチルシクロプロパンの場合、シクロプロパンのσ結合平面から上下に飛び出して、メチル基が結合している形になります。

 メチル基同士が同じ方向に突き出している場合は、シス-1,2-ジメチルシクロプロパン、反対側に飛び出している場合は、トランス-1,2-ジメチルシクロプロパンとなります。

シクプロパンやブタンはなぜ、不安定なのか

 シクロアルカンは環構造を持っているため、ひずみによるエネルギーを持っています

 メタンのような正四面体構造ではC-C結合の結合角は109°となっていますが、シクロプロパンでは、60°、シクロブタンでは90°となっており、結合角の歪みが環構造の不安定さの一因となっています。

 また、環構造のC-C結合が回転できないこともあり、隣り合うC-C結合に結合した原子の距離が近い重なり配置となっています。

 ひずみエネルギーは結合角の圧縮や原子同士の重なり配置によって発生しています。

 おなじ炭素数の鎖状アルカンと燃焼熱を比較することで、シクロアルカンがどれだけひずみによるエネルギーを持っているかを計算することは可能です。

 シクロプロパンやシクロブタンは大きなひずみエネルギーを持っており、不安定な化合物になっています。

 しかし、シクロペンタンやシクロヘキサンのひずみエネルギーはとても小さく安定な化合物となっています。

 これは炭素数の増加とともに折れ曲がることで、ひずみの小さな構造をとることができるようになるためです。

シクロヘキサンはどのような構造を持っているのか

 シクロヘキサンは折れ曲がることで3次元構造をとっています。また、3次元によって炭素同士の結合角が理想的な正四面体に近い値となり、ひずみの少ない構造をとることができます。

 シクロヘキサンの3次元構造は背もたれや足乗せ台などを持っているイスに似ているため、いす型配座と呼ばれています。

 シクロヘキサンの各炭素には2個の水素が結合しています。いす型配座の構造では、環と平行な面に突き出した水素と垂直方向に突き出す水素のように結合した水素の2種類の水素があることになります。

 環と平行な面に突き出した水素はエクアトリアル水素、垂直方向に突き出した水素はアキシアル水素と呼ばれます。

 シクロヘキサンの各炭素はエクアトリアル水素とアキシアル水素を2つづつもっています。また、6個のアキシアル水素の3つは環の上方向に、残りの3つは下方向に突き出しており、隣り合う炭素で逆方向に突き出しています。

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