デザイン思考 松本勝 要約

本の概要

社会の多様化などによって、これまでのような論理的思考での問題解決が難しくなる中で、デザイン思考が大きな注目を浴びています。

デザイン思考は一部のイノベーターのためのものというイメージもありますが、多くの人の生活や仕事で有益なものです。

デザイン思考テストを開発した筆者によって豊富な事例が紹介されており、とても分かりやすく、デザイン思考とは何か、どのように身に着けることができるのかを知ることができる本になっています。

この本がおすすめの人

・デザイン思考とは何か知りたい人

・自分のアイデアをどう評価すればよいか知りたい人

本の要約

要約1

市場の成熟により、従来の論理的思考による性能の改善などでは、顧客の要望や社会の目標を満たすことはできなくなり、イノベーションによる創造が求められるようになっています。

新たな人の気持ちに共感し、潜在ニーズを探すことや課題を発見する能力が求められています。

そのため、人の心をデザインしたり、考察するデザイン思考は大きな注目を浴びています。

要約2

デザイン思考はデザイナーの思考法を転用したもので、問題解決を目的としたものですが、論理的思考とは異なり、人の言語化できないような潜在ニーズを探すことを可能にします。

イノベーションとは0から何かを生み出すのではなく、これまでにない組み合わせ=新結合を見つけることです。

デザイン思考によって潜在ニーズを探し、潜在ニーズを満たすことのできるような新しい組み合わせを見つけることでイノベーションを創出することができます。

要約3

デザイン思考は以下のような手順で行っていきます。

1.共感:相手の立場になりきる

2.問題定義:本音や潜在的なニーズを発見する

3.創造:問題解決のアイデアを出す

4.プロトタイプ:イメージを共有できるものを作り、使ってもらう

5.テスト:フィードバックを受ける

アイデアを出す際には本質的な欲求を着目し、アイディアにニーズがあるかを多様な人からフィードバックを受けるようにする必要があります。

アイデアを実行するソリューションよりもニーズがあるかどうかが最優先すべき事項です。

要約4

SDGs、カーボンニュートラル、DXへの対応など課題発見力と課題解決力の両方が必要な時代と言われています。

また、デザイン思考は理想的な状態から逆算して、理想に近づこうとするため、人間関係や自分のキャリアを考えるうえでも役に立ちます。

本質的な欲求からアイデアを出すことやビジョンの共有を可能にするデザイン思考の重要性は今後ますます高まっていきます。

デザイン思考はなぜ注目されているのか

 デザイン思考は市場分析や過去の事例分析などの論理的思考ではない、人の気持ちをデザインする思考法として大きな注目を浴びています。

 新たな市場が創出されるためには、多くの人がそのサービスを利用した際に心が動く必要があります。

 そのため、人がどのような感情を持ち、何を求め、何に感動するのかを考察するデザイン思考はイノベーションの創出に欠かせないものと考えられています。

デザイン思考は人の気持ちをデザインする思考法で新たな市場創出やイノベーションの創出に欠かせないものであるため、注目されています。

イノベーションとは何か

 スティーブジョブズやジェフベゾスなどのイノベーターは顧客の気持ちに共感し、ニーズを見つけ出し、それを満たすサービスを作り上げるという本質的な部分で共通点を持っています。

 ひたすら顧客ニーズと向き合い、サービス作りに挑戦し続けたことで、偉大な結果を残すことができています。

 イノベーションは技術革新とされることがありますが、正確には新結合=これまで組み合わせたことのなかった要素同士を組み合わせることで新たな価値を創造することを指しています。

 iPhoneがパソコンと携帯電話の組み合わせで生まれたように、既存サービスが持っている要素に新たな要素を組み合わせることで、業界に大きなインパクトを与えることがサービスを作り出すことができます。

 どのように、結合すべき要素を見つけるかがデザイン思考の本質といえ、結合すべき要素は顧客への共感からしか見つけることができないものです。

イノベーションは技術革新ではなく、新結合です。

これまで組み合わせたことのない要素を組み合わせることで新たな価値を創造することができます。

デザイン思考とは何か

 デザイン思考はデザイナーの問題解決のアプローチをビジネスに転用した思考法です。

 日本ではデザインとアートが混同されがちですが、デザインという言葉には問題解決という意味が含まれています。

 アートはアウトプットそのものが目的ですが、デザインはあくまでも問題解決の手段であることが大きな違いとなります。

 論理的な問題解決とは異なり、デザイン思考は創造的問題解決であり、顧客自身も言語化できないようなニーズや問題を探し出すような思考法となります。

デザイナー思考とはデザイナーの問題解決思考法は転用した創造的思考法です。

デザイン思考はどのように行うのか

 デザイン思考は具体的には下記のステップで進んでいきます。

1.共感:相手の立場になりきる

2.問題定義:本音や潜在的なニーズを発見する

3.創造:問題解決のアイデアを出す

4.プロトタイプ:イメージを共有できるものを作り、使ってもらう

5.テスト:フィードバックを受ける

 これまでの延長線のような問題解決であれば、客観的な数値があったり、顧客の要望に合っているかで判断することができますが、顧客も自身のニーズを把握していないような場合、プロトタイプを作り、イメージを共有し、フィードバックをもらっていく作業がとても大事になってきます。

デザイン思考は共感、問題定義、創造、プロトタイプ、テストのステップで進んでいきます。

新たな創造となるため、客観的な判断ができないことも多く、顧客のニーズがあるかプロトタイプで確かめることがとても大事です。

なぜ、デザイン思考が必要なのか

 想像力は何もないとこから新しいものを生み出すものではなく、いろいろなものをつなぐ力です。

 想像力が働くのは、自発的に意識を向け思考している時ではなく、無意識に情報処理をおこなっているときです。

 ただし、想像力の質は自発的な思考の際の蓄積した記憶や経験の質によるため、脳に良質なインプットをすることは必要になります。

 SDGs、カーボンニュートラル、DXへの対応など課題発見力と課題解決力の両方が必要な時代と言われています。

 これまで、日本では課題解決が重視されてきましたが、課題解決はAIの得意とするところです。一方で課題発見はAIの苦手な領域であり、今後より求められるようになっていきます。

課題発見力と解決力の両立が必要になっており、課題発見力にはデザイン思考が有効になります。

顧客の要望にどう応えるべきか

 顧客から要望があり、取り組む際に重要となるのは、なぜそのような要望を持つのかという問いを行うことです。

 顧客の直接的な要望=ウォンツは認知できる範囲の解決策であり、ありがちなソリューションでしかありません。

 しかし、なぜそのような要望を持っているのか=潜在ニーズは顧客にも認知できていないソリューションであり、新たなイノベーションになる可能性を持っています。

 顧客と同じ経験をする、実際の行動を観察するなどして顧客に共感することで本当に持っている要望は何か、潜在ニーズを探すことができます。

顧客からの直接的な要望は認知できる範囲の解決策で、ありがちになりがちです。

なぜ、そのような要望が出たのかを掘り下げ、顧客も認知できない潜在ニーズを探すことが必要です。

潜在ニーズを探す際にはどこに着目すべきか

 人ならだれでも持っている本質的な欲求があるため、人はほかの人に共感することができます。顧客の行動を観察するときも本質的な欲求に着目することで共感しやすくなり、潜在ニーズにも気づきやすくなります。

 本質的な欲求に着目することは、無数に存在する可能性から選択肢を狭めることができる、誰もが持つ欲求のためスケールの大きいビジネスができるなどの利点を持っています。

 Facebookはいいねで認められたいという欲求を、Googleは知りたいという欲求、Amazoneは支払いを簡便にすることで面倒なことをしたくないという欲求を、appleは注目されたい、美しいデザインに触れたいという欲求をそれぞれ、満たすことで大きなビジネスを行っています。

 AIには本質的な欲求を持たないため、共感することがないことも共感の重要性の一つといえます。

承認、知識を得たい、面倒を省きたいなどの本質的な要求に着目することが有効です。

潜在ニーズを探す際に気をつけるべきことは何か

 人が潜在ニーズを言語化できないのは、思いつかない、無意識に無理だと思っているなどの理由によります。

 そのため、当たり前を疑うことを意識的に行うことが必要です。どうせ無理と考えていることやこうあるべきと決めてつけたり、バイアスのある視点から離れることで、新しい結合を思いつく可能性があります。

 どんな前提条件で物を考えているのか、その前提条件が本当に検証され正しいものなのかを常に意識することが重要です。

 また、物事を抽象化してみてみることも有効です。

前提条件が正しいか、物事を抽象化するなどが潜在ニーズを探す役に立ちます。

アイデアを思い付いたらどうやって評価すべきか

 人は主観的な生きもので、完全に思い込みや感情から逃れることはできません。

 新しいアイデアを出す段階で、第3者からフィードバックを受けておくことも重要になります。

 アイデアを説明するときは、ニーズがあるかどうか、そのニーズを満たすことがほかの方法では容易でないかという視点から説明する必要があります。

 特にソリューションの方法を考えてがちですが、初期段階の評価では、なによりもニーズを評価しておくことが大切になります。

 ニーズの評価には共感が重要なため、多様な価値観を持つ人々が集まり、意見を出し合うことがイノベーションの創発には不可欠です。

 多様な価値観があり、様々な価値観を統合できるような組織、仕組みを作っておくことがイノベーションで重要になってきます。

第3者からのフィードバックを受けやすい仕組みを作ること、特に多様な人々からニーズがあるかという観点ヵら見てもらうことが重要です。

デザイン思考はどんな場面で役立つのか

 デザイン思考がビジネスだけでなく、自身のキャリアなどを考える際に有効です。

 自分に何ができるかではなく、自分の理想の状態から逆算し今何をすべきか考えるほうが、自分の描く理想に近づく可能性は圧倒的に高くなります。

 その場合も、自分の本質的な欲求に目を向け、考えることが重要です。

 ビジョンを共有することは組織のパフォーマンスを上げるためにはとても有効です。

 まずは理想の状態を考え、共有し逆算的に考えていくデザイン思考は、人々が社会生活を送るうえで円滑なコミュニケーションを行い、人間関係にも良い結果をもたらすための重要な要素を含んでいます。

理想から逆算し、理想に近づこうとするデザイン思考はビジネスだけでなく、自身のキャリアや人間関係を良好にするなどの重要な要素を含んでいます。

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