化学 2-1.蒸留、蒸気圧について

この本や記事で分かること

・蒸留の仕組み

・蒸気圧とは何か

・蒸留がどんな場面で利用されているのか

そのほかの物質の分離方法はこちら

蒸留とは何か

 蒸留は液体同士の混合物を分離するための方法であり、蒸気圧や沸点の違いを利用して混合物の分離を行っています。

 混合物を加熱していくと気体になりやすい物質から先に気体となります。気体を再度冷却し、液体に戻すことで分離が可能となります。

 蒸留によってエッセンシャルオイル、精油を作る作業は紀元前3500年から行われていたとされるなどその歴史はとても古いものです。

 一方で、化学工業の最先端で作られる製品においても、蒸留は必須の技術になっています。

蒸気圧とは何か

 蒸留は液体が気体になることを利用したものです。

 沸騰は液体の内部から蒸発が起きる現象ですが、沸騰する温度以下であっても液体が蒸発したり、気体が液体に凝縮する現象は起きています。

 液体を密閉容器に入れると、液は蒸発し気体になりますが、ある程度の時間が経つと、液体が気体になる速度と気体が液体になる速度が等しくなり、見かけ上蒸発が止まっているように見えます。

 この状態を気液平衡と呼び、この時の気体が示す圧力を蒸気圧と呼びます。

 蒸気圧は物質の種類と温度によって決まり、一般的に温度が高いほど、大きくなります。温度が高くなり、蒸気圧が上がり、大気圧と等しくなると液体の内部でも蒸発が起こるため、液体の内部で気泡が発生します。この状態を沸騰と呼びます。

精油はどのように作られているのか

 精油は蒸留器の中に水を入れ、その上に蒸気を通す板を乗せ、板の上にラベンダーなどの香気成分を含んだものを置き、水を熱します。

 熱せられた水は水蒸気となり、水蒸気に触れた香気成分も蒸気となります。

 香気成分と水蒸気の混合物を冷やすと、蒸気の中の香気成分のうち、水に溶けない香気成分が凝縮され、精油、エッセンシャルオイルが生成されます。 

ウイスキーは蒸留をどのように利用しているのか

 ウイスキーは蒸留を利用して作られている蒸留酒です。

 モルトウイスキーは、大麦種子を発芽させた麦芽を原料としており、酵母によって発酵させアルコールが作られることで発酵モロミと呼ばれる状態になります。

 発酵モロミを蒸留し、樽で熟成することでウイスキーが完成します。

 酵母自身があまりに高いアルコールでは死んでしまうため、発酵でできるアルコール度数の限界は20%程度となり、それ以上のアルコール度数にするために蒸留による濃縮が行われています。

 発酵モロミの主成分は水とエタノールであり、エタノールのほうが沸点が高いため、蒸留し、冷やして液体となった蒸留液のほうが、エタノールの濃度が高くなりアルコール度数が上がることとなります。

 発酵モロミにはエタノール以外にも原料や発酵の際に作られた様々な成分が含まれており、これらの成分のうち揮発性の高いものは蒸留液に混ざりこみます。

 これらの成分に混ざりこみ方によってウイスキーの味や香りに変化が起きるため、どのように蒸留するかはウイスキーの出来栄えに大きな影響を及ぼすものです。

原油を蒸留するとどんな生成物が得られるのか

 石油は様々な成分からなる原油という状態で採掘されます。原油には沸点の異なる様々な物質が含まれているため、蒸留で精製、分離することが可能になります。

 蒸留によって原油は以下のような成分に分類されます。

・ガス成分(LPガス):プロパンやブタンなど最も沸点が低い

・ガソリン、ナフサ:沸点は30~200℃ 車の燃料や石油化学製品に利用されます。

・灯油:沸点は150~250℃

・軽油:沸点は240~350℃

・残油:沸点が350℃以上の成分 発電所の燃料などに利用されます。

 原油を分離した成分を利用して、様々な用途で利用されています。

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