経済学レシピ ハジュン・チャン 要約

本の要点

要点1

1990年代以降、様々な学派があった経済学が新古典派だけで議論される状態になっていますが、経済学に限らず、多様性はその分野の発展に欠かせないものです。

経済理論は政策を通じて、社会全体の経済状況に大きく影響するため、誰もが経済学をある程度理解しておく必要があります。

文化に対し、ステレオタイプを持つことがありますが、ステレオタイプは文化そのものが持つ特徴そのものではなく、社会がどう発展してきたかをもとに作られるものです。

社会がどう発展してきたかには、文化以上に政策、経済理論が強く影響するものです。

要点2

新自由主義の行き詰まりは多くのところで言及されています。

新自由主義経済的な自由を優先しますが、その自由は資産の所有者が資産を利用し、最大限設けるという狭い自由であり、弱者のことを考えたものではありません。

また、先進国は自由貿易こそが発展に欠かせないとして、途上国にも自由貿易を強いることがありますが多くの先進国は自国の産業を保護し、産業を強化した後に、自由貿易へ転換しています。

この事実を隠し、途上国に自由貿易を強制し、産業の成長を阻害しています。

また、多国籍企業の途上国への進出がその途上国のためになっていないケースもみられます。技術移転や現地人材の活用が進まなければ、いつまでも途上国の人々は簡単な仕事しかできず、所得が増加していきません。

要点3

自由主義では、社会保障も社会主義的な政策と考え、最小限にすべきとされることもあります。しかし、社会保証は制度設計しだいで、不安定さがつきものの資本主義の活力を高めることが可能です。実際に公的年金や健康保険の基礎を築いたのは保守主義者であるドイツのビスマルクでした。

また、株式会社という仕組みも事業者の責任を有限としたことで、資金が集まり経済発展に大きく貢献しました。しかし、株主利益への還元などの弊害があり、変化が求められています。

経済学を知り、自分たちの社会がどのようなものかを理解することで、社会をどう変えるべきか自分で考えることができるようになります。

自身、周囲、地球環境のためにも、経済学を理解する重要性は増加しています。

この本や記事で分かること

・経済的はなぜ重要なのか

・現在の、経済学理論の問題は何か

・新自由主義の問題、矛盾がどこにあるのか

現在の経済学の問題は何か

1990年代以降、様々な学派があった経済学が新古典派だけで議論されています。

多様性はその分野の発展に欠かせないものであり、多様な視点が欠かすことができません。

経済の多様性が失われてしまうことの何が問題なのか

経済学理論は政策を通じて、社会全体の経済状況に大きく影響するため、私たちがどう行動し、どう働き、どう生きるのかにも大きく影響します。

そのため、誰もが幅広い経済学の基礎をある程度理解しておく必要があります。

文化は社会の発展にどう影響するのか

文化は人々の価値感や行動に影響を及ぼすものですが、社会がどう発展するかには政策の影響のほうが大きいものです。

文化に対するステレオタイプも社会がどう発展しているかで作られることも多く、文化そのものが持つものではないことも多く見られます。

自由主義者の自由とは何か

自由主義者は経済的自由とその他の事由が対立した時に、経済的自由を優先することで、経済が発展すると信じています。

しかし、新自由主義の自由は、資産の所有者が資産を利用し、最大限設けるという狭い自由であり、弱者のことを考えてのものではありません。

先進国は自由主義で発展してきたのか

自由主義者は自由貿易が発展に欠かせないと考えています。

しかし、多くの先進国は、保護貿易で自国の産業を強化した後に自由貿易に転換することで、経済規模を大きくしてきました。

その事実を隠し、途上国に自由貿易を強制し、産業の成長を阻害してしまっています。

多国籍企業の途上国への進出はその国のためになっているのか

途上国へ多国籍企業が進出した際に、現地資材の使用や人材の育成を義務付けなければ、技術の移転が進まず、経済は発展していきません。

途上国で必要な政策を自由主義では提供できず、多くの途上国が行き詰っています。

社会保障は経済発展を妨げるものなのか

経済的な活力を追求する資本主義にはどうしても、不安定さがつきものです。そのため、社会保障の設計次第で、不安定さを抑え、資本主義の活力を高めることも可能です。

株式会社はどのような利点があり、どのような課題があるのか

株式会社という仕組みで、事業者の責任が有限としたことでリスクが分散され、資金導入の規模が大きくなり、経済の拡大と進歩につながりました。

しかし、金融化が進みすぎたことで、株主利益還元への偏りなどの弊害もあり、変化も必要になっています。

経済学を知ることがなぜ重要なのか

経済学を知り、自分たちの社会がどのようなものかを理解することができれば、社会をどう変えるべきか自分で考えることができるようになります。

自身、周囲、地球環境のためにも、経済学を理解する重要性は増加しています。

本の要約

要約1

1980年代まで、経済学には様々な学派があり、それぞれで影響を与え合ったり、敵対し合うことで互いに磨き合ってきました。

しかし、90年代には入ると、経済学のメニューは新古典派だけになってしまい、多様性が失われてしまいました。

イギリスが海外の食を受け入れことで、料理が美味しくなったように多様性はその分野が発展するために欠かすことができません。

経済学の多様性が失われたとしても、学者の人にしか関係ないのでは?という意見もありますが、経済学理論は政府の政策を通じて、私たちや社会全体の経済状況に大きな影響を及ぼすため、私たちがどう行動するか、どのように働き、生きるのかなどを決めるものです。

そのため、誰もが経済学の基礎を少なくともある程度までは理解する必要があります。経済学の基礎や現在の経済学の問題を知ることで、自分の利益を守ることだけでなく、社会を住み心地の良い場所にすることができます。

要約2

私たちは多くの文化的ステレオタイプ(イスラム教は暴力的、儒教は勤勉的、熱帯の人々は勤勉でないなど)を持っていますが、それらのステレオタイプの多くは文化の持つ多様的な面を無視して、その文化を持つ社会がどのように発展しているかをもとに作られるものです。

文化が人々の価値観や行動に影響することは確かですが、社会がどのように発展するかには、政策のほうより大きな影響があります。

文化の持つステレオタイプは疑ってかかるべきものです。

自由主義者は他の自由(政治的、社会的自由)と経済的な自由がぶつかったときに経済的な自由を優先することを選び、自由こそが経済を発展させると信じています。

しかし、実際に自由主義者が重視する自由とは資産の所有者が自分の資産を利用し、最大限儲けるという狭い自由だけであり、弱い立場の人たちの自由は考慮されていません。

また、自由貿易こそが発展に欠かせないと考え、それを他国に強制することもありますが、実際にアメリカやイギリスは自国の産業が強くなるまで高い関税や外国製品の輸入禁止、自国製品の優遇、補助金などの保護貿易で保護し、強くなったのちに自由貿易に切り替えています。

現在、経済規模の大きな国の多くは、政府による介入で輸入を制限するなどの保護貿易の利用、資金の調達、国内での調達を優先させるなどによって、自国の産業を大きくすることで経済規模を大きくしてきました。

要約3

多くの先進国は関税をかけるなどして、自国の産業を成長するまで保護してきました。しかし、現在の途上国に対しては自由貿易を強いることも少なくありません。

WTOなどの設立で以前のような不平等条約を結ぶことはできなくなっていますが、WTOのルール作りで自分たちの都合の良いように決めたり、途上国に財政支援を行う代わりに関税を下げさせるなどの方法で自由貿易を強制させていることが産業の成長を阻害している部分もあります。

また、先進国の多国籍企業が途上国に進出することで、経済的な発展が可能となっているとの主張もあります。

しかし、現地では簡単な作業しかさせない、現地の人を要職に就かせない、資材はすべて輸入品で現地で調達されるものがないなどで現地にほとんどメリットがない場合もあります。

台湾や韓国では、政府が多国籍企業を現地の資材を使用したり、人材の育成を義務づけることで技術の移転を進め経済発展しましたが、フィリピンではこれらの規制がうまくいかず、ハイテク製品の輸出量が多いにもかかわらず、国民の所得は増えていません。

新自由主義の方向性と途上国で必要とされる政策は全くあっておらず、新自由主義を目指した多くの途上国が行き詰まりに直面しています。

要約4

社会保障制度というと、社会主義的な政策と考えられがちですが、実際には公的年金や健康保険の基礎を築いたのは保守主義者であるドイツのビスマルクでした。

その後、多くの国でも政治的な安定を実現するためにも一般の人々の生活を保障することが欠かせいと気づき、多くの国で社会保障制度の採用が進みました。

経済的な活力を追求する資本主義にはどうしても不安定さがつきまとうものであり、その対策に最も効果的なモノが社会保障であり、その設計次第では資本主義の活力を高める役にも立ちます。

新自由主義ではできる限り、競争を行い、競争の結果に応じて格差をつけることが、最も生産的で公平と考えています。しかし、完全な機会平等が実現することは難しいため、市場の規制などで結果の平等性を確保し、所得の不平等の縮小することは必要なことです。

経済生産の指標として用いられているGDPに出産や子育て、介護などによる貢献が含まれない点や医療従事者、教育にかかわる人が不当に低く評価されている点も問題です。

この問題はこのような仕事を女性が行うことが多かったことが大きな要因でした。このようなケア労働の重要性を把握し、改善していくことも必要なことです。

環境保護を促進するためにも政府などの力は重要で、個人の努力や市場の動機づけだけではうまくいきません。

株式会社という仕組みは事業者の責任を有限とし、リスクを分散させることで、大規模な資金動員を可能にしました。

この仕組みによって、世界の経済は大きく進歩してきましたが、金融化が進みすぎたことで株主への利益還元への偏りなどの様々な弊害も見られています。弊害を抑えるための変化が必要になっています。

どういう食事をするのが良いのかを考えることと同じように、経済学について知り、自分たちの暮らしている社会がどんなものか理解し、変えるにはどうすれば良いのかは自分で考えなくてはなりません。

偏食を避け、新しいものを受け入れ、材料(データや根拠)の出どころをチェックする、想像力を働かせることは料理においても、経済を知る上でも重要なことです。

自身のため、周囲の人のため、地球環境のためにも経済学を理解する重要性は増加しています。

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