本の概要
アメリカが世界のリーダ的存在でなくなるなど迷走を続けています。
アメリカの迷走の原因は国民の分断であり、問題が起こるたびにそれぞれの陣営で争いがおき、なかなか前に進めなくなっています。
分断を象徴する出来事がトランプ大統領の当選ですが、彼の支持者は保守的な人々だけでなく、科学に反することを信仰のようにとらえ、グループを形成してる非科学主義信仰を有する人々も含まれています。
本書では分断の原因の一つとして科学を信じる人と不信感を持つ非科学主義者信仰者との対立をあげています。
NHK記者としてアメリカ政治や社会を取材してきた筆者の視点から、非科学主義信仰と何か、実際にアメリカで何が起きているのか、なぜ非科学主義信仰者が増えているのかについて知ることができる本になっています。
この本がおすすめの人
・アメリカの分断の原因を知りたい人
・なぜ非科学主義が広がっているのか知りたい人
本の要約
アメリカが世界でリーダーシップを発揮できずに、迷走が続いています。バイデン大統領も支持率低下にあえぎ、政権交代でも改善がみられません。
迷走の大きな原因は社会が分断してしまい、何か問題が起こるたびに各陣営で争いがおき、前に進むことができないことにあります。
分断の大きな原因の一つに科学を信じる人々と科学に不信感を持つ=非科学主義信仰の人々対立が挙げられます。
ワクチンやマスクなどパンデミックヘの対応、銃規制、人種差別の歴史との向き合いかたなど多くの分野で非科学主義と科学を信じる人たちの対立が起きています。
非科学主義信仰が増えた背景には、格差の拡大による勝ち組への不信感、ヒスパニック系人口の増加による白人のマイノリティ化への恐怖、SNSによる情報拡散とフィルターバブルなどが挙げられます。
非科学主義信仰の人々が票になると考えた政治家が非科学主義的な発言を行い、支持を集めることで、さらに非科学主義が拡散していくという流れができています。
非科学主義を強引に抑え込みことは言論の自由を盾にされ難しい状況です。特にSNSの運営は私企業が行っているため、どこまで規制すべきかの線引きは難しいと思われます。
そのため非科学主義に対抗する根本の方法は教育となります。メディアリテラシーや論理性を高める教育を拡充し、受け手が非科学主義的なものから距離をとるようにする必要があります。
非科学主義は社会構造の写し鏡です。日本も同じような構造の問題を抱えているため、将来的に大きな分断が起こることも十分に考えられます。
アメリカの迷走の原因は何なのか
アメリカの迷走が続いています。ロシアのウクライナ侵攻に対しても自由主義陣営の盟主としての立場を示せていません。
バイデン大統領は歴史的な低支持率にあえぐなど、国内に問題を抱え国際社会でリーダーシップをとれておらず、批判されることも少なくありません。
バイデン大統領の実行力のなさが指摘されているが原因がそれだけでありません。
アメリカ社会は大きく分断しており、国家が問題に直面するたびにそれぞれの陣営で争いが起きています。
分断の原因は様々で、共和党と民主党の対立とも取れますが、科学という概念からも分断を俯瞰することができます。
アメリカがかつてのような自由主義陣営の盟主でなくなったのは、国民の分断が大きな原因です。
分断の原因は何なのか
対立する一方は、科学とそれに基づく合理的な判断を信じる人々、もう一方は、科学に対する不信感を持っている人達になっています。
不信感は信仰の域に達し、信感を科学を信じる人を攻撃するようなこともみられています。このような非科学主義の存在がアメリカの分断の大きな要因となっています。
非科学主義者は新型コロナによるパンデミックでその存在が浮き彫りになりました。
ワクチン接種やマスク着用を巡て、非科学主義者の反対、攻撃がおこり、科学による分断が明らかになっています。
非科学主義者はほかの人の安全を犠牲にしても自分たちの主張が大事と考え、それを肯定してくれる政治家を支援するようになり、民主党と共和党の政治的な立場と結びついていきました。
分断の原因の一つに科学を信じる人と科学に対する不信感を持つ人たちの対立があります。
不信感を持つ人々は科学に反することが信仰のようになっており、非科学主義信仰といれるようなグループを形成しています。
非科学主義信仰にはどのような人々がいるのか
非科学主義者の人々はリベラルな政治家や既存メディアの内容を信じずに、SNSなどを通じて情報を入手し、自分たちの考えを発信しています。
非科学主義者の象徴といえるのがQアノンです。
QアノンとはQという存在を信じ、Qが展開する陰謀論を信じる人たちつながりや政治活動のことで、コロナ拡大以降増加傾向にあります。
コロナの拡大でSNSを見る時間が増え、ストレスや将来の不安から根拠のない陰謀論を信じる人は増加しています。
陰謀論を信じるQアノンなどが代表的な存在です。
非科学主義信仰と政治はどう関係しているのか
Qアノンの片棒を担ぐ政治家としてトランプ大統領が有名ですが、それ以外の政治家も増加しており、Qアノンの影響を無視できなくなっています。
Qアノンからの支持を集めることができれば、Qアノンがネット上で支持を集めてくれるため資金を使うことなく票を集めることができることが大きな魅力になっています。
非科学主義者たちは自分の心のよりどころを求め信仰心を高め、それを利用するために政治家が群がり、SNSによる情報拡散と相まって非科学主義の拡大を加速させています。
Qアノン支持者はSNSなどの利用で安価に票を集められるため、政治家が非科学主義的な発言や行動を行うことも少なくありません。
非科学主義はどのような場面で問題になっているのか
非科学主義による分断は銃規制や人種差別の教育を行うべきかなどにも広がっています。
痛ましい銃の乱射事件があっても銃規制の境界は進んでいません。
人種差別の歴史を教えないような動きも加速しています。アメリカにおいてヒスパニックや黒人は今はマイノリティですが、今後人口が増えることが予測されています。
そのため、白人の中には今までは白人が主導権を握ってきましたが、今後は白人がマイノリティになることたときの報復を恐れているともいわれています。
銃規制、人種差別の対応など様々な場面で非科学主義と科学を信じる人たちの対立がみられています。
非科学主義信仰はなぜ増加しているのか
非科学主義者の増加は格差の拡大にも大きな原因があります。パンデミックによって発生した格差の拡大などで人々は不満をため、怒りの矛先はいわゆる勝ち組へと向かっていきます。
自分は努力しているのに報われない、勝ち組は悪事を働いたに違いないという考えが、Qアノンの陰謀論と結びついています。
人と顔を合わせる機会も減り、ネットに向かう人が増えたことで誤った情報を信じる人が増えたことも大きな要因となっています。
特に白人の人々はヒスパニックなどの増加によって、今後自分たちがマイノリティになるのではという恐怖から原点回帰を叫ぶトランプ大統領やQアノン支持の要因にもなっています。
格差の拡大、パンデミックによるネット時間の増加、白人の人々のマイノリティになることへの恐怖などが陰謀論や非科学的な主張を信じる要因になっています。
非科学主義信仰はどのように広がるのか、防ぐことはできるのか
非科学主義信仰はSNSやトークラジオ、教会の集会など様々な方法で拡散しています。
非科学主義の布教側は自分たちの言っている内容が正しいかではなく、言論の自由を盾に普及を行っている側面があります。
SNSでの規制の声も上がっていますが、私企業がどこまで規制すべかや言論の自由とのバランスをどうとるかでは課題もあります。
ファクトチェックを行う団体なども出てきていますが、情報量は膨大で時間がかかります。そこでAIを利用し、各種報道のファクトチェックを行う検討も行われており、70~80%の正答率となっており、人間の負担を軽減できる可能性があります。
非科学主義を普及する人たちは、発言が正しいかどうかを問われても、言論の自由を盾に様々なメディアで拡散を行っています。
SNSの規制も検討されていますが、言論の自由とのバランスを私企業が行う難しさがあります。AIによるファクトチェックで情報が誤っているかを公表することも検討されています。
非科学主義を防ぐ方法には何が必要か
AIによるチェックなども発展していますが、非科学主義を防ぐ最も重要な解決策は教育です。
アメリカはイギリスでの宗教弾圧から逃れた人々が新天地を求めて建国した面があり、社会的な基盤に宗教があるため、非科学的な浸透する土壌があるという見方もできます。
SNSの普及と合わせて非科学主義の拡散は深刻で、専門家も危機感を強め、教育を立て直し、根本的な問題解決を図っています。
メディアリテラシーや論理性を高めるなどの教育を拡充することで社会を変えていこうという流れが起きています。
非科学主義の拡散を防ぐために最も有効になるのは教育です。
メディアリテラシーや論理性を高める教育を拡充する流れも起きています。
非科学主義にどう対応していくべきか
非科学主義信仰は人々が社会から取り残されているという感情から広がった面もあるため、様々な支援によって人々が社会に対する信頼感や期待感を取り戻すことも重要です。
このような支援がとられなければ、さらに分断が進んでしまいます。
経済的な格差の是正や支援、公教育の充実、社会や政治への不信の改善などが分断を防ぐ方法として重要になっています。
非科学主義信仰は社会構造の写し鏡であり、日本でも同じように社会構造に問題を抱えており、非科学主義信仰とは違う形で問題が発生するかもしれません。
社会から取り残されたという感情から非科学主義が広まった面もあり、様々な支援が必要です。
日本の社会も同じ構造を抱えており、分断が起き、非科学主義とは違う形で問題が発生する可能性もあります。
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