本の概要
これからのビジネスには教養が欠かせない、教養のために知っておくべきという情報が多くなってることに違和感を持つ人も多いはず。
本来の教養の意味が薄れ、ビジネスに役に立つかどうかがあまりに重視されることですぐに身に着けられる教養=ファスト教養が求められている。
ファスト教養は成長しなければという焦りの表れ。ビジネスに必要な知識とすぐには役に立たないが本当に自分の好きなことを通じて得られる本来の教養の両輪を持つことが重要になる。
この本がおすすめの人
・教養が流行っている背景を知りたい人
・すぐに身に着けられものを教養と呼ぶことに違和感がある人。
・ビジネスに必要な知識ではなく、本来の意味での教養を身に着ける方法を知りたい人
本の要約
なぜファスト教養が流行しているのか
教養をうたったインフルエンサーが流行するなどビジネスパーソンには教養が不可欠といったメッセージが様々なメディアで取りざたされているが、何とも言えない居心地の悪さと不安を覚える人も少なくない。
現代の教養という言葉は以前の意味から大きく変化しており、その変化をもたらすのはビジネスパーソンの焦りによるもの。
焦りがビジネスに役立つものを身につけなければという流れを生み、すぐに身につけられて、ビジネスに役立つかどうかこそが大事という考えにつながっている。
この流れが簡単に摂取できるファストフードのようなファスト教養へとつながっている。
教養が不可欠とのメッセージが様々な形で取り上げられ、教養を身につけなければという焦りからすぐに身に着けられ、役立つファスト教養が求められている。
教養とはそもそもなんのことか
現在の教養は知っておくとビジネスに役立つ小ネタのような位置づけになっている。
教養という言葉の定義は難しく、
・教養を獲得した結果ビジネスで活用する機会があるのか
・ビジネスに活用するために教養を取得すべき
のかのどちらが正しいのかの判断は難しい。しかし、近年はお金を稼ぐための道具として教養を利用するという意見が力を持ちすぎてしまっている。
お金を稼ぐことに良い悪いもなく、稼ぐための努力や工夫は誰しもが行っていることだが、お金を直接稼がないすべての行動が、ビジネスの道具に使用されることには居心地の悪さを感じることも少なくない。
コスパを重視する考えが地道な努力を回避し、最小限の努力で最大限の効果が出る方法に結びついている側面も大きい。
教養の言葉の定義は難しいが、知識を自分の中にしみこませ、精神的に豊かになるといった意味が薄れ、現代ではビジネス役立つ小ネタ、知識のような意見が強くなっている。
ファスト教養の問題点はなにか
教養という言葉には知識をじっくりと自分の中にしみこませることで、精神的に豊かになるものという意味が強かったが、すぐにビジネス=お金儲けに役立つかを基準とするファスト教養の勢いが強くなっている。
すぐに役立つことは、部分最適化されたことで普遍的な視点を持たないため、すぐに役立たなくなることだが、トレンドに追いつき、うまく立ち回るために知識が重視されてしまっている。
トレンドに追いつくことやそのための知識を取得することも必要だが、その対極にあるべき教養も小手先の技術として認識してすることも少なくない。
すぐに役立つことはすぐに役に立たなくなる。トレンドに関する知識も必要だが、その対極にある教養も役に立つかどうかで判断するようになってしまっている。
なぜ、教養を求めているのか
多くに人が教養を学ばなければと考えているのは、変化の大きい時代に取り残されないために教養が必要で、教養がなければ脱落してしまうという恐怖が原因。
そのため人生を豊かにする教養ではなく、ビジネスに直結するような知識を教養として求める気持ちが強くなっている。
オリエンタルラジオの中田敦彦の動画が人気なのは彼が集めた情報や知識をかみ砕いて、説明しているため。
多くのビジネスパーソンはビジネスで成功したいという欲望と使えない人材になりたくないという恐怖の狭間で平衡感覚を失い、幅広い分野の知識を求めている。
幅広い分野の知識を学ぶには時間がかかるため、かみ砕いた情報に触れたり、ファスト教養を求めるようになっている。
変化の大きい時代となり、学ばなければ、成長しなければという意識から教養が求められるようになっている。
しかし、幅広い知識をじっくり身に着ける時間もないため、ファスト教養が人気になっている。
学ぶ、成長しなければという恐怖はなぜ強くなったのか
2000年代ごろから自己責任という考えが日本にも徐々に広まってきた。
また、ライブドアの堀江貴文をはじめとしたIT企業の誕生は成功したい、お金を稼ぎたいとという考えが広がり、いかに効率よくお金を稼ぐかに大きな焦点が当たった時期でもある。
効率的にお金を稼げるかは自己責任とする考えは、英語やIT、会計などのビジネスに関連する知識を取得すべきという流れにつながっていった。
これらの知識が一般化するとお金儲けに直接関係しない知識として教養に注目が集まり、徐々に教養がビジネスに必要なものとして認識されるようになっていった。
ビジネスに役立つ教養という概念が一般化すると、効率化をもとめファスト教養化が進み、ビジネスに役に立たない教養は不要なもの、無駄なものとして排除されるようになっていった。
自己責任の考え方の普及とビジネスに関連する知識が一般化したため差別化が必要となり、教養に注目が集まっていった。
ファスト教養はカルチャー分野にどのような影響を与えたのか
カルチャーの分野にも効率化が求められており、映画や音楽でも触れておくべき教養として有名作品がまとめて紹介されているようなケースも目立っている。
映画のあらすじだけを抑えたり、倍速視聴する人も増えるなどカルチャーの分野でも人との話についていくためなどの理由でカルチャーの文化を消費する人も増えている。
カルチャーは炭鉱のカナリアとして社会の今後の在り方を示していることも多い。自己責任の論理とコスパがカルチャーを支配し始めたことは社会全体に自己責任とコスパを広がっていることを示唆している。
映画や音楽などの分野でも触れておくべき作品としてまとめられるようになっている。その結果、あらすじや倍速視聴などカルチャーのもコスパを求める人が増えている。
ファスト教養とどのように向き合うべきか
ファスト教養を求める人にお金につながらない勉強こそが大切だという言説では効果はなく、ファスト教養以降の思考の在り方を見つける必要がある。
ファスト教養を求める理由は成長する理由を深く考えず、成長することが目的となっているため。
なぜ成長したいのかを考えることが、ファスト教養へ抗う方法になる。なぜ成長したいのか、根源的な内省に必要なことは自己啓発ではなく、専門的な知見に裏打ちされた知識となる。
しかし、ビジネスに必要な知識を効率的に得ることを全面的にやめることも現実的ではない。
ビジネスに必要な知識を深いレベルで学ぶことで、ビジネス以外の場面でも通じる力を得られるようになることでファスト教養から距離を置きつつ成長するという目的も果たすことができる。
お金につながらない勉強こそが重要という言説に効果は薄く、ビジネスに必要知識を全面的にやめることも現実的ではない。
根源的な内省とビジネスに必要な知識を深いレベルで学び、ビジネス以外の場面でも通じる力を得られるようにすることがファスト教養から距離を置く方法になる。
ビジネスに必要知識と教養にどう折り合いをつけるべきか
自己啓発ではなく、知識を身に着けようとしても、新しい知識を追い求めてしまっては意味がない。
その際に重要となるのは、トレンドを追いもとめるのではなく、気に入ったものを繰り返し読むなどして、何が書かれているか覚えるくらいに身体にしみこむ状態になること。
繰り返すうえでは、能動的な好きという気持ちが欠かすことができない。自分だからこそ学ぶ意味のあることを見つけることは、自分を深く理解したり、既存の枠組みから自由になることの助けとなる。
既存の枠組みの中で戦える知識の取得と既存の枠組みから自由になることを並べて頭に持つことは結論を持たずに様々なことを考えること。
即効性はなく、わかりやすい答えがすぐに出るわけでもないが、両輪を持つことで多様なアイディアとチャレンジが多面的に理解される刺激的な空間となる。
トレンドを追うのではなく、気に入った物を繰り返す姿勢が重要、繰り返すためには能動的な好きという気持ちが欠かせず、深いレベルでの思考を可能にする。
即効性のある知識と本来の意味での教養の両輪を持つことを意識するとよい。
感想
多くのユーチューバーやブロガーがいかに効率良く知識をえることを目的としたコンテンツを教養として配信し、人気を集めていますが、そのことに違和感を覚えることが多かったので本書を読んでみました。
おそらく配信する側もこのようなコンテンツが本来の教養とは異なることを理解しつつも、教養と言う言葉がパワーワードとなっていることから、教養を前面に押し出しているのだろうと感じました。
教養がパワーワードとなっている背景を働く人の焦りを原因とする一方で、ビジネスに必要知識を追うことを否定鈴、ビジネスに必要知識とすぐには役に立たない知識を両輪で身に着けるようにすべきというのは実践的でためになる部分でした。
すぐに何度も繰り返し、行うことで少しずつ自分を深く理解するために欠かせず、そのためには自分の好きなことでなければ繰り返すことができないという部分も納得感がありました。
やはり役に立つかを考えず、好きなことや興味のあることを行っていき、それが自分の血肉となり、いつかビジネスで役に立つことが来るという一見遠回りに見える知識こそが教養なのではないかなと考えさせられる内容でした。
コメント