この本や記事で分かること
・アルケンに水とハロゲンを付加させると何が起きるのか
・ハロヒドリン生成の反応機構はどのようなおのなのか
アルケンに水とハロゲンを付加させるとどうなるのか
アルケンに対し、水とハロゲンを付加させると、ハロヒドリンと呼ばれる1,2-ハロアルコールが生成します。
臭素とアルケンの反応では、三員環ブロモニウムイオンが中間体として生成し、求核試薬であるBr–がさらに反応することで進行します。
この時に、Br–以外にも求核試薬が存在していれば、その求核試薬とブロモニウムイオンを生成させることが可能です。

アルケンと臭素の反応はどのように起きるのか
水は酸素に非共有電子対を持つため、求核試薬として働くことができます。
アルケンと臭素から三員環ブロモニウムイオンが生成した際に、水が存在していれば、水の非共有電子対がブロモニウムイオン環を形成する炭素を攻撃し、結合生成、三員環を開環させます。
炭素と結合した酸素は電子を炭素に共有したため、プラスの電荷を帯びています。別の水分子がプロトンを攻撃し、オキソニウムイオンとなり、プラスの電荷を帯びた炭素との結合が切れることで、ハロヒドリンが生成します。

アルケンを水、強酸と反応させるとどんな反応が起きるのか
アルケンを水と強酸(HA)で処理を行うと、アルコールが生成します。この反応はハロゲン化水素の付加に似た反応機構を示します。
まず、アルケンが求核試薬として強酸と反応し、二重結合の開裂とカルボカチオンの生成を起こします。
次に水が求核試薬として働き、非共有電子対がカルボカチオンを攻撃し、炭素と結合を生成します。
炭素と結合を形成した酸素は正の電荷を帯びていますが、プロトンを引き抜かれたA-が酸素と結合したプロトンを引きぬくことで元の強酸に戻ることとなります。
強酸は反応前後で形が変わらないため触媒として機能しています。

オキシ水銀化とは何か
アルケンの酸触媒による水和反応は強酸と高温が必要となるため、実験レベルでは、オキシ水銀化と呼ばれる水和反応が利用されることもあります。
アルケンを酢酸水銀を触媒として、水と反応させ、生成する有機水銀化合物を水素化ホウ素ナトリウムで処理するとアルコールが生成します。
アルケンのオキシ水銀化によるアルコール生成はハロヒドリンの生成と同じように三員環中間体の生成によって進行します。
アルケンの二重結合が酢酸水銀を攻撃し、中間体である三員環(マーキュリウムイオン)を形成します。
次に水の非共有電子対が炭素と結合を生成し、三員環を開裂させます。正電荷を帯びている酸素からプロトンが脱離し、アルコールを含む有機水銀中間体が生成します。
最後に水素化ホウ素ナトリウムによって、中間体の水銀が水素に置き換わることで、最終生成物であるアルコールを得ることが可能になります。

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