教育の未来 安西裕一郎 要約

本の概要

教育は人と社会をつなぐ絆といっても過言ではなく、その重要性は不安定な社会になるにつれさらに増加しています。

誰もが生涯を通じて学ぶことが求められていますが、生涯を通じて学ぶためには、学びの原動力を持つことが不可欠になります。

学びの原動力は

・目標を見つけ、達成するために必要なスキルを獲得し、目標を達成すること

・社会的なインタラクションの中で、他社と目標を共有し目標を達成すること

を促す心のはたらきで誰もが持っているものです。しかし、様々な要因で学びの原動力が十分に発揮できないこともあります。

これからの日本では、圧力によって社会が大きく変化していきます。そのため、教育も変化し、全員が社会的なインタラクションの中で上からの押し付けでない形で、様々な能力を身に着けていくことが必要となります。

この本がおすすめの人

・教育の重要性を知りたい人

・どう教育を変えていくべきか知りたい人

・子供の教育をどうすればよいのか悩んでいる人

本の要約

未来の教育にはなにが望まれているのか

 少子高齢化、国際政治経済の地殻変動、デジタル革命、地球温暖化と自然災害など今、世界は大きく変わろうとしています。

 先の見えない時代をどう生き抜くかの答えは一つではないが、教育が重要と考えている人は増えています。

 教育は人と社会をつなぐ絆といっても過言ではなく、この本では、筆者の考える未来の教育について書かれています。

先の見えない社会で教育の重要性はこれまで以上に増しています。教育は人と社会をつなぐ絆といっても過言ではない。

人はどのように学ぶのか

 人には学びを促す心のエンジンが備わっていて、このような学びの原動力が人の学びを引き起こす際に欠かすことができません。

 学びの原動力は胎児のころから持ち、生涯を通じて発展していく心のはたらきです。

 心のはたらきには感情や社会性、記憶、認知、思考などが含まれ、これらが経験、言語、イマジネーションなどによって統合されていきます。

 学びの原動力は新しいスキルや知識を身に着けるための学びのための心のはたらきの一つです。

・何かを学びたいという願望や目標を持つ

・他者と願望や目標を共有したい

この二つが、学びの原動力の持つ二つの心のはたらきとなります。

生涯を通じて発展していく心のはたらきである、学びの原動力によって学びが促進される。

学びの原動力とはなにか

 目標や願望を見つけようとする心のはたらきは、感情や社会性、記憶、認知、思考などを通じて発生します。

 目標を達成するために試行錯誤を行うこと、赤ちゃんであれば目の前のおもちゃで遊ぶことで、いつの間にかスキルを身に着けていることがよく見られます。

 なにかのスキルは目標を見つけ、目標を達成しようとすることで身に着けることが可能であり、学びの原動力を持つことがスキルを身に着けるために非常に重要となります。

 また、赤ちゃんははじめお母さんとの関係性によって目標の発見や達成を行います。もう少し大きくなると別々で遊んでいた幼児が徐々に一緒に目標を共有して遊ぶようになります。

 社会的なインタラクションによって他者と目標を共有する心のはたらきも学びの原動力として働くこととなります。

学びの原動力とは

目標を見つけ、達成するために必要なスキルを獲得し、目標を達成すること

社会的なインタラクションの中で、他社と目標を共有し目標を達成すること

を行う心のはたらきとのことです。

学びの原動力はどんな働きをするのか

 学びの原動力は目標を見つけることと目標を共有することの二つから成り立ちます。

 学びの原動力は学びを進めるうえで基幹的な能力である、判断と社会性のはたらきの基盤になっていいます。

 学びの原動力は人類が進化の過程で獲得した能力であり、目標を見つける能力は食物や安全な場所、パートナーの発見などにに役立つ適切な判断を可能にします。

 目標を共有することは他者との協力を可能にし、暮らしやすい社会的な環境を維持できる点で有利となります。

 学びの原動力が基盤となる判断と社会性は以下に上げるような多くのメリットをもたらします。

・主体的に生きる

・多様な人々と生きる

・感謝をもって生きる

・誇りをもって生きる

学びの原動力は判断と社会性の基盤となっています。

生き延びるために有益な能力であったため、人類が進化の過程で獲得した能力の一つになっています。

学びの原動力はどのように発展していくのか

 学びの原動力は誰もが持つものですが、貧困などによる教育格差、家庭環境、変化に対する社会、経済、政治の転換の遅れなどの社会の病理によってその発達が妨げられてしまいます。

 学び手にふさわしい社会的なインタラクションの中での学びの場があれば、学びの原動力の発達を促すことができる。

 未来の日本には社会を捻じ曲げかねない大きな圧力が4つ存在します。4つの圧力とは

1.少子高齢化

2.国際社会の地殻変動と中国の台頭

3.デジタル革命

4.地球温暖化と自然災害

があげられます。

 幅広い世代の人々が学び続け、学ぶ姿勢が広がっていくことで4つの圧力に屈せずに、一人ひとりが充実した人生を送ることが可能になります。

学びの原動力は誰もが持つものですが、環境によってその発展が妨げられることは少なくありません。

未来の日本では4つの圧力で社会がねじ曲がってしまう可能性があり、幅広い人が学ぶ姿勢を持つことが重要になる。

どのような教育が考えられるのか

 より良い日本の教育の未来を実現するためには、以下に示すような3つの鍵があります。

1.発達過程を重視したオープン化

 学校でいえば、学級、学年、年齢、地域などで異なる組織との壁が高くなってしまいます。学びの原動力の発達を阻害する壁を適切な高さに設計することが重要になります。

 まずは、教えて(学校であれば教師)の心がオープンにし、社会との壁を取り除くことが重要になります。

 社会人学生の少なさや飛び級の少なさは日本のオープン化が進んでいないことのあらわれになってしまっています。

2.イノベーションスキルの育成

 新しいことを創案し、社会を変えるイノベーションやイノベーションを起こすための知識を身に着けることも重要になります。

 新しい発見や解釈をあまり重視していなことは他国と比較して、大学院の進学率が停滞していることなどからも明らかになっています。

3.判断の基盤となるリベラルアーツ

 リベラルアーツは自ら主体的に決定する判断の基盤や基盤となるスキルであり、様々な判断を通じて経験したことを総合して血肉になった知識やスキルのことを指します。

 様々な経験を行うことでリベラルアーツを身に着けることが様々な判断を行う上で助けとなります。

この3つを身に着けるような教育を実現することで学びの原動力を高め、4つの圧力を超えていくことができます。

1.発達過程を重視したオープン化

2.イノベーションスキルの育成

3.判断の基盤となるリベラルアーツ

の3つを身に着けるような教育を実現できれば、4つの圧力を超えることができます。

日本の教育はどのように変化してきたか

 日本の教育は明治初期と戦争直後に大きく変化してきました。明治初期は黒船来航などの外国勢力の上陸、戦争直後は敗戦によるアメリカによる変化でどちらも強い外圧を受けたことで変化を余儀なくされることで起こりました。

 現在、日本の教育は再び大きな変化、デジタル革命による変化に直面しています。

 しかし、デジタル化の波も外圧ではありますが、目に見えないため実感を持ちにくい、海外を目標にできた以前の変化と異なり、世界でも標準的なデジタル化教育が確定しておらず、お手本がないという違いがあります。

 このような違いから、日本の教育はデジタル化に対応できていません。教育の未来をイメージし、長期的な政策や財源を確保することが重要になる。

明治期と敗戦によって教育の内容は大きく変化しました。

デジタル化による変化も同じくらい大きいものですが、目標がなく、目に見えないためデジタル化に対応できていません。

イノベーションを起こすにはどのような教育が必要か

 イノベーションとは価値を生み出しす方法を変革し、社会を良い方向に変える大きな変化をもたらすことです。

 イノベーションの方法を教えるには、上からの押し付けでは不可能で、以下の8つを持つことが大事になってきます。

・主体性

・信念

・共感

・メタ認知

・思考

・イマジネーション

・知識

・スキル

 教育によって8つの心のはたらきをはぐくむことで、イノベーションの方法を身に着けることは非常に重要なこととなっていきます。

 種々のデータに触れたり、データの取り扱いを学ぶことは今後のイノベーションの方法を学ぶ上で欠かすことができないため、教育におけるデジタル化を進めることはとても重要になります。

 8つの心のはたらきをタスク、教育の未来において教育が人と社会をつなげる絆であるためにも教育のDX化は欠かすことができない。

上からの押し付けでイノベーションを起こすことは不可能です。

主体性、信念など8つの項目を身に着けるような教育が必要でそのためにもDX化が不可欠です。

未来の教育はどうなっていくべきか

教育の未来において重要となる学びの基本項目は「知識を鍛えること」と「社会的関係を築く力」になります。

 主体的な学び、アクティブラーニング、協働学習やグループ活動など様々な経験を通して二つの基本項目を身に着けることができるような教育へと変化していく必要があります。

 学びたいという気持ちはすべての人が持っているものです。その学びを自分自身の人生に生かすとともに、社会を平和に維持することに活用することが重要になっています。

これからの教育では、知識を鍛えること、社会的な関係を築く力を身に着けるような教育を行う必要がある。

感想

 不安定で変化の速い社会になるにつれ、教育の重要性は様々なところで取り上げられています。本書ではそもそもなぜ人間が学ぶことができるかを学びの原動力という点から解説されています。

 誰もが持っている学びの原動力をどうやって生かしていくかが教育に求められるものというのがよくわかりました。

 日本の教育は上からの押し付けが大きく、なかなかイノベーションを起こしにくというのも学びの原動力を抑圧してしまうためと考えれば納得できるものになります。

 また、教育にも大きな変化が必要ですが、日本の教育は明治初期と敗戦いう強い外圧でなければ変わることができないというのも重要な点かと思いました。コロナのパンデミックを強い外圧とし、DX化などにつなげなければ日本の教育が変わるチャンスはないのかもしれません。

 変化していくことはうまくいくとは限らず、失敗しながら続けていくしかありません。そのためにも学びの原動力は必要になると思います。学びの原動力を意識し、失敗しながら目標に向かう方法を探すことが欠かせないと感じる本でした。

コメント

タイトルとURLをコピーしました