Z世代のアメリカ 三牧聖子 要約

本の概要

アメリカは政治、外交、社会様々な意味で転換期にあります。特に、1997年~2012年の間に生まれ、今後アメリカ社会の中心となっていくZ世代はこれまでのアメリカの姿勢に疑問を持つ人が増えています。

Z世代は多様性がデフォルトであり、国際協調を重視する人が多いという特徴も持っています。世界情勢がアメリカ一極集中から多極化へと向かう中で、Z世代の価値観は世界の秩序をどう保っていくかを知るうえで欠かすことができません。

格差の拡大と固定、対中政策、例外主義の放棄などアメリカの直面している問題とそれらをZ世代がどう捉えているのか、今後のアメリカがZ世代を中心にどう変わっていくのかなどを知ることができる本になっています。

この本や記事で分かること

・アメリカの現状と問題点

・例外主義とは何か、例外主義が今どう変化しているのか

・Z世代はアメリカの問題をどう捉えているのか

アメリカの問題について書かれた「問題はロシアよりむしろアメリカだ」の要約はこちら

アメリカの分断とそれが病にもたらす影響について書かれた「病が分断するアメリカ」の要約はこちら

アメリカにみられる新自由主義の修正について書かれた「転換するアメリカ新自由主義」の要約はこちら

本の要約

要約1

アメリカは政治、外交、社会様々な意味で転換期にあります。特に、1997年~2012年の間に生まれ、今後アメリカ社会の中心となっていくZ世代はこれまでのアメリカの姿勢に疑問を持つ人が増えています。

特に、アメリカは物質的、道義的に比類なき存在であり、世界の安全に対して特別な使命を負っているという例外主義という考えに疑問を持つ人が増えています。

例外主義の下でのアメリカの介入は、一定の国際秩序に貢献した一方で、アメリカ的な価値観を絶対視し、他国に押し付ける傾向もみられていました。

多様化が当たり前となっており、国際協調を重視する傾向の強いZ世代はアメリカ一極主義から多極化した世界でどうやって秩序を保っているのかに立ち向かう姿勢を持っています。

要約2

アメリカでは、リベラリズムへの反発や民主主義の機能不全も大きな問題です。

人種やジェンダーの平等を求める運動、移民や難民の受け入れ、性的マイノリティの権利などのリベラルな思想に反発を持つ人が増えていることが、分断の要因になっています。

政治的な対立は激しさを増し、選挙の結果しだいで暴力が正当化されると考える人が増えてしまうなど民主主義の根幹が揺らいでいます。

経済的な格差の拡大と格差の固定によって実力や努力ではなく、どこの家庭で生まれたかという運で決まってしまう社会になってることも分断の大きな要因です。

国内での問題を抱えたまま他国への干渉を行い、民主主義の魅力を訴えたとしても、空虚なものでしかありません。まずは、自国の政治経済の問題に謙虚に向き合い、地道に解決していくことが求められています。

要約3

アメリカは中国を最大の競争相手と捉え、中国への対抗を続けており、米中対立を招いていますが、民主主義の機能不全の問題もあり、対策がうまくいっていません。

米中対立の一環として、個人情報の乱用を理由に、TikTokを禁止していますが、同じく顧客の情報に問題の見られたFacebookとの扱いの違いに疑問を持つZ世代も少なくありません。

客観的な証拠もなしに国家安全保障を錦に不公平な扱いを正当化されることに納得していないZ世代も多く存在しています。

価値観が異なっても大国である中国と付き合っていかないといけないと考えているZ世代は、両国の協調の必要性が高まっていることを理解しており、どんなに価値観が異なっても中国という大国と生きていかなければいかないと考えています。

要約4

Z世代はテロとのたたきにおける一方的な価値観の押し付け、専制国家の人権侵害などを強く批判する反面、同盟国などがこれらの価値観を踏みにじった場合には黙認するダブルスタンダードにも強い反発を持っています。

人工妊娠中絶を行う憲法上の権利を認めたロー判決を覆えすなど反リベラルな姿勢を鮮明にする共和党に対する反感を強めています。

Z世代の共和党、反リベラルへの反発は選挙結果にも現れており、2022年のアメリカの中間選挙では、共和党の大勝も予想されていましたが、Z世代の投票の多さもあり、民主党が善戦しています。

Z世代による変革によって、自分たちの社会が抱えた脆弱さと向きあい、自国でできることに限界があることを理解し、他国との協調を模索していくことができれば、軍事や経済で圧倒していた時代とは違う強さを期待することもできます。

今のアメリカはどのような状態なのか

 アメリカは政治、外交、社会様々な意味で転換期にあります。

 本書では1997年~2012年の間に生まれ、今後アメリカ社会の中心となっていくZ世代の視点に注目してます。

 Z世代は社会の多様性はデフォルトであり、人種、宗教、価値観、ライフスタイルなどの多様化が進んいます。

 Z世代はこれまでのアメリカの政治外交を特徴づけてきた例外主義の概念にとらわれず、現在のアメリカの姿勢に疑問を持つ人が多いという特徴があります。

 ただし、Z世代は絶望しているのではなく、声を上げ様々なアクションを起こし新しいアメリカを求めています。

 Z世代に生まれつつある新しい認識や動きに着目することで未来のアメリカ、未来の平和を展望する本になっています。

アメリカは政治、外交、社会様々な意味で転換期にあります。

転換期の中でも、今後アメリカ社会の中心となっていく1997年~2012年の間に生まれたZ世代の視点に注目が集まっています。

Z世代は社会の多様性はデフォルトであり、人種、宗教、価値観、ライフスタイルなどの多様化が進み、Z世代の新しい認識や動きに着目することで未来のアメリカ、未来の平和を展望することができます。

例外主義とは何か

 例外主義とはアメリカは物質的、道義的に比類なき存在であり、世界の安全に対して特別な使命を負っているという考えです。

 世界大戦以降の例外主義は国際秩序の盟主として、秩序の維持に努めなければならないという論理であり、この論理のもと、アメリカは世界の様々な場所での介入を続けてきました。

 しかし、トランプ大統領に代表されるように、アメリカも自己の利益を優先すべきであり、利益の介入は避けるべきという考えや、社会保障制度の未熟さや格差の拡大などの問題は軍事面以上の安全保障上の課題ではないかという声もみられ、例外主義に疑問を感じる人も少なくありません。

 バイデン大統領もトランプ大統領のアメリカ第一主義を踏襲している部分もあり、アフガニスタンから撤退するなどアメリカは世界の警察をやめるべきという考えは広がっています。

 バイデン政権はウクライナへの支援は続けていますが、世論の反対の声は大きくなっています。

例外主義とはアメリカは物質的、道義的に比類なき存在であり、世界の安全に対して特別な使命を負っているという考えです。

世界大戦以降の例外主義は国際秩序の盟主として、秩序の維持に努めなければならないという論理であり、この論理のもと、アメリカは世界の様々な場所での介入を続けてきましたが、近年ではアメリカの利益を優先すべきと考えていつ人も少なくありません。

例外主義にはどんな問題がみられたのか

 例外主義の下でのアメリカの介入は、一定の国際秩序に貢献した一方で、アメリカ的な価値観を絶対視し、他国に押し付ける傾向もみられていました。

 アフガニスタンやイランへは、武力行使と新政権への介入をおこなったものの、アメリカが望む社会を築くことはできませんでした。

 アメリカの盟主意識の放棄が水平的な国際秩序へとつながっていくとは限りません。例外主義の放棄がロシアによるウクライナ侵攻を導いた可能性もあります。

 アメリカ一極主義から多極化した世界でどうやって秩序を形成していくかは世界全体の課題といえます。

 Z世代も例外主義を維持すべきではないと考えており、国際協調こそが重要と考えています。

 実際に国連への関与が国益にかなうと考える人が他の世代に比べて多くなっています。国際協調主義を持ったZ世代が世界の秩序形成という問題にどう立ち向かっていくかの、私たちも他人事ではなく、自分事としてみていくべきです。

例外主義の下でのアメリカの介入は、一定の国際秩序に貢献した一方で、アメリカ的な価値観を絶対視し、他国に押し付ける傾向もあり、アフガニスタンやイランへは、武力行使と新政権への介入をおこなったものの安定化した社会を実現することができませんでした。

ただし、アメリカの盟主意識の放棄がそのまま国際秩序につながるわけではないため、アメリカ一極主義から多極化した世界で同秩序を形成していくかは世界全体の課題といえます。

Z世代は国際協調を軸にしており、どのように対応するか自分事としてみていくべきです。

アメリカでリベラリズムはどのような状況か

 アメリカではリベラリズムへの反発も広がっています。

 人種やジェンダーの平等を求める運動、移民や難民の受け入れ、性的マイノリティの権利などが分断の要因になっています。

 反リベラルを訴えることが当選の要因の一つであったトランプ大統領以降も、反リベラルを訴えることで当選する州知事は増加しています。

 ウクライナ侵攻でおさまったものの、性的マイノリティへの権利に慎重なプーチン大統領に賛同する人が見られるなど反リベラル派の増加は多くの場面で見られています。

 また、反リベラルな言動をしてしまった人を排除するキャンセルカルチャーの行き過ぎへの疑問が大きくなっている面もあります。

 SNSで批判し、キャンセルさせるだけでは、状況が変わるわけではないことを多くの人が理解していく必要があります。

リベラリズムへの反発も広がり、人種やジェンダーの平等を求める運動、移民や難民の受け入れ、性的マイノリティの権利などが分断の要因になっています。

また、反リベラルな発言をした人を排除するキャンセルカルチャーの行き過ぎも問題になっています。

アメリカの民主主義はどのような状態なのか

 アメリカは民主主義国家の盟主として、多くの国に関与してきましたが、そのアメリカ内で民主主義が機能不全に陥っています。

 政治的な対立は激しさを増しており、選挙の結果しだいで暴力が正当化されると考える人が増えるほどに、大きくなっています。

 また、経済的な格差の拡大と格差の固定によって、実力や努力ではなく、どこの家庭で生まれたかという運で決まってしまう社会になっています。

 国内での問題を抱えたまま他国への干渉を行い、民主主義の魅力を訴えたとしても、空虚なものでしかありません。

 まずは、自国の政治経済の問題に謙虚に向き合い、地道に解決していくことが重要です。

アメリカ内では政治的な対立による暴力を正当化してしまう人が増えるなど民主主義が機能不全に陥っています。

分断の原因の一つは経済的な格差の拡大と格差の固定にあります。まずは、自国の政治経済の問題に謙虚に向き合い、地道に解決していくことが求められています。

米中対立をZ世代はどう捉えているのか

 アメリカは中国を最大の競争相手と捉え、中国への対抗を続けており、米中対立を招いていますが、民主主義の機能不全の問題もあり、対策がうまくいっていません。

 個人情報の乱用を理由に、TikTokを禁止していますが、客観的な証拠がなく、反中感情に裏付けられたものであることも露呈しています。

 また、同じく顧客の情報に問題の見られたFacebookとの差も問題視されています。

 Z世代は政治や大企業の欺瞞に敏感で、TikTokとFacebookとの差異も冷静に見つめており、TikTokの経営者が議会の公聴会で誠実な姿勢を見せるとZ世代を中心に多くの称賛を受けました。

 この姿勢を国家安全保障への危機感の欠如とする向きもありますが、Z世代も国家安全保障に懸念がないわけではありません。

 しかし、客観的な証拠もなしに国家安全保障を錦に不公平な扱いを正当化されることに納得していないZ世代も多く存在しています。

 米中対立が深まる中ですが、ロシアへの対応、気候変動など両国の協調が必要性は高まるばかりです。

 Z世代は米中の平和的な共存をあきらめていません。協調に幻想をもっているわけではなく、どんなに価値観が異なっても中国という大国と生きていかなければいかないことを理解しているからです。

米中対立の一環として、個人情報の乱用を理由に、TikTokを禁止していますが、同じく顧客の情報に問題の見られたFacebookとの扱いの違いに疑問を持つZ世代も少なくありません。

客観的な証拠もなしに国家安全保障を錦に不公平な扱いを正当化されることに納得していないZ世代も多く存在しています。

また、Z世代は米中の平和的な共存をあきらめていません。協調できると考えているわけではなく、価値観が異なっても大国である中国と付き合っていかないと考えています。

Z世代はテロとの戦いをどう捉えているのか

 Z世代の持つ例外主義への冷めたまなざしの端的な例がテロとの戦いです。

 同時多発テロ以降、アフガニスタン侵攻やイラク戦争などを行ってきました。当初は多く人が賛同していたものの、民間人の犠牲、大量破壊兵器の存在が認められなかったこと、アフガニスタンの文化や歴史を理解しない姿勢やイスラム教への偏見などからこれらの軍事行動に疑問を持つ人は増加しています。

 近年では、ドローンの兵器利用も進んでいますが、誤射も発生しています。西洋の民間人が誤射された際に、遺憾を表明しながら、パキスタンの民間人を誤射したことについての謝罪がないことにも大きな反発が集まっています。

Z世代はテロとの戦いにも冷たいまなざしを持っています。

一方的な価値観の押し付けや民間人の犠牲やレイシスト的なふるまいに反対が集まっています。

アメリカの専制国家への批判をどう感じているのか

 アメリカは民主主義や人権の庇護者であると自負し、専制国家の人権侵害などを強く批判してきました。しかし同盟国などがこれらの価値観を踏みにじった場合には黙認する場合も少なくありません。

 中国やロシアの人権侵害を批判しながら、イスラエルの人権弾圧を不問にする姿勢やウクライナ難民を受ける一方で、アフガニスタン難民を拒否しているなどダブルスタンダードと言わざるを得ない面があります。

 Z世代はこのようなダブルスタンダードにも批判的な姿勢をもっています。

専制国家の人権侵害などを強く批判する反面、同盟国などがこれらの価値観を踏みにじった場合には黙認するダブルスタンダードに批判的な姿勢を持つ人が増加しています。

副大統領カマラ・ハリスの評判はどう変わったのか

 女性初の副大統領となったカマラ・ハリスはインド系の母とジャマイカ系の父を持つ女性というアメリカ社会の多様性を象徴するような存在で、大きな期待が持たれてきましたが、人気に陰りが見えています。

 ハリスのアイデンティティに注目が集まりすぎたこと、進歩主義的な態度をとらず中道を模索する姿勢や共和党の性暴力を糾弾しながら民主党の性暴力には沈黙したことなどが要因と考えられています。

 ジェンダー、人権の平等に向け、黒人女性が政権の中心に入り込むことはその第一歩であり、重要なことは、差別の是正のための政策的な変化が起きることです。

 Z世代は歴代の政治家が繰り返してきた口先の改革論にうんざりしており、政権内で既存の権力構造での女性ボス地位に納まってしまったハリスに失望する人も増えてしまっています。

女性初の副大統領となったカマラ・ハリスには大きな期待が持たれてきましたが、人気に陰りが見えています。

政権の中心に入り込むことは第一歩にすぎず、差別の是正のための政策的な変化が起きるかどうかが重要になるはずですが、既存の権力構造での女性ボス地位に納まってしまったハリスに失望する人も増えています。

中絶を巡る動きはどのようなものなのか

 中絶を巡る動きも政治の分断の要因の一つとなるものになっています。

 1973年に人工妊娠中絶を行う憲法上の権利を認めたロー判決が2022年に連邦最高裁によって覆されています。

 トランプ大統領によって最高裁の判事が保守派に傾いたことで、判決が覆えっています。

 子供を産むかの決断は女性の尊厳の核心でありながら、踏みにじられたと感じる人も多くいます

 また中絶を選ばざるを得ない社会を変えるべきですが、中絶に反対してきた人々は生まれてきた子供のヘルスケアに情熱を傾けることはありません。

 Z世代では中絶を擁護する人が違法であるべきと考えらている人の割合を大きく上回っています。

人工妊娠中絶を行う憲法上の権利を認めたロー判決が2022年に連邦最高裁によって覆されています。

子供を産むかの決断は女性の尊厳の核心でありながら、踏みにじられたと感じる人も多く、Z世代では中絶を擁護する人が違法であるべきと考えらている人の割合を大きく上回っています。

今後のアメリカはどうなっていくのか

 2022年のアメリカの中間選挙では、インフレへやバイデン大統領への不満から共和党の大勝も予想されていましたが、民主党が善戦しています。

 民主党の善戦の大きな要因の一つが若年層の投票の多さでした。この世代がインフレ対策以上に中絶を重視するなどの姿勢もあり票を集めることができました。

 しかしZ世代のバイデン政権へのまなざしは厳しいものであり、サンダースをはじめとするより左派の政治家への期待も高まっています。

 Z世代による変革によって自分たちの社会が抱えた脆弱さと向きあい、自国でできることに限界があることを理解し、他国との協調を模索していくことも可能になります。

 今のアメリカがこのような変革をすることで、軍事や経済で圧倒していた時代とは違う強さを期待することもできます。

2022年のアメリカの中間選挙では、共和党の大勝も予想されていましたが、民主党が善戦しています。

民主党の善戦の大きな要因の一つがリベラル、多様性の価値観を持つ若年層の投票の多さでした。Z世代による変革によって自分たちの社会が抱えた脆弱さと向きあい、他国との協調を模索していくことができれば、軍事や経済で圧倒していた時代とは違う強さを期待することもできます。

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