世界インフレと日本経済の未来 伊藤元重 要約

本の概要

コロナやウクライナ侵攻をきっかけに、世界が大きく動いています。世界の動きは日本の経済にも大きく影響し、円安や物価上昇が話題になっています。

平成の30年間はデフレによる停滞と安定を繰り返してきた日本にも大きな変化が訪れる可能性が高くなっています。

円安の理由、金融政策と財政出動のありかたや景気との関係などを解りやすく学べることのできる本になっています。

世界インフレの謎の要約はこちら

この本がおすすめの人

・金融政策の役割を知りたい人

・コロナやウクライナ侵攻などの経済への影響を知りたい人

・円安や物価上昇などで経済に興味が出た人

本の要約

要約1

コロナやウクライナ侵攻をきっかけに、世界経済が大きく動いています。

大きな変化を経済的な視点から捉えることで、物価上昇やデフレによる停滞と安定からの脱却など日本経済の今後を知る助けになります。

要約2

現在、アメリカの金利上昇によるドル高で円安が続いていますが、円安になる前から円の実質価値は下がっていました。

メリカなどの諸外国では、物価上昇がみられていましたが、日本はデフレが続いたため、実施的な円の価値は下がり続けていました。

日本では、景気回復のため金融緩和が続けられましたが、効果は限定的でしかありませんでした。

要約3

インフレが続けば、金融緩和をやめ、引き締める必要があります。

急激な金融の引き締めは景気停滞を招くため、金融を引き締める際には、景気対策としての財政出動がこれまで以上に重要になります。

効率的な財政出動で景気刺激、産業振興で行い、物価上昇→賃金上昇→税収増加の良いサイクルを起こすことができれば、債務の実質的な目減りと合わせて健全財政と財政出動の両立が可能です。

要約4

効率的な財政出動は、成長産業への投資によって成立します。

欧米のキャッチアップから脱却し、DXやカーボンニュートラルなどの新しい成長市場に進出する民間企業を助ける産業振興がとしての財政出動が必要です。

また、人材投資によって学ぶ土壌を作ることや新技術を利用した成長産業への人材移動を促すことも必要となります。

現在の経済はどのような状況なのか

 コロナ危機による人々の行動パターンや働きかたの変化、デフレからインフレ時代への突入など近年の経済は大きく動いています。

 日本の停滞と安定の時代が突如終わり、変化と不確実性の時代に突入しています。

 このような大きな変化の構造を経済の視点からとらえることで、日本経済が今後どうなっていくかの一助となります。

コロナによる影響などから経済が大きく動いており、日本も例外ではありません。

現在の円安をどう考えるべきか

 2012年の安倍政権誕生時、為替レートが円安に動いて以降10年近く、円ドルは110円付近で推移し、動かないものと考えていました。

 しかし、2021年夏ごろから、円安が進んできました。この円安の原因はアメリカの金利の上昇によるドル高によるものでした。

 また、レートとしてのドル円が変わらなかった時期でも、日本の物価や賃金が上昇していませんが、アメリカではどちらも2%ほど上昇しています。

 9年間でアメリカは19.5%物価と賃金が上昇しており、レートが変わらなくても円の実力は少しづつ下がっており、購買力は大きく減少していました。

 実質実効為替レートは物価を考慮した為替レートで円の本来の実力を示すものです。日本経済を復活には単に円安を解消するだけでなく、実効為替レートに注目する必要があります。

ここ10年程、円ドルのレートの動きは少なかったものの、円安が進んでいます。

しかし、レートに動きがない時期も日本とは違い、アメリカでは賃金や物価が上昇していたため、実質的な円の価値は減少していました。

円安と円高はどちらが望ましいのか

 円安と円高のどちらが好ましいかという疑問に意味はありません。円高、円安は経済要因の結果であり、原因のほうが重要です。

 現在の円安も海外からの輸入にはマイナスですが、輸出業やインバウンドには有利に働く面もあります。ただ、過度なレートは好ましくないため、政府は過剰な円安を回避したいというメッセージで過度なレートの変動を避けようとしています。

円高、円安は経済要因の結果であり、原因が重要です。過度なレートは好ましくありませんが、円安であれば、輸出やインバウンドなどの利点を活かすべきです。

日銀は日本の経済低迷に何をしてきたのか

 中央銀行は景気が良いときは金利を上げ、悪いときは金利を下げることでインフレ抑制やデフレによる景気の低迷を避けてきました。

 しかし、日本のこの20年間は政策金利を0%まで下げても、デフレは改善せず、新しい手法として量的緩和よって市場に流通する貨幣を増やす手法で対応してきました。

 量的緩和はそれなりに効果を上げましたが、その効果は次第に限定的になりました。

 その後も、マイナス金利の導入や本来市場がに任せるべき長期金利の操作(イールドカーブコントロール)を行うなど、大胆な金融緩和策を行ってきました。

金利の減少や貨幣に流通量を増やす量的緩和を行いました。それなりの効果は見られましたが、効果は限定的でした。

金融緩和はいつまで続くのか

 日銀は金利の上昇を防ぐために、国際を無制限に購入してきましたが、市場はいつか金利を上げざるを得ないと考えるようになっています。

 日銀が金利を支えている以上、現状維持か金利上昇が起こる可能性が非常に高いため、市場は国債を売りに出すことで損をする可能性が低くなります。

 市場で売りが多くなれば、金利の上昇を防ぐため、さらに日銀が国債を買い増す必要が出てくるため、日銀は長期金利を0.5%まで引き上げています。

 しかし、市場は0.5%では終わらないと予測し、売りが続いています。

市場はいつか金利を上げざるを得ないと考えて、国債を売る動きが活発になっています。

金利の上昇はどこまで続くのか

 金利の上昇がどこまで続くかは物価の上昇が続くかがカギになります。

 物価の上昇が続けば、低金利を維持する必要はなくなりますが、急激な金利上昇や量的緩和の収量は過度な調整を求めることになるため、慎重に行う必要があります。

 長期的には世界的にインフレによる金利上昇が起きているため、日本でもインフレが続く可能性が高いと考えられます。

物価上昇が見られれば、低金利を維持する必要はなくなります。

世界ではインフレによる金利上昇が起きているため、日本でもインフレが続く可能性は高いです。

コロナやウクライナ侵攻などは日本経済にどう影響するのか

 コロナとウクライナ侵攻などの地政学的な混乱の拡大から、日本も安定と停滞から動き出す可能性があります。

 停滞が終わり、インフレが進行すれば、デフレ対策として行ってきた、金融緩和策を段階的に緩めていく必要があります。

 しかし、景気の先行きには不安があるため、金融緩和の引き締めとセットで財政出動による景気対策が必要です。

 日本では企業による投資が国外に偏り、国内への投資が少なかったことが停滞に原因の一つでした。

 高度成長期に日本が成功した欧米のキャッチアップから脱却し、DXやカーボンニュートラルなどの市場に進出する民間企業を助ける産業振興としての財政出動が必要です。

日本で長く続いた安定と停滞が終わる可能性があります。

インフレが起きれば、金融引き締めを行う必要があり、景気対策として財政出動が求められます。

財政出動にはどのような効果があるのか

 財政出動を行うだけでは、財政赤字を大きくしてしまいますが、インフレによる金利上昇で物価、賃金の上昇と財政出動による産業振興が行われれば、債務の実質価値が目減りし、税収が増加することで健全な財政と成長の両立が可能です。

 低成長時代の金融緩和・財政抑制から金融抑制・財政刺激に移行することがもとめられています。

 コロナ、ウクライナ危機での景気低迷で賃金が上がらず、物価が上昇してしまうとスタグフレーションとなる可能性もあるため、効率的な財政出動による景気刺激と産業振興が必要です。

効率的な財政出動で景気刺激、産業振興で行い、物価上昇→賃金上昇→税収増加というサイクルを起こすことが可能になります。

日本の給与を上げるには何が必要か

 海外と比較して、低迷する日本の給与の上昇には企業や労働環境で以下のような変革が必要です。

・従業員のスキルアップへの投資による生産性の向上

・コロナによる環境変化を利用し、雇用、労働の柔軟性を上げる

・解雇規制を緩和し、労働市場の流動性を上げる代わりに、政府による労働者保護を充実させる

・副業や兼業を認め、新しいことを学ぶ土壌を作る

 新しい技術を学ぶ土壌と新しい技術を利用した成長産業への人材移動を行うことがカギとなります。

日本の給与上昇には学ぶ土壌を作り上げることと成長産業への人材移動を行うことが必要です。

企業は社会の変化とどのように向き合うべきか

 ウクライナ危機やコロナによって世界経済は、サプライチェーンの大きな混乱を招き、行き過ぎたグローバル化に反発を促す可能性もあります。

 一方で、オンライン授業のようにDX化が社会に浸透するきっかけにもなっています。

 企業でもDX化が注目されていますが、あくまでも技術は手段であり、どのような価値を顧客に提供できるのかという視点を持つことが重要です。

 環境問題やSDGsへの対応やグリーン投資も単なる社会貢献や表面的な理解ではなく、企業が取り組むべきコア事業にしていくと考えることが重要です。

DXなどの技術はあくまで手段で、どんな価値を提供できるのかという視点が重要です。

SDGsやグリーン投資をコア事業として組み込むことも重要な課題となります。

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