大人のための生物学の教科書 要約6 遺伝と減数分裂、発生とは

要約5 光合成、窒素の循環とは?についてはこちら

この本や記事で分かること

・生物がどのように子孫を作っているのか

・有性生殖とはどんな仕組みで、なぜ多様性を発揮できるのか

生物はどのように子孫を作っているのか

 生物が子孫の作る方法は無性生殖と有性生殖の二つに分けられます。

 無性生殖は一個体からクローンで増えていくものであり、植物の挿し木やジャガイモの種イモなどが該当します。

 これに対し、有性生殖は2つの個体が配偶子と呼ばれる細胞を出し合い、それが合体して新たな世代を作るものです。

 次世代が親とは異なる新たな遺伝構成を持ち、多様な子孫が生まれることで環境の変化に強いことが有性生殖の利点です。

有性生殖はどのように進行するのか

 単に二つ細胞を出し合うだけでは、世代を重ねるごとに染色体の数はどんどん増えてしまいます。そこであらかじめ配偶子を作る際に、染色体数を半分しておくのが、減数分裂となります。

 減数分裂の基本原理は配偶子のもととなる細胞が2回連続で分裂するだけです。

 染色体は長い糸状の分子であるDNAが幾重にコイル状に巻いて圧縮したものであり、父親から23本と母親からの23本から受け継いだものです。

 それぞれの染色体のうち、同じことに関する遺伝情報を持っている染色体は、相同染色体と呼ばれますが、相同染色体同士は普段は全く別の染色体のように振る舞っています。

 相同染色体は両親の子が次世代のための配偶子をとる際に初めて接触し、時々、双方のつなぎ変えが発生します。

 このつなぎ変えは交叉と呼び、その結果、両親からきた遺伝情報は一部が入れ替わり変化を起こします。

有性生殖はなぜ、多様性を発揮することができるのか

 染色体が減数分裂する際には、片方の染色体をランダムに捨てています。

 人の染色体の数は23組あるため、配偶子には223通り(840万通り)のパターンが存在し、作られた卵と精子が合体するため、840万×840万=約70兆通りのパターンが存在することとなります。

 さらに遺伝子の組み換えが起こること考慮すると生殖細胞の多様性は驚くべきもので、人類誕生以降全く同じで遺伝子を持つ人はいないと考えることが妥当といえます。

 遺伝的な特徴が似通った集団では、新しい特徴を持った種が生まれにくく、環境が変化した際に全滅してしまうリスクが高まってしまいます。

 遺伝的な多様性は進化の原動力であり、生物のリスク分散の仕組みといえます。

有性生殖では23組の染色体をそれぞれの染色体で父方由来と母方由来どちらを選択するかと遺伝子の組み換え、交叉によって驚くほどの多様性を持っています。

遺伝的な多様性は進化の原動力でありながら、リスク分散にも貢献している非常に重要なものです。

初期の細胞はどのよう成長していくのか

 すべての配偶子は始原生殖細胞と呼ばれる少数の細胞集団から分裂による増殖と分化を経て作られています。

 始原生殖細胞はヒトでは胎生3週程度とまだ胚全体が1㎜程度の大きさでしかないときから次世代を生み出すための準部を始めています。

 受精によって父方由来の遺伝情報が卵に持ち込まれると、受精卵は直ちに卵割を開始します。卵割とは受精卵は発生初期に行う細胞分裂のことで、普通の細胞分裂と違い、分裂が次々と起きていきます。

 普通の細胞分裂では分裂→成長→分裂…ですが、卵割では分裂を繰り返し起こすため、胚全体の大きさが変わりませんが、細胞数だけが増加しています。

 体を作っていくには様々な役割の細胞があり、役割分担をするためにも多数の細胞が必要になります。

 そのため、まずは細胞の数を増やすことで体を作る準備をしていきます。

卵割で細胞の数を増やしあとはどのように成長するのか

 卵割によって、細胞数が増加した後は、胚表面にくぼみができる陥入が起き、胚の中で袋状の構造を形成します。

 この袋は消化菅になる部分で、原腸と呼ばれます。この時期の細胞には胚の外側を覆う外胚葉、内側にある中胚葉、原腸の壁になる内胚葉の3種類の細胞があります。

 外胚葉からは表皮と神経が、中胚葉からは骨や筋肉、腎臓や心臓、内胚葉からは消化菅や肺、肝臓、すい臓などが作られます。

 消化管はもともと胚の外側にあった部分がくぼんで出来たものであるため、発生学的には体の外にあるものということになります。

原腸の形成後、どのような成長をするのか

 その後、脊椎動物では、球形である胚の背中側が平らになり、両端がせりあがり、閉じていきます。原腸と同じように背中側に細い管ができ、これが神経菅となり、将来的に脳や網膜、脊髄ができていきます。

 この時期になると大部分の細胞が大まかに将来どんな組織や臓器になるのか運命が決まってきます。

 神経菅の中も原腸と同じく発生学的には外にあるものであり、脳や脊髄のように最も内側にある部分がもともとは一番外だったことが意外でもあり、外側であるがゆえに物理的な傷が脳や脊髄の損傷につながりかねないという懸念もあります。

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