思考の穴 アン・ウーキョン 要約

本の要点

要点1

私たちは思考を惑わせる様々な思考の不具合=バイアスを持っています。バイアスは生きていくうえでプラスになる面もありますが、現在の環境や状況では、様々な問題を引き起こす要因にもなっています。

バイアスを防ぐにはただ、バイアスについて理解し、避けようと心にとどめておくだけでは、充分ではありませんが、認知心理学の進化でバイアスの影響を少なくする方法が明らかになっています。

要点2

多くの人が陥りやすいバイアスには以下のようなものがあります。

流暢性バイアス:頭の中で容易に処理できるものを簡単にできると勘違いする

確証バイアス:自分の考えが正しいとする証拠ばかり集めてしまう

因果関係の誤認:物事の結果を引き起こした原因を勘違いする

具体的な事例に影響されやすい:データではなく、エピソードに惹かれてしまう

損失回避:ネガティブな情報に強く反応しすぎて、適切に判断できない

因果関係の刷り込み:最初に思ったことを信じ続け、考えを変えられない

自己中心性バイアス:自分の考えや知識は他の人も持っていると考えてしまう

我慢できない:未来の報酬を不当に低く評価する

バイアスに陥ってしまうと、不合理な判断をしてしまいます。それぞのバイアスを理解するだけでなく、その対処法を知っておくことが大事です。

要点3

どんなに賢い人でもバイアスから逃れることはできませんが、バイアスを理解し、その影響を少なくするとはできます。

ただし、バイアスを理解し、活用することで他の人を出し抜くようなことは避けるべきす。

認知心理学はよりフェアな世界を実現するために利用されるべきものです。

バイアスの少ない思考で、公平性を増すことで自分にも、他人にもフェアな姿勢を持つことがなによりも重要なことです。

この本や記事で分かること

・バイアス、思考の穴とは何か

・バイアスの影響を小さくする方法

なぜ、私たちは合理的な判断が苦手なのか

私たちは思考を惑わせる様々な不具合=バイアスをもっています。

バイアスは生きていくうえで役にも立ってきましたが、現代の環境や状況では、様々な問題を引き起こし、不合理な判断をする原因となっています。

バイアスを避けるにはどうすれば良いのか

どのようなバイアスがあるか知り、注意するだけでは、バイアスを避けるには不充分です。

それでも認知心理学の研究によって、バイアスを避ける方法が明らかになり始めています。

流暢性バイアスとは何か

流暢性バイアスとは、頭の中で簡単出来るもの=実際にできると勘違いするバイアスです。

知識を得ると自信過剰になる、甘い計画を建ててしまうことなどが流暢性によるバイアスが引き起こす問題です。

実際にやったり、知識を書き出し、難しいことを認識し、謙虚になることでバイアスの影響を抑えることが可能です。

確証バイアスとは何か

確証バイアスとはある考えが浮かぶと、その考えが正しいとする証拠ばかり集めるバイアスです。

固定観念を持った理、異なる意見に触れようとしないことによる自信過剰の要因となります。

考えと正反対の考えを思い浮かべたり、あえて違う行動をとることで影響を小さくできます。

因果関係の誤認とは何か

因果関係の誤認とは物事の結果を起こした原因を誤認することです。

原因を誤認してしまえば、うまく対応することができず、同じ過ちを繰り返してしまいます。

問題から距離を起き、原因が一つではないこと意識することが有効です。

なぜ、私たちはデータよりエピソードに惹かれるのか

私たちは五感に基づいて思考を行うため、データではなくエピソードに惹かれてしまいます。

台数の法則や平均への回帰、ベイズの定理を理解しくおくことでデータに基づいて、合理的な判断がしやすくなります。

他の人に合理的な判断をさせたい場合は、同じエビデンスいくつかのエピソードで示すことが有効です。

損失回避と何か

私たちは、ポジティブな情報よりも、ネガティブな情報に強く反応するようにできています。同じ価値でも得ることよりも失うことを過剰に避けるバイアスは損失回避と呼ばれ、不合理な判断につながります。

どれを捨てるかではなく、どれを選ぶかなど、物事のポジティブな面に目を向けるように気を付ければバイアスを減らすことが可能です。

因果関係の刷り込みとは何か

私たちには、最初に思ったことが間違っていても、信じ続けてしまう傾向があります。

事実を自分の都合の良いように変換し、一致させようとしてしまいます。

どんなに賢い人でもバイアスからは逃れられないことを意識すべきです。

自己中心性バイアスとは何か

自分の考えていることや持っている知識は他の人も持っていると考えてしまうのが、自己中心性バイアスです。

ある知識を得たときに、その知識を持たない人の視点に立って考えることが難しくなってしまいます、

相手の考えを読むのではなく、直接聞く、事実を集めることが理解につながることを認識することが重要です。

なぜ我々は我慢が苦手なのか

私たちは先のことを考えるのが苦手で未来の報酬を不当に評価したり、未来の苦労を軽く考えがちです。

また、不確実性を過剰に嫌うことで不合理名判断をしてしまうこともあります。

具体的に考える、結果だけでなく家庭を楽しむことなどが重要です。

本の要約

要約1

私たちは思考を惑わせる様々な思考の不具合=バイアスを持っています。

バイアスは私たちが生きていくうえでプラスとなるため身に着けてきたものですが、現代の環境や状況では、様々な問題を引き起こすこともあります。

バイアスを避けるには、バイアスについて知り、避けようと心に留めておくだけでは十分ではありません。幸いにも様々な研究からバイアスの影響を少なくする方法が明らかになりつつあります。

本書では、認知心理学によって人にどのようなバイアスがあり、そのバイアスにはどのような問題があり、その影響を小さくするにはどうすれば良いかを知ることができます。

要約2

流暢性バイアス

人は頭の中で容易に処理できるものを簡単にできると勘違いしやすいものです。

動画で何度も、ダンスをしているのを見ると自分でも簡単にできると勘違いしてしまうことは流暢性の典型的な例といえます。

流暢性によるバイアスは動作だけでなく、以下のように知識にも影響します。

・誤った知識でもその知識を見出した経緯を知ると信じてしまう

・知識を得ると、得た知識と関係の薄い分野に対しても自信過剰になる

・名前が言いやすいものや読みやすいものを過剰に高く評価してしまう

・計画を立てる際にコストや期間を甘く見積もる

脳には情報を処理できる量に限界があるため、直感的に親近感、流暢性があるかどうかで判断することで、負荷を減らしてきたと考えられます。

流暢性によるバイアスを軽減するには実際にやってみることが一番です。ダンスを実際に踊ってみる、自分の知識を書き出してみる、大きな計画を小さなタスクに分解することなどで、謙虚になり、バイアスを軽減することができます。

確証バイアス

人は一度ある考えが浮かぶと、その考えが正しいと証明するための証拠ばかり集めようとしてしまいす。自分が信じているものの裏付けを得ようとする傾向は確証バイアスと呼ばれます。

確証バイアスは人の思い込みを強めるため、誤った考えに固執したり、自分を過信する要因になります。また、自分がうつだと信じ始めると、実際にうつでなかったとしても悲観的になってしまうなど過信とは反対に方向にも作用するものです。

性差、人種、年齢などに基づく固定観念なども確証バイアスによるものです。

確証バイアスは認知能力の倹約を可能にしことで進化したと考えられます。無限の選択肢がある中で十分に満足するものが見つかったら探求をやめることができるため、幸福度が増え、順応性も高くなります。

間違った答えについても確証バイアスを使い続けてしまうことが問題です。確証バイアスから逃れるには、自分の考えと正反対の考えに当てはまるものを思い浮かべることで、自分の考えが確実でないことを認識することやあえていつもとは違う行動をしてみることなどが有効です。

要約3

因果関係の誤認

人は様々な手段で物事の結果を引き起こした原因を探ろうとします。同じ過ちを繰り返さないように、原因を突き止めようとしますが、下記のような様々なバイアスによって誤ったことを原因と考えてしまいます。

・結果と原因は類似していると考えてしまう

・一つの原因を理解すると、他の要因を考慮しなくなる

・「しなかったこと」ではなく、「したこと」のせいにしてしまう

・近い時期に起こったことを重視してしまう

原因を考える際に、私たちは自分たちの言動や考えを反芻しがちですが、反芻にはあまり効果はなく、問題から距離を置くことが有効です。また原因が一つだけではないことを意識することも重要です。

抽象的なデータではなく、具体的な事例に影響されやすい

私たちは統計データのようなエビデンスよりも、誰かが言っていた、こんなことがあったなどのエピソードを信じやすい傾向をもっています。

思考は基本的に五感に基づいて行われるため、抽象的な記述に比べて、具体的な事例に強い影響を受けてしまいます。

また、統計データに動かされないのは数字の意味を理解できないことにも理由があります。日常生活で明らかに理屈に合わない判断を下さないようにするには以下3つの概念が重要です。

・大数の法則:データやサンプルは多いほど正確になる

・平均への回帰:良い結果を出すことは、いつまでも続くわけではなく、平均的な結果に落ちつく

・ベイズの定理:一部の人が悪いことをすると、その人の属する集団も悪いはずと考えてしまう

また、人に抽象的なデータを理解してもらうには、エピソードや事例の強さを利用することが有効です。

抽象的なデータをもたらす、複数のエピソードを通じて、同じ法則を示すことで、相手が抽象的な法則を理解しやすくなることが分かっています。

要約4

損失回避

人はネガティブな情報に強く反応するため、適切な判断ができないことがあります。

全く同じことでも、ネガティブな表現をされたものを避け、ポジティブな表現をされたものを選びやすい、同じ金銭的価値でも得るよりも失うことを避けるなど、人は失う恐怖を前にすると合理的な判断ができなくなります。

損失回避は自分のものになった瞬間手放したくなくなる保有効果などにも見られます。

ネガティブなものに目が行きがちで、失うことを恐れる感情は失うことが死に直結した人類史の初期、生死の瀬戸際で生きていた際に生存に有効であったと考えられています。

どれを捨てるかを考えるのではなく、どれを選ぶのかと考えることが有効です。

因果関係の刷り込み

私たちは最初に思ったことを信じ続けようとする性質も持っています。後から信じていたことが間違っていることが分かっても、なかなか考えを変えることはできません。

事実やデータを自分の考えに一致させようとしたり、事実の解釈にバイアスをかけることは誰にでもあることです。

基礎的な数学的な知識がある人のほうがバイアスの影響を受けやすいこともわかっており、どんなに賢い人でもバイアスから逃れることはできません。

自己中心性バイアス

自分の考えていることや知識は、他人も同じように持っていると考えがちです。

ひとたび知識を得ると、その知識を持たない人の視点から物事を考えることはとても難しくなります。

他人の視点から考えることだけでは、バイアスの影響をなくすには十分ではありません。確実なのは相手の考えを直接聞き、事実を集めることです。

相手の心を察したり、読んだりするのではなく、事実を集めることだけが、互いを理解する方法となります。

我慢できずに非合理に行動する

私たちは我慢が苦手であり、未来の報酬を不当に低く評価する傾向にあります。嫌なことを後回しにすることも、未来にやるほうが楽だという勘違いに基づいています。

また、同じ利益であっても、不確実性のあることを嫌う傾向もあります。11%と10%の確率の違いは気になりませんが、同じ1%でも、1%と0%には大きな違いを感じてしまいます。

未来のことを上手く考えられないのは、単純に距離があるからでもあります。

できる限り先のことを具体的に想像することで、未来に対する非合理な行動を抑えることが可能です。

一方で、未来のことばかり考え、自己管理する重要性が増すと不安が増すことも明らかになっています。働くために生きているような人々が問題になるように、未来を重視し、行き過ぎた自己管理は精神衛生や幸福を妨げるだけでなく、肉体にも悪影響を及ぼします。

結果だけを見るのではなく、過程を楽しむ姿勢も必要なことです。

認知心理学の活用は、バイアスを理解することで人を出し抜くためではなく、よりフェアな世界を実現するためであるべきです。

バイアスの少ない思考で、公平性を増すことで自分にも、他人にもフェアな姿勢を持つことがなによりも重要なことです。

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