この本や記事で分かること
・アルケンからジオール化が生成する反応とその機構
・ジオールのC-C結合開裂の反応とその機構
アルケンのジオール化とは何か
アルケンと四酸化オスミウム(OsO4)との反応で、両方の炭素にOH基の付加したジオールを生成します。
アルケンからのジオールの合成はヒドロキシ化と呼ばれています。
アルケンのヒドロキシ化はカルボカチオン中間体を経ずに反応が進行します。OsO4がアルケンに付加し、環状オスミウム酸エステル中間体を生成します。
その後、中間体を亜硫酸ナトリウム(NaHSO3)で処理することでジオールを得ることが可能です。
アルケンへのOsO4の付加によるC-O結合が同方向で形成され、そのまま脱離するため、シンの立体化学で進行します。

どのようにジオールが生成するのか
環状オスミウム酸エステル中間体の形成は、電子豊富な二重結合がオスミウムと結合した酸素を攻撃し、二重結合の炭素と結合を生成します。オスミウムと結合した別の酸素がもう片方の炭素を攻撃することで環状オスミウム酸エステル中間体が形成されます。
その後、水による中間体の酸素とオスミウム結合の切断、結合で生じたO–が水素と結合を生成することでジオールが生成されます。

ジオールのC-C結合を開裂させるにはどうすれば良いのか
ジオール化合物を過ヨウ素酸(HIO4)と反応させると、開裂し、二つのカルボニル化合物を得ることができます。
この反応はHIO4のヨウ素とジオールのOが結合した環状化合物中間体の生成と、その後のI-O結合の開裂、元のジオールのC-C結合の開裂という順序で発生します。

シクロアルカンのジオールを開裂するとどうなるのか
OH基が鎖状化合物に結合している場合は、開裂し、二つのカルボニル化合物を生じますが、環状化合物がジオールを持つ場合は、開環したジカルボニル化合物を与えます。
反応の機構自体は鎖状のときと同様、環状化合物中間体の生成と脱離という形で進行していきます。
ただし、環状化合物はシス体の場合は反応が進行しやすくなりますが、OH基同士がトランスの位置にあると環状化合物が形成しにくいため、反応が進行しないか、極めて遅い反応となります。

コメント