Invention and Inovation バーツラフ・シュミル 要約

本の要点

要点1

人類に進化には様々な発明の成果が密接に結びついています。人間にとって、大きな意味を持つ発明ですが、発明には新しいものを取り入れ、活用する過程であるイノベーションが欠かすことができません。

新しいものが生み出されても、イノベーションが伴わずに失敗することはこれまでも多く見られてきました。

現代は、イノベーションが加速し、テクノロジーが指数関数的に発展しているといわれますが、現実はそこまでうまくいっていません。

失敗した発明の例を通じて、ありのままの現実に触れ、期待を自戒することが必要です。

要点2

発明の失敗には、以下のようなものがあります。

・発明のもたらすマイナスがプラスを上回ることがなく失敗したもの

→有鉛ガソリン、DDT、フロンガス

・期待を上回るほど普及しなかったもの

→飛行船、原子力発電、超音速飛行

・以前から切望されているが実現できていないもの

→ハイパーループ、窒素固定作物、制御核融合

要点3

発明の失敗に対し、代替品を作ったり、リスクのあるものに対し、世界的な規制を行うことができる点は私たちの誇るべきことです。

その一方で、以下のようなことを忘れるべきではありません。

・あらゆる進歩、普及した技術にもなにかしら懸念すべき点がある

・商用化を優先し、最善ではないものを導入すると長期的には成功にはつながらない

・発明が最終的に社会に適応し、商業的に成功するかは開発と商用化の初期にはわからない

しかし、現実を知り、過去の失敗から学ぶことは現代では難しいことになっています。マスメディアによるテクノロジー楽観主義もあり、多くの人がテクノロジーの未来を過剰に明るいものと勘違いしています。

テクノロジーの指数関数的な発展は半導体エレクトロニクスの分野のみで見られた特別なもので、他の分野でテクノロジーが指数関数的に発展している証拠はありません。

それでも、今ある技術でも多くの社会問題を解決可能です。新たな発明を追い求めるだけでなく、今あり、広く普及していない技術を理解することもとても重要なことです。

この本や記事で分かること

・発明がうまくいくには何が必要なのか

・うまくいかなかった発明にはどんなものがあり、なぜ失敗したのか

・私たちは発明とどう向きべきなのか

発明にはどんなものがあるのか

発明は

・手製の道具

・機械

・新素材

・方法

に分けられ、人類の進化と密接に結びついてきました。

イノベーションとは何か

イノベーションは新しい

・材料

・製品

・プロセス

・アイデア

を取り入れ、取得し、活用する過程です。発明がなされても、イノベーションが伴わず失敗に終わることも少なくありません。

イノベーションは加速しているのか

イノベーションが加速し、テクノロジーが急速に発展していると考えている人も多くいますが、

現実はそれほど、胸躍るものではありません。

失敗した発明を通じて、期待を自戒することが重要です。

失敗に終わった発明にはどのようなものがあるのか

ある問題を解決できる発明が別の問題を引き起こすことは多く見られます。

有鉛ガソリンはノッキングを防ぎ、DDTは強い殺虫効果を発揮、フロンガスは優れた冷媒として利用されましたが、健康被害や環境負荷の大きさから削減が進んでいます。

これらの失敗から分かることは何か

私たちが問題のある技術の代替が作ることができ、世界的な規制が行われたことはプラスの側面です。

一方で、3つの失敗はすべて企業からなされたものであり、企業は利益のためにその悪影響を軽視しがちな傾向をもっています。

期待されたほど普及しなかった発明にはどんなものがあるのか

飛行船や原子力発電、超音速飛行などはある程度の成功を収めましたが、期待されたほどの成功には至りませんでした。

実現できそうでできていない発明にはどんな感じ

ハイパーループ、窒素固定作物、制御核融合などはかなり以前から発想されているにも関わらず、実現できていません。

うまくいかなかた発明から分かることは何か

うまくいかなかった発明からは、あらゆる技術に懸念すべき点があり、成功かどうか見極めるには時間がかかることがわかります。

また、資金と時間をかけても成功する保証のないものには懐疑的な姿勢をもつべきですが、現実を知り、失敗から学ぶことは現代では受け入れられなくなっています。

私たちは発明とどのように向きあうべきか

極端なテクノロジー楽観主義は現実から目を背けさせるものです。指数関数的に発展したテクノロジー分野は半導体エレクトロニクスの分野のみのごく例外的なものでしかありません。

一方で、すでにある技術でも貧困にあえぐ人々の県境や教育の問題の解決に利用できるものは多くあります。

新しい発明を追うだけでなく、普及していない技術を理解することとのバランスをとることが重要です。

本の要約

要約1

人類の進化には様々な発明の成果が密接に結びついています。発明は大きく以下の4つのカテゴリーに分類されます。

・手製の道具:石器、土器、木製の農具や家具、陶磁器など

・機械:複雑な装置やメカニズムを持つもの。水車や風車、高炉、時計、ミシン、自動車など

・新素材:石や木だけでなく、金属、化合物の発明

・方法:製造、操業、管理の新しい手法。自動化や電子制御など

イノベーションとは新たな材料、製品、プロセス、アイデアを取り入れ、取得し、活用する過程のことです。新たなインベンション(発明)をしても、イノベーションが伴わず失敗に終わることも少なくありません。

近年、イノベーションが加速しているといわれており、あらゆる分野で世界を一変させるような発明が今にも登場するだろうという発言が多くの人からなされています。しかし、現実はそれほど胸躍るものではありません。

失敗したイノベーションの例を通じて、ありのままの現実に触れ、新たな発明が未来を一変させるはずという期待を自戒することが重要です。

要約2

複雑な問題に対する解決策や望ましくない影響を軽減するイノベーションには多くの場合、マイナスの効果ももたらします。

社会的な課題に対し、解決策が編み出されたものの、その解決策が容認できなかった、歓迎されていたのに、迷惑な存在になった発明も多くあり、代表的なものは以下の3つです。

・有鉛ガソリン

ガソリンの燃焼は燃焼室の火花点火によって起きるものですが、その前に未燃ガスが自着火してしまうとノッキングが発生します。ノッキングは燃焼室の壁を振動させ大きな音を発生させ、エンジンを痛めてしまいます。

テトラエチル鉛にノッキングを防ぐ大きな効果があったため、ガソリンへの添加がなされるようになりましたが鉛の毒性は古くから知られていました。しかし、製造メーカーは健康被害はなく、エチルガソリンという名称都市、鉛が入っていないように見せかけることで市場に広げていました。

また、テトラエチル鉛以外の候補があったにも関わらず、自社の都合を優先し、リスクのあるテトラエチル鉛を選択したことも大きな問題です。

その後、健康被害などから削減が行われ、無鉛ガソリンは市場から消えていきました

・DDT

ジクロロジフェニルトリクロロエタンには既存化合物にはない殺虫効果をもつことから、DDTという名称で殺虫剤として使用されてきました。

蚊やシラミ、蚤などに対する高い殺虫効果でマラリアの低減などに貢献する一方で、猛禽類の生存を脅かすことや健康被害、土壌汚染の問題を持ってたことが明らかになりはじめ、規制がなされるようになっていきました。

・クロロフルオロカーボン(フロンガス)

冷媒としての優れた効果と不燃性、無害、不活性という特徴から冷蔵庫やエアコンなどに広く利用されてきました。

しかし、クロロフルオロカーボンは成層圏に到達すると太陽紫外線にさらされ、分解し、塩素原子が発生し、発生した塩素原子はオゾンと反応し、紫外線を吸収しているオゾン層を破壊してしまうことが明らかになりました。

国際的な取り組みによって削減がなされたことで、現在、クロロフルオロカーボン類の大気濃度はゆっくりではありますが、減少し始めています。

これら3つの失敗には、私たちに代替案が考えられ、時間はかかったものの世界的な規模で禁止や全廃に踏みきることができるという励ましもあります。

一方で、すべての発明が企業からなされており、利益のために健康被害を過小に見積もったり、他の候補があるにも関わらず自社の利益を優先してしまう、科学者などから副作用による問題の提言がされても、前もって該当企業に対する規制を行うことが難しいことを示すものでもあります。

要約3

科学的な重要な発見の中には、発見当時はあまり重要視されず後になって大きく発展したものがある一方で、当初から将来有望とされたものの期待を大きく下回るようなものもあります。

・飛行船

空気よりも軽いガスを充填させることで飛行するもので、船に代わる輸送技術として大きな期待がされていました。

水素をガスとして利用した飛行船の爆発事故、代替のガスであるヘリウムの供給不足やジェットエンジンの開発による航空機の普及によって徐々に市場から消えてしまいました。

・原子力発電

核分裂によるエネルギー放出をコントロールする仕組みは核爆弾という兵器を経て、発電技術への応用が行われました。

原子力発電は大気汚染物質や温室効果ガスの排出の少なさと石油の供給不安の解消という点から大きな期待を持たれるものでした。

しかし、より効率の良い増殖炉の失敗や度重なる事故によって信頼性が高く、クリーンという利点に疑問が持たれ、原子力発電は当初の予想よりも普及していません。

原子力の利用自体は成功したともいえますが、当初の期待からは大きく外れてしまっています。

・超音速飛行

音速を超える 軍用機の誕生で旅客機にも超音速が普及すると思われ、実際にコンコルドは商用化されています。しかし事故の発生、構造上の制約から機体が狭くなること、燃費の悪さや機体とメンテナンスのためのコスト増加、衝撃波(ソニックブーム)の問題があり、市場では受け入れられませんでした。

現在でも、開発を行っている企業もありますが、その進捗は芳しいものではなく、超音速機の利点が欠点を上回るめどは立っていません。

要約4

以前から切望されているにも関わらず実現していない発明にも多く見らえれます。

・ハイパーループ

真空状態にしたチューブ内を乗客の乗ったカプセルで移動するアイデア。イーロンマスクが実現を目指す構想を示したことでも話題になりましたが、コンセプト自体は200年以上前からあるものです。

圧力差によるリスクとそれに耐えるポッドの構造や素材をどうすべきなのか、どのようにチューブを設置するのかなどの問題の解決のめどは立っていません。

・窒素固定作物

植物が育つためにば、窒素が欠かせないものです。現在は空気中の窒素をアンモニアへ変換することで化学肥料を作り出しています。

化学肥料は植物に吸収されず、漏出する割合が高いため、コストが高く、海洋汚染や酸性雨などの環境問題を引き起こす要因になっています。

マメ科植物は共生している根粒菌という微生物が空気中の窒素を取り込むため、肥料を必要とせず、生育後に土壌中の窒素量が増加することもあります。

マメ科植物の特徴が明らかになるとこの特徴を穀物にも持たすことができないかという視点から研究が続いています。

穀物と共生する根粒菌の検討や穀物の根に付着した細菌の活性化、穀物の組織に窒素固定能をもたせる、穀物の遺伝子に窒素固定遺伝子を組み込むことなどが検討されていますがうまくいくめどは立っていません。

・制御核融合

太陽は核融合を繰り返すことによって、膨大なエネルギーを生み出しています。核融合を一回限りで再現し、エネルギーを得ようとしているのが制御核融合です。

制御核融合が可能になる高エネルギー原子核衝突を起こすには、超高温の維持、衝突の可能性を高くするためのプラズマ密度の維持とプラズマ状態の長期維持が必要となりますが、解決の目途は立っていません。

わずかな成果であっても大きな成果と報道されるため、今後実現できる可能性は高いと感じがちですが、実験レベルでも十分な効率をもった核融合は確認されていません。

イノベーションに大きな注目を集めるにしたがって、新たな発明による進歩が加速していくという見解も見られますが、発明における成功は私たちが努力を続けた結果の一つに過ぎないものです。

実際に多くのうまくいかなかった発明からは以下のようなことが分かります。

・あらゆる進歩、普及した技術にもなにかしら懸念すべき点がある

・商用化を優先し、最善ではないものを導入すると長期的には成功にはつながらない

・発明が最終的に社会に適応し、商業的に成功するかは開発と商用化の初期にはわからない

・困難な発明が資金と時間をかけても成功する保証がない場合は懐疑的な態度をとるべき

しかし、現実を知り過去の失敗や経験から真摯に学ぶことは現代で受け入れられなくなっています。

マスメディアによるテクノロジーに対する楽観主義や誇大なうたい文句はAI、医療などの分野で実現が疑問視されるようなものに目途が立っているような印象を与え、現実から目を背けさせるものです。

近年で急速で指数関数的に発展したテクノロジー分野として、半導体エレクトロニクスの分野が挙げらえますが、これは例外的な事象に過ぎず、他の分野でも起こるものとは限りません。半導体エレクトロニクスの分野でも近年緩やかな拡大にシフトし始めています。

様々な素材、建築技術などに関する特許数は1900年以前、工業やエネルギー、電気機器製造、ゴムやプラスチックなどは1970年にピークを迎えており、現代の基盤を作っているのはこの時代に生まれたものです。

半導体エレクトロニクスの発展から、イノベーションが加速しているとの結論を出そうとする人もいますが、他の分野での状況を見えればそうでないことは明らかです。

また、すでによくある技術を広めていくことでも、現状の問題を解決することは可能です。生きていくのがやっとの30億人の人々の健康、教育、収入の不平等を解消するために必要な多くの技術は既に存在するものです。

新たな発明を追い求める姿勢はまちがったものではありませんが、広くは普及していない現状の技術を理解することのバランスをとることがとても重要です。

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