新冷戦の勝者になるのは日本 中島精也 要約

本の概要

米中対立をはじめとして、専制主義と民主主義の対立が続いています。

この対立によって世界は新冷戦とよばれる不安定な状態に入ったともいわれています。

しかし、ポスト冷戦期に経済が低迷し続けた日本にとっては新冷戦はチャンスでもあります。

内外の情勢に通じるエコノミストである筆者が分析する国際情勢の変化から今、世界の情勢はどう変化したのか、どうして日本にとってのチャンスなのかなどを知ることができる本になっています。

この本や記事で分かること

・米中対立は世界をどう変えているのか

・新冷戦とはどんな時代なのか、なぜ新しい対立が起きたのか

・日本にとってなぜ、新冷戦がチャンスなのか

本の要約

要約1

ポスト冷戦下で一人乗り遅れた日本は給与はあがらず、他国に抜かれ、経済は低迷しています。

一方で、世界は米中対立や台湾有事など民主主義と専制主義の対立による新冷戦に入ったとみる動きもあります。

世界の不安定さは増しており、多くの国は不安要素を抱えていますが、日本にはチャンスでもあります。

賃金の安さや円安が輸出競争力を向上させ、工場の国内回帰で産業の空洞化が逆回転し始めるなど光も見えています。

要約2

新冷戦は中国で習近平が総書記として2期目続投が決まり、世界覇権を握る宣言をしたときにはじまっています。

ポスト冷戦で大きな経済成長を実現した中国ですが、アメリカとの対立による輸出規制、社会主義要素の強化による経済の停滞や個人的野望による非合理な意思決定などの不安要素も抱えています。

アメリカも対中姿勢を強めており、民主主義と専制主義の対立による新冷戦がはじまっています。専制主義国家は外交上の理由でサプライチェーンの寸断を実施することもあり、民主主義国家は専制主義国家にサプライチェーンの拠点を置くことに強いリスクを感じています。

その結果、グローバル化の巻き戻し、ブロック経済化が進むことが予測されています。

要約3

民主国家ではサプライチェーンの安定化のため、国内回帰と友好国への生産移転に動くべきと考えられており、潜在的に高い技術を持つ日本にとっては大きなチャンスといえます。

安倍元総理の積極的な外交で日本が自由民主主義の守護者であることを世界に認知させることができたため、今後日本がフレンドショアリングの拠点として海外から選択される可能性が高まっています。

また、グローバル化の巻き戻し、ブロック経済化は生産コストの増加につながり、インフレとなりますが、デフレで苦しむ日本にとっては良い部分もあります。

要約4

経済安全保障が重視されるようになったことで、グローバルチェーンの見直しが起きれば、新興国には不利だが、日本には大きなチャンスになります。

技術の高さ、労働者の質の高さ、賃金の安さ、円高の是正なども相まって日本産業の復活条件は整っています。

実際にTSMCの日本進出がきまったように、日本への直接投資は加速度的に増えることと予測されています。

チャンスを逃さないために構造改革、規制緩和によって効率と競争力を上げていくことで、日本の産業、経済の復活につなげることができます。

現在の世界情勢の中で日本はどのような状況か

 ポスト冷戦下で一人乗り遅れた日本は給与はあがらず、他国に抜かれ、円安で海外旅行にも行きにくくなっています。

 台湾有事や米中対立など民主主義と専制主義の戦いに直面した現在を新冷戦とする向きもあるなど大きな危機感に包まれています。

 しかし、日本にとって賃金の安さや円高の是正による輸出競争力の向上、工場の国内回帰など産業の空洞化を逆回転させるなど光も見えています。

現在の世界は民主主義と専制主義の戦いに直面した、ポスト冷戦期から大きな危機感に包まれた新冷戦へ移っています。

しかし、日本にとっては輸出競争力の向上、生産工場の国内回帰など光も見えています。

中国は新冷戦でどのような動きを見せているのか

 新冷戦は中国で習近平が総書記として2期目続投が決まり、世界覇権を握る宣言をしたときにはじまっています。

 習近平の宣言した社会主義現代強国は中国式の社会主義の下で、政治、外交、経済、軍事、技術、文化などあらゆる分野を現代化し、最強国家を作ることを目指すものです。

 一方で社会主義的な要素を強める共同富裕による巨額利益を計上するIT企業たたきや増税などは経済の活力を失う可能性持っています。

 習近平は自信を世界覇権の礎を築いた偉人として毛沢東に並ぶ存在になることを願っているように見えます。個人的野望に駆られて非合理な意思決定に突き進むリスクも大きくなっています。

習近平は権力を盤石化し、世界覇権を握る野心を隠していません。

一方で、社会主義要素の強化による経済の停滞や個人的野望による非合理な意思決定などのリスクが懸念されています。

中国に対し、アメリカはどのような対応をとっているのか

  こうした中国の動きに対して、警戒を見せているのがアメリカです。中国製品への関税引き上げや輸出規制などの多くの対中政策を実施しています。

 また、中国への対抗として以下のような対策もとっています。

・国際資源や技術投資の増加

・グローバル戦略による他国との関係強化

・米軍の近代化と増強

アメリカは中国を大きく警戒しています。

輸出規制、友好国との関係強化、軍の強化などで中国への対抗姿勢を強めています。

新冷戦でロシアはどのような関係か

 NATOの東方拡大によってウクライナも加盟に踏み切れば、ロシアは西側諸国との大きな緩衝地帯を失ってしまいます。

 ロシアはこのことを避けるためにウクライナ侵攻を開始しています。

 一方で、ドイツを中心としたヨーロッパがロシアとの関係を深めてしまい、ヨーロッパのことにアメリカが関与できなくなることを避けたいのがアメリカの考えです。

 そこでアメリカはドイツ、ロシアともに良い感情を持っていない東欧諸国のNATO加盟を画策したものと思われます。

 結果的にアメリカの思惑通りに事態は進んでいます。日本とロシアは平和条約が結ばれておらず、貿易、投資ともにわずかなため、ウクライナ戦争の日本への影響は他国に比べると小さくなっています。

アメリカはヨーロッパがロシアとの関係を深めることを避けるために、NATOの東欧諸国加盟を画策したもの思われます、

ウクライナ戦争の日本への影響は他国に比べると小さくなっています。

新冷戦で日中関係はどうなるのか

バブル崩壊による債務の拡大は日本企業の活力をそぎ、国内需要が落ち込む中での異常な円高は海外への工場の海外移転による産業空洞化を招いてきました。

 日本の投資、工場移転先となったのが中国です。中国の改革開放による海外企業の誘致、WTO加盟などを経て、中国への投資が急増し、日中貿易も飛躍的に拡大しました。

 中国の経済が大きく成長した一方で、軍事的な脅威は増加しています。周辺諸国、海域への介入、ロシアとの連携強化、台湾への武力侵攻の可能性を否定しないなど日本にとっても大きな脅威になっています。

 日本もこのような動きに対して、反撃能力の保有を決断しており、今後も軍事的な緊張が高まることが予測されます。

ポスト冷戦下で日本から中国への投資は急増し、中国の経済も大きく発展しました。

中国の軍事的な脅威も増しており、日本も反撃能力の保有を決断するなど軍事的な緊張は高まることが予想されます。

ポスト冷戦下で世界の経済はどのような変化をしてきたのか

 ベルリンの壁崩壊で象徴される冷戦の終結で民主主義対共産主義の対立が終わりを迎えると、西側の技術とマネーが豊富な資源や労働力をもつ東側諸国に解放されました。

 冷戦の終結が世界的なグローバルチェーンの形成を可能にし、グローバル化が一層進行することとなり、新興国の高成長と先進国の低インフレをもたらしていきます。

 経済成長は資本の投入量と労働投入量、生産性(技術力)の伸びで決まるため、3つの要因すべてが上向きとなった新興国が大きく成長していきました。

 一方で、先進国ではグローバル化による労働力の増加による生産コスト低下と新興国の安価な製品に流入によって、インフレの下降、産業の空洞化などによる低成長の時代となりました。

 大量のマネーの存在は投機を促し、それによる金融危機も何度もみられています。利益狙いの無理な投機がアジア通貨危機、リーマンショック、ユーロ危機などを招くことにもなりました。

冷戦の終結で民主主義対共産主義の対立が終わりを迎えると、西側の技術とマネーが豊富な資源や労働力をもつ東側諸国に解放され、グローバル化が進みました。

新興国は資本の投入量と労働投入量、生産性(技術力)の伸びという経済成長に必要な項目が上向き、大きく成長しました。

先進国は生産コスト低下と新興国の安価な製品に流入によって、インフレの下降、産業の空洞化などによる低成長の時代となりました。

一方で、大量のマネーは投機を生み、幾度かの経済危機を招くことにもありました。

新冷戦で世界経済はどう変化するのか

 ポスト冷戦を終えた現在は、インフレが進行しています。日本でも物価上昇が話題ですが、世界的にもこの10年2%で推移してきたインフレ率が10%に迫る勢いになっています。

 この世界的なインフレはコロナやウクライナ戦争によるサプライチェーンの寸断が原因であり、一過性のものなのかが問題になってきます。

 民主主義と専制主義との対立による新冷戦が続き、グローバル化の巻き戻し、ブロック経済化が進んいでいます。

 労働力、資源、土地の制約の強まりは生産コストの上昇を、技術移転や資金の制限は投資の減少を招くことになるため、長期的な反グローバル化によるインフレが続く可能性はあります。

民主主義と専制主義の対立によってグローバル化の巻き戻し、ブロック経済化が進んでいます。これらは生産コストの増加と投資の減少を招くため、インフレは長期にわたって続く可能性があります。

新冷戦下での世界経済の変化は日本に何をもたらすのか

 中国やロシアなどの専制国家は外交問題の悪化によって、サプライチェーンの寸断を戦略的に実行してきます。

 これまでも中国による日本へのレアメタルの禁輸、ロシアによるドイツへの天然ガス提供停止など多く、サプライチェーンの寸断を行ってきました。

 このような国に、サプライチェーンの拠点を置くことは大きなリスクであり、グローバル化を見直す動きがみられています。

 民主国家は国内回帰=リショアリングと近隣友好国への移転=フレンドショアリングに動くべきであり、実際に半導体を巡っては、アメリカや日本での自国への工場誘致やアメリカ主導による経済圏構想IPEFなどでによるフレンドショアリングの一環といえます。

 日本には潜在的な技術力の高さもあり、大きなチャンスといえます。

新冷戦は専制国家と民主国家との対立であり、専制国家は外交問題の悪化でサプライチェーンの寸断を戦略的に実行してきます。

このような国にサプライチェーンの拠点を置くことは大きなリスクであり、グローバル化を見直す動きがみられています。

民主国家では国内回帰と友好国への生産移転に動くべきと考えられており、潜在的に高い技術を持つ日本にとっては大きなチャンスといえます。

新冷戦下で中心となるのはどこなのか

 ポスト冷戦時期のアメリカ経済は製造業の海外移転による空洞化によるマイナスを凌駕するほどGAFAをはじめとしたIT企業の台頭がみられました。

 新冷戦においても、製造業の復活、情報通信技術などの優位性、軍事力の有意差、豊富な天然資源などがあり、アメリカが中心であることは確実です。

 ポスト冷戦の恩恵を最も享受したのが、世界の工場となった中国であることは間違いありません。驚異的な成長でアメリカのGDPを超えることも時間の問題とされてきました。

 しかし、新冷戦下では以下の要因もあり、厳しい状況が予想されます。

・西側諸国のフレンドショアリングからの除外による投資の減少

・労働者の賃金上昇

・先端技術、製品の禁輸

・共同富裕による民間イノベーションの阻害

・巨額の債務

 また、欧州も中露への依存が大きいため、今後の成長に不安がある状態です。

製造業の復活、情報通信技術などの優位性、軍事力の有意差、豊富な天然資源などがあり、アメリカが中心であることは確実です。

ポスト冷戦で大きく発展した中国は今後は厳しい状況にあり、中露への依存の大きい欧州も今後の成長に不安があります。

日本の経済はどう変わるのか

 TSMCの日本進出に象徴されるように日本への直接投資は加速度的に増えることと予測されています。

 ポスト冷戦ではバブル崩壊による債務の拡大、円高に伴う産業の空洞化などで日本は経済成長できず、デフレが続いてしまいました。

 10年近い金融の異次元緩和を続けても、財政政策の不備もあり、インフレを実現することはできませんでした。

 それでも、安倍元総理の積極的な外交で日本が自由民主主義の守護者であることを世界に認知させることができたため、今後日本がフレンドショアリングの拠点として海外から選択される可能性が高まっています。

 民主国家に属する日本と専制国家である中国の緊張関係が増大していくのは必至ですが、戦争を避けるべきであり、平和を維持することは大前提です。

ポスト冷戦ではバブル崩壊による債務の拡大、円高に伴う産業の空洞化などで日本は経済成長できず、デフレが続いてしまいました。

安倍元総理の積極的な外交で日本が自由民主主義の守護者であることを世界に認知させることができたため、今後日本がフレンドショアリングの拠点として海外から選択される可能性が高まっています。

日本は新冷戦下でどう行動していくべきか

 技術の高さ、労働者の質の高さ、賃金の安さ、円高の是正なども相まって日本産業の復活条件は整っており、あとはそれを上手く活かすために、構造改革、規制緩和によって効率と競争力を上げていく必要があります。

 新冷戦時代に経済安全保障が重視されるようになったことで、グローバルチェーンの見直しが起きれば、新興国には不利だが、日本には大きなチャンスです。

 TSMCの日本進出にみられるように、日本復活の芽が見えています。

 チャンスを逃さなければ、日本の産業、経済の復活につなげることができます。

新冷戦時代に経済安全保障が重視されるようになったことで、グローバルチェーンの見直しが起きれば、新興国には不利だが、日本には大きなチャンスです。

技術の高さ、労働者の質の高さ、賃金の安さ、円高の是正なども相まって日本産業の復活条件は整っています。

あとはチャンスを逃さないために構造改革、規制緩和によって効率と競争力を上げていくことで、日本の産業、経済の復活につなげることができます。

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