本の概要
日本は低い自給率と多くの農業資材を輸入に頼っているため、物流が停止した場合に餓死する人が出る可能性があるという研究が報じられています。
これまで食材の廃棄など飽食が問題とされてきた日本ですが、異常気象や戦争による輸出規制、中国などの新興国の台頭など世界情勢の変化で今後、食糧不足に陥る可能性があります。
しかし、日本が自給率を上げるような政策をとっておらず、安全保障的に大きな問題がある状態です。
日本の農業は過保護で海外との競争がないと思われがちですが、世界の国と比べても関税が低く、補助金も少ない状態です。
輸入に依存しきらずに、国内で循環可能な農業の仕組みを確立することは食の安全保障を高め、食の質と量を確保するために欠かせないことになっています。
この本がおすすめの人
・食料危機で何が起きるか知りたい人
・自給率が低いことの問題点を知りたい人
・日本の農業の問題点が知りたい人
本の要約
なぜ、日本が世界で最初に飢えてしまうのか
日本は低い自給率と種や肥料を海外に依存していることもあり、物流が停止した場合に餓死する可能性すらあるという研究が報じられています。
核戦争の可能性や世界的な不作、国同士の対立による輸出停止や規制が広がることで物流が停止してしまうことは充分にありうることです。
お金を出せば輸入できることを前提とした食料安全保障は通用しなくなっている中で、日本の農家が疲弊していけば食料不足に陥る可能性が大きくなってしまいます。
日本は食料自給率が低いだけでなく、種や肥料も海外に依存しているため、食糧危機が起こった際に食料不足に陥る可能性があります。
日本の食料にどのような不安があるのか
コロナは世界中の物流に大きな影響を与えました。食料生産に欠かせない種の9割を輸入に頼っているに頼っているため、大きなリスクになっています。
ほかにも鶏などの餌であるトウモロコシや化学肥料の原料であるリンやカリウムなどはほぼすべて輸入に頼っている状況です。
コロナだけでなく、ウクライナ戦争の勃発によっても世界の食料供給は混乱に陥っています。さらには中国の爆買いもあって日本がお金を出しても、農業資材が変えないようなことも増えています。
物流が止まれば、食材だけでなく、家畜の餌や肥料などの農業資材を輸入することができなくなります。
また、中国の経済発展でお金を出しても、変えない状況もみられています。
自由貿易で食料の安定調達は可能なのか
アメリカは自国の農業、主に穀物に多額の補助金を出し、農作物を安く海外に輸出し、途上国の農業を破壊し、アメリカから輸入せざるを得ないような状況を作り出しています。
機を見て、値上げし利益を得るなどのやり方も少なくありません。
自由貿易でも安定した食料確保が可能、自給率と自由貿易は両立できるなどの声もあるが実際には難しいことです。
食料、種、餌などを海外に依存する度合いが大きすぎれば、いざというときに国民の命を守れないという現実があります。
農家への断片的な支援ではなく、国産の農作物を増やすための抜本的な改革こそが必要になっています。
自由貿易で自給率を上げることは困難です。アメリカなどは自由貿易といっていますが、実際には農業に補助金をだし、安価で輸出し、アメリカに食糧依存させる戦略をとっています。
世界と日本の食糧危機に対する備えはどう異なるのか
ウクライナは重要な小麦の産地ですが、戦争の影響で種植えができず、穀物の収穫量が減少し、世界的に価格の上昇が起きれば日本の輸入できる量が減る可能性があります。
EU諸国やアメリカはいざというときに食料を自国で賄えるように平時から農業を保護して、世界情勢の変化に対応していますが、アメリカ追従の日本では準備がされていません。
また、中国の全体的な所得の向上で食にも変化がおき、世界の食糧市場で強い購買力を発揮するようになっており、日本が買い負けることが頻繁に起きています。
人手不足や異常気象による不作、燃料費の高騰など農家が苦しくなる要因が近年多くみられています。
諸外国はいざというときに自国を賄えるように農業を保護していますが、日本の農家は保護が十分でなく苦しんでいる農家も多くみられています。
なぜ、自給率を上げる取り組みが進まないのか
世界で食料危機が起こると高くて買えないこと以上に、食糧輸出国が輸出をストップしてしまう事態が懸念されます。
有事に備えるため、自給率を上げることが必要ですが、農水省の立場が弱くなり、本来振り分けるべき予算を財務省が振り分けないなどで日本の農業が危機的な状況になっています。
自給率を上げることはアメリカからの輸入を減らすこととなるため、政治的にもなかなかとりくみにくいことも、自給率を上げる取り組みが進みにくくなっている原因になっています。
農水省の権限が弱くなったことや自給率を上げる=アメリカからの輸出減となるため政治的に取り組みにくいことが原因です。
日本が農業に適していないから、自給率が低くなっているのか
食料自給率の向上が話題になりにくい原因の一つに自給率が低いことが、仕方ないと多くの人が思っていることも挙げられます。
国土面積が限られるため、小規模で非効率な農業をやらざるを得ないため輸入が増えるのは仕方ないという考えがいきわたっています。
しかし、実際に自給率が下がった最大の原因は貿易自由化と食生活改変政策によるものです。
アメリカやEUが自国の農家に補助金を出し、安い穀物を日本に輸出したこと、アメリカが戦後に洋食を広めることで、コメの消費を減少させたり、家畜の飼料を牛耳ったことで自給率が大きく低下しています。
自給率が低いのは日本が農業に適していないのではなく、貿易自由化と食生活改変政策によるものです。
いざというときに自給できれば問題ないのか
自給率を上げるためには農家を保護する必要がありますが、政府は農家を過保護にすると非効率な農家が残ってしまうと考えており、いざというときに食料を生産できる自給力があればよいと考えているが、農家が弱体化していれば有事に生産を増やすことは難しくなります。
お金で食料が買える時代が終わる可能性もあり、お金を払って買えるから問題ないという考えはあぶなくなっている。
また、貿易自由化を進めれば国際分業が進み、日本のような国では食料生産はどんどん減ってしまいまうため、貿易自由化と自給率向上の両立は不可能です。
付加価値の高い和牛などを輸出し、大豆やトウモロコシは輸入するという考えもあるが、いざというときのカロリー源として重要なのはやはり穀物になります。
農家が弱体化していると有事に生産を増やすことができなくなります。貿易自由化で分業が進めば、農業の弱体化は進行してしまいます。
海外に食料を依存することは食の安全にどう影響するか
食肉に使用される成長ホルモンや除草剤であるグリホサートなど健康被害の疑いのあるものに対して世界中で規制や消費者からの反発が起きているが、これらを使用した輸入品についての規制や反発は日本ではほとんど起きていません。
多国籍企業の影響が強く、メディアで取り上げられる機会が少ない、消費者の理解が進んでいないなどの理由がありますが、各国では消費者からの反発で危険な食品の規制ができることも少なくありません。
他国では安全基準をクリアできないような食品が日本には入っている可能性もあり、食の安全も脅かされています。
食料を海外に頼りすぎると、食の質、安全性に乏しくても、頼らざるを得ない状況になってしまうことも考えられます。
現在の農業の問題点は何か
化学肥料、農薬を多量に使用する農業は環境負荷も大きく、長期的にみると食料生産を減少させることにもつながってしまいます。
・肥料として使用される窒素が硝酸態窒素へと変化し、人体に害を与える
・農薬の使用による耐性雑草の誕生
・化学肥料に含まれる窒素やリンが海に流れ込みプランクトンが大量発生してしまうデッドゾーン
化学肥料と農薬を使用した農業は緑の革命として、食物の収量を増やすことには成功しましたが、一部の多国籍企業を肥大化し、環境にも大きな負荷をかける結果となりました。
今第2の緑の革命として、遺伝子組み換えやゲノム編集植物などの活用が叫ばれていますが、そうした作物を販売する多国籍企業の利益になるという側面があることを忘れるべきではありません。
化学肥料と農薬を使用した農業は短期的な収量を増やしましたが、一部の多国籍企業を肥大化させ、環境負荷も大きくしてしまいました。
日本の農業は過保護なのか
コロナによる給食需要の減少などから牛乳が余ってしまう事態では、本来政府が余った牛乳を買い上げるべきだが、法や制度の問題から、消費者に牛乳の消費を呼びかけることしかできませんでした。
農業は既得権益であり、高い関税や補助金など過保護な業界であったため衰退したというイメージが強いが、実際とはかなり異なっています。
日本の農業については
・関税が他国に比べ低い
・政府による買い入れによる価格の安定化が少ない
・補助金も少ない 海外は農業に補助金を充て、安価な値段で輸出している国も多い
また、山間部などそれぞれの耕作地が狭いため、大規模化は難しく、大企業による農業は苦戦、撤退してる部分も多い。
各農家のコストダウンは必要だが、根本は農家が農業を続けられるシステムと国からの支援となる。多様な農家が共存しつつ、コミュニティを持続させることが非常に重要となる。
他国と比較し、関税、補助金、政府の買い入れもなく、過保護とは言えません。多様な農家を持続可能にする支援とシステムが必要となります。
食糧危機を救うにはどうすればよいか
国からの支援によって農家を助けることで自給率を上げ、食の安全や食流危機に備えることが可能です。
そのためには予算の増額による補助金の増額だけでなく、消費者の意識改革、私企業の利益追求を抑える仕組みや市民からの要望が重要となります。
これまで効率ではないとされてきた有機農業や自然農法が見直されています。多国籍企業ではなく、これらの循環型の農業を政府や自治体が補助することで安全と持続性、自給率の向上を高めることのできる可能性があります。
輸入に依存しきらずに安全、高品質な食糧供給ができる循環型農業を目指す方向が未来を守る希望となります。
循環型の農業を政府や自治体が補助することで、安全と持続性、自給率の向上を高めることができます。輸入に依存しきらない方向性が必要となります。
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